“半農半○”?新たな起業スタイルを提案する宇部市の充実の起業家支援策とは?
ベンチャーマインドを持つ山口県初の女性市長、久保田后子宇部市長インタビュー
(2016/02/23更新)
近年、「女性が活躍する社会」を後押しする政策を政府が打ち出すにつれて、女性起業家にスポットライトが当たることも増えてきました。そんな中で、市をあげて手厚い支援を多数取り揃えている、山口県宇部市の女性市長、久保田后子氏に、宇部市の手厚い起業化支援策や今後の施策など、お話を伺いました。
東京都世田谷区生まれ。1978年に早稲田大学政治経済学部政治学科を卒業後、ドイツのミュンヘンで1年間学ぶ。1980年に帰国後は民間企業に勤務。1990年に夫の故郷である宇部市にIターン。1995年に山口大学大学院経済学研究科修士課程修了。宇部市議会議員・山口県議会議員を経て、2009年宇部市長に初当選を果たし、現在2期目。山口県内では初の女性市長となった。
「”半農半○”を叶える都市」
久保田:宇部市は人口約17万人の緑あふれる工業都市です。
石炭を礎に工業都市として栄え、化学、機械、医薬品の分野で大企業が発展し、瀬戸内海工業地帯の中で中心となっているまちの一つです。
現在、近年のグローバリゼーションの中で、もっと新しい事業を起こしていこうということで、創業の地、起業のまちとして選ばれるべく、市をあげた取り組みをしています。
そもそも地方都市での創業は、可能性が広がると思うんですよね。
例えば、「半農半○」と言ったらいいのでしょうか。農業や漁業に携わりながらICTビジネスをやるということもできます。
宇部市は陸・海・空すべての交通の利便性が高く、羽田空港から山口宇部空港まで90分。空港から市街地まで15分です。
ビジネスをするという点では条件が整った町ではないかと思います。
久保田:行政の本気度を示すために、3年前の平成24年4月に施行した中小企業振興基本条例の中で、「創業の促進」ということをきちんと書き込んでいます。
また、国の産業競争力強化法に基づいて、創業支援事業計画を策定し、創業支援に熱心に取り組む自治体として国の認定を受けました。
この本市の認定は山口県内第1号で、平成26年3月に国の1回目の募集に応募し、認められたものです。
自分のところで条例を作り、自分のところの財源でしっかりやるというのはもちろんですけれども、国に「宇部市はやります」ときちんと申請して、金利の優遇策など国の制度を活用しています。
これは別に国のお墨付きが欲しいわけではなく、創業者にとってのメニューを増やしたいということです。
久保田:その通りです。
宇部市独自の創業支援策も、てんこ盛りです。毎年25件以上の創業を支援しようと決めています。
平成26年度から始めましたが、これまで創業したのは28件で、個人事業が20件、法人が8件です。
そのうち女性の創業は8件あります。創業にはお金が大変かかります。
宇部市としては、条例を施行した平成24年に、「ふるさと起業家支援基金」を併せて作りました。
基金を持っておくと、予算の有無にかかわらず支援金を安定的に出していけるんですね。
予算がないので今年はここまでしか支援金が交付できないということがないのです。
また、ネットワークの面で言えば、「うべ起業サポートネットワーク」を構築しています。
これは市内の高等教育機関や商工会議所あるいは商工会、金融機関のいわば「産・学・公・金」の地域ラウンドテーブルを作って創業希望者や創業後間もない事業者のニーズやシーズを汲み取っています。
バラバラの窓口を一本化してワンストップにしているというイメージです。
例えば銀行の窓口へ行っても、宇部市役所に来ても、このラウンドネットワークに入っているところであれば、どこへ行っても情報が一括して集まるようにしています。
「うちは金融だから金融のことしか分かりません」とか「役所の制度については役所へ行ってください」ということがありません。
久保田:小売業が増えてきています。
平成26年度で見ると、飲食や鮮魚、美容、ファッション、雑貨、ネイルサロン、エステ、肉、パン、イタリアンレストラン、洋菓子、健康食品などの小売りです。
建設業も結構あります。空き家が増えているということもあるのでしょうね。リフォームや解体もあります。
それから障害者支援、高齢者支援などの福祉もあります。平成26年度の創業28件のうち、小売業が6件、医療と美容が6件、サービス業が7件、飲食が5件、建設業が4件です。
一番多いのは、やはりサービス業です。宇部市は先ほども言いましたように、工業都市でありながら、就業人数でいったらサービス業が多いですね。
実際、医療・福祉の施設が集積しているということもあって、「都市の高齢者を地方に」という増田レポートの第二弾が出た際に、全国で条件の整った所が41都市選ばれ、宇部市もその中に含まれました。
CCRC日本版とも言われ、高齢者を引き受けるのに余裕のあるまちとして選ばれています。(第二回に続く)
(取材協力:宇部市長/久保田后子)
(編集:創業手帳編集部)