HOMMA Group 本間毅|ソニーや楽天を経てシリコンバレーで起業!スマートホームで未来の住空間を作りたい

創業手帳
※このインタビュー内容は2024年12月に行われた取材時点のものです。

これからは「グローバルにできるかどうか」-海外起業家だからこそ見える日本市場の変化

IoT技術を活用して、家電や住宅設備をコントロールする「スマートホーム」。GoogleやAmazonなども参入し、今後大きな成長が期待されています。こうした中、シリコンバレーで斬新なスマートホーム事業を立ち上げ、大きな注目を浴びているのがHOMMA Group株式会社です。

同社の創業者であり現在も代表取締役を務める本間毅さんは、日本で学生起業を経験。その後ソニーや楽天を経て、アメリカで起業されました。今回は本間さんが起業するまでのストーリーとあわせ、なぜ海外でスマートホーム事業を立ち上げたのか、今後どのように展開していくのかについて、創業手帳代表の大久保がインタビューしました。

本間 毅(ほんま たけし)
HOMMA Group株式会社 代表取締役
1974年鳥取県生まれ。中央大学在学中に、Web制作などを手がける事業で起業。後にYahoo!Japanに売却したピーアイエム株式会社の設立にも関わる。2003年よりソニーにて、インターネット系の新規事業の開発や電子書籍の事業戦略などを手がける。2012年、楽天の執行役員としてデジタルコンテンツのグローバル事業戦略を担当。2016年、アメリカ・シリコンバレーを拠点とするHOMMAを創業。

インタビュアー 大久保幸世
創業手帳 株式会社 代表取締役
大手ITベンチャー役員で、多くの起業家を見た中で「創業後に困ることが共通している」ことに気づき会社のガイドブック「創業手帳」を考案。現:創業手帳を創業。ユニークなビジネスモデルを成功させた。印刷版は累計250万部、月間のWEB訪問数は起業分野では日本一の100万人を超え、“起業コンシェルジェ“創業手帳アプリの開発や起業無料相談や、内閣府会社設立ワンストップ検討会の常任委員や大学での授業も行っている。毎日創業Tシャツの人としても話題に。 創業手帳 代表取締役 大久保幸世のプロフィールはこちら

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学生起業した会社はネットバブルがはじけ売却、その後ソニーへ入社


大久保:本間さんは大学生の時に一度起業されているそうですね。どのようなビジネスをしていたのでしょうか?

本間:実はもともと起業家になりたいと思っていたんです。大学1年生の時にちょうどインターネットが出始めて、起業とインターネットが結びついた感じですね。

ただ学生でビジネス経験もお金もないですし、あるのはMac1台だけ。できることは何だろうって考えた結果やはりウェブかなと思い、自分でウェブサイトのデザインを作っていました。ウェブサイトを作って、売り込みもして、営業スキルを身に着けていった感じです。

デザインは好きでしたので、仕事はとても楽しかったですね。ちょうど時代の流れに乗ってメディアで紹介されることも増え、その後50人ぐらいの会社になりました。外部からVCが入り、上場を目指そうみたいな話もあったんですよ。でも最後はネットバブルがはじけて会社を売却しました。

それとは別に、友人と一緒にウェブサービスの会社を作ったんです。この会社は、最終的にヤフージャパンへ売却しました。

大久保:今で言うイグジットですね。その後はどうされたのでしょうか?

本間中途採用でソニーに入りました。29歳の頃でしたね。ネット関連をまとめる部署ができたばかりで、そこに配属されました。これは当時ソニーの会長だった出井伸之さんが肝いりで作った部署でした。

当時のソニーはインターネット関連の事業もありましたが、一方でネットと関係ないものの面白い事業がたくさんあったんですよ。ソニープラザとか、銀座マキシムというフレンチレストランとか、化粧品会社や通販会社もありましたね。これらの会社は多くの顧客を持っていました。

これをインターネットでもっと広げられるし連携してバリューを高められるのでは、と出井さんがおっしゃって。僕はその事業戦略に関わりました。それが落ち着いたあとは、新しいインターネット事業をソニーの中で作るという、社内起業みたいなこともしていましたね。

出井さんは、当時から未来を見通すコンセプトを作っていらっしゃいました。今で言うスマホのような世界観があったと思います。当時のソニーがそれを実現できたかは別の話ですが、ビジョンそのものは素晴らしいと感じていました。

海外で日本企業の存在感の薄さに気づく。そんな中で楽天の海外展開に感動


大久保:その後楽天に入られたそうですが、どんなきっかけがあったのでしょうか。

本間ソニーの本社に5年いた後、カリフォルニアにソニーの駐在として赴任したんです。僕にとっては初めて海外に住む経験でした。

ソニーはアメリカでも知られている会社でしたが、海外に行ってみたら、日本のインターネット関連の会社はほとんどいないんです。中国や韓国、インドなどの企業が台頭する中、日本企業がこの存在感ではまずいなと感じました。

そんな時、楽天が英語を公用語にして売り上げの7割を海外から持ってくるという発表をしました。僕はこれを見て感動したんですよ。

そういう決断をした三木谷さんはすごいなと思って、とにかく話してみたくなりました。なんとかツテを使って、三木谷さんに30分くらいお話しする機会をいただきました。これがきっかけで楽天との縁ができ、1年後ぐらいに楽天へ入社したんです。

大久保:当時の楽天は、今とはまた違ったイメージでしたよね。

本間:そうですね。2012年くらいの楽天は海外の売り上げを増やすため、海外企業を買収していた時期です。

海外で売り上げを増やすと一言で言っても、実際はシステムも人も違うし、お金もかかる。楽天のやろうとしたことはすごく大きな挑戦だったと思います。またそれをやりきると言った三木谷さんのパワーは本当にすごかったです。

日本は少子高齢化が進み、マーケットがシュリンクしていく未来が見えているじゃないですか。そこに真面目に向き合ったことは、素晴らしいと思いました。

大久保:楽天では、どんなことをされていたのでしょうか?

本間:ずっとアメリカにいながら働きました。ちょうど「Kobo」というカナダの電子書籍の会社を買収したところで、最初はその立ち上げなどに関わりました。その後はデジタルコンテンツのグローバル戦略を担当して、最後はシリコンバレーで事業開発をやっていました。

楽天での仕事はとてもエキサイティングで、すごく勉強になりました。

アメリカの起業家を見て、スタートアップが世界を変えると感じた


大久保:まさに楽天の海外展開の中心にいたわけですね。その後どんな経緯で起業されたのでしょうか?

本間:楽天にいる間、アメリカの起業家や投資家の方と会う機会が増えました。そこで世の中をスタートアップが変えているなということをすごく感じたんです。僕が最初に起業した90年代後半のスタートアップとは全然違うなと気づきました。

あと僕の身内には建築家など建築関連の人が多くて、僕自身も住宅がすごく好きだったんです。そこから、自分がやってきた起業や海外生活、インターネットビジネスと建築をつなげたいと思うようになりました。

テクノロジーで住生活を変えられたら、人の役に立つし面白いかなと。当時そういうビジネスをしている人はアメリカにもいなかったので、自分でやろうと起業を決意しました。

大久保:海外で多くの起業家に直接会ったことが、大きな刺激になったわけですね。

本間:そうですね。アメリカでは起業家が身近な存在でした。ロールモデルとは言いませんが、たくさんの起業家を見ているうちに自分もやりたいという発想になっていきました。

アメリカには人がすごくいっぱいいて、僕が同じレベルになれるとはもちろん思いません。でも同じ人間ですから、きっとチャンスはあるだろうとも思ったんです。

大久保:日本に戻って起業することは考えなかったのでしょうか?

本間:日本に戻ることは全く考えませんでした。海外で活躍する日本人起業家、あるいは日本企業を増やしたいと思っていたので。自分がそうなれないにしても、それに役に立つことがしたかったんです。

大久保:外国で起業するとなると、いろいろな障害もありそうですよね。アメリカの起業で大変だったことはありましたか?

本間:アメリカに移り住んだという意味では、僕も移民です。ただアメリカの起業家にはわりと移民の人も多いんですよ。NVIDIAの創業者もそうです。ですからハンディがあるという感覚はなかったですね。他の人もきっと頑張ったんだろうなと思うし、英語にしても乗り越えられると思っていました。

あとアメリカの方が起業しやすい、ということもあると思います。日本だと、失敗しちゃいけないとかチャレンジしたら危ないとか言われることが多い。

でもアメリカは、大企業を辞めて起業することに抵抗がないですよね。別に気にしないというか。失敗しても路上に放り出されるわけでもない。再度起業する人もアメリカには多いんです。アメリカの基準で考えると、「意外と起業はできる」という根拠のない勇気みたいなものはありましたね。

自動化された全く新しいスマートホーム事業を日米で展開


大久保:現在手掛けているスマートホームについて、教えていただけますか?

本間HOMMAという会社は、未来の住生活を作りたいという思いで立ち上げた会社です。車関連は自動運転などいろいろなサービスが生まれているのに、住宅だけなぜ古いんだろう、というところからはじまりました。

テクノロジーで人の生活をより豊かに、健康で便利に、エコにしていけるものとして、スマートホームの開発と提供をしています。

Alexaやスマートフォンアプリなどを使って操作するのではなく、すべて自動化されているのが特徴です。住宅内に張り巡らされたセンサーが人の動きに合わせ、照明・空調・セキュリティなどを自動化しています。

日本でもアメリカでも、このシステムをマンションデベロッパーなど不動産業の方々にライセンスとして提供し、その方々のビジネスの価値を上げていくという事業です。

実は僕ら自身でも、小さな不動産デベロッパーをしているんですよ。自ら家を作ることで、やはり現場でどうシステムを設定するべきか、図面をもとにどこにどんなデバイスを置くべきか、ということがわかってきます。自ら家を作ることで、そういうノウハウを得ているわけです。

大久保:確かにスマホで住宅設備を操作するサービスはあっても、全て自動でコントロールしてくれるのは聞いたことがありません。

本間:そうですね。例えば照明で言うと、自動化のメリットは「人がいる時について人がいなくなると消える」というだけではないんです。

朝起きてから夜寝るまで、人のリズムに合う照明というものがあります。例えば寝る前は少し暗めで温かみのある色の照明が合うし、日中活動する時は明るめの照明が合うと言われています。これを僕らのシステムなら自動化できる。つまり家の中にいるだけで、昼はしっかり活動できて夜はしっかり眠れる、という快適な生活環境が作れるわけです。

大久保:行動データを取得できるメリットもあるのではないでしょうか?

本間:そうですね。現在はまだそこまでのビジネスにはなっていませんが、将来性はあると思います。もちろん個人情報などプライバシーに配慮する前提ですが、人が家の中でどう動くかというデータを集めていけば、さらにいい住空間を作れるはずです。

例えばデベロッパーがマンションを建てるとき、「最近は自宅で仕事する人が多いから仕事部屋を作ろう」ということも多いですよね。でもこれまでは、作ったあとの答え合わせはできませんでした。でも僕らの作ったスマートホームの仕組みを使えば、実際どの時間帯にどの部屋が一番よく使われているかといったことがわかるので、答え合わせができます。

大久保:なるほど。快適さとあわせて、光熱費の削減効果も期待できそうですね。

本間:おっしゃる通りです。例えば我々が手掛けた2LDKの物件で実験したところ、我々のシステムが1日で照明をオンオフしている回数は約300回でした。自動で照明をオフにできればつけっぱなしの時間を減らせるし、消し忘れもゼロになります。自動化によって照明にかかる電気代の約30%を削減できるというデータもあるんですよ。

大久保:全く新しいサービスだと思うのですが、これを広めるにはやはり時間がかかるのではないでしょうか。

本間:そうですね。そこは僕らのチャレンジだと考えています。特に日本の一般的なマンションは1部屋1照明という形が基本なので、昼と夜で照明を大きく変えにくい。でも欧米では1部屋に何か所も間接照明を置くことが多いので、アレンジしやすいんです。

そういう意味では、日本の照明に対する文化や考え方を変えていければ、もっと僕らのサービスに価値を感じていただけるはずです。

また僕らのスマートホームは工事が必要なので、後付けで簡単に設置できないという課題があります。もちろんその分、導入するメリットは大きいと思っています。ですから僕らのサービスの良さを広めるには、コツコツと努力していく必要があると感じています。

海外に出てみると、日本に対して違った見方が持てる


大久保:今後もやはりアメリカでの事業がメインですか?

本間今年から来年にかけては、日本市場を強化しようと考えています。大事なのは、グローバルポートフォリオを組めることだと思うんです。アメリカでも日本でもビジネスができる状況なら、「今はどこでやるべきか?」という判断ができますから。日本だけとかアメリカだけではなく、グローバルに展開できるかどうかが今後ますます重要になってくるのではないでしょうか。

大久保:本間さんは日本のマーケットをどのように捉えていますか?

本間:データを見ると、少子高齢化という傾向は進んでいますよね。ですから日本は市場として大きく成長することは期待できないと思います。また例えば半導体や自動車、家電といった産業では、日本の優位性がだんだんなくなってきています。

一方でインバウンドは好調で海外から多くの方が日本に来ているので、そういう意味ではマーケットが大きく変わってきています。こういったところは、今後も注視していきたいと思います。

大久保: 最後に、起業家に向けてメッセージをお願いします。

本間:僕は日本も素晴らしいと思っていますが、海外にいると日本に対して違った見方が持てるようになります。ですからぜひ海外にも視野を広げて、日本で行っている事業で海外に行けるか、可能性を検討してみて欲しいですね。

実際に海外へ行ったとしても行かなかったとしても、得るものは大きいと思います。自分の立ち位置を確認することにもなりますし。

ただ海外に出るなら、起業家が自ら海外に行く必要があります。アメリカに限らず、他人に任せてうまくいくほど海外展開は簡単ではありませんから。

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(取材協力: HOMMA Group株式会社 代表取締役 本間 毅
(編集: 創業手帳編集部)



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