アントレプレナーシップとは?壮大なスケールで次世代リーダー育成を目指す伊藤羊一氏の想い
自分の思考と行動で「世界をより良い場所にできる」と本気で信じる人を増やしたい
武蔵野大学アントレプレナーシップ学部(※)学部長に就任予定の伊藤羊一氏は、企業で事業全般の実務を経験したのち、社会人対象の次世代リーダー育成に情熱を傾けて、教育の道に進みました。
伊藤氏は、これまでの経験を通して培ってきた力を、アントレプレナーシップ学部の教育にすべて投入すると決意したそうです。今回は、伊藤氏が就任予定の武蔵野大学アントレプレナーシップ学部開設への想いにせまります。
(※)アントレプレナーシップとは、起業家精神のこと。事業創造や新商品開発などに高い創造意欲を持ち、リスクに対しても積極的に挑戦していく姿勢・発想・能力などを指す。ベンチャー企業やスタートアップ企業の創業者、または起業家が持つ精神と定義されることもある。
1990年日本興業銀行に入行し、企業金融・企業再生支援などに従事後、2003年プラス株式会社に転じ、流通カンパニーにて物流再編・マーケティング・事業再編・事業再生を担当。2012年執行役員ヴァイスプレジデントとして、事業全般を統括。2015年4月ヤフー株式会社に転じ、企業内大学Yahoo!アカデミア学長として、次世代リーダーの育成を行う。またグロービス経営大学院客員教授として、リーダーシップ系科目の教壇に立つほか、「考えて話す」トレーニングを指導。著書『1分で話せ』『0秒で動け』『やりたいことなんて、なくていい。』『未来を創るプレゼン(共著)』
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この記事の目次
武蔵野大学アントレプレナーシップ学部開設にあたって
私たちの生活はテクノロジーの進化により、これまでになく便利になりました。世界のさまざまな情報はインターネットを通じて瞬時に手に入れることができ、欲しいものを簡単に注文して、翌日には受け取れるほど利便性に優れています。しかし、この状況であらためて「世界は幸せか。」と問うてみると、残念ながらそうなってはいません。差別や貧困の問題等、社会的な課題が世界には数多く残っています。まだまだ「世界は幸せにならなければいけない」状況なのです。
私たちは、アントレプレナーシップを「高い志と倫理観に基づき、失敗を恐れずに踏み出して新たな価値を創造していくマインド」と位置付けています。
そして、このマインドを持った人材をアントレプレナーシップ学部から輩出していき、「世界の幸せをカタチにすること」を通じて、教育的立場から社会に貢献していきたいと思います。
武蔵野大学アントレプレナーシップ学部開設の趣旨
武蔵野大学アントレプレナーシップ学部(※)は、2021年4月に武蔵野キャンパスにて開設します。「自分の思考と行動で、世界をより良い場所にできると本気で信じる人を増やす」ことこそが、武蔵野大学アントレプレナーシップ学部開設の最大の目的です。私たち教員が「自分の意思を持って社会に価値を提供する人を育てたい」という強い想いで学生を鍛え、育んだ結果、手段として「起業したい」という学生が増えるでしょう。
一方で、武蔵野大学アントレプレナーシップ学部の「会社に入るか。社会を創るか。」というキャッチフレーズは、決して既存の企業や組織に就職することを否定しているわけではありません。武蔵野大学アントレプレナーシップ学部は、“アントレプレナーを養成”するための学部ではなく、“アントレプレナーシップを持った人を育てる”ことを目的としています。
(※)略称:武蔵野EMC/Entrepreneurship Musashino Campus
武蔵野大学アントレプレナーシップ学部はチャレンジ精神を養う
やりたいことが決まっている人、すでに起業している人に限らず、とにかくいろいろな人に来てほしいと思っています。何かにチャレンジしたいけど、何にチャレンジしていいかが分からず悩んでいる人も、ぜひ本学部を目指してください。
今の時点でやりたいことが決まっていなくても、「自分がすべきことを成し遂げる、そして新たな価値を創造していく」ことにチャレンジしたい人はぜひいらしてください。
強い想いがあるならば、「失敗を恐れずに勇気を持って飛び出していけばいい」という理念のもと、教員も学生も一緒になって新しい未来を創っていきましょう。
武蔵野大学アントレプレナーシップ学部の特徴4つ
大学は「社会と隔絶している」と捉えられることがあります。私が学生だったとき(約30年前)は、じつはそれに近い状況でした。在学中はビジネスパーソンと接する機会がなく、社会に出てから初めて社会や仕事というものに触れて、戸惑ってしまった経験があります。そのため、本学部では「社会の最前線」をキャンパスに持ち込み、学生時代から社会に触れる機会を学生たちに提供します。
特徴1.授業の中で起業を目指す「実践中心のカリキュラム」
「分かる」と「できる」は違うものです。そのため、私たちはマインド・事業推進・実践を三本柱として、「事を成す力」を学生に身につけてもらいたいと考えています。この三本柱を三段階のピラミッドで説明すると、基礎となる下段は「マインド」です。マインドには、自分自身を知ることやアントレプレナーシップが含まれます。
中段は「事業推進スキル」になり、問いを立てる力、考える力、そして決める力です。コミュニケーション能力やビジネススキル全般を指します。
そして上段に「実践」があります。構想して、踏み出して、改善して、ビジネスにする力です。例えば、3年次にはEコマースで出店するなど、実際に起業してみることもカリキュラムに取り入れる予定です。
また、学生はインプットとアウトプットを繰り返し、自分のものにすることで成長できると考えています。そのため、授業スタイルはグループ学習・事例研究・ゲスト起業家との対話など、双方向に学ぶアクティブラーニングスタイルを徹底して行います。
特徴2.現役の実務家が教員としてサポート
「社会の最前線」をキャンパスに持ち込むためには、教員は現役の実務家が適任といえます。そのため、本学部の教員は「第一線のビジネスパーソンたち」が就任予定です。教育・マーケティング・デザイン・コミュニケーション・経営・政治・ベンチャーキャピタル・テクノロジーなどの専門家30名が、私と同じ価値観や志を持ち、教員に就任してくれました。
そして、教員は一方的に教える人ではなく、学生とともに行動するフラットな仲間として、ともに学びながら成長していきたいと考えています。
学部に所属しながら起業したい学生には、ベンチャーキャピタリスト・起業家・マーケッター・テクノロジストである教員たちが、実務経験をフルに活かしながら、4年間を通じて丁寧に起業のサポートをしていきます。
特徴3.1年次は全員が学生寮で共同生活をする
1年次は、アントレプレナーシップ学部の全学生が専用の学生寮に入寮し、共同生活によって「チームのコミュニケーションとは何か」を学んでいきます。
2021年度は小平の寮に、全室個室と共同スペースを用意します。共同スペースには教員である起業家たちが訪れて学生と語り合い、さまざまな刺激を得られる場として活用する予定です。
学生寮は、梁山泊(未来を創る人間が集まる場所)をイメージしています。武蔵野の地に梁山泊を建設し、教育界に志のある教員と未来を担う学生が集って、共同生活しながら自身を鍛えるビジョンです。
特徴4.全員が海外短期留学を経験、世界を知る
海外研修は、シリコンバレーなどの大企業を訪問して観光気分で帰るのではなく、自分で研修先を選択することから始まります。
ヨーロッパ・アジア・アメリカの3地域の中で、学生が自分のビジネスにとって一番適している地域を選び、ベンチャー企業を訪ねてビジネスプランをプレゼンする予定です。プレゼン後はフィードバックを受けて、議論する形式を想定しています。
武蔵野大学アントレプレナーシップ学部で学生に何を得てほしいか
もし入学前の自分が「何かやってみたいのに、やりたいことが分からない」状態だとしたら、入学後は「自分はこういった辛いことがあったけど、解決する方法を学んで実際のビジネスに昇華する」など、高い志を持てるようになってほしいと思います。そして自身でスタートアップ企業やNPO/NGOを立ち上げ、社会に変革を起こす人材となることを望んでいます。
また、行政機関に就職して地方創生に取り組んだり、志の実現のために企業に就職したりするという選択肢もあるでしょう。私自身は企業に所属しているため、アントレプレナーシップを持つことと、企業・組織に所属することは両立できると自信を持ってお伝えできます。
武蔵野大学アントレプレナーシップ学部で何を実現するか
一人ひとりが想いを持って踏み出し、「世界の幸せをカタチにすること」「自分自身を知り、社会課題を知り、自分の想いを育むこと」が重要です。その実現のため、社会の最前線のキャンパスで現役の実務家たちとともに、実践的なカリキュラムを学ぶ場が用意されています。つまり、大学・学問ファーストではなく、「学生の成長ファースト」「学生の想いファースト」「社会に価値を提供するファースト」です。いろいろな人と協力しながら、社会をより良いものにするきっかけを創りたいと思います。
みんなが幸せになる種を見つけて、勇気を持って取り組んで、失敗して学んで、最後は業(ビジネス)にしていくことを、ともにやっていきましょう!
まとめ
国内初のアントレプレナーシップ学部の開設により、社会に貢献するために起業を志す若者が増える未来が見えるようでした。日本のビジネス界の勢力図が塗り替わり、多様性に富んだユニークなアイデアが生まれる期待感に胸が高まります。
また国内にとどまらず、武蔵野大学の理念である「世界の幸せをカタチにする」ために、海外での課題に立ち向かう人材も現れるでしょう。そして、大学ではその志を応援してくれる仲間と出会えるのではないでしょうか。
アントレプレナーシップ学部には、明確に目標がある人も、エネルギーを向ける先が分からないと悩んでいる人も、志を育む仲間としてともにチャレンジできる学びの場が用意されています。
ちなみに、「自分の学生時代にこんな学部があったらよかったのに……」と思った人も少なからずいるでしょう。そんな社会人にもアントレプレナーシップ学部は門戸を開いていることを申し添えます。
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(取材協力:
武蔵野大学アントレプレナーシップ学部長(就任予定) 伊藤羊一)
(編集: 創業手帳編集部)