X-Techとは?普及の背景と活用されている業界
X-Techで各業界に新しいサービスを展開!人々の暮らしに浸透する「〇〇Tech」とは
X-Tech(クロステック)と呼ばれる言葉に対し、近年多くの業界が注目しています。
X-TechはIT用語として認識されていますが、業種や業界を問わずに広がっている言葉です。
テクノロジーを活用したX-Techによって、新たな価値を生み出し前進する業界も増えています。
DX(デジタルトランスフォーメーション)化が進む今、X-Techはどう進んでいるのでしょうか。
X-Techの広まった背景や現在活用されている業界、技術を紹介します。
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X-Techとは
X-Tech(クロステック)は、ある業界の技術とテクノロジーが融合して生まれる価値や仕組みのことを指す言葉です。
既存のサービスや技術に最先端のIT技術を組み合わせることで、新しいサービスやビジネスを生み出します。
X-Techは、あらゆる分野で秘めた可能性を持ち、アイデア次第で組み合わせは無限です。そのため、今後も業種を問わず発展が予想されます。
「〇〇Tech」を総称した言い方
X-Techは「クロステック」または「エックステック」と読み、テクノロジーをクロスさせたものという意味を持たせた造語です。
X-Tech自体はテクノロジーと業界の融合を示す総称であり、各業界のビジネスを具体的に呼ぶ時には、「○○テック」と融合する業界の呼び名を合わせて使います。
現在でも多くの業界がテクノロジーを組み合わせた「○○テック」を作り出し、メディアなどでもその名前を聞くことが増えてきました。
高機能化・高品質化の実現
X-Techは既存のサービスやビジネスを最先端のテクノロジーによって高機能、高品質なものに変えることができます。
そこには、これまで進化してきた多くのIT技術が使われています。
X-Techによる高機能化、高品質化に生かされている主なIT技術は、IoT(インターネットオブシングス)やクラウドコンピューティング、AI(人工知能)、ビッグデータ、VRです。
例えば、IoTは、家電などの物にインターネット通信の機能を持たせることで操作方法やその物の管理方法に幅を持たせることに成功しています。
その働きは、家庭や工場、企業など、場所を問わず活用されるようになりました。
IT業界に限らず活発に
X-Techは最先端のIT技術を駆使したものですが、その技術によってIT業界以外のあらゆる業界に活気を与えることにつながりました。
当初はIT技術やデジタル分野に強みを持つ企業で主に活用されていましたが、今では業界を問わず様々な分野で受け入れられています。
アナログだったものをデジタルに、人の手や目で行ってきた作業をAIに、その分野ごとに必要で活用可能なテクノロジーを取り入れ、より良いサービスやより効率的な事業展開へ生かしています。
「X-Tech」活発化の背景
X-Techが活発化した背景には、様々な要因がありました。これまでのIT技術の進化や消費者の行動の変化など、X-Techが活発化したのには複数のことが関係しています。
時代の申し子ともいえるX-Techが生まれ、進化してきた背景となる要因を紹介します。
デジタル技術やICTを活用するトレンドが進展
X-Techの活発化は、デジタル技術やICTを活用するトレンドの進展が関係しています。
これまで紙媒体で利用していたものやアナログだったもののデジタル化を推し進める業界が増え、消費者にも自然な浸透を遂げました。
企業がスタートさせた変化を消費者が前向きに受け止め、既存のシステムやサービス以上の便利さを実感するという良い循環が起こっています。
例えば、電子マネー決済は利用額の割合を年々堅調に伸ばし、広告業界では従来の広告媒体から徐々にインターネット広告に移行するトレンドも見られます。
IT導入におけるコストの低下
X-Techの活発化は、デジタル技術の便利さだけでなくコスト削減の魅力にも後押しされて進んでいます。
産業へのITの導入は人件費を大幅に削減する効果が期待できます。
また、機械のほうが効率的である仕事と人間でなければならない仕事を分けることで、労働効率の向上にもつながるでしょう。
さらに、技術の進歩はIT導入コストも削減方向へと進めることに成功しました。
例えば、クラウドコンピューティングは、最低限のコストでIT導入を可能にした技術のひとつです。
クラウドを使うと、自社独自の設備を持たずにシステムを利用し、設備投資を抑えることができます。
スマホの普及で企業と顧客がつながりやすくなった
X-Techが様々な分野で躍進を遂げたのは、スマートフォンの急激な普及にも関係があります。
スマートフォンユーザーの増加は、消費者とインターネットの距離を縮めて、インターネットを介した企業からのアプローチも身近にしました。
総務省の「平成30年通信利用動向調査」では、世帯におけるスマートフォンの保有割合は約8割となっています。
また、それと同時にソーシャルワークサービスの活用割合も増加傾向です。
こうしたスマホ、SNSなどの消費者への浸透は、企業からのアプローチをしやすくし、それに伴ってX-Tech導入の必要性も生みました。
広告はもちろん、ネットを通じたサービス提供など、X-Techを用いることでスマホユーザーをターゲットとしたビジネスが推進しやすくなります。
AIの進歩
AIの進歩もX-Techが成長する要因のひとつとなっています。
データの収集から分析をコンピュータに任せることで、人間はよりアイデア作りに時間をかけられるようになり、その結果、様々なX-Techが生まれました。
AIによる機械学習や深層学習は、データの分析方法に大きな影響を与えました。
データ学習の蓄積によって、学習していないデータから分析や予測も可能となり、大量のデータの収集・蓄積から分析までがコンピュータで可能となっています。
コンピュータとの分業は、人と機械がそれぞれの得意を生かし、不得意を補い合い、X-Techの進歩に貢献してきました。
様々なX-Tech
X-Techの活発化はすでに進んでおり、様々な分野でX-Techにチャレンジする企業が増えています。
各業界ごとに必要となるテクノロジーや活用範囲は異なり、そこには無数のアイデアが詰まっています。
X-Techをより詳しく知るためには、それぞれの分野で有効活用された成功例を見ることが大切です。近年導入されたX-Techの代表的な事例を紹介します。
FinTech(フィンテック):金融
近年のX‐Techの中で代表的なものが、Fintech(フィンテック)です。
「Finance(金融)」とTechnology(テクノロジー)の組み合わせによって、私たちのお金に関する新機能、新サービスが始まりました。
主な新機能、サービスは、買い物の決済機能や送金機能、資産管理などです。
これまでは窓口や電話でのやり取りなどが主だったサービスが、スマートフォンひとつでできるようになりました。
スピーディーに浸透が進み、すでに人々の間で身近なものとなっています。
HealthTech(ヘルステック):健康
HealthTech(ヘルステック)は、「Health(健康)」とテクノロジーを組み合わせた言葉です。
Healthcare Tech(ヘルスケアテック)と呼ぶこともあります。文字通り、ヘルスケアを中心としたサービスとテクノロジーが融合した新しい取り組みを指します。
デジタル技術を用いて、介護や予防、QOLの課題を解決し、人々の健康寿命を延ばすことが目的です。
HealthTech(ヘルステック)の主な例は、ウェアラブルデバイスを利用した健康管理や、ヘルスケアシステムを使ったリアルタイム検査や解析などです。
スマートヘルスケアとも呼ばれるもので、治療ではなく検査や健康管理を行います。
介護分野では、介護者の体調をセンサーで管理する、服薬のタイミングを知らせるなどのサービスがHealthTech(ヘルステック)の範疇です。
ヘルステックと似たものに、後述するMedTech(メドテック)があります。
ヘルステックは健康増進と予防医学などのヘルスケアをメインとしたものですが、MedTech(メドテック)は医療分野をターゲットとしたものです。
Clean Tech(クリーンテック):環境
Clean Tech(クリーンテック)は、環境に優しいエネルギーや電力を始めとした事業プロセスやサービスの仕組みです。
再生不可能な資源の利用を抑え、再生可能エネルギーの利用と開発することが中心となります。
近年のSDGsの推進も相まって、Clean Tech(クリーンテック)は注目されている分野です。また、Clean Tech(クリーンテック)は「Green Tech」と呼ばれることもあります。
主な内容は電力分野ですが、それ以外にも輸送・ロジスティックス分野や農業分野などでもクリーンテックの取り組みは始まっています。
HR Tech(エイチアールテック):人材
HR Tech(エイチアールテック)は、「Human Resource(人材)」とテクノロジーを組み合わせた造語です。
文字通り、人材の採用から管理までの業務でテクノロジーによって簡略化・効率化・コスト削減などを目指すものとなります。
主な内容としては、会計ソフトや勤怠ソフトの活用による人事業務や勤怠管理の簡易化、採用業務での応募状況や先行状況のデータ管理などがあります。
人事関連は、規模の大きな企業では特にボリュームが大きくなり、限られたリソース内で一部のスタッフに負担が増えやすい業務です。
それを簡易化することで、人材の効率的な利用にもつながるでしょう。
FoodTech(フードテック):食料
FoodTech(フードテック)は、「Food(食)」とテクノロジーを合わせた言葉です。テクノロジーを使って食品の分析や開発などを行います。
食の安全や食文化など、食に関する課題を解決するのが目的です。
FoodTech(フードテック)は、生産者が減少している農業や漁業のサポートを始め、フードロス問題、飢餓問題などにも生かすことが可能です。
また、多様な食文化に対応すべく、ヴィーガンやベジタリアン向けの食品開発などにも用いられます。
AutoTech(オートテック):車
AutoTech(オートテック)は、「automation(自動化)」とテクノロジーを組み合わせた言葉です。
モビリティ分野で導入されている取り組みで、主に自動運転を指します。自動車分野のため、「CarTech(カーテック)」と呼ばれることもあります。
自動車技術とIT技術の融合によって、安全性と利便性の高い輸送を可能とするのがAutoTech(オートテック)の目的です。
自動運転への期待は高いものですが、自動運転による事故なども発生しており、今後の課題も残しています。
自動運転のほかに、自動ブレーキなどもAutoTech(オートテック)です。
AgriTech(アグリテック):農業
AgriTech(アグリテック)とは、「Agriculture(農業)」の分野でのテクノロジーの融合を示す言葉です。
農業にIT技術を組み合わせることで、人の負担や経費を削減し、より効率的で分析的な農業を推進します。
IoTやビッグデータをはじめ、ドローンの導入なども行われてきました。
主な内容としては、IoTを使った監視システムがあります。農地にセンサーを設置して気温や湿度を計測し、大きく変化した際にアラートを出します。
従来の人的監視に比べて負担も減り、より厳密な管理が可能です。また、センサーで取得したデータは、水分や日照量の自動制御などにも活用できます。
また、AIを使って作物の育成状況を管理させる、ドローンで薬品の散布を行うなど、様々なアイデアが進められています。
EdTech(エドテック):教育
EdTech(エドテック)は教育を意味する「Education」とテクノロジーを組み合わせた言葉で、主に教育支援に使われています。
生徒向けのシステムとしては学習支援が、教師向けの支援としては授業支援があります。
学校以外には、資格スクールやトレーニングジムなどもEdTech(エドテック)の範囲です。
英会話やプログラミングなど、特定のジャンルの学習プログラム、教育プログラムを用いることで、教育が効率的かつ充実したものとなるでしょう。
また、SNSやAI、VRなどの活用も進められています。SNSでは学習管理の効率化や共有を可能とし、AIによってトレーニングの進捗や生徒の状態管理などが可能となります。
VRの活用では、実地体験しにくい内容を再現し、学びのチャンスを増やすことが可能です。人材育成でも、危険講習やクレーム対応などの事前体験などで活用できます。
PoliTech(ポリテック):政治
PoliTech(ポリテック)は、「Politics(政治)」とテクノロジーの組み合わせです。テクノロジーを使って政治の変革を目指します。
アメリカで盛んに行われてきましたが、日本でもインターネットでの選挙活動が解禁となり、PoliTech(ポリテック)が取り入れられるようになりました。
主な内容としては、インターネットやSNSによる選挙活動や署名活動、政治についての情報の発信と収集などがあります。
アメリカでは、インターネット広告やFacebookの利用が盛んに行われています。
MedTech(メドテック):医療
MedTech(メドテック)は、「Medical(医療)」とテクノロジーを組み合わせた言葉で、医療と医学分野の技術を指します。
電子カルテや受診のネット予約など、ペーパーレス化や人件費の削減などを目指す取り組みはメジャーです。
そのほかにも新薬の開発で人体データを分析するなどの取り組みもあります。
MedTech(メドテック)には、遠隔医療やオンライン診療など、自宅で医療サービスを受けることも可能にしました。
無医村対策や移動が困難な高齢者などの医療として、また、昨今の新型コロナ対策としても期待される取り組みです。
それ以外にも、AIによる画像診断や手術支援ロボットの導入なども進められています。
AIによる画像診断では、見落としなどのヒューマンエラーを防止し、ロボットの導入では出血量の抑制などが期待できます。
MarTech(マーテック):マーケティング
「Marketing(マーケティング)」とテクノロジーを組み合わせたのがMarTech(マーテック)です。
マーケティングオートメーションツールを活用し、顧客のニーズを可視化することができ、ニーズに答えられる高品質なものを生み出せるようになりました。
Home Tech(ホームテック):住宅
Home Tech(ホームテック)は、「Home(住宅)」とテクノロジーを組み合わせた言葉です。住宅にIT技術を導入し、快適な環境を作ります。
アプリでの空調管理や施錠管理、ペットの体調管理や観察なども可能です。また、太陽光発電では発電量の管理なども始まっています。
Ad Tech(アドテック):広告
アドテック(AdTech)は、「Advertisement(広告)」分野の取り組みです。主にインターネット広告に関する技術を指します。
不特定多数に向けた従来の広告とは違い、広告をターゲット層により届けやすくし、分析なども進めやすくなりました。
RE Tech(リーテック):不動産
「RE Tech(リーテック)」は、「Real Estate(不動産)」の頭文字「RE」を使った造語です。文字通り、不動産分野の新テクノロジーを指します。
「RE Tech(リーテック)」は、従来の不動産業に革新を起こすサービスを目指す取り組みです。オンライン内覧や物件の検索サービスなどがこれにあたります。
GovTech(ガブテック):政府
「Government(政府)」とテクノロジーを組み合わせたものもあります。主な事例としては、マイナンバーカードの導入が挙げられます。
マイナンバーカードの導入をきっかけとして、今後は公的機関の手続きがよりスムーズになり、人件費の削減なども進むと予想されているようです。
まとめ
X-Techは、従来のサービスがIT技術と結びつき、効率化や利便性のアップ、人件費の削減など、ビジネスに多くの恩恵をもたらしてくれます。
まだ開発途上にある分野もありますが、今後も色々な形で活用され、人々の生活も、より便利で快適なものになっていくでしょう。
常にトレンドを押さえて社会の動向を知ることで、X-Techの波に乗り遅れないようにしたいものです。
(編集:創業手帳編集部)