ICTで様々な課題を解決できる時代 専門家に聞く「一歩先をゆくためのシステム活用」
事業のICT化について、ITコーディネータの山川元博氏に話を伺いました
(2019/11/01更新)
近年、日本でも浸透し始めているICT。スマートフォンやIoT(モノとインターネットをつなぐ技術)の普及に伴って生まれた概念で、ITに「コミュニケーション」を足した略語です。インターネットのような通信技術を利用したサービスなどの総称として使われています。
「情報技術」を意味する「IT」に対して、「ICT」は「情報通信技術」を意味します。 ITの次なるステップとして大きな期待が寄せられている一方で、「実はICTについてよくわかっていない」という起業家もいるかも知れません。 この技術の実情や企業活動にもたらす可能性について、自らも創業経験を持つITコーディネータの山川元博氏にお話を伺いました。
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ITコーディネータ協会(※)ネットワーク促進部 担当部長
ITコーディネータ、ミラサポ登録専門家、全国の500を超える中小企業・小規模事業者・自治体・金融機関から経営相談および意見交換を受けている。
(※)ITコーディネータ協会:経済産業省の推進資格、約6300名の資格保有者が全国各地で活動している。ホームページ(https://www.itc.or.jp)
ICTは馴染みがない言葉?実はすでに身近な技術
山川:聞きなれない言葉かもしれませんが、実は特別なものではありません。スマートフォンのアプリで無料通話をしたり、メッセージのやりとりをしたりといったこともICTの一部です。つまり多くの方がすでにICTを使っているのです。
一方で、ICTを事業に活用することはあまり進んでいません。大手企業では積極的に取り入れられているように思えるのですが、従業員が50人以下の企業だとほとんど導入されていないのが現状です。まずは経営者の方々に「ICTで解決できる課題がある」ということをもっと伝えていく必要があると思っています。
業種や時代に応じた ICTの幅広い活用方法
山川:業種によって様々です。例えば農業では、少ない人数でたくさんの圃場(ほじょう) を管理できるようにするためのネットワークカメラや、センサーのシステムが使われるようになってきました。飲食業や小売業では、お客さまへのおもてなしとしてのWi-Fiが広まっていたり、日本語が不慣れな外国人のアルバイトでも間違いが減るようなオーダーのシステムも導入が進んでいます。
最近目立つのは、「○○ペイ」のようなキャッシュレス化のサービスで、特にインバウンドの観光客が多い地域ではあっという間に普及しました。ICTに不慣れな従業員の方々は、最初多少不便に思うことがあるかもしれませんが、事業は時代の流れに乗らなければ生き残れないという側面もあります。キャッシュレスは海外の多くの国で、もはや当たり前に使われているので、特に飲食店は早く手を打つことをお勧めします。
創業時にはまず情報セキュリティ対策をしっかりとするべき
クラウド型サービスの普及
山川:情報セキュリティ対策としては、「クラウド(※)型」のセキュリティソフトやサービスが近年多く出てきています。クラウドというとデータを預ける場所だと思われることが多いのですが、実際はインターネットを介したサービス全般を意味します。
(※)クラウド:インターネットなどのネットワーク経由で利用できるサービスの総称。Webメールやデータストレージをはじめ、様々なアプリケーションが利用されている。
クラウドのソフトウェアを使う場合の利点は、導入が楽なこと、自分で意識しなくてもいつも最新のものが使えるということです。サーバーのセキュリティについても、クラウド上にあるソフトウェアを使えば自動的に守ってくれるので自社で考える必要はありません。創業時は個々人のパソコン端末にデータを保存している場合が多いと思うのですが、その端末がコンピュータウイルスに感染したら、関係企業の方へ謝ってもすまないような大変な事態を招くおそれがあります。個人情報が何百万件流出といった事件がたびたび報道されていますが、特に創業時にそのような事態になって信用をなくすと、ビジネスどころではなくなるということを強く意識していただきたいです。実際のところセキュリティ対策は後回しにされがちなのですが、私は早い段階で導入することを強くお勧めします。
クラウドサービスの効果
総務省が公開している「令和元年版情報通信白書」より、クラウドサービスを導入した企業に関する調査結果も紹介します。
売上・利益拡大につながる攻めのICTサービス
山川:例えば介護で言うと、訪問介護の仕事を終えるたびに報告書を紙で書いて、その紙を事務所に持ってきてファックスで送り、それを受け取った人が転記して……と、たくさんの人の手が入ることで、時間も労力もかかるし、ミスも増えてしまいます。
それならば、報告書をスマートフォンのアプリ化し、よく記入する内容を選択して少しデータ入力するだけで完了するようにしておけば、紙に書いたり、報告書を持って事務所を行ったり来たり する必要がなくなります。こういうお話をすると、経営者の方々もすぐにイメージできて、導入したいということになるのですが、そういう導入事例はまだまだ少ないというのが実際のところです。このようなお話をしてくれる方が周囲にいれば良いのですが、たいていの経営者の方々が、解決策を知らないままなのです。
ICTに対して難しそうな印象を持っていて、そのせいで導入をためらう方がいらっしゃいますが、とりあえずひとつやってみたら便利だったから、次も試してみようとなる場合も多いです。先日、地方の観光地へ行ったときには、ご高齢のタクシー運転手さんがキャッシュレス決済やナビを使いこなしていて、素晴らしいと思いました。
専門家の意見を聞くのが ICTを活用するための近道
山川:使えるものは色々と使った方が良いのですが、むやみやたらに導入すると無駄になってしまいます。経営者の方が自社に最適なICTサービスを独力で検討し、導入していくのはなかなか難しいことです。
経営について相談できる機関は全国にたくさんあって、中小・小規模事業者の方々からも「売り上げを伸ばしたい」、「いろいろな人にお店の場所を知ってほしい」、「会社で作っている新しい商品を知ってほしい」、「新しい顧客を獲得したい」など様々なお悩みが寄せられます。しかし、そもそもICTでそれらの課題を解決したい、という発想がある経営者の方は少ないですし、その方法を自身で検討するのは大変です。専門家に相談するのが近道です。
強みをもっと活かして 業界内で一歩先をゆくために
山川:ICTがまだあまり普及していないということは、裏を返せば導入によって業界内で一歩先をゆくチャンスでもあるので、できるだけ早めに対応した方が有利です。しかし創業時の余裕がない中では無理はできません。創業直後の起業は、まずは専門家とともに、どの作業をICT化したら一番効果が出るかを考え、そのICT化に必要なサービスが予算内で導入できるならやってみると良いでしょう。
創業後数年の会社は、立ち上げから1・2年で終わってしまう会社が多い中で存続し続けているのはすごいことで、何かしら強みがあるという証です。 その強みを活かしつつ、例えば売り上げを上げていくだとか、さらに前進していくためにICT化を考えてほしいと思います。
伴走するサポーターがいなければ環境の整備は途中で止まってしまう
山川:ICT化を進めるに当たっては、やりっぱなしが一番だめで、伴走してくれる相手が必要です。特に創業時にはやることがたくさんあるので、本業ではなく外部に頼めるものについてはすべて頼んだ方が良いでしょう。創業前に専門家やベンダーに相談すれば、Wi-Fiやインターネット環境を含めて、将来の拡張性も見越した上で設計ができ、無駄を削減できます。
ICTの専任のスタッフを社内に置くのは、会社がある程度以上の規模になってからで、中小・小規模事業者だと厳しいです。もし専任のスタッフがいても、いわゆる「ひとり情シス(情報システム部) 」だと相談相手がいなくて大変です。
サポートサービスを利用するのもいいですよね。業種にもよりますが、今から創業しようとしている人にはそもそも、オフィスでがっちり座って仕事をしようというより、日本中・世界中のあちこちを渡り歩きながら働きたいという人も多いです。来年のオリンピック開催期間中、混雑が予想される東京を離れたいという企業もありますが、その際のデータ管理だとか、そもそもモバイルワーク環境をどう安全に構築するかなど、様々な課題が生じてきます。そういうときにサポートしてくれる相手がいることは、ビジネスを続けていく上でとても大切です。
厳しい時代を生き抜くためには 本業に注力できるように
山川:中小・小規模事業者数は、3、4年前は約380万社だったのが、今は350万社をきっています。数年で1割以上が減っていくという状況です。そのような厳しい状況の中で生き残っていくためには、サービスや商品の質を高めながら、本業以外の負荷を可能な限り減らしていく必要があります。ICTを活用できるように専門家やICTベンダーなどに相談してみれば、きっと大きな力になってくれると思います。
ICT化で悩んだら、NTT東日本コンサルティングセンターへ!
山川氏は企業のICT化とともに、推進のためにサポートしてくれる専門家の重要性を語ってくださいました。「では、いざICT化に向けてどこを頼ったらよいのか?」と思った時にオススメしたいのが、NTT東日本コンサルティングセンターです。
同センターは、ICT環境に関わる疑問や要望、困りごとの解決をスピーディーにサポートする窓口です。すぐに話を聞きたい、直接話をしたい経営者は、電話での問い合わせに対応。受付時間外や、希望のサービスが決まっている場合は、問い合わせフォームから相談することも可能です。電話・ネットどちらも、専任スタッフがスピーディーかつ丁寧に対応してくれるので、自分にあった相談を選ぶことができます。
ICT化に悩んだら、まずは一度連絡をしてみてはいかがでしょうか。
問い合わせ先は以下の通りです。
※年末年始を除く。時間外は自動音声対応
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(監修:
NTT東日本)
(編集: 創業手帳編集部)