株式会社設立の際、資本金はいくらにすべき?4つのポイントを解説
会社設立するとき、資本金をいくらにすればよいか?
会社を設立する、いわゆる起業する際には資本金を用意する必要があります。
では資本金はいくらにすべきなのか?資本金の使い道、その本質的な存在意義は何なのでしょうか?
これから起業して会社設立をしようと考えている人が資本金とは何か?という疑問を持った時、その本質的な答えを教えてくれるような情報媒体は意外と見当たらないものです。
今回は会社設立に関する基礎知識の一つとして、資本金とその周辺の予備知識を解説します。
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この記事の目次
資本金とはどのようなお金か?
資本金とは何か?という問いに率直に回答するならば、会社設立にあたって集めた資金ということになります。
2006年の会社法改正により起業する際の最低資本金制度が廃止されたことで、起業のハードルが大きく下がり、1円でも会社が興せるようになりました。
しかし「1円で起業できる」ことと、「資本金をいくらにすべきか」は違う問題です。
例えば小麦粉を仕入れて中華麺に加工し、既存のラーメン屋さんに麺を卸すビジネスをするために会社設立したとします。
この場合は、会社設立のために集めた資本金で小麦粉を仕入れたり製麺機を買ったり、既存のラーメン店に営業をかけたりするというわけです。
資本金は会社の業務を行う際の資金として使われるために資本金が多いほど大規模、もしくは長期的な業務が可能になります。そのため資本金が大きいほど業務の継続力が大きいといえるため、その会社の体力に例えることができます。
そのため資本金が大きい会社=資本体力が充分な会社、といった表現をする場合も多いです。
どんなビジネスでも始めたばかりで充分な利益を出すのは難しいものです。最初は赤字同然で、徐々に黒字を増やしていくと見込む場合がほとんどです。こんな場合でも資本金が多ければ長期的にビジネス計画を立てることができるために何かと有利になります。
つまり資本金とは、会社設立時に会社の設備投資・運転資金として用意するお金、ということになります。
【信用力】にもつながる資本金
資本金を知る上で忘れてはいけない要素に、資本金は会社の信用度を示すバロメーターにもなる、という点があります。
上記でも解説したように資本金とはその会社の運営資金であり、その会社の体力に相当するような要素です。
資本金は基本的に開示義務がありませんが、多くの場合はその会社のことを調べれば簡単に知ることが出来ます。
昨今であれば会社のHPを観覧すれば資本金額は公開されている事が多いです。
第三者からみれば資本金はその会社の資本体力を直感的に知ることができる好材料であり、基本的に資本金が大きいほどその会社は資本体力が潤沢な会社と見ることができます。
例えばその会社の仕入先や、営業関係にある会社にとっては資本金が多い方が何かと安心です。そのため長期的な営業関係が築きやすくなります。
現実に、大企業の多くは取引先の会社を選ぶ際にその会社の資本金を審査の重要項目にしており、資本金が極端に少ない会社とは取引したがらない傾向にあるといえます。
これは特に設立して間もない会社には重点的に注目される点であり、資本金の額は極めて客観的なその会社の体力、信用力を表すバロメーターとして注目されます。
資本金を決定する際に意識するべき4つのポイント
ここまでの解説で、資本金とは何か?という疑問の大筋はご理解いただけたと思います。
ではここからはさらに一段掘り下げ、資本金を決定するために考慮するべきポイントを解説します。
1.会社設立時には資本金を初期費用と考える
繰り返しになりますが、資本金とは実質的に会社の運転資金です。多くの場合、ビジネス活動をするには元手となるとお金が必要になるものです。
つまり資本金はどのくらい用意する場合が適当か?を考える場合は、自分が始めようとしているビジネスは元手がどのくらい必要か?と考えるとわかりやすいです。
自分の会社が最低でも3カ月間、理想としては半年間、純利益なしでもビジネス活動が出来る額を想定し、その額を資本金とする場合が一般的な相場です。
参考記事:起業のタイミングでいくら借りられる?【芳賀氏連載その2】
では上記でも解説した、資本金とは第三者から見ると会社の信用力に繋がる、というアプローチで考えるとどうなるでしょうか?
傾向としては大規模な企業ほど、取引先会社の資本金には敏感なものです。つまり自分の会社の取引先に大手の企業がある場合はこのような点も留意するべきです。
資本金を信用力と考える場合は自社で行うビジネスが【B to C】ビジネスか、【B to B】ビジネスか、という点も意識するべきです。
B to B (Business to Business)ビジネスとは簡単に解説すると企業間取引の事であり、対企業でビジネスを行うことです。この場合は当然、取引先は企業となるため資本金が信用力に繋がります。
一方、B to C (Business to Consumer)ビジネスとは個人顧客を相手に行うビジネスを指します。こちらは主な取引をするのは法人では無く個人のため、資本金の大小はさほど信用力には直結しない傾向にあることがいえます。
このように自社の事業形態により、資本金が信用力にどれくらい影響をするかを考えるのも資本金を決める際の重要な項目です。
2.法人口座を開くためには資本金による信用力が必要
企業間で取り引きをするためには、法人口座が必要になります。メガバンクや地方銀行など銀行によっても違いますが、少額資本金だと法人口座が作りにくい場合があります。
これはあまりにも資本金が小額だと、会社の実態や信用性が疑われて審査が通らないためです。各銀行が資本金いくら以下から開設不可と開示しているわけではありませんが、少額資本金は審査が通りにくいのが実状ですので、それを踏まえて資本金の額を考えてください。
3.資本金による節税
資本金は消費税の免税期間を上手く活用すると節税につながります。
簡単に解説すると会社設立時に資本金を1,000万円以上にすると消費税の課税事業と認定され、初年度から課税対象となってしまいます。
また資本金が1,000万円以上だと決算時の法人住民税が割高になります。
このような消費税や法人住民税は当然、赤字でも支払いの義務があります。会社設立時は往々にして資金繰りには苦労するものです。そのため少しでも節税できるように免税の知識も最低限は知っておきたいものです。
とりあえず、節税のために、特に理由が無ければ資本金は1,000万円未満に設定する場合が有効な節税対策といえます。
4.創業融資の制度に注目
会社設立当初は最も資金繰りが難しい時期といえます。そのため有効な資金調達方法はいくつか知っておきたいものです。
いくつか資金調達手段の中でも創業融資の制度は注目です。
創業融資とは、国や自治体が設けている、起業後すぐに申し込める公的な融資制度のことです。
創業融資は一般の金融機関よりもかなり好条件の融資内容のため適用される場合は積極的に利用するべきです。
最もおすすめなのが、日本政策金融公庫の新創業融資制度です。起業家支援に積極的なので融資が通りやすいですし、スピーディなのも嬉しいところです。
その他にも自治体が主導する創業融資を含めた制度融資がありますが、各自治体別に規定が異なるため、自分が会社を設立する地域の制度融資内容を調べてみると良いでしょう。
繰り返しになりますが資本金とはその会社の資本体力であり、会社の金銭面における客観的な信用力になり得ます。
融資してもらう先が金融機関でも行政でもいわゆる借金であることに変わりはありません。そのため資本金が多い方が貸主から見ても返済能力が高いと判断するのは当然の理屈です。
以上のことから、一般的に、資本金が多い方が制度融資も受けやすくなります。
以上のように創業時の資金調達は金融機関に融資を受ける以外でも、公庫などから好条件で融資を受けることができる可能性がある、ということは是非とも覚えておきたいポイントです。
冊子版の創業手帳(無料)では、資金調達方法について詳しくまとめています。事業計画の書き方など、資本金以外にも融資を受けるにあたって有利となる要素がいくつかあります。参考にしてみてください。
資本金の調達に関するQ&A
アンケートで寄せられた、資本金の調達についてのQ&Aを紹介します。これから事業を始める方は、参考にしてみてください。
Q・資本金の調達などの仕組みを詳しく知りたいです。さらに県や国の補助金などを検討しているのですが、どんな方法があるのでしょうか。
A・資本金調達方法は、一般的に融資が利用されています。実績がないと金融機関からの融資審査に通りにくくなりますが、行政からの融資なら導入リスクを軽減できます。中小企業支援を目的とした「制度融資」の活用がおすすめです。
参考:「資金調達方法」は1つじゃない?今さら聞けない資金調達の基本を創業手帳の創業者・大久保が解説
Q・警備業をしたいと考えており、そのために取得しなければならない資格について教えてもらいたい。また、起業に向けての資金調達方法や、資本金の相場なども知っておきたい。
A・警備業に必要な資格は、「指導教育責任者資格」です。資金調達は、各金融機関や行政の制度融資などが選択肢となります。資本金の相場は、300万円~3,000万円くらいです。警備業の開業資金は10万円前後といわれますが、事業安定のため月々の経費を半年~1年分は資本金として用意しましょう。
まとめ・会社設立を考えるのならば、資本金のことをより深く知るべきです
資本金とは会社を設立した時に用意しておく当面の運転資金です。そして資本金はその会社の資本体力を客観的に示す判断材料にもなり得ます。
その客観的な数値は会社の信用力にも直結するため取引先の企業が多い場合には資本金における信用力も意識する必要があります。
また資本金は課税対象であったり、創業の際には行政から融資を受けることが出来る制度が存在したりするため、会社設立、資本金における制度もある程度理解しておきたいところです。
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(編集:創業手帳編集部)
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