日本政策金融公庫の融資を受けたい!事前に知っておきたい金利を解説

創業手帳

日本政策金融公庫の金利は制度・目的・融資期間・担保の有無などで異なる


起業家・経営者が創業や事業のために資金調達を行う場合、日本政策金融公庫の融資制度を活用するという選択肢があります。
日本政策金融公庫の場合、金利は融資制度の種類や目的、融資期間、担保の有無などで変わってくるので、制度を十分に理解して融資を申し込むことが大切です。

そこで今回は、日本政策金融公庫で利用できる融資制度や金利について解説します。創業時の資金調達の利用におすすめの理由もご紹介するので、ぜひ参考にしてください。

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日本政策金融公庫とは?


日本政策金融公庫は、個人事業主や小規模事業者、中小企業に向けて様々な融資を行っている金融機関です。
2008年に行われた行政改革によって、「国民生活金融公庫」・「中小企業金融公庫」・「農林産業金融公庫」・「国際協力銀行」の4つの金融機関が統合され、新しい政府系金融機関として誕生しました。

日本政策金融公庫の政府系金融機関としての役割は以下の3つです。

  • セーフティネット機能
  • 日本経済の成長や発展への貢献
  • 地域活性化への貢献

自然災害や経済環境の変化などの影響で業績が一時的に悪化した場合、日本政策金融公庫は柔軟な対応によりセーフティネット機能を果たしてくれます。
また、融資を通じて新規事業の創出、事業再生、海外展開など様々なニーズに対応し、日本経済の成長と発展に貢献することも大切な使命です。
民間金融機関とも提携しており、地域プロジェクトに参画して地域の活性化にも貢献しています。

融資以外にも経営課題を解消するコンサルティングや財務診断、情報提供、商談会や関係団体などと連携して個人事業主や企業に向けて幅広く支援を行っています。

日本政策金融公庫について、詳しくはこちらの記事を>>
日本政策金融公庫とは?民間金融機関との違い・サービス内容を徹底解説!

日本政策金融公庫の融資制度


日本政策金融公庫が提供する融資制度は、以下3つの事業分野に分類されています。

1.国民生活事業

国民生活事業では、個人事業主やフリーランス、小規模事業者に向けて、小口融資を主体に経営支援を行っています。
事業を営んでいるほとんどの人が融資を利用することが可能です。また、担保なしの融資を推進しており、無担保融資の割合は90%以上の実績があります。

融資制度には、新規創業や新規事業の支援からセーフティネット融資など多種多様なので、事業規模や状況に合わせて選択可能です。
高校生や大学生、専門学校生がいる方に向けて国の教育ローンも提供しています。

2.中小企業事業

中小企業事業では、中小企業に向けて長期固定金利融資を提供しています。
長期固定金利であるため借入れの時点から完済まで金利が変わらず、返済計画が立てやすいことがメリットです。

製造業を中心に幅広い業種の中小企業が中小企業事業の融資制度を利用しています。
融資先数6.2万のうちの約8割が従業員20人以下、さらに約9割が資本金1,000万円以上の企業です。

中小企業事業の融資制度は、国民生活事業とは融資限度額や融資対象が異なります。申し込み可能な業種や資本金・従業員が定められているので注意してください。

3.農林水産事業

農林水産事業では、農林漁業者や食品産業事業者に向けて事業資金の融資を行っています。
農業融資や森林融資など政策展開に従って資金の提供を行い、経営改善や開業などをサポートしています。

農林水産業や食品産業は、投下資本の回収に時間がかかりやすい、天候の影響を受けやすく収益が不安定になりやすいことが課題です。
そのリスクを軽減し、経営の改善や安定化を図るために、日本政策金融では長期融資を主体としています。

また、自然災害や家畜の伝染病、農産物の価格暴落などが起きて経営が悪化した時のセーフティネット機能として融資を受けることも可能です。

創業前後に役立つ日本政策金融公庫の融資制度と金利


日本政策金融公庫では、様々な融資制度を利用できますが、創業前後では具体的にどのような融資を受けられるのでしょうか。
ここで、多くの事業者が利用できる国民生活事業の金融制度と金利についてご紹介します。

1.一般貸付

資金用途 運転資金 設備資金 特定設備資金
融資限度額 4,800万円 7,200万円
返済期間 5年以内(最大7年以内)
※据置期間1年以内
10年以内
※据置期間2年以内
20年以内
※据置期間2年以内
金利(年利) 基準利率
・担保なし:1.93~2.90%
・担保あり:0.98~2.55%
※2023年4月3日時点の年利
担保・保証人の有無 要相談

一般貸付は、運転資金や設備資金の確保に利用できる融資制度で、基本的にどの業種の中小企業も申し込めます。

2.新規開業資金

融資対象者 新規事業を始める方、または事業開始後から約7年以内の方
資金用途 新規事業の開始、または開始後に必要となる設備資金・運転資金
融資限度額 7,200万円(うち運転資金は4,800万円)
返済期間 設備資金:20年以内(据置期間2年以内)
運転資金:7年以内(据置期間2年以内)
金利(年利) 基本的に基準利率、条件によって特別利率(A~D)が適用
・担保なし:1.93~2.90%
・担保あり:0.98~2.55%
※2023年4月3日時点の年利
担保・保証人の有無 要相談

新規事業資金は、新しく事業を開始する方や事業を開始して約7年以内の方が利用できる融資制度です。
女性や若者、シニアでの開業から、中小会計を適用する方、廃業歴がある上で創業の再チャレンジする方など幅広く利用できます。

金利は基本的に基準年利が適用され、返済期間や担保の有無によって0.98~2.90%内で決定されます。
ただし、一定の条件に該当する場合の融資では、特別年利A・B・C・Dのいずれかが適用され、担保の有無によって0.33~2.50%内で変動します。

3.女性、若者/シニア起業家支援資金

融資対象者 新規事業を始める、または事業開始後から約7年以内のうち、女性または35歳未満の若者か55歳以上のシニアの方
融資用途 新規事業の開始、または開始後に必要となる設備資金・運転資金(前事業の債務返済の資金も含む)
融資限度額 7,200万円(うち運転資金は4,800万円)
返済期間 設設備資金:20年以内(据置期間2年以内)
運転資金:7年以内(据置期間2年以内
金利(年利) ■女性の方、35歳未満または55歳以上の方
・特別利率A:担保なし1.53~2.50%、担保あり0.58~2.15%

■技術・ノウハウなどに新規性がある方
・特別利率A:担保なし1.53~2.50%、担保あり0.58~2.15%
・特別利率B:担保なし1.28~2.25%、担保あり0.50~1.90%
・特別利率C:担保なし1.03~2.00%、担保あり0.45~1.65%
・特別利率D:担保なし1.28~1.95%、担保あり0.33~1.60%

■地方創生推進交付金を活用した企業支援金の交付決定を受けて新事業を始める方
・特別利率B:担保なし1.28~2.25%、担保あり0.50~1.90%

■地方創生推進交付金を活用した企業支援金・移住支援金の両方の交付決定を受けて新事業を始める方
・特別利率C:担保なし1.03~2.00%、担保あり0.45~1.65%
※いずれも土地にかかる資金は基準利率(担保なし1.93~2.90%、担保あり0.98~2.55%)を適用
※2023年4月3日時点の年利

担保・保証人の有無 要相談

「女性、若者/シニア起業家支援資金」は、新規開業資金の一種です。こちらは、女性や35歳未満の若者、55歳以上のシニアを対象としています。
資金の使い道や融資限度額、返済期間は新規開業資金と変わりません。

4.再挑戦支援資金

融資対象者 新規事業を始める、または事業開始後から約7年以内のうち、以下の条件に当てはまる方
・廃業歴などを有する個人または経営者が営む法人であること
・廃業時の負債が新事業に影響を与えない程度に整理される見込みがあること
・廃業の理由・事情がやむを得ないものであること
融資用途 新規事業の開始、または開始後に必要となる設備資金・運転資金(前事業の債務返済の資金も含む)
融資限度額 7,200万円(うち運転資金は4,800万円)
返済期間 設備資金:20年以内(据置期間2年以内)
運転資金:15年以内(据置期間2年以内)
金利(年利) 基本的に以下の基準利率、条件によって特別利率(A~D)が適用
・担保なし:1.93~2.90%
・担保あり:0.98~2.55%
※2023年4月3日時点の年利
担保・保証人の有無 要相談

再挑戦支援資金は、新規開業資金の一種です。
こちらは、廃業歴のある個人事業主や経営者を対象に、再度新規事業を行うために設備資金や運転資金を調達したい時に利用できます。
また、融資資金には前事業の債務返済に充てる資金も含まれています。

金利は、基本的に基準利率が適用されて、返済期間や担保の有無で0.98~2.90%内で変動する仕組みです。
ただし、以下の条件に該当する場合は、各特別利率が適用されます。

特別利率A

特別利率Aの場合、担保なしの融資で1.53~2.50%、担保ありの融資で0.58~2.15%の年利が適用されます。特別利率Aに該当する条件は以下のとおりです。

  • 女性・35歳未満の若者・55歳以上のシニア
  • 特定海外起業家で新事業を開始する方
  • 創業塾や創業セミナーなどを受けて新事業を開始する方(35歳未満の方は特別利率D)
  • 「中小企業の会計に関する基本要領」または「中小企業の会計に関する指針」に適用・予定する方で、事業計画書を策定し、認定経営革新等支援機関に指導・助言を受けている
  • 地域おこし協力隊の任期が終了し、活動地域で事業を開始する方
  • Uターンなどで新事業を開始する方(過疎地域で事業を開始する時は特別利率B)

特別利率B

特別利率Bの場合、担保なしの融資で1.28~2.25%、担保ありの融資で0.50~1.90%の年利が適用されます。
地方創生推進交付金を活用した起業支援金を受けて、新事業を開始する方が対象です。

特別利率C

特別利率Cの場合、担保なしの融資で1.03~2.00%、担保ありの融資で0.45~1.65%の年利が適用されます。
こちらの金利は、地方創生推進交付金を活用した起業支援金と移住支援金の両方の交付を受け、新規事業を始める方が対象です。

特別利率D

特別利率Dの場合、担保なしの融資で1.28~1.95%、担保ありの融資で0.33~1.60%の年利が適用されます。対象となるのは、以下のとおりです。

  • 賛助会員を除いた日本ベンチャーキャピタル協会の会員など
  • 中小企業基盤整備機構や産業革新投資機構が出資する投資事業有限責任組合から融資を受けている、または見込まれている方

特別利率A・B・C・D

技術・ノウハウなどの新規性がみられる方は、特別利率A・B・C・Dのいずれかが適用されます。
技術・ノウハウなどの新規性がみられる方というのは、以下の事業を行う場合が対象です。

  • ほかの企業が利用していない知的財産権に関する技術を利用した事業
  • エンジェル税制の一定要件を満たした新規中小企業者が行う事業
  • 国の技術ニーズに関するフィージビリティスタディ調査などを踏まえて、研究開発に取り組む事業
  • J-StartupプログラムやJ-Startup地域版プログラムも選定されていて、取り組む研究開発やその事業化に関する事業(一定要件を満たさない場合は基準利率が適用)

5.経営環境変化対応資金

融資対象者 社会的・経済的環境の変化など外的要因によって一時的に業績が悪化しており、中長期的に回復・発展が見込まれる方
融資用途 企業維持のために緊急で必要となる設備資金・経営基盤の強化を図るために運転資金
融資限度額 4,800万円
返済期間 設備資金:15年以内(据置期間3年以内)
運転資金:8年以内(据置期間3年以内)
金利(年利) 基本的に以下の基準利率、一定要件で特別利率Qが適用
・担保なし:1.93~2.90%
・担保あり:0.98~2.55%
※2023年4月3日時点の年利
担保・保証人の有無 要相談

経営環境変化対応資金は、社会的や経済的環境の変化で一時的に業績が下がってしまい、回復の見込みがある企業を対象に利用できるセーフティネット貸付です。
融資対象には、直近の決算期の売上高が5%以上減少している、直近3カ月の売上高が5%以上減少・今後も減少する見込みがあるなど、特定の要件を満たしていることが条件となっているので注意してください。

ただし、一定の条件を満たしている場合は特別利率Qが適用される場合があります。特別利率Qの年利は、担保なしで1.53~2.20%、担保ありで0.58~1.85%です。

6.取引企業倒産対応資金

融資対象者 取引企業や関連会社の倒産で経営に支障が出ている方
融資用途 売掛債権の回収困難や売上げ減少、倒産の影響により必要となる運転資金
融資限度額 別枠3,000万円
返済期間 8年以内(据置期間3年以内)
金利 基準利率
・担保なし:1.93~2.90%
・担保あり:0.98~2.55%
※2023年4月3日時点の年利
担保・保証人の有無 要相談

取引企業倒産対応資金は、取引企業や関連企業が倒産したことで売掛金債権の回収が困難になった、売上げや業績が低下したなど、経営に支障をきたしている場合に利用できるセーフティネット貸付です。
融資された資金は、運転資金に充てられます。

7.マル経融資(小規模事業者経営改善資金)

融資対象者 商工会・商工会議所・都道府県商工会連合会の経営指導を受ける小規模の商工業者で、商工会・商工会議所などの長の推薦を受けている方
融資用途 経営改善のための設備資金・運転資金
融資限度額 2,000万円
返済期間 設備資金:10年以内(据置期間2年以内)
運転資金:7年以内(据置期間1年以内)
金利(年利) 特別利率F:1.08%
※2023年4月3日時点の年利
担保・保証人の有無 無担保・無保証

マル経融資は、商工会や商工会議所などの経営指導を受ける小規模の商工業者を対象に無担保・無保証人で利用できる融資です。

創業時に融資を受けるなら日本政策金融公庫がおすすめ!


創業時の融資に日本政策金融公庫の利用がおすすめできるのは、様々なメリットを受けられるからです。そのメリットは以下のとおりです。

1.銀行より創業時の融資に前向き

日本政策金融公庫の融資をおすすめする大きな理由は、創業時でも前向きに融資をしてくれる可能性があるからです。
営利の追求が前提の金融機関は貸倒れのリスクを避けるために、企業側の実績や財務状況、信用を重視しています。
創業時は実績が少なく、収益も安定していないことから、一般的な銀行は融資に躊躇する傾向があります。

しかし、日本政策金融公庫では、中小企業経営強化資金など、新規事業の開始や創業時でも借りやすい融資制度を用意している点が特徴です。
創業時で売上げや利益などの実績がない段階でも事業資金の調達ができるので、幸先良いスタートを切ることができます。

2.無担保・無保証でも借りやすい

一般的な銀行では、無担保・無保証で融資を受けられるケースは少なくありません。一方、日本政策金融公庫では無担保・無保証で融資を受けられるものがあります。
設備資金や運用資金は高額な融資になりやすいので、担保・保証人を設けるのが厳しい場合も安心です。

ただし、担保を提供したほうが、適用される金利は下がります。少しでも低い金利で借入れを受けたい時は、担保の提供を検討してみてください。

3.固定金利に設定されている

日本政策金融公庫では、固定金利が適用されることもメリットです。固定金利の場合、完済まで借入れ時の金利が適用されます。
金利がずっと変わらないので、返済計画を立てやすいことが大きなメリットです。

一般的な銀行では、金利の動向次第で利率が変化する変動金利を採用しているケースが多くあり、変動金利の場合、金利負担を予測するのは困難な点がデメリットといえます。

創業時点では、資金に余裕がない場合も少なくないため、市場の金利動向に流されない固定金利ならしっかりと返済計画を立てられ、経営を早期に安定化させられるメリットに期待できます。

4.ほかの金融機関から融資が受けやすくなる

日本政策金融公庫から融資を受けると、今後ほかの金融機関からの融資が受けやすくなる可能性が高まります。
日本政策金融公庫は、起業家や中小企業に向けて積極的な融資を行っていますが、財源が税金からであるため誰に対しても融資を提供できるわけではありません。
融資は厳しい審査をクリアした場合に提供されます。

そのため、日本政策金融公庫から融資を受けた実績は、一般の銀行にとって信用に値する実績と見なされます。
ほかの金融機関からの融資を受けたい場合は、まず日本政策金融公庫の融資で実績を作るところから始めてみましょう。

まとめ

個人事業主や中小企業に向けて積極的に借入れを行っている日本政策金融公庫は、創業時の資金調達におすすめの機関です。
ただし、日本政策金融公庫の金利は融資制度や条件によって異なり、さらに特別利率も存在するので少し複雑です。
自分はどの融資を利用できるのか、適用される金利は何かを知りたい方は、お近くにある日本政策金融公庫の支店に問い合わせてみてください。

大久保写真創業手帳 創業者・大久保の解説「日本政策金融公庫・融資のポイント」

創業手帳の創業者・大久保です。
実際に公庫をはじめほとんどの資金調達を自ら実践し、アドバイスも多くしてきた経験から解説しますね。

まず起業時の融資は基本的に

1・公庫 
2・制度融資(地方自治体+保証協会+地域の金融機関)

の2つしかないと思ったほうが良いです。
東京では独自の創業サポート融資がありますが全国一律でいうとこの2つになります。

意外に便利なのが制度融資に比べると1つの金融機関で済むので、関係者が3つある制度融資に比べると融資が早いという特徴があります。
起業した時の基軸になる資金調達として必ず押さえておきましょう。

また、融資制度では、認定経営革新等支援機関、簡単に言うと税理士・会計士が多いですが、そういった専門家に支援してもらうことで優遇される、通過率が高くなる制度があり、押さえておいたほうが良いです。

また、決算直前は通りにくいタイミングで、決算・納税完了を待ちましょうと言われてしまうケースが多いです。
つまり決算前の1,2ヶ月、決算後2ヶ月の納税・株主総会前は、融資が動きにくいシーズンです。
そのため決算前にかからないように、早めに資金調達を済ませておいたほうが良いです。

創業系の融資はなるべく早めに資料作成に着手して完成度を上げておくことをおすすめします。
創業手帳では、経験やアドバイスを元に、融資ガイドも無償で差し上げているので、よければ請求してみてくださいね。



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(編集:創業手帳編集部)

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