「嫌われ社長」の条件とトラブル回避術| 有名企業の役員・顧問を担う守屋氏に聞く

創業手帳
※このインタビュー内容は2016年08月に行われた取材時点のものです。

うまくいく社長といかない社長の違いとは

(2016/08/05更新)

ベンチャーとして新規事業を立ち上げた創業者のみなさんは、日々多くの壁を乗り越えて格闘されていることと思います。大企業と渡り合い、それを凌ぐサービスを生み出すベンチャー企業になるには、どうすれば良いのでしょうか。

今回は、設立前および設立間もないベンチャー企業を対象に、「新規事業創出・立上げ請負人」として活躍する守屋実さんに、ベンチャーにありがちな上司と部下のトラブルパターン、うまくいく社長といかない社長の違いについてお伺いしました。

守屋 実(もりや みのる)
1992年に株式会社ミスミ入社。2002年、ミスミ創業オーナー田口弘氏と新規事業専門会社エムアウトを創業。2010年、守屋実事務所を設立。ベンチャーを主な対象に、新規事業創出の専門家として活動。ラクスル、ケアプロの副社長を歴任後、メディバンクス、ジーンクエスト、サウンドファン、ブティックス、SEEDATA(博報堂DYグループ)の取締役、サーキュレーションなど各社顧問を兼任、リクルートなど各社アドバイザーもあわせて歴任。

大体の企業の悩みは「人」

――守屋さんのご経歴について教えて下さい。

守屋:20年間新規事業立ち上げに従事し、「企業内起業」として17つの事業にチャレンジしてきました。その後、2010年に守屋実事務所を設立し、新規事業創出の専門家として活動を開始しました。これまでの新規事業立ち上げから得た経験や、複数の企業の取締役や顧問を兼任する中で得た経験を、創業前や創業直後のベンチャー企業にアドバイスして還元しています。

――ラクスルの副社長、リクルートのアドバイザーなど、名立たる企業と関わってきた、守屋さんですが、事業がうまくいくか否かの境目はどこにあると感じていますか?

守屋:いろいろな経験を通し、事業が成功するかどうかの境目は、「人」だなと感じています。

企業の成長に合わせて、「人」という点で組織的な問題が生じてきます。大きなことだけではなくて、「上司と部下」といった個人規模でもトラブルは多いです。

結局、多くの企業が抱える問題の多くは「人」なのです。

「嫌われ社長」がやりがちな4つのNG行動

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――創業期から成長期のベンチャー、にありがちな上司と部下のトラブルはどのようなものでしょうか。

守屋:組織が大きくなると、必ず「上司」と「部下」が生まれるので、その立場の違いからトラブルが生まれます。

前提として、上司は「もっと経営的視点で物事を考え、行動して欲しい」と思っていて、部下は「もっと現場のことを考えて指示を出して欲しい!」と思っている。この時点で、立場にギャップが生じてしまいます。

――「社長は現場を分かってない!」となる訳ですね。

守屋:はい。様々なトラブルがありますが、これから挙げる4つなどは、ベンチャーあるある、組織あるある、かと思います。

まず、「朝令暮改」

(※命令や政令などが頻繁に変更されて、定まらないこと。朝出した命令が夕方にはもう改められるという意味。)

上司は、適時適切な経営判断を行っただけなのに、実務が伴っている部下の立場としては、急な変更は難しく、着手したのちに指示が変わると負担は大きくなります。

「結局どうしたいんだよ」という不満が組織の中に伝播していきます。上司は、部下へねぎらいの心を持って朝令暮改をしましょう。部下も朝礼の意味をよく咀嚼し、暮改に応じたならばそのあとは文句を言わない姿勢が大切です。

次に、「領空侵犯」

(※国家がその国の領空に対して有する権利を侵犯すること)

適時適切な上司の介入が、部下にとっては越権行為に映るパターンです。「だったら自分でやれよ」と不満が生じます。上司は業務分掌を配慮した上で介入すること、部下は上司のアドバイスの背景を理解し、業務に活かす姿勢を意識しましょう。

上司が、必要と思った時に指示を差し込む「突発攻撃」もトラブルのもと。

上司としては必要な助言であっても、部下としては当初の予定が遅れる理由となりえます。部下の気持ちは「思いつきで言うなよ」という感じ。このトラブルを防ぐために、上司は現状の業務量を配慮した上で、優先順位の入れ替えとリソースの再配分を合わせて指示しましょう、部下も、差し込まれた意味合いを理解し、既存業務の調整を行いつつ対応してください。

最後に、「時間差攻撃」

上司としては必要なタイミングで指示しただけでも、部下にとっては既に伝えたことだった、という場合です。部下としては「だから言っただろ」という気持ちになります。上司は、社内の既出議論に配慮して、今指示を出した理由を添えてください。部下は、なぜ今なのかという点を考え、経営判断の見極め力を獲得する姿勢を持ちましょう

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社長が◯◯◯◯に出始めたら要注意!

――守屋さんが考える「成功しない会社の社長」とは、どのような人でしょうか。

守屋:この質問に答える上で、「社長」と「社長以外」のギャップを理解する必要があります。

性悪説みたいな話になりますが、社長には「みんなに求めるだけ求めて、ダメだったら社員を替える」という選択肢がある一方、社員には、「会社にぶら下がるだけぶら下がって、状況を見ながら会社を変える」という選択肢があります。

例えば事業が成長していくなかで、最初のうちはみんなが頑張ってくれることに「ありがとう」という意識があるのですが、そのうち変わっていって「ビジネスマンとしての成長チャンスを与えている」くらいの勢いになってしまうことがある。自分中心主義になってしまうんですね。おごりがでてしまう。

特に、初めて会社を立ち上げた人間が少し上手くいった時には、こういったトラブルが起こりがちです。

–おごりが発生するキッカケには、どのようなものがありますか。

守屋:典型的には、メディアに出始めることですね。

メディアに出始めると、極端に言えば天下国家を語り始めるんです。メディア側も大きいことを喋って欲しいし、読者もそれを望んでいる。

本当は周りに迷惑をかけただけの失敗談だとしても、それを厳しい試練を乗り越えた美談として描いてしまうということが、メディアには多々あります。そうすると従業員の立場としてはちょっとカチンと来てしまうわけです。そうであったとしても事業を伸ばすためにはメディアへの露出は大切ですから、難しいところです。

–上手くいっている社長さんは、メディアに出ても慢心せずに進んでいくということですね。

守屋:そうですね。事業はいろいろなことの複合技で、全部社長が1人でやっていることはないはず。メディアに掲載されるに至った道のりは、みなで頑張った道のりな訳で、決して忘れてはいけないポイントだと思います。

大切なのは、「社長が社員を信頼しなければ、社員は社長を信用しない」というおごらない考え方だと思います。

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【続きはこちら】事業成功のために見極めるべき、たった1つのポイント
大企業に勝つベンチャーの条件| 有名企業の役員・顧問を担う守屋氏に聞く

(取材協力:守屋実事務所 守屋 実)
(編集:創業手帳編集部)

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