Schoo 森健志郎|世の中から卒業をなくす!オンライン学習コミュニティ「Schoo」で“学び続ける社会”の構築
自身の体験からサービスを構想!社会人教育市場に革命を起こしたスタートアップの成功要因に迫る
eラーニングとは、パソコン・タブレット・スマートフォンとインターネットを活用して学ぶ学習形態です。時間と場所を選ばずに利用できるため、なにかと多忙な現代社会人に最適な学習サービスとして注目を集めてきました。
ところが「ひとりで行うので受講意欲が低く、モチベーションも維持できず途中で挫折しやすい」といった学習意欲と継続の困難さを理由に、個人・法人を問わず利用頻度の低下という課題を抱えています。
こうした状況下で、途中で脱落せずに学び続けることができる、ライブ配信を活用した双方向型学習コミュニティの提供により社会人教育市場に革命を起こしたのがSchoo(スクー)です。
同社は「世の中から卒業をなくす」というミッションのもと、大人たちがずっと学び続けるオンライン学習コミュニティ「Schoo」(個人向け)、社員研修と自発型学習の掛け算で自律的に学ぶ組織をつくるオンライン学習SaaS「Schoo for Business」(法人向け)などを展開し、インターネットでの学びや教育を起点とした社会変革のための事業を推進しています。
今回は代表取締役社長を務める森さんの起業までの経緯や、Schooの成功要因について、創業手帳代表の大久保がインタビューしました。
株式会社Schoo 代表取締役社長
1986年大阪生まれ。2009年近畿大学経営学部卒業。2009年4月、株式会社リクルート(旧・株式会社リクルートメディアコミュニケーションズ)で、SUUMOを中心とした住宅領域の広告営業・企画制作に従事。2011年10月、24歳の時に株式会社Schooを設立し代表取締役に就任。情報経営イノベーション専門職大学 客員教授。
創業手帳 株式会社 代表取締役
大手ITベンチャー役員で、多くの起業家を見た中で「創業後に困ることが共通している」ことに気づき会社のガイドブック「創業手帳」を考案。現:創業手帳を創業。ユニークなビジネスモデルを成功させた。印刷版は累計250万部、月間のWEB訪問数は起業分野では日本一の100万人を超え、“起業コンシェルジェ“創業手帳アプリの開発や起業無料相談や、内閣府会社設立ワンストップ検討会の常任委員や大学での授業も行っている。毎日創業Tシャツの人としても話題に。 創業手帳 代表取締役 大久保幸世のプロフィールはこちら
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この記事の目次
eラーニングが苦行だった。自身の体験を活かしオンラインでの社会人教育事業で起業
大久保:まずは起業までの経緯についてお聞かせ願えますか。
森:近畿大学経営学部を卒業後の2009年4月、リクルートメディアコミュニケーションズ(現リクルート)に入社し、SUUMOを中心とした住宅領域の広告営業や企画制作に従事しました。
2年ほど勤務したタイミングで「ロジカルシンキングとマネジメントの研修を受けてほしい」と伝えられ、初めてインターネット上で教育録画を視聴するeラーニングを利用したんです。
これが正直言って、苦行でしかない経験でした(苦笑)。
と同時に、eラーニングに対して疑問ばかり湧いてきてしまって。「もっと前向きな気持ちでストレスなく学べる教育動画があれば、間違いなく多くの人の役に立つはずだ」という想いを拭うことができませんでした。
その衝動のままに、次の日には退職届を提出。2011年10月3日にオンラインでの社会人教育事業を展開するSchooを設立しました。
大久保:eラーニング領域が抱える大きな課題を認識されたからこそ、決断と行動が早かったんですね。現在の従業員数は200名とのことですが、森さんおひとりで創業されたのでしょうか?
森:ひとり起業でした。退職時は24歳でしたので退職金が30万円程度だったのですが、この30万を資本金にあてて始めた会社です。
大久保:創業当初からの事業であり、現在も核となっている社会人のためのオンライン学習コミュニティ「Schoo」のローンチ時には、錚々たる起業家が講師として登場されていましたよね。
森:起業家界隈には知り合いがいなかったのですが、SNSのダイレクトメールを送り、弊社の事業内容とコンセプトを伝えてお願いしたところ「面白いことやろうとしてるんだね!」という感じで、皆さん無償で授業を引き受けてくださったんです。
古川健介さんや家入一真さん、ビズリーチの南壮一郎さん、ヤフーの川邊健太郎さんなど、日本を代表する起業家ばかり。そのおかげで当時あらゆる方面から注目していただきました。
大久保:なぜローンチ当初に起業をテーマにした講座を決めたのでしょうか?
森:学習コミュニティを提供する企業の代表である私自身が「この学びが体験できればみんな楽しく続けていけるはずだ!」という確信が持てる経験をしておきたかったからです。
なにしろ当時の私は、起業に関する知識やインターネットを活用したサービスの構造、プログラミングのノウハウなど、わからないことだらけだったんですね。課題意識だけで「なんとかしなければ!」と勢いで起業してしまったんです(笑)。
ただし、当初から「すべてのユーザーが脱落せずに学び続けることができる、ライブ配信を活用した双方向型学習コミュニティの提供」という方針は定めていました。じゃあどういう授業がいいだろう?と考えたときに、私自身がユーザーとして学べるものがいいなと。
私が学べる領域をひとつ用意しておけば「実際に学ぶことができたか?価値ある体験だったか?」を判断しやすいですからね。こうした想いや狙いをすべて包み隠さずお伝えした結果、素晴らしい起業家の方々にご協力いただくことができました。
従来のeラーニングとは一線を画す、コミュニケーションやコミュニティを軸とした学習
大久保:実は私も「Schoo」のユーザーで、新たなトピックスや特定分野を調べたいときに活用させていただいています。だからこそ実感するのですが、「Schoo」は明らかに他のeラーニングや動画サービスとは一線を画していますよね。具体的に「ここが違う」という要素についてお教えいただけますか。
森:「Schoo」は「一生、学べる学校」をコンセプトに掲げ、「未来に向けて、社会人が今学んでおくべきこと」をテーマに生放送授業を365日、毎日提供しています。コミュニケーションやコミュニティを軸とした双方向性のある学習を重視していることがポイントです。
従来の学習コンテンツは、教材となる動画をひとりで見て完結してしまう一方通行型が一般的ですよね。自発的に勉強できる人向けに作られているソリューションなんですよ。
一方、弊社の「Schoo」はユーザー同士でチャットをしたり先生に質問をしながら、同じことを学びたい人同士で学習を継続し支援しあう双方向型のコミュニティとして運営していることが大きな違いです。
動画や書籍を渡されても、途中で投げ出したり諦めてしまう。そんな方々でも「楽しく学び続けるためにはどうすればいいか?」を前提として設計されているんですね。“教育カリキュラム”ではなく、“学習コミュニティ”という場の提供にこだわっています。
だからこそ同じリアルタイムのライブ配信でも、デザインや授業の作り方などすべて含めて「他のサービスとは違う」と実感していただけるのではないかなと。そもそもサービス構想からまったく違いますからね。
大久保:誰もが学びを継続しやすい環境構築を徹底されていることが素晴らしいですね。こうした“場づくり”はお金をかけたり、設定するだけで実現できるものではありません。登録ユーザー数を飛躍的に伸ばしているのも当然だなと感服しました。
森:ありがとうございます。私自身の「教育動画は苦行でしかない」という体験をサービス構想に活かしていますので、「楽しく学び続けられること」「今の自分にとって学ぶべき領域がわかること」に注力し、地道に改良を重ねながら運営しています。
従来のサービスでは学習が難しかった方々でも、前向きに学び続けた結果として、毎日少しずつ自信が持てたり、自ら人生を切り拓いていけるようになっていただけたらうれしいです。
新たなことを学ばないとマイナスになっていく「減点方式」の現代社会で強みを発揮
大久保:森さんが2011年に起業されてから約12年が経過しました。その間に起こった、世の中がeラーニング市場に求めるニーズの変化についてお聞かせいただけますか。
森:弊社が事業を開始した2011年は、現在と比較すると「学び」のベクトルが大きく異なっていました。
「新しいことを学ぶ」というアクション自体が、「年収を上げたい」「自由な時間を増やしたい」といったようにプラスになる方向を向いていたんです。必然的に「加点方式」をベースとした学びのソリューションが中心でしたし、eラーニング市場に対して求められていた概念でした。
自発的にどんどん学ぶ必要があるビジネスエリート向けに作られたソリューションが多かったのは、「現状で満足」であれば学ばなくてもなんとか食べていけたという社会背景も関係しているんです。
あれから12年経って、どんな変化が起こっているか?というと、昨今盛んにリスキリングが推奨されているように、学び直して自らの知識やスキルをアップデートしていかないと社会の移り変わりについていけない時代が到来しています。新たなことを学ばないとマイナスになっていく「減点方式」なんですね。
こうした状況下で、「敷居が低くて学びやすい」「どんな人でも最後まで学べる」という強みを持つ弊社のサービスへのニーズが一層高まってきました。
決して創業当初からこの変化を予測していたわけではありませんが、「12年経って広く評価いただいているんだな。ずいぶん時代を先取りしていたんだな」と実感しています。
大久保:チャットGPTの登場など、テクノロジーの進化により労働環境が大きく変わろうとしている影響もありますよね。「テクノロジーに仕事を奪われるのではないか?」と危惧する一方で、「テクノロジーを活用できるからこそ働かなくてもよくなるはずだ」という楽観論も囁かれています。森さんの見解についてお聞かせください。
森:人類の歴史を紐解いていくと、技術革新によって「仕事がなくなる」「働かなくてもよくなる」という論調はどちらも誤りであることが多いです。
ではなにが必要とされているのか?というと「時代に合わせてどういう仕事を選ぶのが適切か?」「現代社会において求められているのはどんなスキルか?」をその都度突き詰め、自分自身をアップデートしていくこと。
たとえば人間の移動手段は、馬や馬車から自動車へと進化しました。移動が楽になっただけでなく、管理コストや物流コストが大幅に改善されたことで、当時も同じように「人間は働かなくてもよくなるのではないか?」との意見が盛んに飛び交ったそうです。
でも、時代を経ても私たちは毎日のように働いていますよね?
大久保:「馬を乗りこなしたり管理する技術から、自動車運転スキルに転換する必要があった」ということですね。
森:その通りです。やはり当時も「スキルアップできなかった人たちは収入が減ったり失職してしまった」と伝えられています。
つまり技術革新によって「仕事を失う」「働く量が変わる」という状況は起こりにくいんです。「技術革新がもたらした時代の移り変わりに合わせて、職種を変えたり必要なスキルを身につける」というのが人類が取るべきアクションなんですね。
社内教育でも「良い学び」を提供。徹底したこだわりの「Schooユニバーシティ」
大久保:敷居を低く、かつ良質な学びを提供し続けている御社では、社内教育にも力を入れていると伺っています。詳しくお聞かせください。
森:弊社では「Schooユニバーシティ」という社内大学のような学習制度を設け、働くメンバー一人ひとりの成長と成功をサポートしています。
自己基盤・社会課題解決視点・キャリアオーナーシップを持った自律的な「輝く個」であること、そしてすべてのメンバーが常に新しい学びによって行動の変化を起こし、成果につなげていくことが目標です。
原則として役員の受講も義務づけていて、Schooに属する全員が業務時間内にあらゆる領域を学ぶことができます。
大久保:業務時間内の受講が可能なんですね。
森:はい。弊社はイノベーション進化とパフォーマンス向上を実現する「学びの力」を信じている会社ですので、プライドを持って「良い学び」を提供しています。ユーザーはもちろんですが、大切な仲間であるメンバーに対してもその想いは変わりません。
それからチーフ・ラーニング・オフィサーという「CLO」のポストを設置していることも弊社の特徴です。COOやCFOと並ぶ立場のCLOが、社内ラーニングに関する責任者として組織づくりや「Schooメンバーの学び」を支援しています。
「インターネット学習で人類を変革する」。Schooが目指すのは大きな社会改革
大久保:最後に、今後の展望についてお聞かせいただけますか。
森:弊社は創業以来、社会人教育市場においてオンライン学習を起点にサービスを展開してきました。
先ほどお話しした個人向けの「Schoo」をはじめ、法人向けとして社員研修と自発型学習の掛け算で自律的に学ぶ組織をつくるオンライン学習SaaS「Schoo for Business」も高評価をいただいています。高等教育機関DX事業や地方創生・スマートシティ推進事業などここ数年で立ち上げた新規事業も好調です。
現在、市場ではリスキリングや人的資本経営というグローバルレベルでの大きな波が発生しているため、個人・法人を問わず顧客や社会から弊社の技術へのご要望をいただく機会が増加しています。
まずはこのニーズにしっかりと応え、より多くの方々に弊社のサービスを届けていきたいです。
そしてそのうえで、既存の職場・職種問わずAの職種からBの職種への職種転換を成功させるための支援を考えています。
大久保:先ほどお話しいただいた「馬を乗りこなしたり管理する技術から、自動車運転スキルへの転換」が、テクノロジーの進化により現代社会でも求められているからこそ、誰もがスムーズに実現できるよう支援されていくということですね。
森:おっしゃる通りです。
弊社のサービスをご利用くださっている方々から、「Schoo」によって学びの習慣ができたという、うれしいお声を聞かせていただくことが増えました。
その一方で、ジェブチェンジや職種転換のためには半年から1年スパンで体系的に職業訓練を受ける必要があるんです。
これまで「学習が継続しない」と諦めていた方々が学ぶ習慣を身につけてくださったのは非常に喜ばしいことで、だからこそ弊社としては迅速に次なる手を打たなければならないなと。
そこで職業訓練校や類似サービスを提供されている企業・団体と連携し、弊社のサービスで学びの継続に自信を持つことができたユーザーをきちんとつなげながらサポートしていきたいと考えています。
大久保:さらなる大きな社会改革を目指していらっしゃるんですね。
森:はい。これからも「インターネット学習で人類を変革する」というビジョンを実現させるために、弊社は走り続けます。
大久保の感想
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(取材協力:
株式会社Schoo 代表取締役社長 森 健志郎)
(編集: 創業手帳編集部)
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