トークナビ 樋田かおり|伝えるプロ「女子アナ」独自の視点を活かし、企業の広報活動を支援する
メディア関係者が本当に求めている情報とは?
経営に精一杯でついつい広報が後回しになっていたり、メディアに取り上げられる効果的なプレスリリースの出し方が分からないなど、「広報」について悩む企業も多いと思います。
この課題を解決するために、メディア関係者が求めている情報とは何かを熟知している現役アナウンサーが立ち上げた広報サービス「女子アナ広報室」が注目されています。
女子アナ広報室を運営する株式会社トークナビ代表の樋田かおりさんは、アナウンサーのセカンドキャリアを創るために起業されました。
今回の記事では、樋田さんの創業までの経緯や女子アナ広報室のサービスの魅力について創業手帳の大久保が聞きました。
株式会社トークナビ 代表取締役
2008年、日本テレビ系列青森放送にアナウンサーとして入社。
報道番組のお天気キャスターやニュースキャスター、7時間生放送のラジオパーソナリティなどテレビ・ラジオの放送現場を経験。
28歳で独立し1年後、株式会社トークナビを設立。リモートワークを活用し、研修講師業、広報代行業、司会業を行う。
会社設立のきっかけである「結婚や出産で離職した女子アナのセカンドキャリアをつくること」に尽力し、全国各地に女子アナを約70名抱える、類を見ないユニークな企業に成長させた。
創業手帳 株式会社 代表取締役
大手ITベンチャー役員で、多くの起業家を見た中で「創業後に困ることが共通している」ことに気づき会社のガイドブック「創業手帳」を考案。現:創業手帳を創業。ユニークなビジネスモデルを成功させた。印刷版は累計250万部、月間のWEB訪問数は起業分野では日本一の100万人を超え、“起業コンシェルジェ“創業手帳アプリの開発や起業無料相談や、内閣府会社設立ワンストップ検討会の常任委員や大学での授業も行っている。毎日創業Tシャツの人としても話題に。 創業手帳 代表取締役 大久保幸世のプロフィールはこちら
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この記事の目次
声のコンプレックスを解消できたことに感動して女子アナを目指す
大久保:まずは、 アナウンサーを目指そうと思ったキッカケをお伺いできますか?
樋田:私は岐阜で生まれ育ったのですが、小学生時代は人前に立つことが嫌いでした。「樋田さんの声が小さくて聞こえません」と言われていたため、話すことに対して苦手意識を持っていました。だから、発表をしなければいけないときは本当に憂鬱でしたね。
声に対するコンプレックスを抱えていたので、訓練を受けることにしました。訓練を通じて、大きな声が出せるようになったんです。先生から「声は作り変えられる」「声の出し方で人を感動させられて笑顔にもできる」ことを教えてもらい驚きました。
訓練を通して、大きな声を出せるようになり、コンプレックスが解消できたおかげで性格も明るくなりました。とても嬉しくて、声を使った仕事をしたいと思うようになったんです。そして、声のプロであるアナウンサーになりたいと夢を抱くようになりました。
大久保:アナウンサーの夢を叶えるために、どのような取り組みをしましたか?
樋田:はい。高校在学時は放送部に所属して、NHK杯全国高校放送コンテスト岐阜県大会に出場しました。そのコンテストでは、原稿を自分で書いて、どのように伝えるかを考えるんです。
また「声の大きさ」「抑揚」「間の取り方」など表現力が問われて、さまざまなな項目で高得点を取らなくてはいけない大会で、優勝することができました。それ以外にも、高校野球大会でウグイス嬢を務めたり、大学在学時にはキャラクターイベントの司会のアルバイトをしたりと経験を積みました。
大久保:アナウンサーは狭き門ですが、夢を叶えられるという自信はありましたか?
樋田:自信はなかったですが、16歳の頃に話し方にはルールがあるとを知ったことが力になりました。
アナウンサーは狭き門と聞きますが、難関大学の合格を目指すように、正しい訓練を行えば夢は叶うだろうなと思っていましたね。
大久保:アナウンサーの就活は大変でしたか?
樋田:はい。30社ぐらいは履歴書を送ったのですが、書類が通過した数は少なかったです。アナウンサーを志す人は全国の放送局に履歴書を送って就職活動をするため、面接の場で何度も一緒になった人がいました。各地で顔を合わすうちに友達になりましたね。アナウンサーの就活は大変で苦しいんですけど、夢を叶えたいという人が集まっていて楽しくて、すぐに意気投合しました。
大久保:その結果、アナウンサーとして就職できたんですよね。本当に夢を叶えてすごいですね。
女子アナの観点からメディアを学ぶ
大久保:青森放送に内定をもらって引っ越しをされたのですか?
樋田:はい。アナウンサーの仕事がしたかったので、青森に飛んで行きました。
大久保:青森放送などの地方局アナウンサーの仕事の魅力は何だと思いますか?
樋田:地方局は即戦力採用と言われていて、入社1年目からレギュラー番組を何本も持たせてもらえることでしょうか。私も入社1年目でテレビ番組とラジオ番組のレギュラーを何本か持たせて頂いて、11時に出社して日が暮れる19時まで、ラジオとTVの生放送に出るという慌ただしい生活を送っていました。新人アナウンサーに仕事を振ってくれるのは、本当に嬉しかったですね。
大久保:アナウンサーとして働いて大変だったことはありますか?
樋田:地方局では、常にそのエリアに関するネタを探して報道しなければいけません。インターネットやTwitterで流行っているネタを探したりするんですが、毎日生放送をすると本当にネタ切れになるんですよね。そのため、1回取材させてもらった企業様に「御社で新しい取り組みを何か始めていませんか?」と尋ねて、再度取材させてもらうことがありました。
地方局は少数精鋭で番組のディレクターも忙しくしていたので、アナウンサーがネタを探して提案するということもありました。このような経験を通じて、TVやラジオのメディア関係者が好む情報とは何かを学ぶことができました。
「声や話し方で未来を変えられる」という感動を提供するために起業
大久保:アナウンサーをやめて起業された背景を聞かせてもらえますか?
樋田:もともとは起業を考えておらず、キャリアアップしたくてフリーアナウンサーを目指しました。当時、有名なフリーアナウンサーも何人か出てきているときで、キャリアアップでフリーアナウンサーになるという方が多かったんですよ。
その流れに乗ろうかなと思ったんですが、私は現実的に物事を考えるタイプで、フリーアナウンサーで活躍するためにはタレント性が必要だと思ったんです。そのため、自分はフリーアナウンサーには向いていないなと感じましたね。ただ、声に関する仕事をしたいと思っていたため、起業するためのサービスを考え出しました。
大久保:最初のサービスは、トークナビゲーションですよね?
樋田:そうなんです。声でコンプレックスが解消できたので、その感動をお客様にも体験してもらいたいと「話し方教室」を開きました。最初は個人向けサービスを提供していたのですが、ご要望もあり法人向けサービスに切り替えたんです。
法人向けサービスでは、営業担当者や役職者向けに話し方の研修を行っていました。法人向けサービスを提供していく中で、勉強熱心な経営者の方のスピーチ力がグングン伸びていくのが印象的でした。また経営者の方のスピーチトレーニングは需要があったため、書籍を出しました。
大久保:経営者はプレゼン力が重要ですもんね。
樋田:経営者の方に指導をする中で、声や話し方でスタートアップのピッチコンテストの結果が変わるなどの反響を頂くことがありました。とても嬉しかったですね。
やはり、声や話し方で未来が大きく変わったら嬉しいものだと思うのですが「話し方が上手になったから、テレビに出てみたいな~」「誰か取り上げてくれないかな~」など経営者の方から言われることがありました。そんな時、過去にテレビ局で働いてきたので、メディアのつながりは沢山あることに気づいたんです。
その人脈を活かして、企業とメディアをつなげたら経営者のお役に立てそうだと思って、2019年に広報サービスを立ち上げました。
メディア関係者に届く広報サービス「女子アナ広報室」が誕生
大久保:経営者とメディアをつないでいく中で誕生した広報サービス「女子アナ広報室」のサービス内容を教えてもらえますか?
樋田:はい。女子アナ広報室は広報に関する様々なサービスを展開していますが、その中の1つがメディアに刺さる切り口を大切にしたプレスリリースや企画リリースの作成代行サービスです。
企業の広報担当者が配信するプレスリリースは、商品やサービスについてのアピールポイントが自社目線で書かれがちです。すると、広報ではなく宣伝になってしまうことも多いため、プレスリリースを配信してもメディアに取り上げられにくんです。私たちは女子アナ時代に培ったメディア・報道陣が求めている情報を盛り込んだプレスリリースを書けることが強みです。
大久保:メディアに取り上げられるために、プレスリリースを書く時のポイントなどがありますか?
樋田:新商品やサービスを出すとき、単にPR視点のプレスリリースとなりがちですが、「社会性」を盛り込むとメディアとしてより取り上げやすくなります。例えば、社会としての課題感や統計データなどを入れるといいと思います。
また、プレスリリースには、たくさんの情報を入れがちですが「最新情報」について分かりやすく意識して書くのもポイントです。
大久保:コンサルタントとはどのような違いがあるのですか?
樋田:弊社ではチームを構築してメディアアプローチを行います。1人の広報担当にメディアアプローチを依頼すると、誰が担当するかでサービスの品質に差が出てしまいます。また、どのような企画が良いかアイデアが生まれません。このような課題を、弊社はチーム体制で運営することで解決しています。
お客様やチームメンバーとブレストしてネタを出していくのですが、プレスリリースを出してTVや報道陣に取り上げられた実績を数多く持っています。1社あたり2件/月、メディアに取り上げてもらえていますね。
大久保:1社あたり2件/月は、すごい実績ですね!メディアや報道陣からお問い合わせがあったとき、緊張して対応に困ってしまいそうです。
樋田:そのような場合、弊社にメディア対応をお任せいただくことも可能です。TVやラジオを熟知している私たちに、不安なことを相談して頂ければと思います。
大久保:プレスリリースの作成やメディアアプローチ以外にも依頼できることはあるんですか?
樋田:はい。広報活動に関することは幅広くご相談ください。例えば、プレスリリースやイベント開催時に動画コンテンツが欲しいというとき、動画の制作代行を弊社にお任せいただけます。女子アナが在籍しているため、ナレーション付きの動画が得意です。
また、セミナーやイベントの司会などもお任せください。企業様の広報として女子アナを起用することをイメージして頂ければ、わかりやすいかなと思います。
大久保:広報活動に取り組むとどのような効果が見込めますか?
樋田:メディアや報道陣が好む情報は、その地方ならではの話や社会の課題だったりします。社会の課題の解決に取り組む企業様が取り上げられやすいですね。メディアに取り上げられて会社のビジョンや魅力を広めてもらえれば、「人材採用」「資金調達」「販売促進」「パートナシップ強化」など、さまざまな効果が得られます。
大久保:とても興味が湧きました。ちなみに、樋田さんが取り上げたくなる経営者は、どのような社長ですか?
樋田:そうですね、やはりストーリーを持っている経営者様でしょうか?あとは、挑戦し続けて、壁にぶつかっても乗り越える経営者様ですかね。そういう方は、世代や性別を問わずに魅力的に感じますね。あとは、紆余曲折もお話してくださる方が、多くの人に興味・関心がもたれやすいと思っています。
自分と向き合い、自分を知ることが起業の近道
大久保:活躍されている樋田さんから、起業を考えている方向けにアドバイスをもらえますか?
樋田:そうですね。私は声や話し方の訓練を受けて、自分のコンプレックスを解消できたことに感動して声を使った仕事を選びましたが、やっぱり熱意を持って取り組めることを探すことが大事だと思いますね。自分と向き合い、自分を知ることが起業の近道だと思います。
大久保:なるほど。自分に合う仕事を見つけることが大事なんですね。ちなみに、起業して大変だなと思うことはありますか?
樋田:起業して大変だなと思うことは、事業拡大と組織づくりは全く別物だなということです。経営者は事業計画を立てて目標を達成していくのが当たり前という考え方ですが、従業員の目標は、社会とつながりたいなど別のところにある人もいるわけです。
会社としての目標達成をしていくために、どのように従業員を引っ張っていくかが経営者には試されているなと感じることがありました。
大久保:現在、70名のメンバーがいるそうですが、事業拡大して良かったですか?
樋田:はい。仲間と何か一緒にやるということは、とても良いことだと思います。1人では断らなければいけないことも、仲間の力を借りれば対応できることがあります。
また、メディアアプローチの際のアイデア出しは、複数人でやるほどアイデアが出てきますからね。どんな職業でも当てはまると思うんですけど、話し合える仲間によって、いろいろなアイデアが出てくるので、会社を経営する上で重要だと思っています。
現在は、アナウンサー出身者だけでなく、アナウンサーを目指していた人達とも一緒に働いています。未来を見据えて果敢に取り組んでいく熱意を持った人は素敵だと話しましたが、女子アナの試験を受験する熱意を持っていた彼女たちだからチーム力を発揮できているのだと思います。熱中できるものに取り組めば、共感できる仲間に恵まれやすくなるんでしょうね。
『社長の伝え方には会社を変える力がある』 樋田かおり 青春出版社
企業の顔である社長は、話し方が9割です! 数々のベンチャー企業やスタートアップ企業、老舗会社社長の“話し方”をマンツーマン指導している現役女子アナたちは、社長の何を変えたのか? 売上好調、社員が伸びる会社の「聴覚情報」の整え方とは? 伝説のオンライン講座『現役女子アナ直伝! プレゼンテーション上達法』講師が教える、この時代に勝ち抜く会社の魅せ方、聞かせ方。
大久保の感想
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(取材協力:
株式会社トークナビ 代表取締役 樋田かおり)
(編集: 創業手帳編集部)
「話し方」は生まれつきのもの、変えられない天性のものと思いがちですが、樋田さん自身が元々話すのが苦手だったのが話す職業をしているように、練習でかなり後天的に鍛えられそうです。
声(トーン・抑揚)、話し方(適正なスピード)、内容(整理)でかなり印象が変えられるということです。
「話し方」は起業家の中でも汎用性が圧倒的にあるスキルなので一度見直してみましょう。