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問屋と卸業の違いは?

問屋と卸業の定義、違いや具体例についてわかりやすく説明します。
問屋と卸業は、どちらも製品をメーカーから仕入れて小売業者に販売する業者を意味します。

業者としての機能は同じですが、法律上の定義に違いがあります。「問屋」の呼び方には一般的な「とんや」と、法律的な「といや」があり、これらの定義が異なるためです。
前者の「とんや」は、一般的に使われる表現で、法律での決まりはなく広義の卸業を指しますので、食品や工業製品などの幅広い業種が該当します。自らのために物品の買い入れをして小売業者に販売し、仕入れ価格と販売価格の差が利益となります。

一方、後者の「といや」は、商法第551条で次の通りに定められています。
・問屋(といや)とは、自己の名をもって他人のために物品の販売又は買入を為す業とする者をいう。
つまり、自らではなく他人のために物品の販売や買い入れをする、という点が異なると言えます。売買の取次ぎを行う業者であり、代表的な例には証券会社における売買仲介が該当します。証券会社は投資家に対して株式など有価証券の売買を行い、委託元の投資家から得る手数料が利益となります。このように、問屋と卸業についての説明をまとめると、次の通りとなります。
・問屋と卸業はどちらも製品をメーカーから仕入れて小売業者に販売する業者を意味する。
・両者には法律上の違いがある。自らのために物品の売買をして利益を得る「問屋(とんや)」または「卸業」に対して、「問屋(といや)」は商法第551条によって他人のために物品の販売や買い入れをする、という違いが定められている。
・「問屋(といや)」の代表例には証券会社の売買仲介があり、有価証券の売買を仲介することで、委託元の投資家から手数料を得て利益とする。

ここまでで、問屋と卸業について説明しましたが、問屋の「とんや」と「といや」をさらに詳しく説明するため、具体的な例をあげてみましょう。
まず「とんや」をアパレルの業界で考えてみます。メーカーが生産した洋服を「とんや」は4,500円で仕入れ、6,000円で小売業者に販売します。販売価格は自らで設定し、売買での差額1,500円が利益となります。ちなみに、小売業者はこの洋服を10,000円で消費者へ販売します。洋服の流通の中で、それぞれの業者自身によって価格と利益率が決められ、売買が行われます。

次に「といや」を証券会社の売買仲介で考えてみます。証券会社は委託元であり売り手の投資家から株式を10,000円で売りたいと依頼され、株式市場を通じて買い手の投資家への販売を仲介します。この売買で委託元の投資家からの手数料が証券会社の利益となりますが、手数料は取引きの方法によって変わります。たとえば、証券会社の店舗では2,000円、電話では1,000円、オンラインでは200円といったように様々となります。
この事例のように、「とんや」と「といや」の違いは、「とんや」が販売価格を自らで設定して利益を得るのに対し、「といや」は委託元によって販売価格が設定され、売買を仲介する手数料で利益を得ることが明確に異なると言えます。

また、歴史上での問屋の由来と変遷についても補足します。
問屋は鎌倉時代に物品の運送や倉庫、さらには販売を行った組織である「問丸(といまる)」がルーツと言われます。その後、呼び方が「といや」に変わり、江戸時代には幅広い運送および専門の卸業者が「とんや」と呼ばれるようになりました。
明治時代に入ると、ドイツ商法典第383条に基づいた先述の商法第551条によって「といや」が定義されました。しかし、現代においても一般的には「とんや」の方が広く使われています。
なお、商法551条に準じた商法第558条によって「準問屋(じゅんといや)」というものも定められています。この定義は、自己の名をもって他人のために物品の買い入れまたは販売以外の行為を業とする者、とされています。問屋との違いは、物品の買い入れや販売以外を行う点であり、新聞広告や保険契約の取次ぎ業者などが該当します。

その他にも、問屋や卸業と混同しやすい表現として「商社」があります。
商社とは、物品の売買を業とする会社を意味しており、幅広い分野の物品やサービスを扱う「総合商社」と、特定の分野の物品やサービスを扱う「専門商社」に区分されます。
問屋や卸業との違いは、問屋と卸業が物流の機能を含むのに対して、商社は物流を行わず商流の機能のみを担っていることです。

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