支払調書とは?押さえておきたい基本を分かりやすく解説!
支払調書について正しい知識を身につけよう
支払調書は、相続税法や所得税法といった法律の中で提出が義務となる法定調書です。
報酬や料金の支払いを実施する他に、投資信託で生じた分配金を支払う時に、税務署へ提出しなければいけません。
身近な存在として知られる源泉徴収票も同じ法定調書なので、個人用ではなく事業者用の源泉徴収票といったイメージをしてみると分かりやすいのでしょう。
今回は、そんな支払調書がいったいどのような書類なのか詳細に解説します。
支払調書について理解したい人は役立ててください。
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支払調書とは?
最初に支払調書がどのような書類なのか解説します。
支払調書とは法定調書の一つ
支払調書は、合計で60もの種類を持つ法定調書の一つです。
税務署がきちんと納税しているかを把握するために必須な書類となっています。
法定調書には支払調書以外にも、租税特別措置法で規定されている特定口座年間取引報告書、財産債務調書や信託の計算書、保険契約者などの異動に関する調書といった内容が存在します。
どんな目的がある?
支払調書は、特定の支払いを行った事業者がどのような支払いをしたのか税務署に示すために作成します。
その書類を税務署がチェックし、正しい申告が行われているかどうかを確認していきます。
支払いを受けたとしても、申告しなければ問題になることはないと考える人もいるかもしれませんが、脱税行為になるので用心しなければいけません。
支払いをした側が税務署に対して支払調書を提出すれば、その段階で支払いの事実が確認できるからです。
源泉徴収票との違いは?
源泉徴収票は、勤務先の会社から受け取る書類です。
給与所得の源泉徴収票は勤務中に受け取るもので、退職所得の源泉徴収票は退職した時に受け取るものとなっています。
給与所得の源泉徴収票は、1年間でその従業員に対してどのくらい給料を払ったか、いくら税金を徴収したかが書かれています。
従業員から徴収する税金は、会社が取りまとめて納税しているため、それも合わせて書類の中に記載されています。
基本的には、11月~12月くらいに行う年末調整で所得税の過不足を計算し、それについて源泉徴収票で従業員に示すという方法を採用する会社が一般的です。
源泉徴収票に関しては、必ず従業員に対して発行しなければいけないとされています。
確定申告をする時にも必要になるため、発行し忘れてしまったり、受け取り忘れてしまったりしないようにしなければいけない書類です。
受け取った際には、紛失しないように大切に保管しておいてください。
支払調書にはどんな種類がある?
4種類ある支払調書ですが、それぞれがどんな意味を持つ書類なのか、把握しておくとよりスムーズに進められるでしょう。
報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書
支払調書の中でも最も代表的なもので、この書類を思い浮かべる人が多いです。
報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書に含まれるのは、個人事業主に対して原稿やイラストを依頼した際に必須となる報酬や料金といったものになります。
支払調書は、基本的には個人に対して支払った報酬や料金に対して用意しなければいけないもので、芸能人やプロスポーツ選手、外交官、税理士など多岐に渡る職業と関連性があります。
支払調書の提出が必要となる年間の支払い総額は異なる、という点に気を付けなければいけません。
不動産の使用料などの支払調書
借地権や不動産といった不動産に関する権利を借りた時の対価を支払う法人、そして不動産業者を営んでいる個人が提出しなければいけない書類です。
不動産業者を営んでいる個人が建造物の賃貸借の代理、仲介といった業務を担っている場合は、提出の義務はないとされています。
事務所の家賃や権利金、更新料、駐車場代などを同一人物に対して1年間で15万円以上払っているケースでは、支払調書を提出しなければいけないという点を覚えておきましょう。
不動産などの譲受の対価の支払調書
不動産などの譲受の対価の支払調書は、不動産の使用量に関する支払調書と提出範囲が同様となっています。
不動産や不動産に関する権利を譲り受けた時に、対価を支払う法人と不動産業者を営んでいる個人が対象となっているのです。
同一人物に対して1年間の支払総額が100万円を超える際には、不動産などの譲受の対価の支払調書を作成しなければいけません。
また、使用料に関する譲り受けは、地方消費税や消費税の金額も含めて考えるのが基本的だという点も覚えておきましょう。
不動産などの売買又は貸付のあっせん手数料の支払調書
不動産などの売買又は貸付のあっせん手数料の支払調書は、不動産や不動産に関する権利を売買した時の代金、あっせんした際の手数料を支払った時に提出しなければいけない書類です。
全ての法人と不動産業者を営んでいる個人に、提出する責任があります。
この支払調書を作成する基準は、同一人物に対する1年間の支払総額が15万円を超える場合となっています。
不動産業者を営んでいる個人が建造物の賃貸借代理、仲介を目的とした事業を行っているのであれば、提出義務はありません。
支払調書はどんな時に提出する?
普段の生活の中にそこまで馴染みがない支払調書は、どんな時に提出するのか良く分からないという人もいるかもしれません。
そこで続いては、どういった時に提出する責任があるのか解説します。
源泉徴収義務者には提出義務がある
支払調書を提出しなければいけないのは、源泉徴収義務者のみとなっています。
源泉徴収義務者は、給与や報酬、料金を支払う時に所得税や復興特別所得税を差し引いて、税務署に納税する義務を有している者を指します。
法人であるケースにおいては、自動的に源泉徴収義務者になるのです。
しかし、個人事業主の場合は従業員を雇い、給与を支払っているケースに限って源泉徴収義務者になります。
つまり、自分だけで事業を行っている個人事業主は源泉徴収義務者にならないため、支払調書を提出する責任がないので理解しておきましょう。
法人が相手でも提出しなければならない
支払調書は、相手が法人だった場合も提出しなければいけないということを知っておく必要があります。
法人へ支払う際には、基本的に源泉徴収を行いません。
そのため、支払調書も必要ないと思われることがあるようです
支払調書と源泉徴収票は、似ている部分が多いのに扱いがまったく異なるため、迷ってしまうケースが多く見られます。
支払調書の提出先や提出期限は?
支払調書の提出先や提出期限に関しても知っておく必要があります。
次に、支払調書は「誰が」「どこに」提出するのか、提出期限はいつまでなのかといった点について解説していきましょう。
支払調書は「誰が」「どこに」提出するの?
以下のようなケースは、支払調書を所轄の税務署に提出しなければいけません。
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- 給与所得や退職所得を支払った側
- 個人事業主に対して原稿やイラストを依頼した際に必要となる報酬や料金を支払った側
- 借地権や不動産といった不動産に関する権利を借りた時の対価を支払う法人・不動産業者を営んでいる個人
- 不動産や不動産に関する権利を譲り受けて対価を支払う法人と不動産業者を営んでいる個人
- 動産や不動産に関する権利を売買した時の代金、斡旋した際の手数料を支払った側
その際に報酬を受け取った側に対しての発行は義務付けられていないので、それぞれの考え方に準ずることになります。
提出期限はいつまで?
支払調書の提出期限は、支払が確定した日の翌年1月31日までとなります。
それまでに、支払事務を行っている事務所もしくは事業所があるエリアを管轄する税務署長に提出しなければいけません。
法定調書を提出する際には、「給与所得の源泉徴収票などの法定調書合計表」の作成や添付も忘れないようにする必要があります。
また、インターネットを活用しての提出も可能です。
その際には、あらかじめ税務署に申請し認証をもらう必要があるので、忘れずに行いましょう。
法定調書は種類ごとに100枚以上になる場合は、光ディスクやe-taxを活用して提出することが2021年1月1日以降は定められているため気を付けてください。
支払調書を作成する際の注意点
支払調書を作成する際に、いくつか注意しなければいけないポイントがあります。
最後に、どのような点に注意しなければいけないのか、重要なポイントをいくつかピックアップしてご紹介していきます。
書式は国税庁のホームページからダウンロードが可能
各種支払調書の書式は、国税庁のホームページからダウンロードすることができます。
作成をするのであれば、国税庁のホームページをチェックしてみてください。
マイナンバーの取り扱いに注意
税務署に提出しなければいけない支払調書には、マイナンバーか法人番号を記載する必要があります。
ただし、マイナンバーは取り扱いに気を付けなければいけません。
なぜなら、マイナンバーは番号法という法律によって、特定個人情報に関する提供制限を受けてしまうためです。
その制限によって、支払調書をコピーした場合、書類の中にはマイナンバーを記載されたままではいけないことになっています。
本人に対して交付する場合も同様です。
つまり、個人の支払先に交付する場合は、税務署に提出した書類のコピーをそのまま渡すことはできません。
マイナンバーの部分を削除して新たに作成する、ということです。
それだけではなく、報酬を受け取る相手から提供されたマイナンバーに関しては、情報の管理や保管を適切に行い、廃棄する義務も支払調書を作成する側は有することを覚えておきましょう。
それに対して法人番号は、番号法による提供制限が設けられていないため、法人が支払先である場合は、税務署に提出したものをコピーして交付することが可能となっています。
消費税の扱いは明確にしておく
消費税の扱いは明確にしておくという点も注意したほうが良いポイントです。
支払調書に記載する金額は、税抜でも税込でも問題ありません。
しかし、どちらかに統一しなければいけないので、その点は注意しておくようにしましょう。
未払い分も記載が必要
支払調書には、未払い分も記載しなければいけません。
該当する年度中に源泉徴収を行う分の金額は、未払い分も記載することを忘れないようにしてください。
未払いで源泉徴収ができていない分に関しては、未徴収の税額も含めて記載しておきます。
また、締め日の段階でどれが未払なのか分かるように書くことも、大切なポイントの一つなので念頭に置いておいてください。
期限に遅れても必ず提出しよう
所得税などと同じように、提出の期限に間に合わないと延滞税が発生すると考えている人も中にはいるでしょう。
しかし、支払調書は納税に直接関係する書類ではないため、遅れてしまっても罰則を受けることはありません。
そのため、焦って提出するよりも、しっかりと必要な情報を集めて正確な金額を出してから提出を行う方が安心と言えます。
期限に遅れても、必ず提出するようにしてください。
まとめ
支払調書は、源泉徴収義務者が提出しなければならない書類です。
そのため、どのような書類なのかきちんと理解しておく必要があります。
税務署がきちんと納税しているかを把握するために必要な書類であり、正しい申告が行われていることを証明する書類にもなります。
この書類は源泉徴収票とよく似ているため、どのような違いがあるかもきちんと把握しておかなければいけません。
また、支払調書を作成する際の注意点についても知っておいた方が良いと言えます。
上記を参考に支払調書に関する知識を身に付けておきましょう。
(編集:創業手帳編集部)