ガバナンスの意味や目的・強化の仕方とは

創業手帳

ガバナンスとは?企業経営の健全化を目指すための仕組みを理解しよう


ガバナンスは、企業が健全に経営していく上で大切なものです。
経営に関わる人は、ガバナンスの本来の意味や目的を理解した上で、企業経営に生かせる仕組み作りを行いましょう。

同じようなシーンで使用されるほかの言葉との違いを知り、内容のブレをなくし、正しく使用することが大切です。

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ガバナンスとは


会社のガバナンスを強化することは、経営をしやすくするだけでなく、健全化を目指し、株主や社会からの信頼を得ることにも繋がります。
会社の経営者は、ガバナンスの意味を正しく理解し、より良い経営環境を整えるようにしましょう。

ガバナンスの意味

ガバナンスとは、本来「統治」・「支配」・「管理」を意味しており、企業経営だけでなく、あらゆる組織の統治プロセスを示す言葉です。
ビジネスでガバナンスというと特に、会社組織の規則や倫理を作り、管理体制を整えることを意味します。

会社ではたくさんの従業員が働き、管理する立場にある経営者や役員などがいます。こうした全ての人の行動や考え方を正しく保つためにガバナンスが大切です。

ガバナンスに関連する用語

ガバナンスに関係する用語には、何を意味するのか少し分かりにくい表現もあります。ガバナンスについて理解する際には、同時に関連用語も知っておくと安心です。

ガバナンス強化

ガバナンス強化とは、統治や支配の影響力を強めるという意味の言葉です。「ガバナンスを強化する」とも言えます。
会社のガバナンスは、企業の運営や管理体制を指すので、会社の管理体制を強くするという意味になります。

強化のほかに、向上・改善といった言葉でも使えます。

ガバナンスが効いている

ガバナンスが効いているとは、管理が徹底されていて、統制が取れていることを意味する言い方です。
ガバナンスを利かせるといえば、会社の管理徹底を意味します。反対にガバナンスが効いていない状態は、管理体制が統一されていない状態です。

統制が取れているかの度合いを示したい場合には、ガバナンスが強い、弱いといった言い方もできます。

コーポレートガバナンス

コーポレートガバナンスは、「企業統治」と訳せます。会社の経営を管理する仕組みを意味する言葉です。
「ガバナンス」とだけ言っても、ビジネスで語られる場合にはコーポレートガバナンスを示す場合が多くなります。

ガバナンスコード

ガバナンスコードは、企業経営を健全に保つためのガイドラインです。2015年に金融庁と東京証券取引所が「コーポレートガバナンスコード」を公表した、上場企業のコーポレートガバナンスの指標です。
上場企業に対して適用されますが、法的な拘束力はありません。

以下の5項目がコーポレートガバナンスコードです。

  • 株主の権利・平等性の確保
  • 株主以外のステークホルダーとの適切な協働
  • 適切な情報開示と透明性の確保
  • 取締役会等の責務
  • 株主との対話

グローバル・ガバナンス

グローバル・ガバナンスは、世界で起こる様々な問題に対して地域や国境を超えて解決するための政治的相互作用のことです。
企業経営やビジネスの用語ではありませんが、グローバル・ガバナンスの主体は、個人から起業まで及びます。

ステークホルダー

ステークホルダーとは、企業経営での利害関係者のことを指す言葉です。企業では株主や経営者、従業員、取引先や顧客など、ステークホルダーは広範囲に及びます。
ステークホルダーの条件に利害の一致は含まれず、企業が利益を上げることで相手が損失を被る場合もあります。

コーポレート・ガバナンスの必要性


コーポレートガバナンスは、企業経営において重要なものと考えられています。その必要性は、企業内部にとどまらず、社会にも影響を与えるものです。

情報管理の必要性を意識化するため

情報化社会へと変貌を遂げた現代社会では、情報の価値や情報管理の重要性が高まっています。
そこで、情報管理の大切さを明確に意識するためにコーポレートガバナンスが生まれました。
コーポレートガバナンスという言葉を掲げることによって、情報管理の徹底を意識化し、大きなトラブルを防ごうとしています。

不正や不祥事を厳格に取り締まるため

粉飾決算や横領などの不正な行為は、企業の価値やイメージを著しく落とします。
不正や不祥事を厳格に取り締まり、健全な経営をするために、コーポレートガバナンスは存在するものです。
コーポレートガバナンスによって、不正への意識を強め、不正できない規則や管理体制を作れます。

情報と社員を管理するため

コーポレートガバナンスは、社内の情報と従業員、役員などの管理を徹底させるためのものです。
コーポレートガバナンスの存在で、情報をコントロールし、信用を高めたり企業価値を向上させたりできるようになっています。

コンプライアンスとガバナンスの違い

ガバナンスに関係する言葉に、コンプライアンスがあります。2つの意味するところは似ているように見えますが、明確な違いがあります。

「コンプライアンス」は企業が法令に「従うこと」そのものを示しますが、「ガバナンス」は企業が自分自身を「管理・支配する」ことを意味します。
コンプライアンスを維持して(社会に従うために)支配するのがガバナンスの役割です。

コーポレートガバナンスのメリット・デメリット


コーポレートガバナンスは、企業経営に良い影響を与えますが、反対に企業経営が上手く回らなくなるケースもあります。
ガバナンスを強化する際には、メリットとデメリットを良く理解した上で、リスクを負わないように注意しながら進めてください。

コーポレートガバナンスのメリット

コーポレートガバナンスのメリットは、企業経営の健全化による信頼性の向上や経営の安定です。それによって、以下のような効果が期待できます。

株主が安心して投資できる

コーポレートガバナンスの強い企業は、不正や不祥事の心配もなく、社会的にも高い評価を得られます。
そのため、株主からの信頼も高くなるでしょう。安心して投資できるため、株価も上がりやすくなり、将来有望な企業として金融機関などからの評価も上がります。

企業価値が高くなる

コーポレートガバナンスの強化は、企業価値も高めてくれます。法律や規則を守る倫理的な企業として社会から認められると、事業も成長しやすくなるかもしれません。
社会的な評価が成長を支え、成長がより評価を高めてくれるという、プラスのスパイラルが期待できます。

企業側の不正を防止できる

コーポレートガバナンスの強化を図り内部統制が取れると、企業内部の不正を防止でき、社会的な評価を著しく損なうリスクを避けられます。
企業の不祥事は株主や顧客、従業員に多大な損失をもたらすものです。情報も広がりやすい現代社会では、評判を落とすリスクは事前に避けることが望ましいでしょう。

財務強化

コーポレートガバナンスが強化されると、出資者からの評価が上がり、金融機関からの信用も高まります
そのため、増資や融資など、財務強化もしやすくなり、企業の成長を後押ししてくれるかもしれません。

コーポレートガバナンスのデメリット

コーポレートガバナンスにはデメリットもあるため、事前に対策を考えておくことも必要です。

企業活動が円滑に行えない

コーポレートガバナンスを強化するためには、監視体制が必要です。
そのため、コーポレートガバナンスを利かせすぎると、柔軟に動きにくくなることも考えられます。
効率良く経営できていても、何か問題があると判断された場合には一時的に事業が止まる場合もあります。
また、ステークホルダーに合わせると、目先の利益を求めざる得なくなることもあるかもしれません。

会社の成長を妨げる

コーポレートガバナンスを強化し、ステークホルダーに合わせた経営を行うと、企業自体の成長を妨げになる場合もあります。
新規事業や事業再編などの思い切った経営戦略を実行しにくくなり、その結果、成長が停滞する可能性もあります。

ビジネスチャンスを逃す

コーポレートガバナンスに則って経営するためには、中長期経営戦略の提示が求められます。
戦略を練る時間や手間がかかり、ビジネスチャンスに乗るタイミングを逃す可能性もあるかもしれません。

コーポレートガバナンスの強化方法とは


コーポレートガバナンスを強化するには、いくつかのポイントを押さえて進めることが大切です。
自社のコーポレートガバナンスのために、具体的に必要な内容や注意点などをチェックしてください。

ガイドラインに記載する内容

コーポレートガバナンスは、まず、企業がガイドラインを策定して実施されるものです。
企業によって内容は異なりますが、基本的なモデルとして必要な点を押さえておきましょう。

基本方針

基本方針は最初に記載するものです。モデルは日本取締役協会が公表しており、コーポレートガバナンスコードの5つの基本方針に対応した5項目となっています。

記載するべき項目

コーポレートガバナンスコードは全部で73個の原則で構成され、それに応じて開示すべき項目があります。
開示すべきものとして規定されているのは、以下のような項目です。

  • 政策保有株式
  • 関連当事者間の取引き
  • 企業年金のアセットオーナーとしての機能発揮
  • 情報開示の充実
  • 経営陣に対する委任の範囲
  • 独立社外取締役の独立性判断基準および資質
  • 取締役会の全体としての知識、経験、能力のバランス、多様性および規模に関する考え方

記載を検討する項目

規定はありませんが、記載を検討する項目もあります。社外役員の任期などは規定されていませんが、ガイドラインを作る際に記載を検討するべき項目のひとつです。

コーポレートガバナンスで重視したい点

コーポレートガバナンスで重視したい点を押さえておけば、より充実した管理体制を作れます。

内部統制を構築・強化する

コーポレートガバナンスを強化し、社内の健全化を目指すには、内部統制の構築・強化が欠かせません。
内部統制ができていて、初めて情報の透明性を担保できます。
社内でルールを定めたら、ルールに従って業務を進めているか、監視し指導できる体制を整えることが必要です。

監視体制を作る

コーポレートガバナンスを強化するためには、第三者視点の監視体制も必要です。
内部からだけでなく外部からの監査もあれば、社内にいては気付けない問題点も明らかになるかもしれません。

社内へ浸透させる

コーポレートガバナンスを強化するためには、最終的には社内への浸透が必須です。
経営陣だけでなく、従業員一人ひとりにまで考えや方向性を理解してもらうと、共に遂行しやすくなります。
従業員への浸透は、分かりやすい判断基準として行動規範や倫理憲章などを作成すると進めやすいでしょう。

ガバナンスを使うときの注意点

コーポレートガバナンスを社内に浸透させ、社外に認知してもらうためには注意したい点もあります。
社会的な企業価値を高め、成長していくために、必ず押さえておきましょう。

言葉の意味を理解して使う

コーポレートガバナンスを策定する際には、用語一つひとつの意味を正しく理解した上で使ってください。
わかった気になっていても勘違いの場合もあり、誤用するリスクがあります。特に、カタカナ語や新しいビジネス用語などは注意が必要です。

伝わりやすい言葉で

コーポレートガバナンスは、経営陣だけでなく、従業員や株主など、様々な人に認知してもらわなくてはなりません。
そのため、できるだけわかりやすく、伝わりやすい表現を使います。難解な用語やカタカナ語は避け、多くの人が理解しやすい言葉を選びましょう。

まとめ

ガバナンスは、組織の体制を管理することを指す言葉です。企業で用いる際には、企業の管理体制を整える仕組みとして、コーポレートガバナンスとも言われます。

コーポレートガバナンスは、企業内を透明で健全な状態にし、不正行為を未然に防ぐために重要な仕組みです。
企業の信頼性を高め、成長させるために、コーポレートガバナンスを強化しましょう。

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