女性起業家必見!出産前後の自営業・フリーランスも国民年金保険料が平成31年4月から免除されます!

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制度の詳細を社労士が解説しました

(2018/11/01更新)

働き方の多様化が進むなか、女性の起業家も以前と比べて多くなってきました。また、クラウドソーシングの急速な拡大などを背景として、フリーランスとして活動する女性と企業をマッチングするサービスも活発化しています。

年々増加傾向にある起業家やフリーランスとして活躍する女性たち。そんな方々に朗報です。平成31年4月から自営業・フリーランスの女性について出産前後は国民年金保険料が免除になるという制度が導入されます。

そこで今回は、起業家・フリーランスとして働く女性必見の本制度について、社会保険労務士の寺島有紀さんが解説します。

本制度の概要

これまでは、厚生年金保険に加入している労働者についてのみ出産前後の期間と育児休業期間中は保険料の免除対象となっていました。
ですが、平成31年の4月からは、厚生年金保険に加入していない自営業者・フリーランスも出産前後の休業期間中に関しては保険料が免除される制度が導入されることになりました。
では、早速この制度の詳細について見ていきましょう。

1.対象者

保険料が免除される対象となるのは、国民年金第1号被保険者で出産日が平成31年2月1日以降の方となります。

「国民年金第1号被保険者」とは、日本国内に住んでいる20歳以上60歳未満の自営業者、農業・漁業者、学生および無職の方とその配偶者の方(厚生年金保険や共済組合等に加入しておらず、第3号被保険者でない方)のことで、フリーランスや自営業者についてはこれに該当します。その中でも、平成31年2月以降に出産日が対象なので、注意が必要です。

ちなみに、本免除は所得による対象除外などはありません。

2.国民年金保険料が免除される期間

国民年金保険料が免除される期間は、「出産予定日又は出産日が属する月の前月から4ヶ月間」です。なお、双子などの多胎妊娠の場合は、「出産予定日又は出産日が属する月の3ヶ月前から6ヶ月間」の国民年金保険料が免除されます。

…文章だけではどの時期を指すのか難しいかもしれませんね。そこで、具体例を記してみました。

例1:出産予定日が2019年7月15日の場合

この場合、出産予定日が属する月は7月です。その前月は6月ですので、「6月~9月の4ヶ月」の保険料が免除されます。
ちなみに、双子の場合は「4月~9月の6ヶ月分」の保険料が免除される、ということですね。

例2: 出産予定日が2019年3月15日の場合

この場合、出産予定日が属する月は3月です。その前月は2月ですので、本来は2月~5月が保険料免除期間となりますが、今回の制度は2019年4月1日から施行されます。そのため、この場合は「4月~5月の2ヶ月分」が免除されるということになります。双子の場合でも「4月~5月の2ヶ月分」が免除されます。

3.免除される金額

免除される期間を解説しましたが、やはり「どのくらいの金額が免除されるか」が気になるところですよね。

平成31年4月からの国民年金保険料は1万7000円(物価上昇率などは考慮していません)となりますので、免除される金額は7万円程度(多胎妊娠の場合は10万円程度)になると考えられます。

厚生年金保険の被保険者の場合は、出産前後の休業期間に加えて育児休業中も保険料が免除されますが、今回の制度導入で厚生年金保険に加入していなくても結構な金額の負担が減ることになります。忘れずに申請したいところですね。
なお、保険料を前納している場合でも保険料が還付されます。忘れずに手続きをしておきましょう。

さらに、将来、被保険者の年金額を計算する際、産前産後期間として認められた期間は「保険料を納めた期間」として扱われます。免除された期間も将来の年金額が控除されることはありませんので安心してください。
つまり、申請して損なことは一つもないので、絶対に申請しましょう!

4.申請方法

保険料が免除される本制度ですが、免除してもらうためには「住民票のある市(区)役所・町村役場の国民年金担当窓口」に申請書を提出することが必要です。
申請書は平成31年4月以降役所で手に入るほか、年金事務所のホームページからダウンロードできるようになる、とのことです。

また、出産前に申請書を提出する場合には母子健康手帳などの持参が必要ですが、出産後に届書の提出をする場合には、出産日は市区町村で確認できるため原則不要とのことです。

この手続きは、出産予定日の6ヶ月前から提出可能になるので、余裕をもって手続きをしましょう。ただし、提出ができるのは平成31年4月からなので、注意が必要です。

制度導入の背景


本制度が施行される背景には、起業家やフリーランスの存在感が増してきている一方で、現行の労働法規制や社会保障が十分ではない、という現状があります。
企業で雇用される社員が当然に保障される権利の数々が適用されない例は多くありますし、実際に起業家の皆さんは日々実感しているところではないでしょうか。

例えば、妊娠・出産について見てみると、企業で雇用され厚生年金保険の被保険者であれば、申出により出産前後の休業期間に加えて、育児休業期間の社会保険料が本人分・会社分ともに免除されます。
さらに、要件を満たせば、出産前後の休業期間には健康保険から出産手当金、育児休業期間中には雇用保険から育児休業給付金というものが支給され、休業中の所得補償もあります。

しかし、フリーランスの場合には出産前後の休業期間中に出産手当金を受け取ることができませんし、雇用保険にも加入していませんので育児休業給付金を受けることもできません。
また、企業の育休明けの復帰でない場合、自治体の審査で加点がなされず自営業・フリーランス女性はなかなか保育園入園が難しいという「自営業・フリーランスの保活問題」なども話題になっています。

このように、企業で雇用される社員と自営業・フリーランスには社会保障内容にまだまだ歴然とした格差があるのですが、働き方改革の流れにより「多様な働き方」を推奨することで労働参加率を高めたい政府の方針とあいまって、企業で働く雇用者と自営業・フリーランスの格差を是正していこうという大きな流れがあります。

この流れの中、平成31年4月から自営業・フリーランスの女性について産前産後は国民年金保険料が免除になるという制度が導入されることになったのです。

まとめ

今回見てきたように、企業に雇用される労働者と自営業・フリーランスとの間の社会保障には大きな格差があります。

また、労働基準法などの労働者を守る法律は自営業・フリーランスには原則適用されません。
そのため、労働基準法はもちろん、労働者の安全や健康への企業の義務などを定めた安全衛生法、業務上・通勤時の怪我や疾病の際に利用できる労災に関する法律も適用されません。

しかし、今回ご紹介したような自営業・フリーランスの女性について出産前後は国民年金保険料が免除になるという制度は、大きな変化の一つとも言えます。こうした企業の雇用者との格差を是正していくべきではという議論が活発になってきていますので、今後の動きにも注目しつつ、上手に制度を活用していきましょう。

意外なところから出てくる労務問題
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(監修:寺島戦略社会保険労務士事務所 所長 社会保険労務士 寺島有紀
(編集:創業手帳編集部)

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