「脱税」と「節税」何が違う?税務調査で発覚しやすい脱税のケース

資金調達手帳

専門家が違いを解説しました

(2018/11/30更新)

事業をしている上で、うまく利益が出せるようになってきたら必ずお付き合いすることになる税金。税金を納めるのは義務であることはよくご存じかと思いますが、納める税金の額をできるだけ低く抑える(節税する)ために色んな方が知恵を絞ってきました。

しかし、ルール違反な方法で税金を低く(脱税)しようとすると、もちろん罰則が待っています。
そこで今回は、「節税」と「脱税」の違いを説明しながら、税務調査で発覚しやすい脱税のケースについて、税理士の田港大輔さんが解説します。

「節税」と「脱税」の違い

「節税」とは、法律のルールの範囲内で、合法的に税金を低くすることを言います。
節税は事業者の権利ですので何も問題はありません。

一方で「脱税」とは、法律のルールの範囲を外れ、納税義務のある人が違法な手段により納税義務を免れる行為を言います。より具体的に言えば、ありもしない事実をでっちあげたりしてしまうと脱税となります。

以下で、節税策と行き過ぎて脱税になってしまうパターンをご紹介します。

パターン1:期末間際に、事務所の壁紙を修繕する…

今期の初めから頑張ってきて、とうとう今期の最終月。売上も好調で思いのほか利益が出ている状況。このままだといつもより多く税金を払わないといけなくなるので、壁紙の修繕を行なって節税しようと考えた。

節税になる場合

「税金を低く抑えるために必要性を認識していたが、先延ばしにしていた事務所の壁紙の修繕を決算日までに終えた。」

上記のような場合は壁紙の修繕は経費として認められ、決算日までに壁紙の修繕を終えているので合法的な節税になります。

ここで大事なのは、決算日までに修繕を終えることです。決算日を過ぎて翌期に修繕が行われた場合には、翌期の経費となります。先に代金を前払いしていても、経費の判定は修繕が行われた日で判定することになります。

脱税になってしまう場合

「決算日までに修繕を終えないと当期の経費にならないと認識していたが、どうしても工事業者とスケジュールの折り合いが合わず、修繕が翌期に行われてしまった。そこでなんとか今期の税金を払わないために、修繕が行われた日の日付を書き換えて、当期に修繕が行われたことにした。」

上記の場合、翌期に修繕が行われたという事実を捻じ曲げ、当期に行われたと偽装していますので、脱税になります。

税務調査の際、調査官は期末間際の取引を入念にチェックします。上記のように期末間際の取引には、翌期の経費を前倒しして計上されていることがあるからです。
利益操作のためにする行為であれば当然に金額も大きくなりうるので、調査官は事実確認や書類の適切性を確認するでしょう。

経費の計上は前倒しをしているのではないかと疑われますが、売上の場合は翌期に先送りすることにより、利益を少なく計上しているのではないかと疑われます。
いずれにしても、決算日前後の取引は念入りにチェックをされます。

パターン2:使っていない資産を処分する…

最近、新しい機械を導入し、今まで使っていた機械はまだ使えるが倉庫に眠っている。節税のために処分しようと考えた。

節税になる場合

「もう使わなくなってしまった旧機械を廃棄処分して、旧機械に残っていた帳簿価格を除却損として計上する。また廃棄の際には廃棄業者からも「廃棄証明書」を受け取って保管している。」

上記の場合は、廃棄したことが認められ帳簿価格を除却損として経費に計上するのに何ら問題はありません。また、税務調査の際の説明責任を果たすために「廃棄証明書」を業者から入手し、保管している点で良い対応です。

脱税になってしまう場合

「今は使っていない機械だが、新しい機械の調子が悪くなってしまうかもしれないし、念のため倉庫の奥にしまっておこう。けど、せっかくだから税金を抑えるために廃棄してもうなくなったことにしておこう。」

上記の場合には、本当は廃棄していないにも関わらず、廃棄をしたことにして事実をでっちあげております。そのため、脱税にあたります。

機械などの廃棄による経費の計上があった場合には、調査官は当然のように本当にその事実があったのかを疑います。その際、廃棄したことの書類などが見つからない場合は証拠の提示を求めるでしょうし、必要であれば機械が保管されている倉庫内の調査はするでしょう。その時に廃棄したはずの機械がそこにあったら言い逃れはできません。

まとめ

いかがでしたか?
税金を抑えるために「脱税」をしても、「脱税」が発覚した場合には重いペナルティーが待っております。
そうならないためにも、「節税」の勉強をしっかりとして、合法的な範囲で事業のキャッシュフローを順調にまわしていきましょう。疑問点が出てきたら、税理士などの専門家に頼るのも一つの手ですね。

(監修:田港大輔税理士事務所 田港大輔
(編集:創業手帳編集部)

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