インゲージ 和田哲也|世界を通じて感じたコミュニケーションの重要性と問い合わせ対応の課題
企業とお客様を繋ぐ顧客対応クラウド「Re:lation」とは?導入社数4,000社超のサービスの需要
現代、凄まじい進化を遂げるコミュニケーションサービス。LINE、Twitter、Facebookなど様々なソーシャルネットワークサービスが普及・拡大しています。
しかし、人をつなぐサービスが進化をしても昔から変わらず大事なのがコミュニケーション。企業と消費者のコミュニケーションも同様で、問い合わせに対してスムーズな返答がなければ、消費者は不便さを感じることでしょう。
こうした企業と人とのコミュニケーションをより円滑に進めようと立ち上がったのがインゲージが提供する顧客対応クラウド「Re:lation(リレーション)」です。
今回は代表取締役CEOの和田さんの起業までの経緯やアメリカ駐在時に感じたコミュニケーションの問題点と解決法について、創業手帳代表の大久保がインタビューしました。
株式会社 インゲージ 代表取締役CEO
大手IT企業2社にて21年間勤務。ソフトウェア開発者としてキャリアを始め、開発PLや開発部長、米国IT企業の取締役を務める。アメリカでは約10年間勤務。帰国後ITベンチャーにて日本発アメリカ向けBtoBクラウドサービスを成功させた後、2014年1月に(株)インゲージを起業。プライベートでは3男1女の父。長男はギネス世界記録保有者。大阪生まれ大阪育ち。
創業手帳 株式会社 代表取締役
大手ITベンチャー役員で、多くの起業家を見た中で「創業後に困ることが共通している」ことに気づき会社のガイドブック「創業手帳」を考案。現:創業手帳を創業。ユニークなビジネスモデルを成功させた。印刷版は累計250万部、月間のWEB訪問数は起業分野では日本一の100万人を超え、“起業コンシェルジェ“創業手帳アプリの開発や起業無料相談や、内閣府会社設立ワンストップ検討会の常任委員や大学での授業も行っている。毎日創業Tシャツの人としても話題に。 創業手帳 代表取締役 大久保幸世のプロフィールはこちら
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この記事の目次
世界中の人と会話がしたい!コミュニケーションの魅力に憑りつかれた若き時代
大久保:まずはご経歴を伺えればと思います。
和田:大学時代はゲーム開発事業に関わりたい想いが強く、大学卒業後は大手ゲーム会社に就職し、アーケードゲーム機の開発に従事してきました。
入社したのが1990年で、そこから約8年間勤め、開発のプロジェクトリーダーも経験しました。当時のゲーム開発は、ゲームセンターに設置される業務用アーケードゲーム機開発が花形部門。そこに配属された私は、最先端のハードウェアを用いて人々に熱狂されるゲームを作るため日々ゲーム開発に熱中していました。
どうすれば「わかりやすい」「面白い」ゲームを作ることができるのか考え続けていましたね。一方で、社会に出るといろんな人の考えがあることに気づき、世界中の人と会話をして視野を広げたいという想いが出てきました。
学生時代は交流できる世代が限られているからか、似たような価値観を持ってる人との交流がほとんどでしたが、社会に出ていろんな人と接する中で「価値観って人それぞれなんだな」と発見に近い感動を思えました。
それがとても衝撃的で「これまではなんて視野が狭かったんだろう」と思いました。と同時に、たくさんの日本人と話すことでこれだけ視野が広がるのを感じたので、もしも世界中の人と話すことができたらどれだけ視野が広がるのだろうかと思うようになりました。
大久保:たくさんの人と交流して会話がしたい、素敵な目標ですね! 海外の方とコミュニケーションを取る上で苦労したことはありますか?
和田:世界中の人と会話をするにはまず英語を覚えなければと思いましたが、私自身英語が苦手で大学受験のときも英語から逃げるように理系科目を選んでいたくらいでした(笑)。
ですが、人って不思議なもので苦手意識よりも世界中の人と会話がしたいという想いが勝り、社会人になってから人が変わったように英語の勉強を始めました。
当時は仕事が忙しく語学学校へ行く余裕もありませんでしたから、 NHKのテレビ英会話で勉強していました。
また、通勤時間に電車やホームで外国人の方を見かけると思い切って話かけるというのを繰り返していました。
当時はまだ携帯電話もなかったので外国人の方も暇だったのか気さくに相手をしてくれて、徐々に英語の自信もついてきました。そんな取り組みが会社でも知られるようになり、アメリカ・シカゴでの仕事に声をかけてもらうことができました。
シカゴでは、想像以上に視野が広がるのを実感し、世界で仕事するのが楽しいと感じましたね。
大手写真処理機メーカー時代に転機!約10年のアメリカ生活で感じた多様性とコミュニケーションの重要性
大久保:大手ゲーム会社に勤めた後、大手写真処理機メーカーへ転職されますが、そこではどのような経験を積まれてきましたか?
和田:転職したのが1998年で、当時アメリカに開発部署を立ち上げるタイミングで、ありがたいことに私もアメリカでの開発業務に携わらせてもらい、約10年間アメリカで勤めました。
アメリカに駐在してから1年半くらいは毎週いろんな州へ出張していて、お客様のさまざまな声や価値観に直に触れてきました。
大久保:毎週出張はかなりの行動力ですね! アメリカ各地を巡る中でどんなことを感じましたか?
和田:アメリカのさまざまな場所を巡って感じたのが「北米のITの強さ」です。国の強さは企業の強さだと改めて思いましたし、日本もやっぱりITを強くしなきゃいけないと感じました。外国にいることで逆に日本を意識するようになりました。
これをベースとしてITの世界であった方がいいものや「なんでこれがITの世界にはないんだろう」ということも考えるようになり、私生活でも「こういうITがあった方がいいのでは?」というものを探し続けたのです。
その中でたどり着いた私の答えが、現在インゲージで提供しているサービスでもある「Re:lation(リレーション)」です。
「Re:lation」は問い合わせ・顧客対応クラウドで、これはいわば「企業とお客様とのコミュニケーション」なんですよね。私は、この「問い合わせ対応」というのは「ネット時代の接客」だと思っています。
昔は「問い合わせをなるべく受けないようにしよう」という流れが強かったかと思います。私はそれは違うと思っていました。問い合わせはお客様とのタッチポイント。「問い合わせ」というコミュニケーションを通じてお客様をいかにファン化させるかが大事だと思ったんです。
今ではTwitterやInstagramなどのSNSが発達して、よりコミュニケーションの窓口が広がっているので、「問い合わせ対応」というのはより重要になっていると感じています。カスタマーサクセスという言葉も出てきていますし。
「Re:lation」の開発がよぎったきっかけは自身のネットショッピングでの問い合わせ経験
大久保:「Re:lation」のサービスを開発しようと思ったのは、どんなきっかけからですか?
和田:「Re:lation」を開発しよう思ったきっかけは、私自身がアメリカ駐在時代に体験したことから来ています。
アメリカのある有名な通販会社を利用して買い物をした際、到着日になっても商品が届かないことが起こり出したんです。問い合わせをしてもなかなか返事が来ず、返事がきても回答がちぐはぐ、といったことが何回かありました。
ちょうどニュースでその通販会社の売上が急上昇しているという報道があり、そこでピンときました。荷物がなかなか届かないのは注文と問い合わせが殺到していて、急な需要拡大に組織のキャパが追いついていなかったのではと思いました。
当時の問い合わせシステムはメールが主体でしたが、そもそもメールは大規模な問い合わせを処理するために開発されたものではないため、問い合わせ管理に特化したサービスの必要性を感じました。
帰国から起業までに抱いた葛藤|46歳での起業の悩み
大久保:帰国後、ITベンチャー企業を経て起業されておりますが、それまではどのような苦労をされてきたのでしょうか。
和田:アメリカから帰国後、2011年にITベンチャー企業に転職しました。当時事業部長として3年ほど勤め、日本発アメリカ向けBtoBクラウドサービスを開発し、成功させました。
しかし、先ほどの「問い合わせ対応の課題」を感じたまま想いを封印していいのだろうかと葛藤するようになりました。
会社からはありがたいことに評価をいただき、事業部長も任せていただいていたので、当時は45歳を過ぎているし子供が当時3人いましたので「このままこの会社で働いた方がいいのではないか」とも思いました。
しかし、妻に相談すると「そこまで強い想いがあるなら起業した方が良いんじゃない?」と言われ、それが後押しとなって起業を決意しました。
起業しても成功するか分からないですし、収入もしばらくゼロになるリスクもありますが、自分の意思に嘘はつけませんでしたね。
大久保:学生でBtoB向けのサービスを事業として起業する方もいますが、企業側の需要が分からずに起業して苦戦する方も少なくありません。しかし、和田さんのお話を聞く中でBtoB向けのサービス開発の経験が企業側の需要把握にもつながっているなと感じました。
和田:たしかにBtoB向けサービスの学生起業は難しいですよね。BtoB向けのサービスは企業の課題解決に直結するようなサービスを展開しなければいけません。
となれば、それぞれ企業の課題は何なのか、その課題を解決するとどれくらいプラスになるのか、というのが分からないといけません。その点で私が経験してきたBtoB事業の経験はプラスになっていると思います。
サービス開発に欠かせない特許申請の重要性|自分たちの権利を守るために
大久保:サービスを開発する上で、自社サービスを守るために知財の特許申請が重要かと思いますが、和田さんはこれまでどれくらいの特許を取得されてきましたか?
和田:アメリカと日本と合わせて50件くらい特許をとってきました。これまで世界でビジネスをしていく仕事をしていましたから、知財を権利化していく重要性をとても感じていました。
また、これまでの会社は社員に対しても何かアイデアがあればどんどん特許申請していこうという風土で、私自身もモノづくりが好きですから、発案してきたもので権利化できそうなものは積極的に特許申請をしていきましたね。
そういった取り組みから、何が知財になり得るのかということを含めて知識を深めることができたのは良かったと思います。
大久保:起業家に向けて、特許のメリットや海外で特許を取得するメリットについて伝えれる話があれば教えてください。
和田:特許は自分たちが生み出したものを権利化することなんです。権利化することによって無用な敵を作らない。これが特許のメリットです。
一生懸命考えて作ったものを真似されて自分たちの苦労が水の泡になってしまうのは困るじゃないですか。なので、自分たちが作ったものについてきちんと権利を明確化するために特許申請は大事だと思っています。
ただ、特許を取るためにはお金がかかるんですよね。そのため、なんでも申請するわけにもいきませんので、特許に関してはそれなりに勉強する必要があります。
申請しても別の似た特許が即に申請されている場合は申請を却下されるってこともあるので、何が特許を取れそうなのか、特許庁に自社の独自性をいかに明確に伝えられるかがとても重要です。
また、自分だけで特許申請を完結させることは難しく、多くは弁理士を使って特許を申請する形になると思います。ですが弁理士費用もかかりますし、海外特許だともっとお金がかかるんですよ。
アメリカの特許申請の場合は現地の代理人を通じて申請することになりますので、代理人費用も合わせて数百万円はかかります。なので、特許を申請する際はできるだけ確実に特許を取れるように申請するものを決めていかなければなりません。
大久保:最後に、起業家へ向けてメッセージをお願いできますでしょうか。
和田:起業というと、社会人経験ゼロの起業とリタイアされた方の高齢者起業、ミドル層の起業があります。それぞれに自身の強みを発揮できるステージはは違うと思いますが、私自身が当てはまるミドル層の起業はそれなりに大変です(笑)。
年齢的に若い学生なら失敗してもダメージはそんなにないと思いますし、何よりその経験は財産になります。高齢者の起業もリタイア後なのでローンの支払いとか子育ても終わってる段階で金銭的に失敗のリスクも少ない場合が多いでしょう。
しかし、ミドル層は子育ての最中で学費や家のローンなどもありますから失敗ができないんですよね。それぞれのステージで大変さはあるんですが、それでも強い想いで起業したい方に対しては応援したいと思っています。
起業って簡単ではありません。起業してもうまくいかなかった人たちの方が圧倒的に多い世界です。
私自身もまだ道の途中なので偉そうなことは言えませんが、もし自分じゃないとできないことや自分じゃないと生み出せない世の中に必要なものがあるのであれば、自分を信じて頑張ってほしいですね。
(取材協力:
株式会社 インゲージ 代表取締役CEO 和田 哲也)
(編集: 創業手帳編集部)