法人の固定資産税を算出するには?計算方法・節税対策もご紹介

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経理業務を行うなら法人の固定資産税に関する理解も深めておこう


法人として事業を行う上で考慮しなければいけないもののひとつに、固定資産税があります。
事業拡大のため、新しく土地や建物を購入した場合、固定資産税の負担が増えることになります。
しかし、法人の固定資産税をどのように計算するのかわからないといったケースも珍しくありません。

そこで今回は、固定資産税の基礎知識や納付方法などを解説します。固定資産税の計算方法、節税対策などを知りたい方は必見です。

そもそも「固定資産税」とは?


固定資産税の計算方法などの前に、そもそも固定資産税とは何かを把握しておく必要があります。まずは、固定資産税の基礎知識から解説します。

不動産など固定資産に対する税金

固定資産税は、毎年1月1日時点で住宅やマンションなどの固定資産を持つ方が支払わなければいけない税金です。
地方税のひとつで、納付先はそれぞれが住んでいる自治体になります。

固定資産税の金額は、地価が高いほど高くなる傾向にあります。なぜなら、固定資産税の評価額は実勢価格の約7割といわれているからです。

【課税対象】土地や家屋

土地や家屋が課税対象であり、土地は、畑・田んぼ・牧場・山林・宅地などが該当します。家屋は、工場・店舗・住宅・倉庫などが当てはまるものです。

毎年1月1日の時点で固定資産税課税台帳に登録されている場合、課税対象になります。課税されるのは、1月1日の時点で所有者となっている個人や法人です。
課税対象となる固定資産に価格に応じて、税金の金額が算出されることを念頭に置いてください。

【課税対象】償却資産

固定資産だけではなく償却資産も課税対象です。減価償却費が経費として扱われるものが償却資産になります。

具体的には、プリンター・複合機・PC・家具・船舶などです。
私たちの身近にあるプリンターなどはもちろんですが、船舶(ボート・釣船・漁船・遊覧など)や航空機(飛行機・ヘリコプター・グライダーなど)も償却資産に分類されます。

ただし、自動車は自動車税が課税されるため、償却資産の対象になりません。さらに、特許権などの無形固定資産も対象にならない点に注意が必要です。

税額は、1月1日の時点で所有している償却資産の所得価格・所得年月・耐用年数などを加味して計算されます。
単純な計算ではないので、理解を深めた上で計算する必要があります。

法人の固定資産税の計算方法


固定資産税は、決められた計算式を使って算出します。続いては、法人の固定資産税の計算方法について解説します。

固定資産税を求める計算式

固定資産税を求める場合、以下の計算式を用います。

固定資産税評価額(課税標準額)×標準税率(1.4%)=固定資産税額

固定資産税評価額は、土地や建物の固定資産税を決める際の基準になる金額です。3年に1回というスパンで見直しが行われ、その時の地価で金額が決まります。

土地の場合だと、一般的には地価の約7割と決められていますが、市区町村によって異なります。課税明細書の価格または評価額の欄を確認してみてください。

課税基準額は、税額計算をする際の基礎となる金額です。基本的には、固定資産税評価額と同額になります。
ただし、土地が軽減税率や優遇措置の対象になっている場合(市街地の住宅用地など)、課税標準額が低くなる場合もあります。

標準税率は、地方税法で1.4%と定められているので基本的には一律です。
ただし、市区町村が独自に設定することもできるので、地域によって異なるケースもあります。

土地の評価額

土地の評価額を求める場合、以下の計算式を用います。

路線価×面積=土地の評価額(課税標準額)

路線価は市区町村が決めているもので、道路に面している宅地1㎡あたりの価額です。
基本的にはこの計算式を用いますが、土地の形が異なることを加味し、奥行補正などを行った上で評価額が計算されます。
補正は市区町村によって異なるため、正しい金額を算出するためには市区町村役場に問い合わせてみることをおすすめします。

建物の評価額

建物の評価額を求める場合、以下の計算式を用います。

評点1点あたりの価額×床の面積×単位面積あたりの再建築費評点×経年減点による補正率=家屋の評価額(課税標準額)

家屋の評価額は、同じ建物を再度建てようとした時に必要な価格とされる再建築価格が基になります。
このような計算方法は、再建築価格法と呼ばれるものです。築年数が経過すると減価されることを加味し、経年減点補正率による補正も行われます。

償却資産の評価額

償却資産の評価額は、取得した時の価格・年月・耐用年数などを踏まえて算出します。計算方法は、前年中に取得した場合、それよりも前に取得した場合によって異なります。
計算式は以下のとおりです。

・前年中に取得した場合
取得価額×(1-減価率×1/2)=評価額

・前年より前に取得した場合
前期の価格×(1-減価率)=評価額

このように計算式が異なるため、注意が必要です。減価率は、市区町村のホームページに掲載されている「耐用年数に応ずる減価率表」で確認できます。
また、償却資産ごとの評価額を算出するので、ひとまとめにしないことも注意点として挙げられます。

また、初年度の評価額は原価率に1/2を乗じることも覚えておきたいポイントです。

固定資産税の経理処理


法人の固定資産税は、租税公課として処理されます。経理処理は、納付書を交付する日に行うのが一般的です。

例えば、5万円の納付書が1月に交付されたと仮定された場合を例に解説します。
この場合、借方に「租税公課・5万円」、貸方に「未払金・5万円」を記載します。そして、納税が終わったら、借方を未払い金に、貸方を現金や普通預金にして経理処理をするという流れです。

交付日が基本ですが、納付日に経理処理を行っても問題ありません。建物の場合は、減価償却が必要になるので、土地と別で会計処理を行う必要があります。
したがって、同じタイミングで購入したとしても、土地と建物を分けなければいけません。

法人の固定資産税を納付する方法


法人の固定資産税を支払う場合、どのような方法で納付するのかを知っておくことも重要です。続いては、納付期限や納付方法などについて解説します。

期限はいつまで?

固定資産税は、納付期限が定められています。法人の固定資産税は、市区町村によって納付期限が異なりますが、年4回に分けて納税するのが基本です。
一般的なスケジュールは、4月に納税通知書が届いて第1期分を納付、7月に第2期分を納付、12月に第3期分を納付、翌年2月に第4期分を納付します。

納付期限の最終日が土曜日や日曜日、祝日と被った時は、次の平日に持ち越されます。納付書はまとめて送付されるため、なくさないようにすることも注意すべきポイントです。

6種類の納付方法

固定資産税の納付方法は、6種類から選択可能です。それぞれの方法にメリットやデメリットがあり、向き・不向きもあります。
それぞれの状況に合わせた納付方法を選択するためにも、どのような方法があるかを把握しておくようおすすめします。

1.現金(窓口での支払い)

現金での支払いは、金融機関や都税事務所の窓口やコンビニエンスストアでできます。領収書を出してもらえるため、必要な場合は現金での支払いをおすすめします。
納税証明書が発行されるまでの期間は1週間ほどです。

決済手数料もかからないので、余計な出費をせずに済みます。ただし、コンビニエンスストアで支払う場合は、30万円まででバーコード付納付書が必要です。
バーコードが付いた納付書でなければ、窓口での支払いはできません。

2.口座振替

納付書に同封されている書面に口座振替の方法が記載されています。口座振替は、一度申込みをすると継続的な自動引落としになります。
登録した銀行口座の残高が不足しないようにしておけば、うっかり支払い忘れてしまったというミスも防げて安心です。

ただし、口座振替の申込みをしてから、自動引落としができるようになるまで時差があります。
そのため、納付期限に間に合わないといった事態にならないように気をつけてください。納付期限を過ぎてしまいそうな場合は、納付書で支払いをするようおすすめします。

3.クレジットカード

クレジットカードでの支払いは、すべての市区町村が対応しているわけではありません。
しかし、対応している自治体であれば、パソコンやスマートフォンから支払いの専用のサイトにアクセスすると簡単にできます。
都合の良いタイミングで手続きができるという点がクレジットカード払いの大きなメリットです。

ただし、自治体や金融機関の窓口、コンビニエンスストアなどで支払う時はクレジットカードを使えません。
また、クレジットカード払いを選択すると取消しができないことも要注意です。

4.ペイジー

ペイジーマークが付いている固定資産税の納付書を持っている場合は、ペイジー支払いも利用できます。
パソコンやスマートフォンを使い、インターネットバンキングやモバイルバンキングを通じて支払う方法です。

インターネットバンキングを利用していない人もいます。そのような場合は、ペイジーに対応しているATMから支払いが可能です。
収納機関番号・納付番号・確認番号・納付区分を入力し、内容を確認した上で支払うようにしてください。

5.電子マネー

コンビニエンスストアで支払いをする際、電子マネーも利用できます。チャージする必要がありますが、普段から電子マネーを使っている場合は使いやすい方法です。
「セブンイレブン」なら「nanaco」、「ミストップ」なら「WAON」を使って固定資産税の支払いができます。

チャージしてクレジット機能を使うと所定のポイントが付与されるので、お得になるというメリットもあります。
ただし、チャージは上限額が5万円なので、それ以上の納付はできません。

6.スマホ決済

「PayPay」や「LINE Pay」など、スマートフォンでの決済で固定資産税を支払う方法もあります。
キャッシュレス化が進んでいることから、対応してくれて嬉しいと感じる方も多いのではないでしょうか。
ただし、すべての自治体が対応しているわけではありません。

スマートフォンでの決済による支払いは、アプリ内の「請求書払い」を選択し、納付書のバーコードをスキャンするだけなので簡単です。
合計金額が30万円までであれば支払いが可能です。「PayPay」は、ボーナスポイントが付与されるのでよりお得になります。

法人の固定資産税における節税対策


法人の固定資産税は、比較的高くなりがちです。そのため、少しでも節税したいと考える方も少なくありません。
最後に、法人の固定資産税における節税対策には、どのような方法があるかをご紹介します。

「免税点」について理解しておく

「免税点」について理解しておくことは、法人の固定資産税における節税対策として有効です。
固定資産税には「免税点」という免税になる金額が設定されており、ある一定の金額に満たないと免税になる仕組みです。
免税点は、土地が30万円、家屋が20万円、償却資産が150万円となっています。

ただし、ひとりで複数の不動産を同じ市区町村内に有している場合は例外があります。それは、合計の課税標準額がこの金額を超える時です。
そうなった場合、すべてに課税されるので注意が必要です。

ほかの市区町村に不動産を有している場合は、免税点に満たないと免税になります。状況によって異なるので混同しないようにしてください。

評価額を下げる

固定資産税の評価額は、分筆することで下がります。分筆は、1枚の登記簿から土地を分けることです。

広い土地が一筆の場合、大通りに面している土地も内側にある土地も同じ評価額になってしまいますが、分筆することで、利便性が低いとみなされる内側の土地は、評価額が下がります。
分筆により、非課税になる道路に当たる土地を作れる場合もあるため、さらなる節税につながる可能性も高くなります。

優遇制度・減免制度を活用する

優遇制度や減免制度を活用することも、法人の固定資産税の節税対策になります。
火災や水害などを受けた場合減免や免税になったり、設備投資に関する減免制度を利用したりできます。
しかし、優遇制度や減免制度は市区町村によって内容が異なるので、あらかじめ確認しておくと安心です。

公園や私道が含まれていると、減免や免税となるケースもあります。敷地の一部を公園として開放している場合などが該当します。
それも踏まえて、市区町村役場の窓口に確認してみてください。

まとめ

経理業務を行うのであれば、固定資産税に関する基本的な知識は必要不可欠です。
知識がないと適切な納付ができないこともあります。税金がかかるのは何かなどを正しく把握しておくようおすすめします。
また、節税対策も知っておくとお得になる可能性があるので、把握しておいて損はありません。

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(編集:創業手帳編集部)

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