リースとレンタルの違いは何?それぞれの性質や会計上の処理を解説

創業手帳

パソコンや車などのリースとレンタルの違いはわかりにくいもの。これらの違いや、会計上の処理方法を解説します。

リースとレンタルの違いとは
会社で使用するOA機器やパソコンは、購入するとかなりの初期費用がかかります。この初期費用を格段に抑えられる方法が、リースもしくはレンタルです。
これら2つの方法は混同されがちですが、それぞれに異なる特徴があり、メリットやデメリットも踏まえて検討すべきでしょう。
また、法律上の違いや会計処理の方法も知っておく必要があります。今回は、リースとレンタルの違いや会計処理などについて解説します。

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リースとレンタルの概要とは


まずは、リースとレンタルについて、それぞれどのようなものかを知っておく必要があります。双方の意味を知らなければ、後々損をすることにもなりかねません。
ここでは、リースとレンタルの概要を説明します。

リースとは借受ける側の所有と考える

リースとは、借受ける側の要望をもとに物品を提供元のリース会社が購入し、それを提供する形式です。
リース会社は、購入代金を月額のリース料金で借受ける側から支払ってもらいます。
あくまで借受ける側の代わりに物品を購入しているものであり、所有権はリース会社にありますが、実質の所有者は借受ける側と考えます。
また、このような形態のため、リース物品は多くの場合は新品であり、借受ける側は新品を安価で使用できるケースが多いでしょう。

レンタルは提供元の所有物を借りる

一方、レンタルは、もともと提供元であるレンタル会社が所有している物品を貸出すもの。そのため、借受ける側は契約からすぐに物品を使用できます。
この形態では、あくまで一時的な貸出しとなり、契約期間も年単位から時間単位まで様々です。
また、新たに物品を購入するシステムではないため、借受けられるのは多くが中古物品です。

リースとレンタルの違いについて


リースとレンタルでは、契約期間や料金、保守・修繕義務について違いがあります。下記の表は、簡単に双方の違いを示しています。
これを踏まえて、リースとレンタルの違いを詳しく見ていきましょう。

リース・レンタル比較表

リース レンタル
契約期間 半年~10年程度 最低1日から
貸出す物品 借受け側の要望に応じてリース会社が購入した物品 レンタル会社の所有物品
料金設定 物品の購入価格にリース料率を掛けた金額を月額に振り分ける 時間・月単位の決まった料金
月額料金 レンタル料よりも料金設定が割安 リース料よりも料金設定が割高
中途解約の可否 (原則)不可 可能
所有権 形式上はリース会社
実質的には借受ける側
レンタル会社
保守・修繕義務の所在 借受ける側にある レンタル会社にある
契約終了後 返却もしくは再契約 返却

参考:【ビジドラ】リースとレンタルの違いとは?メリット・デメリットで徹底比較! 

借受ける物品の取扱いの違い

前述したように、リースでは借受ける側の要望に応じた物品をリース会社が代わりに購入します。そのため、借受ける側は使いたい物品を自由に選ぶことが可能です。
一方、レンタルではレンタル会社があらかじめ所有しているものを貸出すため、借受ける側はレンタル会社の所有するラインナップから物品を選択します。
そのため、物品選択の自由度はリースの方が高いと言えます。

契約期間の長短でも違いがある

リースでは、基本的に数年単位で契約期間が設定されます。
リースの場合、借受ける側の要望により商品を新たに購入し、長期的な契約を前提としているためです。
一方、レンタルはあくまで一時的な貸出しを想定しているシステム。契約期間は比較的短期です。

料金についての違いも知ろう

料金については、総じてリースの方がレンタルより安価になる傾向があります。
後述のように、リースでは長期契約や、借受け側に課される保守などの管理責任を含め、借受け側の負担が増えるでしょう。
一方で、レンタルは一時的に気軽に利用でき、保守などもレンタル会社が請け負う契約です。
これらの理由から、一般的に借受ける側の責任が大きいリースの方が割安で貸出されます。

解約についての違いも覚えておくべき

契約途中での解約については、リースは原則的に不可で、レンタルでは可能となっています。
リースでは、リース会社が物品を購入した金額を借受け側から回収することを前提としているため、中途解約は原則行えません。
もしどうしても中途解約したい時は、その時点で借受け側が買取りするケースが見られます。
レンタルは、レンタル会社の所有物品を一時的に借りられる契約のため、途中で解約しても問題が生じにくいです。

所有権には微妙な相違がある

物品の所有権自体は、基本的にリース会社やレンタル会社です。
ただし、リースでは権利はリース会社にあるものの、実質的には借受け側が所有しているものとされます。
後述のように、借受け側が保守・修繕義務を負うほか、リース物品は借受け側の資産とみなされ、経理上でも資産としての処理義務が生じます。
ちなみに、レンタルの場合は物品におけるすべての責任を負うのは、レンタル会社です。

保守・修繕の義務の所在も異なる

物品の保守や修繕の義務は、実質的に所有している側が負うことになります。
つまり、リースの場合は実質的に借受け側が所有しているため、メンテナンスや修理の費用は借受け側が負担するということです。
一方、レンタルであれば借受け側に保守・修繕義務は生じず、利用中にトラブルがあったとしても、メンテナンスや修理の費用はレンタル会社が持ちます。

瑕疵担保責任には注意が必要

瑕疵(かし)担保責任とは、物品にあらかじめ欠陥があった時に負うべき責任のことです。
瑕疵担保責任を負う側は、物品の欠陥において修復や損害賠償を行う義務が生じます。
レンタルでは、瑕疵担保責任はレンタル会社が負いますが、リースに関しては、リース会社に対する瑕疵担保責任は免責となります。
この結果、メーカーへの損害賠償権などはリース会社から借受け側に譲渡されるため、借受け側は自らメーカーと交渉しなければならない点は、注意が必要でしょう。

やむない理由で物品が破損した時

物品を使用している間に、借受け側の過失でなく災害などで物品が破損してしまった場合、その損害を負担する(危険負担)が誰かについても、重要な点です。
レンタルの場合、損害はすべてレンタル会社の負担です。一方、リースでは借受け側が負担しなければなりません。
これは、危険負担についてもリース会社には免責となるためで、リース会社は物品購入を借受け側の代わりに行ったにすぎないという考え方によるものです。
また、リースでは物品破損後も契約期間における料金の支払いは発生します。

リースとレンタルのメリット・デメリットを知ろう


リースとレンタルは似て非なるもので、それぞれのメリットとデメリットが異なります。この2つをよく理解し、自社に合った方法で物品を借りたほうが良いでしょう。
では、双方のメリットとデメリットとは、どのようなものか、紹介します。

リースのメリット・デメリットとは

メリット3つ

・新品の物品を使用できる
リースでは、前述のように借受け側の要望によりリース会社が購入を代行します。つまり、新しく購入した物品を使用できるため、リースでは新品を借受けが可能です。
また、OA機器やパソコンは常に最新モデルがリリースされており、借受けの際には最新機器に応じた法的耐用年数に合わせた契約を行います。
そのため、最新モデルを購入した時と同様の感覚で利用できるでしょう。

・初期費用が抑えられる
物品を購入すると、膨大な初期費用がかかりますが、リースであれば月額の安価なリース料金のみを支払えばよく、初期費用を大幅に抑えられるかもしれません。
特に、事業を起ち上げた当初は資金繰りが課題のひとつであるため、経営における負担の軽減が見込め、大きなメリットと言えます。

・ランニングコストを把握しやすい
これまで説明しているとおり、リースでは月額のリース料金が決まっているため、長期的なスパンで見た時にランニングコストの計算が容易であることもメリットのひとつです。
これにより、将来的な資金計画が立てやすくなるかもしれません。

デメリット4つ

・中途解約が行えない
もし、契約の途中で物品が不要になった場合や、新しい物品を使用したい場合にも、リース契約は中途解約できません。
これは、リースの性質上「物融」(金額の代わりに物品を貸付ける金融の範疇)とみなされるためです。

・トータルでの費用は購入するより高価である
前述のように、リースでは初期費用を抑えられますが、契約期間で支払う月額リース料金をトータルすると、購入した場合より多くの費用を支払う可能性があります。
また、リース料金には保険料や固定資産税負担分、手数料などが含まれており、月々の金額は安価でも総合的に見ると、これらのコストを含めて支払うことになります。

・保守や修繕の義務は借受け側にある
これも前述の通り、保守・修繕義務は借受け側が負うことになります。
そのため、定期的なメンテナンスや修理にかかる費用は、すべて借受け側が支払わなければなりません。

・実質の所有者であるが所有権はリース会社
リース物品に対して借受け側が負う責任は多く、実質は借受け側が所有しているとみなされますが、所有権自体はリース会社にあります。
そのため、契約が終了すれば基本的にリース会社に返却しなければなりません。ただし、再契約が可能です。

レンタルのメリット・デメリットとは

メリット4つ

・短期契約が可能
レンタルでは、リースと違ってレンタル会社が所有する物品を一時的に借受けるだけで、短期的な契約ができます。
もちろん、数年単位でも借りられますが、ピンポイントで使用したい場合は1日~数時間単位での契約も可能です。

・料金を「賃貸料」として毎月経費計上できる
レンタルの場合は、物品は資産とならないため減価償却を行う必要がなく、料金は「賃貸料」として毎月経費に計上できます。
毎月定額を経費として算入するだけで済むため、経理処理も楽になるかもしれません。

・中途解約できる
レンタルのメリットとして、契約期間の縛りが緩く中途解約もおおむね可能である点が挙げられるでしょう。
これは、リースのように購入代金の回収が必要ないためですが、契約によっては違約金が発生するケースもあります。

・保守や修繕の義務を負わない
前述したように、保守・修繕についてはレンタル会社が義務を負っています。そのため、定期メンテナンスや修理の際にも借受け側は費用の負担がありません。

デメリット2つ

・中古品であり希望の物品を選べない
レンタルで借りられる物品は、もともとレンタル会社が所有しているものです。そのため、物品は基本的に中古品です。
また、物品の種類を自由に選べず、選択肢が狭まるのはデメリットと言えるかもしれません。

・月額料金が割高である
レンタル契約は短期でも可能で、保守・修繕や保険、固定資産税負担などの責任はすべてレンタル会社が負っているため、借受け側の責任が比較的軽いです。
しかし、その分、毎月のレンタル料金が割高に設定されている場合が多くなっています。

リースとレンタルの法的な取扱いについて


リースとレンタルでは、似たものでありながら法律的には扱いが異なります。そのため、それぞれの性質上も違いが出ると考えて良いでしょう。
では、法律的な扱いの違いとは、どのようなものか、解説します。

民法での取扱いは明確に違う

民法では、賃貸借契約についての規定がありますが、レンタルはこの賃貸借契約のひとつです。
一方、リースの民法上の扱いは多少複雑で、前述したように金額の代わりに物品を融資する金融取引きと同様とみなされています。
これにより、リースは「物融」とされており、貸金業に近いものとして扱われます。

リースは法律で適正期間が決められている

リースの契約期間については、法人税法により適正期間が決められていて、法定耐用年数によって異なります。
法定耐用年数が10年未満の場合、その物品に応じた法定耐用年数×70%。法定耐用年数が10年以上であれば、物品の法定耐用年数×60%の計算式で適正リース期間を求めます。
ちなみに、リース契約では法定耐用年数に基づき定額のリース料金を設定しているため、適正リース期間中に定額で減価償却を行っているということです。

物品を廃棄する時は

借受けた物品が壊れた時、リース・レンタル会社にいったん返却しなければならないと思いがちです。
しかし、廃棄物処理法では、廃棄の方法は物品ごとに定められていますが、誰が廃棄すべきかという規定はありません。
そのため、法律上では借受け側自身が廃棄しても問題ないことになっています。ただし、リースでは廃棄料金を求められる場合があり、レンタルではほぼ発生しません。
廃棄時の対応に関しては、契約時にリース・レンタル会社と協議しておくのがおすすめです。

リースとレンタルの会計処理にも注意しよう


リースとレンタルでは、会計処理にも違いがあります。そのため、それぞれに適切な方法で処理しなければなりません。
また、リースのタイプによっても処理が異なるため、注意が必要です。こちらでは、リースとレンタルの会計処理について説明します。

税法上の取扱いは損金か資産か

税法上では、基本的にレンタル料金は「賃貸料」の勘定科目で損金計上できます。
リースに関しては、下記に説明するタイプによって、「リース料」の勘定科目で損金計上できる場合と、勘定科目「リース資産」で資産計上する場合があります。

リースにはタイプがある

ファイナンスリース・オペレーティングリースについて

リースの形態は、ファイナンスリースとオペレーティングリースの2種類に分けられます。

ファイナンスリースは、これまで説明してきた一般的なリースの形態であり、リース会社に物品を資産として購入代行してもらい、その購入代金を月額で支払う形態です。
また、ファイナンスリースにも所有権の取扱いにより2つの分類があります。

・所有権移転ファイナンスリースは所有権が移る
これは、契約期間が終了すれば物品の所有権がリース会社から借受け側に移転する=物品が借受け側の資産になる形態です。
感覚としては、ローンを組んで物品を購入するケースと似ているかもしれません。

・所有権移転外ファイナンスリースは一般的なリース契約
物品を資産として借受けますが、契約期間が終了しても、物品の所有権はリース会社が所有したままの形態です。
多くのリース契約では、こちらの形態が適用されており、期間終了後に継続して物品を使用したい時には再契約を行って、引き続きリース料金を徴収されます。
そして、オペレーティングリースとは、物品の所有権を持っている人から単純に物品を借りるものです。
物品に対する責任はすべて貸出し側にあるため、借受け側は一切の責任を負うことがありません。
つまり、レンタルは、このオペレーティングリースの一環と捉えられるでしょう。

リースのタイプごとの会計処理方法

・所有権移転ファイナンスリースはローンでの資産購入と同じと考える
所有権移転ファイナンスリースは、契約時から資産として考え、契約期間終了で借受け側のものです。
そのため、基本的にはローンでの資産購入の際と同様の会計処理を行います。契約時には、借方:リース資産、貸方:リース債務として物品価格の全額を計上します。
そして、毎月のリース料金支払いの際には、借方に月額料金(リース債務と支払利息に分ける)、貸方にそれらの合計金額を現預金として仕訳します。
そして、決算時はリース資産の金額に対して減価償却費を計算します。

・所有権移転外ファイナンスリースには特別な計算方法がある
この場合は、形態は資産購入とほぼ同様であるものの、所有権はリース会社にあり、最終的にリース会社に返却しなければなりません。
これにより、決算時には「リース期間定額法」に基づき、リース契約期間を法定耐用年数、残存価額をゼロとして考えます。
契約時と毎月のリース料金支払い時には、所有権移転ファイナンスリースと同様の処理です。
そして、決算時にはリース資産の総額とリース契約期間から月ごとの金額を割出し、決算時の減価償却費を求めて計上します。
ただし、借受け側が中小企業である・少額のリースであるなどの場合、一定の条件を満たせば下記に説明するオペレーションリースと同様の簡易的な会計処理が認められています。

・オペレーションリースは「リース料」として経費計上する
オペレーションリースは、単純にリース会社から物品を借りているのみの契約であるため、賃貸料として考えます。
会計処理は、契約時には仕訳の必要がなく、月額リース料金の支払いの際に借方:リース料、貸方:現預金として計上します。
また、この形態の場合は物品を資産とは考えないため、決算時の減価償却費の計上も必要ありません。

IFRS16号による新しい会計処理

国際的に会計処理の均一化を目指す国際会計基準(IFRS)により、これを導入している会社に関しては、2019年から新しい会計処理(IFRS第16号)が適用されています。
この基準では、ファイナンスリースとオペレーティングリースの垣根をなくし、いずれの場合でも資産計上するとされています。
今後、IFRSが普及すれば会計処理も変更になるかもしれません。準備をしておく必要があると言えるでしょう。

まとめ

リースとレンタルは、会社の備品などの整備において、契約形態を迷うかもしれません。
どちらかを決めるポイントは、初期費用やランニングコスト、契約期間などで、目的に合った特徴を選ぶのがおすすめです。
また、会計処理における節税効果を鑑みて決めても良いかもしれません。いずれにしても、それぞれの特徴やメリット、デメリットをよく知っておくことが大切です。
特に、起業して間もない会社にとっては、高価な物品にかかる資金繰りは悩みどころでしょう。熟考した上でよりよい方法を選択してください。

創業手帳冊子版では、会社の備品などのリース・レンタルについて特徴や会計処理を詳しく解説しています。備品調達をお考えの方は、ぜひ参考にしてください。
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(編集:創業手帳編集部)

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