納品書とは?納品書の作り方とポイントを徹底解説
納品書の目的・役割・法的根拠から発行・管理の便利なツールまで一挙にご紹介します
ビジネスで納品書や請求書についての知識は必須です。商品を販売する、仕入れを行うといった、売買のどちらにも関係しているもので、発行や管理をしなければいけません。
物販だけでなくサービスの提供、ネット上の納品でも必要となるため、あらゆるビジネスで無視できないものと言えます。
納品書は消費者としてはあまり意識しないこともありますが、発行する際や事業に関係する場合にはいい加減な扱いはできません。
どの書類にも目的や取り扱いのルールがあるため、正確に書類の役割や目的、発行タイミングを理解し、正しく使いましょう。
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この記事の目次
納品書とは?
納品書は取引における主な4種類の書類のうちの1つです。
ビジネスでの取引だけに留まらず、プライベート利用で消費者としても受け取ることがあり、身の回りにあふれている書類と言えるでしょう。
しかし、意外とその使用目的や法的根拠は知られていません。
一消費者としてであれば知らなくても問題ありませんが、事業で取り扱う場合には正しく使い方について理解しておく必要があります。
納品書の基礎知識、また、納品書とともに触れる機会の多い書類について解説します。
商品やサービスに添える書類
納品書は、商品やサービスの提供の際に添える書類です。
納品書を見ることによって、商品やサービスの受け取り側は、正しい商品が届いたか、正しい内容のサービスを受けられたか、確認できます。
納品書は、商品発送時に添える、サービス提供後に発行するなど、商品やサービスの内容や企業のシステムやルールによって発行のタイミングが違うこともあります。
また、請求書と納品書を兼ねることも可能です。
企業の証憑書類の一つ
納品書は、取引があったことを証明するために必要な企業の証憑書類の一つです。
企業では多くの人が取引に関わり、数多くの取引が行われるため、その流れを客観的に誰が見ても分かるようにしていかなければいけません。
取引の状況を正確に把握することや後になって見直せること、トラブルの際に証明できることも必要です。
特に金銭や商品が動く取引の流れを把握し、管理することはおざなりにできません。
そのため、こうした証憑書類が必要です。納品書は、注文を受けた商品をきちんと納めたことの証明として発行されます。
作成義務はないが保管義務はある
納品書には、税法と会社法で定められたルールがあります。税法上では保管期間が7年、会社法では10年と、保管義務だけが定められています。
企業ではなく、個人事業主の場合は5年です。
税法では追徴課税できる期間がカバーできるように、会社法では会社と個人客間の民事時効の年数をカバーできるようにと、それぞれ期間が異なっています。
納品書だけでなく、他の証憑書類も同じ義務があり、納品書以外の書類も保管が必要です。
取引に必要な書類のやり取りの流れ
企業で取引の際に取り扱う書類をそれぞれ紹介します。納品書の他に、以下のような書類が企業間取引では必要です。
商品取引と書類のやり取りの流れにそって解説します。
見積書の役割
見積書は、仕事の依頼を受けた時、金額の提案をする時に取引先に渡します。見積書の内容は、商品やサービスの金額、内訳などになります。
新しく受けた仕事がいくらになるのかを取引相手に伝える書類です。
商品やサービスの提供が決まる前に見積書の発行を依頼されることもあります。
その場合には、他社との比較や検討の材料として使われるため、見積書の内容は取引成立の可否に関わる重要性を持ちます。
請求書の役割
見積書で取引が成立となったら、商品やサービスを提供し、納品書と請求書の発行を行います。請求書とは、商品やサービスの対価を請求するための書類です。
商品の単価と合計金額、支払い期限を提示して、取引先に請求します。
取引先では、商品やサービスを納品書で確認し、請求書で請求金額を確認した後、支払い期限までに入金します。
請求書がなければ支払いをしてもらうことはできないので、請求書の発行は必須です。
基本的には、納品と同時に発行、納品後に発行、月末にまとめて発行の3つのパターンで発行されます。
領収書の役割
領収書は、請求した金額が支払われた際に発行するものです。
代金を受け取ったことを証明する書類で、受け取った側は代金を支払ったことを証明する書類として大切に保管します。
トラブルを避けるために、商品を提供する側は必ず入金を確認してから発行し、購入する側は必ず保管しておくことが必要です。
納品書兼請求書もある
納品書と請求書は、わざわざ分ける必要がない場合、一つの様式にまとめることもあります。
納品と請求のタイミングが同じとみなせる場合には、納品書兼請求書として発行することで発送コストを減らすことが可能です。
また、納品よりも支払いが先に済んでいる場合には、「納品書兼領収書」という形式の書類を発行するケースもあります。
後払いの掛取引が多い商売ではあまりないケースですが、一応あることだけは知っておきましょう。
納品書が必要な理由
納品書は証憑書類であるため、保管は義務で、発行も必要とされます。
しかし、証憑書類だからというだけで発行するのではなく、目的を明確にして正しく活用することが一番重要です。
見積書や請求書と比べると、売買成立の決定や金銭の請求にあまり影響がなさそうに感じられますが、納品書には以下のような大切な役割があります。
依頼主の安心感のため
納品書は、依頼主を安心させるために大切なものです。商品の依頼主はすぐに納品された商品と依頼が合っているか確認することができます。
事業での購入品は個人消費とは異なり、一度の納品物の量も種類も多いです。そのため、納品書と照らし合わせて商品を確認しなければなりません。
納品書で名称と数量を確認し、さらに見積書とも照らし合わせることで、取引が正しく行われたことが分かり、安心できます。
契約内容の確認のため
納品書は、商品を販売する側にとっても購入する側にとっても、簡単に契約内容を確認するために大切なものです。
書かれている情報を見るだけで、受け取った相手が納品物をすぐに把握することができます。
また、送付する方も納品書で商品チェックができ、商品の過不足を防げるでしょう。
契約内容を双方で確認し合うことで、トラブルを予防し、スムーズな取引ができます。
請求書と納品書は両方とも必要か?
納品書と請求書を兼ねた様式もありますが、どちらも大切なものです。
目的も異なりますし、発行日が違うこともあるため、両方を別々に出さなけなければいけないことも多くなります。
商品の納入ごとに代金請求をする場合には、そのタイミングで納品書兼請求書を使えますが、複数の納品をまとめて月末などに請求する場合には、分けて発行しなければなりません。
納品書と請求書は別物
納品書は請求書と兼用されることもありますが、両方とも別の書類であることを認識しておくことも必要です。
兼用できればコストも手間も抑えられますが、基本的には両方の書類は別物だと考え、兼用は状況が許す場合のみにしましょう。
目的や取引状況、顧客の希望に応じて、必要なアクションを適宜行うことが大切です。書類の発行自体は義務付けられているものではありません。
しかし、省略しすぎると依頼主の不安を呼びます。そもそも目的が異なることを忘れないで、誠実な対応を心がけてください。
クレジットカード決済に納品書は必要か?
クレジットカード決済では、クレジットカード会社からの明細があるため、経理処理はそれだけで可能です。
しかし、クライアントの都合で求められた場合には、発行することもあります。
消費税の申告などで納品書の内容が必要となるため、依頼されたら対応が必要です。
納品書を発行するときのポイント
納品書を発行する際には、いくつかの準備と確認が必要です。納品書は商品を確認するために大切なものなので、内容に不備がないように準備を整え、正しく発行しましょう。納品書を発行する際のポイントを紹介します。
フォーマットの設定を行っておく
納品書は、あらかじめ形式を一定に作成しておき、発行や管理をしやすくすることが大切です。
納品書の形式が定まっていると、商品を受け取った相手も納品書を見分けやすく、管理しやすくなります。
連番を振っておくことでさらに管理しやすくなるでしょう。また、フォーマットには必要な情報をすべて入れなければなりません。
- 【フォーマットに含めたい内容は以下のような項目です。】
-
- 「作成者の名前」取引担当者(消費税申告で必要)
- 「企業名」所在地、連絡先も
- 「納品年月日」出荷日または到着予定日
- 「取引内容」内訳、数量、金額など
- 「宛先」依頼主
フォーマットは取引先の指定に合わせることも
自社でフォーマットを作成しても、先方から指定のフォーマットで作成してほしいといわれることもあります。
依頼主からの信頼を得るため、ケースバイケースで柔軟に対応することも必要です。
見積書と納品書、請求書の内容の合致を確認
納品書の発行にあたっては、先に出していた見積書との合致を確認し、ミスがないようにします。
見積書の内容と商品や納品書が異なっていると、トラブルの原因となり、取引先との信頼関係に悪影響を及ぼす可能性があります。
請求書も見積書、納品書と合っていなければいけません。
発行日は出荷の日付が一般的
納品書の発行日は、出荷日と商品到着予定日のうち、双方の納得のいく日を選べますが、一般的には出荷日を発行日にします。
特に不都合のない場合には、出荷日を納品書の発行日にしましょう。
商品到着予定日にすると、到着の遅れで齟齬が起こることがあります。
押印も必要
納品書への押印は、法的には必要ありません。しかし、納品書の信頼性を高めるためには、押印はあったほうが良いでしょう。
企業として公的に発行した文書であることの証明になります。
納品書に使用する印は、角印です。納品書の他、見積書や請求書にも使用するもので、認印としての役割を持ちます。
納品書発行後のスケジュール管理も
納品書発行と納品の後は、請求書を発行します。請求書の発行するタイミングは、取引相手と決めて問題ありません。
あらかじめ、契約時などにいつのタイミングで請求書を発行するか決めておきましょう。
一般的なのは、契約が正式に決まった時や納品前、納品時などがあります。納品書と請求書を兼ねた書式を使う場合には、納品のタイミングが良いです。
納品書の発行・管理を効率的に進めるためには?
納品書は、長く取引を続けるにつれて莫大な枚数になるものです。発行も管理もずさんにならないために、保管や管理を徹底しましょう。
発行や管理を効率的に進める工夫を紹介します。
保管はファイリングで
納品書などの証憑書類は紙での保管が基本です。そのため、送られた納品書はファイリングで管理します。
ただし、所轄の税務署で手続きを行えば電磁的記録としてデータで保管できる制度もあります。
法人税法の会計処理の根拠資料にあたる納品書は、7年から10年間の保管が必要です。
納品書をそれだけ長く保管しなければいけないということは、その期間分だけ納品書が蓄積され、長く管理しなければなりません。
また、請求書は複数の納品をまとめて発行できますが、納品書は取引の都度発行が必要です。そのため、納品書はかなりのボリュームになることが分かります。
複数年の保管が必要となるため、年度ごとにファイリングをするのが基本です。また、量が多い場合にはさらに月別、顧客別に分けても良いでしょう。
自社の状況に応じてファイリングの仕方を選ぶことが必要です。
業務改善ツールを導入する
納品書の書類発行を効率的に行い、管理するためには、業務改善ツールを導入することもおすすめです。
ツールを使用することで、書面を簡単に作成でき、顧客名簿とともにデータとして保管できます。
まとめ
納品書は取引時に発行し、取引先との商取引をスムーズにするために大切な書類です。発行義務はありませんが、保管義務はあるため、基本的には発行が必要となります。
取引ではそれ以外にも様々な書類のやり取りがあるため、すべての流れを把握した上で、双方の良いタイミングで発行しましょう。
納品書は基本的には商品発送時に発行し、商品に添えます。
発行にあたっては、必要な情報を漏れなく記載し、信頼性を高めることが大切です。
また、発行数や受け取る枚数が多くなると管理が煩雑になるため、効率的な管理方法を模索することも必要となります。
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(編集:創業手帳編集部)