お金を借りる前に!資金調達で考えるべきポイント

資金調達手帳

あなたが借りるのは運転資金? それとも赤字資金?

(2015/11/18更新)

創業時や創業して間もない時期は、何かとお金が必要です。

自己資金だけで賄えればそれに越したことはありませんが、銀行など金融機関から借入を行うという人も多いのが現状です。

今回は、こうした資金調達や資金繰りの際に知っておくべきポイント、考え方を紹介します。ただ「借りられればいい」ではなく、「何のための借り入れなのか」を理解した上で資金繰りの考え方を知っておきましょう。

資金調達、資金繰りの考え方

これから創業、又は創業間もない経営者が直面する問題として、「お金が足りなくなったら金融機関から借入れするしかないな……」という資金調達や資金繰りに関することがあります。

勿論、金融機関からの借入が必要な場合はありますが、その理由がどういった借入金なのか十分に理解しておかないと、返済に行き詰ってしまうリスクを抱えてしまいます。

例えば、小売で日々現金収入が得られる場合、仕入代金の支払、人件費その他経費の支払いは、金融機関から借りなくても資金が不足しないはずです。

一方、仕入代や経費の支払いが借入しないと支払えない場合は、「商売が儲かってない」事を意味しますので、一時的な借入はやむを得ないとしても、経営のやり方を変えて利益が出るようにしていく必要があります。

上記のような小売の現金商売であっても開業当初の店舗準備、改装その他の設備投資に必要な資金については、手元に資金があればそれで賄うべきですが、手元に資金がない場合は「借入金」をしていく必要があります。

この場合、借入金の返済について、「毎月どれだけ返済しなければいけないのか」「幾らなら月々返済できるのか」を検討しながら借入額と返済額を決めなければなりません。

商売が儲かっていない状態で資金が不足すれば、まず頭に浮かぶのは金融機関からの借入です。

しかし金融機関から借りられたとしても資金繰りの問題が解決したとは言えません。

多くの経営者は、その時その時の資金繰りで頭がいっぱいで、大事なポイントを見落としがちです。

金融機関から借入するのはいいのですが、それが「運転資金」なのか、「赤字資金」なのかで大きな違いがあります。

借入をする場合は、まずこの点を明確にしましょう。

借入金の種類

事業を行っていく上で年に一度作成しなければならないのが「損益計算書」です。

損益計算書を作成するのは何のためかを考えてみたとき、多くの経営者は確定申告のためと考えている方がほとんどではないでしょうか?

しかし、損益計算書は、会社の儲けでお金を借りて返済できる会社なのかどうかを判断する重要な計算書なのです。

では、損益計算書のどこを見ればいいのでしょうか?

損益計算書を見ると、必ず「売上総利益」「営業利益」「経常利益」といった区分があります。

借入を行っても返済できる会社は、「営業利益」が黒字である会社です。

営業利益が赤字の状態で借入を行うのは、赤字資金の借入です。

これは、返済のアテのない借入であり、営業利益が赤字のままいくら苦労してその場その場の資金繰りを行っても永遠に資金繰りの悩みから脱却できず、いずれ破たんしてしまうでしょう。

では営業利益が黒字なのにお金が足りなくなるのはなぜか?

営業利益が黒字であっても売上金がすぐに回収できず「売掛金」として残っている場合
残高や商品など、仕入販売するまで現金化できない在庫を保有している場合
また、残高合計と仕入代金を支払わずに残っている買掛金残高との差額は、一時的に資金不足が生じ借入が生じるため借入金で賄うことになります。

これらが「運転資金の借入」と言われるものです。

一般的に営業利益が黒字であっても、設備投資を行う場合、一時的に手元資金では足りず借入金で賄うのが一般的です。

いわゆる「設備資金の借入」です。

借入金の内容によって資金繰りの考え方が変わります

上述したように、その借入がどの種類なのかを明確に認識する必要があるのですが、なかなか認識されている経営者は少ないのではないでしょうか?

特に「赤字資金の借入」の場合、早急に対応していく必要があります。

赤字資金の借入の場合

よく、金融機関から借入れが出来ず、経営者個人の資金を会社に貸し付けたりしているケースを見ます。

営業利益がマイナスの状態を放置したまま、いくら会社に資金を投入しても絶対に資金繰りは改善しません。

また金融機関から借りた資金も、元本はおろか利息すら支払いが困難になっていくことになります。

赤字資金の借入が存在する場合、当面の資金繰りも必要ですが、まず将来に向かっての経営改善をどういう形で進めていくのかを考えていく必要があります。

経営改善計画の詳細は、またの機会に触れますが、まず、「現状の損益状況」「儲かっている商売」「儲かっていない商売」を明確に認識すること、経費の見直しを行い、「削減できるものは削減していく」と言った方策に基づいた計画を立てていく必要があります。

赤字資金の借入がある場合、「経営改善計画」の作成が必要であり、そのためには正確な月次の損益計算書、部門別損益計算書の作成が必要となります。

運転資金の借入の場合

運転資金=売掛金+受取手形+商品製品等在庫-買掛金-支払手形です。

運転資金の借入金を減らし、金利負担を軽減する必要があります。

この場合、売掛金、受取手形の回収サイトと買掛金、支払手形の支払いサイトの認識を取引先ごとに検討する必要があります。

売掛金、受取手形の回収より先に買掛金や舍頼手形の支払を行っている場合、売掛金や受取手形の回収が行われるまで借入金で賄う必要があります。

買掛金や支払手形の支払いを売掛金等の回収時期まで延ばせないか?
売掛金等の回収を早めることはできないか?
を仕入先と得意先に交渉していく必要があります。

在庫については別の機会に触れたいと思いますが、長期に売れずに滞留している在庫があれば、

  • 早期に売却・資金化できないかを検討
  • 仕入れの方法に無駄がないかを検討

し、在庫をいかに少なくするかを考えましょう。

設備投資資金の場合

設備投資を行う場合、借入を行った後ではなく、検討時から設備投資により得られる収益を見込んで、借入金を何年で返済できるかをシミュレーションしてから借入を行う必要があります。

借入期間は短ければ短いほどいいです。なぜなら返済期間が長くなればなるほど業績の不確実性が高まるからです。

実際、過大な設備投資をした後に業績が悪化し、資金繰りに窮境している会社は数多くあります。

しっかりした設備投資計画が必要であると言う事です。

今回は、資金繰りを行うに当たっての考え方を説明させていただきましたが、共通して重要なのは、

  • 月次ベースで損益を正確に把握できていること
  • 将来見込の計画がしっかり立てられていること

がポイントであることは言うまでもありません。

また資金繰りの基本的な考え方にも触れましたが、具体的な対応は会社の規模、業種などによりさまざまであり、会社の実態や業界の慣行などを十分認識されている経営者が積極的に取り組んで対応する必要があります。

これらのポイントを踏まえた上で、計画的な借入、資金繰りを行ってビジネスを成功に導きましょう。

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(監修:豊原公認会計士・税理士事務所 豊原弘行
(編集:創業手帳編集部)

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