労災保険の特別加入制度とは?法人役員や個人事業主は必見!!

労災保険の特別加入制度を利用すればお仕事で怪我や病気になった際のリスク軽減が可能です


労働災害(業務や通勤が原因で負傷したり病気になったりすること)は、法人役員や個人事業主でも起こり得ます。

しかし、法人役員や個人事業主は労災保険の適用者ではありません。また、労働災害による負傷や病気には原則として労災保険が優先適用され、健康保険は使えません。つまり、高額な治療費を自己負担で支払う必要があります。このようなリスクから、法人役員や個人事業主、そのご家族を守るために設けられた制度が「労災保険の特別加入制度」です。

今回は労災保険の特別加入制度について解説します。既にご興味を持っている方はTSC(CACグループ)にご相談してみてください。

※この記事を書いている「創業手帳」ではさらに充実した情報を分厚い「創業手帳・印刷版」でも解説しています。無料でもらえるので取り寄せしてみてください

労災保険の特別加入制度とは

労災保険の特別加入制度とは
労災保険の特別加入制度とは、法人役員や個人事業主などが労災保険に任意で加入できる制度です。

労働者災害補償保険法では、業務や通勤が原因で負傷したり病気になったりした際には労災保険を給付し、被災者の社会復帰や遺族の支援をすべきと定められています。この労災保険が適用されるのは、労働対価として賃金を受け取る労働者です。つまり、法人役員や個人事業主は適用されません。

しかし、法人役員や個人事業主の中には労働者と同じように働く人もいます。例えば、建設会社の役員でも現場に従事していたり、配送事業者は配達業務に従事していたりします。労働者と変わらない働き方をしている場合は労災保険で保護されるべきです。そのため、労災保険の特別加入制度が設けられました。

また、人を雇わずにお一人で事業を行っている方も一人親方等として、特定の業種については加入の対象となっていましたが、2021年から対象業種が拡大されており、2024年11月にすべてのフリーランス(企業等から業務委託を受けて従事している方)も加入対象となっております。

労災保険:特別加入制度の対象範囲

労災保険の特別加入制度の対象範囲は「中小事業主等」「一人親方・フリーランス・特定作業従事者等」「海外派遣者」です。

中小事業主等

中小事業主等とは、下表に定める数以下の労働者を常時使用する事業主をいいます。また、家族従事者や役員も該当します。

業  種 労働者数
金融業、保険業、不動産業、小売業 50人以下
卸売業、サービス業 100人以下
上記以外の業種 300人以下

(※1)労働者を雇用していなくても、年間100日以上使用していれば「常時使用」とみなされます。
(※2)支店や工場がある場合は全体の労働者数を合算します。

1人親方、フリーランス

一人親方、・フリーランスとは、労働者を雇わずに事業に従事する人を指します。特別加入が認められるのは、次の事業に従事している場合です。

  • 旅客や貨物運送などの配送業
  • 土木・建築など建設業
  • 漁業
  • 林業
  • 医薬品販売業
  • 再生利用事業(廃棄物の収集・運搬・解体)
  • 船員が行う事業
  • 柔道整復師が行う事業
  • あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師が行う事業
  • 歯科技工士が行う事業
  • 高年齢者の創業支援や社会貢献事業が行う事業
  • 特定受託事業(企業から業務を委託されたフリーランス)

特定作業従事者

特定作業従事者とは、いずれかに該当する方をいいます。

  • 特定農作業従事者
  • 指定農業機械作業従事者
  • 国や地方公共団体が実施する訓練に従事する者
  • 家内労働者およびその補助者
  • 労働組合などの常勤役員
  • 介護作業従事者・家事支援従事者
  • 芸能関係作業従事者
  • アニメーション制作に従事する者
  • 情報処理システム関連の作業に従事する者

一人親方・フリーランス、特定作業従事者が特別加入するためには、業種に応じた特別加入団体業界団体に所属していることが必要です。労災保険上、業界団体を「事業主」、一人親方やフリーランス、特定作業従事者を「労働者」とみなします。

海外派遣者

海外派遣者として特別加入できるのは、次のいずれかに該当する場合です。

  • 国内の事業主から、海外で行われる事業に労働者として派遣される人
  • 国内の事業主から、海外にある中小規模の事業に事業主等(労働者以外の立場)として派遣される人
  • 独立行政法人国際協力機構(JICA)など、開発途上地域への技術協力事業を行う団体から派遣され、現地でその事業に従事する人

労災保険に特別加入するには?

労災保険の特別加入制度の手続きは、人を雇用しているかどうかで変わります。

A.人を雇用している事業主の場合→労働保険事務組合を通じて加入手続き

人を雇用している事業主の場合は、労働保険事務組合を通じて加入手続きします。労働保険事務組合とは、事業主様からの依頼を受けて労働保険の事務手続きを行う団体です。

<手続き方法>

  • 特別加入申請書を作成する
  • 労働保険事務組合に提出する
  • 労働局長から加入許可の承認が下りる

厚生労働省ホームページから特別加入申請書をダウンロードできます。

B.人を雇わずにお一人で事業を行っている場合は→一人親方等の(特別加入制度のしおりに基づいて)労災保険特別加入団体を通じて加入手続き

人を雇わずにお一人で事業を行っている場合
一人親方やフリーランスなどの場合は、加入したい団体に申し込み手続きします。

<手続き方法>

  • 加入したい団体に申し込み
  • 団体の申し込み方法に従う
  • 労働局長から加入許可の承認が下りる

労災保険:特別加入制度の保険料

年間保険料は、保険料算定基礎額(給付基礎日額×365日)に各事業で定められた保険料率を乗じたものになります。

(参考例)その他各種事業の年間保険料

給付基礎日額 保険料算定基礎額 年間保険料
25,000円 9,125,000円 27,375円
24,000円 8,760,000円 26,280円
22,000円 8,030,000円 24,090円
20,000円 7,300,000円 21,900円
18,000円 6,570,000円 19,710円
16,000円 5,840,000円 17,520円
14,000円 5,110,000円 15,330円
12,000円 4,380,000円 13,140円
10,000円 3,650,000円 10,950円
9,000円 3,285,000円 9,855円
8,000円 2,920,000円 8,760円
7,000円 2,555,000円 7,665円
6,000円 2,190,000円 6,570円
5,000円 1,825,000円 5,475円
4,000円 1,460,000円 4,380円
3,500円 1,277,500円 3,833円

(注)特別加入者全員の保険料算定基礎額を合計した額に千円未満の端数が生じるときは端数切り捨てとなります。

労災事例

厚生労働省「令和6年労働災害発生状況について」では、休業4日以上の死傷災害は13万5,718件、死亡災害は746件発生していることが明らかになっています。労災の内訳は以下の通りです。
労災事例
業務中の負傷は、身近で起こり得るため、労災事例(※TSC申請事例)を見ておきましょう。

転倒

現場調査中、大雨により床が濡れていて滑って転倒した際に階段で腰を強打し、腰の一部骨にヒビが入り、その部分が神経にあたっているため1ヶ月程度休養が必要と診断される。

項目 金額・内容
労災保険特別加入給付基礎日額 25,000円
療養補償給付 国から全額給付
休業補償給付 405,000円
休業特別支給金 135,000円
療養補償給付を除く合計 540,000円

動作の反動・無理な動作

利用者の衣類整理、廃棄処分のため、ゴミ袋大5袋を廊下へ出し、玄関のたたきへ降ろす際にふらつき、玄関サッシ戸にぶつかり身体がよじれて前のめりにふせたとき、腰を痛め起き上がれなくなった。(休業91日間:内、待期期間3日間は除く)

項目 金額・内容
労災保険特別加入給付基礎日額 20,000円
療養補償給付 国から全額給付
休業補償給付 1,056,000円
休業特別支給金 352,000円
療養補償給付を除く合計 1,408,000円

墜落・転落

寺標を自社2tトラックに積み、ロープで固定する際にロープが突然切れてトラック荷台より落下、頭を強打し死亡。(遺族1名)

項目 金額・内容
労災保険特別加入給付基礎日額 25,000円
遺族補償年金 3,825,000円
遺族特別支給金 3,000,000円
葬祭料 1,500,000円
合計 7,260,000円

はさまれ・巻き込まれ

工場内で油圧シリンダーを取り付け作業中、右手小指をはさんで切断した。
(障害等級12級、休業15日間:内、待期期間3日間は除く)

項目 金額・内容
労災保険特別加入給付基礎日額 25,000円
療養補償給付 国から全額給付
休業補償給付 180,000円
休業特別支給金 60,000円
障害補償一時金 3,900,000円
障害特別支給金 200,000円
療養補償給付を除く合計 4,340,000円

切れ・こすれ

紙を加工する大型の機械を操作中、機械のビスが外れたためにハンドルが外れ足を直撃。足の指を負傷した。(休業50日間:内、待期期間3日間は除く)

項目 金額・内容
労災保険特別加入給付基礎日額 14,000円
療養補償給付 国から全額給付
休業補償給付 394,800円
休業特別支給金 131,600円
療養補償給付を除く合計 526,400円

激突

飲食店を運営する代表者が、新店舗の開店場所を探すために出かけた帰りの高速道路で、自家用自動車が故障、路肩に止めて車から降りたところ、後方から走行してきたタンクローリー車にはねられて死亡した。(遺族4名)

項目 金額・内容
労災保険特別加入給付基礎日額 10,000円
遺族補償年金 2,450,000円
遺族特別支給金 3,000,000円
葬祭料 615,000円
合計 6,065,000円

労災保険:特別加入制度に関するよくある質問

労災保険特別加入制度に関してよくある質問をご紹介します。

Q.特別加入制度を利用できない場合はありますか?

下記に該当する場合は、労災保険の特別加入制度が利用できません。

  • 既に病気にかかっていて、症状や障害の程度から就労が難しいと判断される場合
  • 療養に専念する必要がある場合

特定の業務に従事していて健康上不適当と認められて、業務を変えれば労災保険の特別加入制度が利用できるようになります。

Q.保険給付が受けられないケースはありますか?

次のような場合には、労災の保険給付を受けられないことがあります。

  • 加入前にすでに発症していた病気やケガ
  • 加入前の出来事や原因によって発症したもの
  • 特別加入した業務とは別の事業・仕事に従事しているときに発症したもの

Q.休業補償、障害補償や遺族補償は付いていますか?

特別加入している方が 業務または通勤によって被災した場合、通常の労災保険と同じく所定の保険給付が行われ、あわせて「特別支給金」も支給されます。

<主な給付内容>
療養(補償)給付金/休業(補償)給付金/障害(補償)給付金/傷病(補償)年金/遺族(補償)給付/葬祭料/介護(補償)給付など

労災保険:特別加入制度の相談は「TSC」へ

労災保険:特別加入制度の相談は「TSC」へ
創業時に労災保険の特別加入制度を利用したいと思った方は、年間10,000件以上の労災手続きを行っているTSC (CACグループ)にご相談ください。TSCに相談すれば、3つのメリットが得られます。

年会費や事務手数料が1年間無料

TSCで労災保険の特別加入すれば、年会費と事務手数料が1年間無料(※TSCの定めるところによる)です。
組合や団体により金額は変動しますが、年会費は10,000~50,000円します。

開業したばかりの事業主やフリーランスは、固定費が大きな負担になりがちです。そのため、少しでも費用を抑えて労災リスクに備えたい方は、TSCに相談してみてください。

労災上乗せ補償(みらいふ労災共済)が用意されている

TSCは労災上乗せ補償(みらいふ労災共済)を提供しています。通常の労災保険の給付額だけでは、休業中の治療費や生活費を十分にカバーできない場合があります。その不足を補う仕組みが上乗せ補償です。

みらいふ労災共済の掛け金は1,000円からで、休業時の収入を100%補償してもらえます。そのため、家族を不安にさせたくない方は労災上乗せ補償を利用することをおすすめします。

社労士・税理士をはじめとした各種専門家への相談が無料

TSCでは、労務について専門家に相談できるサービスが提供されています。

労働保険、社会保険、給与計算、勤怠管理、経理事務、ホームページや名刺制作などを専門家に相談できるため、「事務手続きが苦手」「事務作業をお任せしたい」といった際に相談に乗ってもらえます。

これらのサービスも1年間無料で利用できることもTSCの魅力です。※一部有償となるサービスもあります。

まとめ

法人役員や個人事業主でも特別加入制度を利用すれば、労災保険に加入できます。業務が原因で負傷したり療養したりしなければならなくなったとき、休業補償が出なければ大変です。そのため、労災リスクを少しでも感じる方は、ぜひ労災保険への加入を検討してみてください。

(監修: 株式会社シーエーシー
(編集: 創業手帳編集部)

この記事に関連するタグ
このカテゴリーでみんなが読んでいる記事
カテゴリーから記事を探す