TRSP・トレスポ 山田 規敬|創業2年で年商2億円!SNSと専門性を武器に「照明の闇」をクリアにする起業のリアル

※このインタビュー内容は2026年07月に行われた取材時点のものです。

業界の常識を疑え。国内外全メーカーから最適解を導く一気通貫の独自戦略

TRSP株式会社山田氏
照明プランニングや販売を手がけるTRSP株式会社と、照明デザインやSNS発信事業の株式会社トレスポの2社を経営している山田 規敬さん。大手照明メーカーでの12年の経験を経て独立し、業界の「当たり前」に縛られない独自のビジネスモデルを確立。Instagramで1.5万人のフォロワーを持つ「照明の赤ペン先生」としての発信力も武器に、創業からわずか2年で年商2億円を達成しました。

今回は、ニッチな市場で圧倒的な存在感を放つまでの顧客獲得術や、競合と差別化を図る仕入れの交渉戦略など、専門性を武器に独立を目指す起業家必見のノウハウを伺いました。

TRSP株式会社山田氏

山田 規敬(やまだ のりたか)
TRSP株式会社・株式会社トレスポ 代表取締役 
高校卒業後、インテリアコーディネーターの専門学校やイタリアへの留学を経て株式会社遠藤照明に入社。照明のプランニングや設計、販促を経験した後、株式会社フジコーに転職。照明の販売とプランニングを担当した後、照明の闇をクリアにしていきたいという思いでTRSP株式会社・株式会社トレスポを創業。Instagramで1.5万人のフォロワーを持つ照明インフルエンサー「照明の赤ペン先生」としての顔も持つ。

「照明の闇をクリアにしたい」大手で12年磨いたプロが、SNSを武器に独立

TRSP株式会社山田氏

ー現在経営されているTRSP株式会社、株式会社トレスポの事業内容について教えてください。

山田:TRSP株式会社は照明器具の販売をしています。通常、照明器具は照明メーカーからの直接販売ができないので、プランニングをして販売する販売店としての立ち位置ですね。

株式会社トレスポでは、照明のデザインとSNSの発信をしています。照明のデザインの方は、有名照明メーカー5社ほどから外注を受け、年間300件以上のデザインを行っている状況です。SNS事業としては、Instagramを活用しながら個人の方向けに照明の相談に乗っています。主に家作りをされている方から年間100件ほどの相談を受けており、1.5万人ほどの方にフォローしていただいています。

ー山田様ご自身のこれまでのキャリアについてお聞かせください。

山田:高校を卒業してからしばらく芸能活動をしていて、22歳ぐらいの時に辞めてインテリアコーディネーターの学校に行き、卒業後イタリアに留学しました。日本に帰国後、卒業した学校の恩師に紹介していただき、大手照明メーカーに就職したのがキャリアのスタートになります。商業系の照明を中心に、照明のプランニングや設計、販促の仕事を4年ほど経験した後に、店舗系の照明器具を販売する会社に転職しました。そこでは「ただ照明器具を売るのではなく、設計やデザインから販売まで行う」という会長の思いがあり、照明部署の立ち上げから携わって、照明の販売とプランニングを12年間担当。3年前に独立して今に至ります。

ー独立を決意された背景にはどのような思いがあったのでしょうか。

山田:DXが各業界で浸透しつつある現代でも、建築業界は未だにFAXを使っていたり、口頭で伝えることが多かったりと、比較的アナログな文化が残っているんです。でも、そこで「思考停止で業界の当たり前のやり方に従う」のは非常にもったいないと感じました。照明業界の中でもSNSを活用して活躍されている方は数名いらっしゃったので、SNSなどを活用しない手はないということはずっと考えていたのですが、そういったアイディアを提案しても却下されることが続いていたんです。

2020年にコロナ禍になり、世間的には在宅勤務が叫ばれる中で、それでも出社しないといけないという雰囲気に疑問を抱きました。また、家族との時間をなかなか取れないことも悩みでした。子どもが親と過ごしてくれる時間は有限で、後からは取り返せないことを思うと、働き方を変えなければと強く感じたんです。独立すれば、自分らしいやり方で仕事ができるのではないかという発想のもと、起業しました。

ー起業当初はどのように顧客を獲得していったのでしょうか。

山田:ありがたいことに、それまでおつきあいがあった方々にお声がけしていただき、そこから口コミでどんどん仕事が広がっているという感じです。というのも、照明の販売会社で、デザインから販売まで一気通貫の会社はなかなか珍しいので、そこに価値を感じていただけているのだと思います。

また、国内外ほぼすべてのメーカーの照明器具の取り扱いが可能で、すべてのメーカーから仕入れが可能です。メーカーに関係なくお客様の好みのデザインを提供できますし、コストも安くなります。設計やプランニングから納品までするという利便性や、選択肢の多さ、コストの安さに魅力を感じていただいているお客様が多いのではないかと思いますね。

ー業界の課題に対して、TRSPやトレスポではどのような価値を提供しているのでしょうか。

山田:照明を提案する際、照明メーカーは自社製品の販売促進のために、無償で照明プランを請け負い、自社の製品に偏って提案をします。ただ、メーカーによって得意不得意な商品があったり、そもそもラインナップがなかったりした場合、やや強引に照明を当てはめて提案しているような状況です。こうした提案に無理があり金額も高くなるシステムそのものを変えていきたいと思っています。TRSPでは照明のデザインから販売までさせていただくことで、様々なメーカーさんから最適なデザインとコストのものを選択し、提案させていただいています。

また、建築デザインのプロセスにおいて、照明デザイナーはサブ的なポジションに入ることが多く、日本の照明デザイナーが育っていない状況です。海外では照明がアートや都市計画の一部として認識されており、職業としての地位や報酬水準が高い傾向があるんです。トレスポではSNSを使って発信することによって、照明デザインというものの価値を高められるよう意識しています。

預金残高がゼロ寸前に。黒字倒産の危機を乗り越え、創業1年目で「大手並みの信用」を築いた交渉術

ー創業期のチームづくりについて教えてください。社員やパートナーを集める際に大切にしたことは何でしょうか

山田:デザインの質を重視し、しっかりとした設計やデザインができる人材を選ぶことを意識しました。先ほども触れたように、独立する際に「プライベートと仕事を両立できる働き方」が自分の中で重要なテーマだったため、そのような働き方ができる仕組み作りに意識的に取り組んでいまして、現在スーパーフレックスで出社も服装も自由にしています。月に何時間働けばいいという契約で歩合制なので、週に3日しか働かない人もいますし、ワーケーションもOK。親の介護をしながら働いている方も、病気をして前の会社を辞めた方もいます。働きたい人はたくさん働けますし、プライベートを優先させたい人は優先できる、自由な働き方ができるというところに共感してくれる方が集まってくれていますね。

ー創業から比較的短期間で年商2億円規模まで成長されていますが、その成長を支えた要因は何だったとお考えですか。

山田:デザインに注力する一方で、デザインがよくても値段が高ければ売れないため、価格の差別化にも力を入れてきました。販売量が少ないと仕入れ価格は高くなるのが業界の常識ですが、起業して最初に取り組んだのが、仕入れ価格を今まで働いていた大手企業と同じにすることでした。当社がデザインをすることで先方の販促費は下がるので、そこを還元して欲しいという交渉を粘り強く行ったんです。

また、最初の1年ほどはすべて前金で支払いをしました。自己資金や銀行での借り入れで対応していましたが、最初は信用を得るというところを徹底的に意識しましたね。

そのような形で、デザインと価格の質を高めながら信用を積み上げていった結果、口コミやSNSの拡散力でここまで来ることができたと感じています。

ーこれまでで最も苦労した経営上の壁は何でしたか。また、それをどのように乗り越えたのでしょうか。

山田:まずは金銭的な部分ですね。申し上げた通り、創業後約1年間は家のお金も使って前払いをしていたので、事業を回す上で一時期は銀行の預金の残高がゼロに近くなり、黒字倒産も頭をよぎるぐらいのギリギリの状態でした。ただ、リスクを取らないと売り上げが上がっていかないため、最初の頃はリスクをしっかり取りながら挑戦したことがかなり苦労した点です。

次に人材です。創業してから1年ほどは、まだ信用もなく、業界の中でも異色な取り組みの事業だったため認知されるまでに時間がかかり、実績が立つまではなかなか人が集まりませんでした。SNSのフォロワーが増え、徐々に信用してもらえるようになってから人材も集まるようになりました。

ー今までに1,000件以上の照明提案実績を持ち、高級ブランド店舗やホテル、住宅など幅広い案件を手掛けてこられました。仕事が広がっていった転機や、大きな信頼を獲得できた理由は何だと思われますか。

山田:これは独立前から心がけていたことですが、起業後もいただいた仕事に対して決してノーを言わず、できる方法を探すということを大切にしてきました。その過程で様々な知識やスキルが増え、対応できる仕事の幅が拡大することで、口コミや紹介で新しい仕事につながってきた実感があります。

その結果、当社では普通の照明器具の会社なら扱わない範囲までカバーしています。例えば照明のプランニングの中で、ミラーが曇らないようにするヒーターの選び方を自然とアドバイスしたり、ホテルのカードキーを差し入れてON/OFFするスイッチの取り扱いを始めたりという風に仕事が広がっていきました。

地方発の営業から全国区へ。SNSを自社の「最強の信用補完ツール」にする方法

TRSP株式会社山田氏

ーInstagramでは1.5万人を超えるフォロワーを集めていらっしゃいますが、どのようにフォロワー数を伸ばされたのでしょうか?

山田:照明というニッチなジャンルなので、毎日投稿するのはもちろん、自分よりも発信力の高い方にアプローチをさせていただいて一緒にコラボ撮影をすることは意識していました。毎日投稿するのは大変ではありましたが、1年間で1万人の方にフォローしていただくことができたので、今の立ち位置を考えたら頑張ってよかった、と思えますね。

ーSNS発信によって、事業や顧客との関係性にどのような変化がありましたか。

山田:仕事でお会いする時に、こちらが知らなくても先方が認知してくださっていることが増えたり、先方がSNSのことを知らない場合も「実はこういうのもやってまして」とお伝えした時に、フォロワーが1万人以上いることで信用度が上がったりと、非常に恩恵を感じています。

また、SNS経由でセミナーの依頼をいただくこともあります。2026年7月に母校である「町田ひろ子アカデミー」で照明提案に関するセミナーを行うんですが、告知してすぐに150名ほどの応募がありました。通常の営業活動だとどうしても地域限定になってしまいがちですが、SNSの発信ですと日本全国に認知が広がりますし、拡散力もあるので、SNSに力を入れたことで本当に価値や信用を得ることができたと感じています。

ーInstagramでは照明に関するどのような相談を受けているのでしょうか。

山田:主に家を作っている方に向けて発信をしているのですが、ハウスメーカーに提案された照明プランが本当に自分の理想的な照明になるのかという悩みや、もっといい照明にしたいという悩みを持っている方が非常に多い印象です。

その原因として、家づくりの中で照明はほんの一部でしかなく、マニュアル的な対応しかされていないことが挙げられます。そういった対応に不安を感じて相談に来られる方が多く、例えばダウンライトの位置やサイズなどに関してアドバイスしています。

「なぜ起業したいのか?」「その中心には誰がいるのか」しっかり考えることが大切

ーAIやスマートホーム技術の進化によって、照明業界は今後どのように変わっていくとお考えですか。

山田:照明は、実際に光らせてみないと空間がどう変化するかわかりません。照明の良し悪しなどの情報を発信したり、ハブとしての立ち位置であったりという我々ができることを継続して行っていくつもりです。VRなどが進化していくにつれて、照明プランニングの作業の部分はなくなっていくかもしれませんが、デザインやプランニングの部分は残るでしょう。

ー今後、TRSP株式会社・株式会社トレスポとして実現したい未来を教えてください。

山田:「照明で悩む人がいなくなってほしい」という思いがずっとあります。照明で悩む人が多いのは、ハウスメーカーやインテリアコーディネーターの知識不足という要因があるため、現在そこに対してのセミナーや勉強会を開催していこうと動いています。現状、建築において照明があまり重視されていないのは、まだ照明でどれだけ空間の雰囲気が変化するかが知られていないからです。

家づくり、空間づくりにおける照明の重要さをもっと知っていただき、「照明のデザインやプランニングを専門家に頼むべきだ」という認知が広まって、日本での照明デザイナーの地位が上がるようにこれからも活動していきます。

また並行して、好みや特性に合わせて自由な働き方ができる環境作りというところにも注力していきたいと考えています。ほかの場所では社会不適合者と言われた人でも活躍できる場を作り、当社が大きくなっていくことでそういった働き方をもっと世の中に広げていきたいですね。

ー最後に、これから起業を目指す方や、専門性を武器に独立を考えている方へメッセージをお願いします。

山田:「なぜ起業したいのか?」ということと、その中心には誰がいるのかということをしっかり考えて起業することをおすすめします。家族を幸せにしたいからお金が欲しくて起業するのであれば、家族と一緒にいる時間を減らすのではなく、一緒に過ごす時間をどう確保するかというところも考えて起業してほしいですね。

私自身、独立する前の生活には戻りたくないので、家族との時間を確保することをかなり意識しています。仕事を限界まで詰めてしまうと、目の前にある仕事しか考えられなくなってしまうので、あえて余裕を持つようにしています。頭の中の空間を空けておくことによって先のことまで考えられますし、新しいアイディアを思いつくこともあるんです あります。

そのためにも、任せられることは部下に任せています。仕事をお願いする際は、責任は取ること、ゴールは決めるけれどもゴールまでのプロセスは自由に動かしていいことを伝えるようにしています。ビジネスやマーケティング、組織づくりについて学ぶことも大切です。私も日々勉強していて、その中から、自分がいいと思った部分をピックアップして経営に取り入れています。

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