憧れだけでは続かないカフェ開業・経営のポイントとは?

創業手帳

医療と病気に関心をもてるカフェの空間を -「みのりcafe」オーナーが語るカフェ開業に込められた想いと親しまれるカフェ経営の秘密

粋な飲食店が点在する東京は根津。そこに知る人ぞ知る粋なカフェがある。創業7年目になる「みのりcafe」を始めたのは、オーナーの鈴木信行さんだ。のぶさんと親しまれるオーナーに、飲食店の中でも「客単価が低いため経営が難しい」と言われるカフェ開業の起業ストーリーとカフェ経営の秘訣を聞いた。

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鈴木 信行(すずき のぶゆき)
みのりcafe オーナー
1969年、神奈川生まれ。カフェ経営だけでなく、医療系企業や学校などでの講演活動、専門誌への執筆など幅広い活動を行っている。患医ねっと代表、日本二分脊椎症協会元会長、精巣腫瘍患者友の会副代表など
 

生まれつき障がいをもって生まれた「自分にしかできないこと」って何だろう?

 

鈴木氏は、大学で電子工学を学び、新卒で製薬会社に入社。退社した翌年に起業し、「みのりcafe」をオープンした。2008年に鈴木氏が起業に踏み切って「みのりcafe」をオープンさせたきっかけは、働く中で生まれた一つの問いだったという。

鈴木:僕は生まれつき身体に障がいをもっています。さらに大学生の時には癌になりました。そのような背景もあり、卒業後は医療に関わる仕事がしたくて製薬会社へ入りました。でも、次第に“このままでいいのか”と疑問をもつようになったんです。

「誰でもできることではなく、自分にしか出来ないことってなんだろう?」−−そう考えたとき私は、「患者さんや一般の人が、医療や病気に関心をもてる場をつくりたい」と思いました。わたし自身、大学生のときに癌になりましたが、それまで癌になるなど思ってもいなかったので、医療への思慮が薄かった分、受けたダメージが大きかったんです。
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「一般の人も医療に関心をもてる場」があれば、その人が病気になった時もそれを乗り越えやすくなるかもしれません。それに、医療的な知識があれば、多くの人が医療機関をより有効に活用できるようになると思ったのです。

ただ、私が考えているのは、そういう場を「研修施設」としてつくるのではありません。街中にある「ふつうのカフェ」としてつくりたい。目指しているのは、ふつうに入ってカフェを楽しんでいると、自然と、医療などにも関心をもてるような場所です。

IMG_2395—入り口も店内も、至ってふつうな、素敵なカフェ空間がある

 

テーマは医療と病気に関心をもてるカフェ。でも、それを全面にはださない。

 

—カフェのなかに、医療や病気に関心をもつ仕掛けがあるのですか?

鈴木:いいえ、そうではありません。確かに、みのりcafeのテーマは「医療や病気に関心を持てる場」なのですが、お店に直接的にその仕掛けをつくっているわけではない。逆に、店自体は、あえてこのテーマを感じさせないようにしています。

なぜなら、そのテーマを全面にだしてしまうと、医療に関心がある人しか集まらなくなってしまうからです。私は、様々な人に通って頂くなかで、少しでも関心をもっていただけたらと思っています。

そこで、私たちスタッフは、積極的にお客さんと「しゃべる」ようにしています。会話の中で医療などに興味をもってもらえたらと思っているからです。

もちろん、一人の時間をくつろぎたい方には話しかける事はしません。ただ、コミュニケーションも楽しみたい方には、お話をするようにしています。だからカフェにはめずらしいカウンター席も用意しました。

—確かに、カウンターがあるカフェや喫茶店はめずらしいですよね。

鈴木:はい。これもお客さんとの距離を近くするためです。設計の時のこだわりでした。もちろん、ここはカフェですからコーヒーにもこだわっています。私はコーヒーマイスターの資格も取得しています。
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「憧れ」だけでは続かない
想いとつながるコンセプトを表現する事が大事


—ご自身の強い想いからカフェを創業されたと思うのですが、実際の経営状況としてはどうなのでしょうか。

鈴木:いやあ、厳しいですよ。飲食店の中でもカフェはやはり、顧客単価をみてもせいぜい1,000円程度と低いものですから。このような雨の天気だとお客さんはあまり来ませんし。

このカフェは今なんとか黒字を保っている状況ですが、周りのカフェや喫茶店をみていると、開店から数年で破綻してつぶれてしまったカフェや喫茶店がいくつもあります。

—赤字の喫茶店やカフェも多いなか、みのりcafeが開業してから経営が続いている理由は何だと思いますか?

鈴木:私たちのカフェがかろうじて黒字でいられる理由は、2つあると思います。一つは、夜にまわしているイベント収益があるからです。健康や医療をテーマにしたイベントを中心に、時には合コンまで、日々様々なイベントを開催しています。去年は1年で250回のイベントをやっていました。
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もう一つは、人とのつながりと言いますか、私たちスタッフの「知り合いや友人が来てくれる」からですね。

例えば、お客さんが少ない日に「今日お客さん少ないのだけど」とFacebookでつぶやくと、知り合いが「じゃあ行きます!」と来てくれる。まあ、半ば「言わせている感」がありますが(笑)、でも、そういう方がいて下さることが、お店の経営にとって良い方向に働いています。

—イベント収益と人とのつながりですね。

鈴木:はい。ただ、もう一つ大事なことは「どういうコンセプトでカフェを開業・経営していきたいか」でしょう。その人の想いがあって、それにつながるコンセプトがないと、カフェ経営は上手くいかないと思います。

私の場合は医療に関心があったので、そういうことをテーマとしたカフェをつくり、そのカフェで実際に医療のワークショップを開催しています。このようなテーマで患者さんを集めたワークショップを開催できるのは、私の強みだと思っています。

鈴木氏は、医療に関心をもつ場をつくることを「自分の使命だ」と語る。確かに、カフェを経営しながら1年で250回のイベントをまわすことは、強い意志がないとできないだろう。

「自分の人生をかけたコンセプト」でカフェをたちあげること- 鈴木氏は、その想いをベースとして、イベント運営やFacebookなどのSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)活用など工夫をおこなっている。カフェ経営を成功へと導いているのは、確固としたコンセプトと地道な集客の工夫だと言えるだろう。

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(インタビュー・編集:田中嘉)
 

ココ重要!カフェ開業・経営のポイント
  • 憧れだけでなく、人生をかけたコンセプトをもって起業すること
  • カフェを会場としたイベントを積極的に行い、収益化すること
  • SNSを活用し人とのつながりを大切にすること
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