注目のスタートアップ

株式会社Cooking&Glow 金原恵美|地産ピクルスブランド『宮ぴくるす』製造販売の事業展開が注目の企業

地産ピクルスブランド『宮ぴくるす』製造販売の事業展開で注目なのが、金原恵美さんが2016年に創業した株式会社Cooking&Glowです。

SDGsの目標のひとつとして、「2030年までに小売・消費レベルにおける世界全体の一人当たりの食料の廃棄を半減させ、収穫後損失などの生産・サプライチェーンにおける食品ロスを減少させる」ことが掲げられています。

現在、収穫後損失となる食品ロスの問題に対しては、市場を通さない直売や、加工品として新たな付加価値をつけたり、フードバンクへ寄付するなどの食品を無駄にしないためのさまざまな取り組みに注目が集まっています。

株式会社Cooking&Glowの地産ピクルスブランド『宮ぴくるす』製造販売事業の特徴は、美味しさは変わらないのに、収穫後、サイズの大小や色やキズによって「規格外野菜」として廃棄されてしまう野菜を、長期に保存でき、健康的で美味しさも兼ね備えたピクルスという形に変えることで、食品ロスの減量に貢献しながら、障害を持つ方を働き手として雇用し、就労支援をしている点です。

株式会社Cooking&Glowの金原恵美さんに、事業の特徴や今後の課題についてお話をお聞きしました。

・このプロダクトを開発するに至った経緯について教えてください。

コロナ禍が大きく影響しています。私たちは、コロナ禍になる前は、お料理教室、お惣菜販売、お弁当販売を事業の3本柱にしていました。お弁当は企業が訪問先へお持ちする高価格帯のもので、毎月安定した収入源でしたが、訪問自体が無くなることで注文が打ち切りとなってしまいました。料理教室も当時閉鎖するしかなく、事業を立て直す柱として選んだのが「ピクルス」でした。

私たちの会社がある栃木県宇都宮市は、澄んだ空気と清らかな水に恵まれて美味しい野菜がたくさん採れます。周囲には知り合いの農家さんがいて、以前譲り受けた農産品の加工所もあったので、食べ物を無駄にしない、長期保存ができるものづくりという視点で県内産の「規格外野菜」に着目し、瓶詰のピクルス『宮ぴくるす』を作ることにしました。

・このプロダクトの特徴は何ですか?

宇都宮市内に240年続く北関東唯一の「中野喜兵衛商店」という酢蔵がありまして、そこで作られているもろみ酢を贅沢に100%使用し、県内産の新鮮な野菜を使って、手作業で丁寧に仕上げているのが特徴です。

県内名産品のかんぴょうを使った「かんぴょうと根菜のぴくるす」が人気商品で、少し変わった素材としてはうずらの卵、いちごや梨などのフルーツのピクルスも作っています。無添加・化学調味料・保存料不使用ですが、1年以上保存がききますし、塩ベース、醤油ベースなど、素材ごとに調整したピクルス液でさまざまな味わいを引き出していますので、ぜひお召し上がりい ただければと思います。

・このサービスの解決する社会課題はなんですか?

まず、「食料廃棄の課題」です。形が不揃いなどの理由から規格外とされてしまう野菜を有効活用して、廃棄される食材を減らそうとしています。

2つ目は「障害者雇用の課題」です。私には身体の不自由な姉がいるのですが、そのような原体験から、就労継続支援A型事業を立ち上げて、障害を持つ方にもスタッフとなっていただき、一緒にピクルスを作り上げています。ピクルスの事業を大きくしていくことができれば、雇用の拡大につなげていけると思います。

・創業期に大変だったことは何でしょう?またどうやって乗り越えましたか?

ピクルスの事業を立ち上げた時は、3本柱の売上がなくなった状況で、本当にピクルス一本で売上を上げていけるのか、非常に不安でした。会社を閉じることも考えましたが、スタッフとともにやっていける、私たちにしかできない事業は何だろう?と思考の棚卸をしました。

お弁当作りで使ってきた調理器具は思い入れがありなかなか手放せませんでしたが、この時代に会社を存続させるには、他の会社には真似のできない新しいものを築く必要があると覚悟を決め、不要なものは手放して新事業へと突き進みました。

乗り越えられたのは、支えとなってくださった方々がいたからです。「よくぞ、この商品を作ってくれましたね」と言って応援してくださった方、商品を受け取って喜んでくださった方、そして事業を閉じようとした時「支えるから続けて」と泣きながら言ってくれたスタッフ、たくさんの方々のおかげで、苦しい時期を乗り越えていけました。資金面では、国や自治体の補助金の申請をして、助けていただきました。

・どういう会社、サービスに今後していきたいですか?

農産物の加工には可能性があると感じていますし、障害を持ちながら働いてくれているスタッフが素晴らしい心の成長を遂げているのが傍にいて手に取るように分かりますので、障害者雇用を推進していきたいと思っています。

『宮ぴくるす』作りによって、農家さんも、雇用しているスタッフも、商品を買ってくださるお客様も笑顔になれます。今はピクルス作りで手一杯ですが、ピクルス以外の商品も展開できれば、、また新たに解決できる課題が見つかるかもしれません。一つのモデルとして『宮ぴくるす』を軸としながら、商品のラインナップを増やしていくことも視野に入れています。

・今の課題はなんですか?

お中元・お歳暮時期は製造が追いつかないほどですが、閑散期が出てしまうことです。今は地元でのビジネスをしっかりと固めているところですが、全国展開して安定した売上が立てば、障害者雇用も拡大していけると思います。

また、Instagramの運用や見せ方、商品のアピールなど、SNS対応がまだ十分ではないので、私たちが大切に作った『宮ぴくるす』の良さが全国の皆様にお届けできるようにチャレンジしていきたいと思います。

・読者にメッセージをお願いします。

人生は思いがけないことが多いと思います。私の場合、安定した収入の柱をコロナ禍で突然失ってしまいました。
ですが、『宮ぴくるす』という新事業を立ち上げ、険しい山を越えた後に見えた景色が、今まで見ていた景色とはまた違って、それもまた素晴らしいと感じています。
山が高ければ高いほど見える景色は素晴らしいと思います。つらい中でも楽しみを見出して仕事と向き合うことで、その景色を見ることができました。
私は料理講師を始めるまでは、もともと普通の主婦でした。限りない可能性は誰しも持っているので、それを信じて進むことが大切なことだと思います。

会社名 株式会社Cooking&Glow
代表者名 金原恵美
創業年 2016年
資本金 400万円
事業内容 地産ピクルスブランド『宮ぴくるす』製造販売
サービス名 食品製造業
所在地 栃木県宇都宮市中島町613
代表者プロフィール こどもや子育て中の母に向けた料理教室の他、企業・行政向けの食育セミナーの講師など、15年間『キッズ料理研究家』として活動。
2016年 料理を通して輝く未来を創造する企業として『株式会社Cooking&Glow』設立。
2019年 25年続いた、農産加工所を継承し農産加工のノウハウを学ぶ。
2020年 栃木県産の野菜を中心に宇都宮のお酢で仕上げた地産ピクルスブランド『宮ぴくるす』製造・販売に特化。
2021年 就労支援事業に参画。
読んで頂きありがとうございます。より詳しい内容は今月の創業手帳冊子版が無料でもらえますので、合わせて読んでみてください。
カテゴリ 有望企業
関連タグ Cooking&Glow SDGs 地産地消 宮ぴくるす 金原恵美
創業手帳
この記事を読んだ方が興味をもっている記事

有望企業の創業手帳ニュース

関連するタグのニュース

プラントベースフードブランド「2foods」などウェルビーイング事業展開の「TWO」が資金調達
2022年1月21日、株式会社TWOは、資金調達を実施したことを発表しました。 引受先は、カゴメ株式会社です。 カゴメと共同で商品開発を行うプラントベースフードブランド「2foods(トゥーフーズ)」…
ZERO株式会社 沖杉大地/四辻弘樹|食品ロス削減BOX『fuubo』の事業展開で注目の企業
食品ロス削減BOX『fuubo』の事業で注目されているのが、沖杉大地さんと四辻弘樹さんが2022年3月に創業したZERO株式会社です。 令和4年6月9日、あるニュースが飛び込んできました。 令和2年度…
植物肉「ミラクルミート」を開発・製造する「DAIZ」が「日清製粉グループ本社」と資本業務提携
2022年9月2日、DAIZ株式会社は、株式会社日清製粉グループ本社と、資本業務提携契約を締結したことを発表しました。 DAIZは、発芽大豆由来の植物肉「ミラクルミート」を開発・製造しています。 大豆…
植物肉「ミラクルミート」を開発・製造する「DAIZ」が「クールジャパン機構」から20億円調達 海外展開加速へ
2022年10月28日、DAIZ株式会社は、官民ファンドの株式会社海外需要開拓支援機構から、20億円の資金調達を実施したことを発表しました。 DAIZは、発芽大豆由来の植物肉「ミラクルミート」を開発・…
福祉とアートを軸とした新規サービスの企画立案・開発などの「ヘラルボニー」が資金調達
2020年8月5日、株式会社ヘラルボニーは、資金調達を実施したことを発表しました。 知的障害のあるアーティストが描いたアート作品を扱うアート・ライセンス事業や、CSR・CSV・SDGsを軸とした企画の…

大久保の視点

ニコニコ超会議・学生ピッチ甲子園ビジネス部門優勝&1000万円獲得はウェルヘルス土井久生馬さん
2024年4月27日(土)~2024年4月28日(日)に幕張メッセでニコニコ超会議実行委員会で『ニコニコ超会議2024』が開催された。 『ニコニコ超会議20…
(2024/4/28)
「千代田区CULTURExTECH ビジコン2024」が丸の内TOKYO創業ステーションで2024年3月19日に開催
2024年3月19日(火)にStartup Hub Tokyo 丸の内(TOKYO創業ステーション 丸の内 1F・千代田区)で千代田CULTURExTECH…
(2024/3/19)
明治大学ビジコンで優勝&100万円獲得は宇宙ビジネスの蓮見大聖さん明治大学4年「AMATERAS SPACE」
2024年3月13日(木)に明治大学・御茶ノ水キャンパスで第2回明治ビジネスチャレンジ(明治ビジチャレ)が明治大学経営学部主催で行われました。 明治大学の各…
(2024/3/13)
創業手帳 代表取締役 大久保幸世のプロフィールはこちら

注目のニュース

最新の創業手帳ニュース

創業時に役立つサービス特集
今すぐ
申し込む
【無料】