963(KUROSAN)黒川裕士 | 他業種展開や飲食店経営を続けるためのポイント
CHIBAビジコン2022でダブル受賞!クラムチャウダー選手権で2回連続全国1位に輝いた株式会社963のOEMコンサル
ラーメン居酒屋、アジアンバル、クラムチャウダーのEC通販など、飲食をテーマにさまざまな事業を展開する株式会社963。コロナ禍で多くの飲食店が苦しんでいることをきっかけにして、自社で培った商品作成・EC通販のノウハウを生かし、飲食のOEMコンサル事業を始めたところ、それが大きく伸びているといいます。
CHIBAビジコン2022では、OEMコンサル事業についてプレゼンされ、見事、「創業手帳賞」と「拓匠開発の品質基準 “お・も・ろ・い”賞」を受賞されました。
捨てられてしまうはずだった地元農家の食材を生かして新たな商品開発をされており、フードロスを防ぐ取り組みという面でも素晴らしいビジネスモデルです。今回は、受賞された感想や、他業種展開するようになった背景、飲食店を起業して長く続ける秘訣などについて伺いました。
船橋市を中心に飲食店を多店舗経営、ケータリング事業、イベント事業、OEM製造事業を展開。製造業では第1回、第2回日本クラムチャウダー選手権2連覇のクラムチャウダーを中心に製造、ECサイトで全国に販売。2022年には製造工場を新たに新設、飲食店、物販業の方のオリジナルブランドの開発、製造、流通までコンサルタント。
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この記事の目次
W受賞の感想と出場された経緯
黒川:ありがとうございます。あとで受賞したことを聞いて驚きました。落選するかと思っていたので。本当に嬉しいです。
黒川:知り合いの行政書士の方に「黒川さんのやっているビジネスモデルは面白いから、出場してみれば」と言われたのがきっかけです。
飲食店向けに商品製造の企画から、ECサイト構築・販売までを一貫してコンサルティングする事業をしています。そのビジネスモデルについて、今回プレゼンさせていただきました。本来捨てられるはずだった農家さんの食材を活用してその地域のお土産を作ったり、レストランやホテルなどが独自の製品を作ったりなど、さまざまな方法でご活用いただいています。
黒川:ありがとうございます。農家さんやレストランの方々を支援できればと思っています。
さまざまな事業を手がけるようになった背景
黒川:ラーメン居酒屋「ラーメン963」から事業をスタートしました。私自身、ラーメン屋で勤務していたこともあったのでラーメン屋はやりたかったのですが、お酒も好きだったので、「お酒を飲んだ後にラーメンを食べたくなる」気持ちがよくわかったんです。なら「お酒とラーメンを一緒に楽しめるラーメン居酒屋をやろう」ということで始まりました。
その後、ラーメン業態だけではなく、パクチーの専門店を出店しました。ただパクチーに縛られすぎて料理が偏ってしまったんです。パクチーはアジア料理との相性がすごく良いので、パクチー繋がりでタイ料理やベトナム料理などアジア料理を学ぶようになり、「じゃあアジアンバルにしよう」ということでパクチーだけでなくさまざまなアジア料理を出すお店「アジアンバルMAE963」に変えました。
「島CAFE963」を出したのはその2〜3年後です。東京都に式根島という島があるのですが、そこにもともと親戚が住んでいたんです。夏場は観光客がものすごく来るのですが、観光客向けのお店が全然ありません。そこで島の方から「お店を出してくれないか」ということで、出しました。島の素材を使ったアジア料理を中心に提供しています。
その後くらいから、コンサート会場などを対象にしたケータリング事業を始めました。ただ、サービスを開始した1年後くらいにコロナがやってきてしまって、一気に仕事がなくなってしまいました。ケータリング事業向けの工場はできていたので、どうしようかと考えたところ、「クラムチャウダーの製造工場にしよう」となったんです。それでクラムチャウダーのEC通販事業が始まりました。ちょうどクラムチャウダーの全日本選手権で優勝したばかりだったので。
なぜクラムチャウダー選手権2年連続日本1になれたのか?
黒川:最初から提供していたわけではありません。
店舗がある船橋には、漁港があります。そこでホンビノス貝がよく採れるんです。実は漁獲量は日本トップレベルとも言われています。ただ、10数年前はまだ、ホンビノス貝が有名でなかったこともあり、全然買われておらず、価格も非常に安かったんですね。そこで漁港の知人から「ホンビノス貝で何かできないか」と言われ、ホンビノス貝ラーメンの提供を始めました。ラーメンにホンビノス貝を使ったのは、おそらくうちが初めての店舗じゃないかと思います。
しばらくして、「今度クラムチャウダーの全日本大会が始まるから、そこに出場してみないか」と誘いがきました。実は本場アメリカのクラムチャウダーはホンビノス貝から作られているので、ホンビノス貝つながりでいけるんではないかと思い、出場したところ、全日本クラムチャウダー選手権第1回、第2回ともに優勝し、二連覇を達成しました。
その後、本場シアトルの大会でも優勝できたので、クラムチャウダーの味には自信があります。それまでラーメン屋をやってきたので、出汁の作り方に強みがあったから、これだけの結果を残せたのかなと思っています。
その後クラムチャウダーを店舗でも提供するようになった結果、デート中のカップルの方などもラーメン居酒屋に来てもらえるようになりました。
黒川:そうですね。工場はあったので、ケータリングの売上がなくなった分、売上を作れないかと思ってクラムチャウダーの物販事業を始めました。それがうまく当たって1〜2年目にかけて売上が10倍ほど伸びました。
黒川:コロナで飲食店の在り方を変える必要を感じました。具体的には、もっと販売チャネルを増やさないといけないのではないかと思ったんです。「コロナで下がった飲食店の売上を補填してあげられないか」と考え、商品開発から、ECサイト構築、ブランディングまですべてお手伝いするOEMコンサル事業を始めました。
農家の方が作っている食品なども、食品ロスにならないように商品化して販売するお手伝いをしています。商品をパックする際に、障害者の就労支援に通っている人たちに手伝ってもらい、新たな雇用も生み出しています。
黒川:ものすごく多いですね。レトルトの機械を導入したのですが、それを使ってカレーを作るご依頼だったり、地元の名産品を使ったお惣菜を作るご依頼だったりと、さまざまです。
黒川:SNS、実店舗とうまく連動させる、ということでしょうか。例えばクラムチャウダー選手権で優勝した際にSNSからECサイトに誘導したり、冬場の温かいもの特集でメディアに取り上げられたときに誘導したりと、最終的にECサイトにたどりつくように導線をロジックで設計します。
飲食店経営を続けるためのポイント
黒川:ディレクターさんやプロデューサーさんがどういうお店を探していて、そこでどんな絵を撮りたいのかということをまず考えておくこと。そこから導き出された「こういう理由でこういう店が撮りたい」という仮説に対して、自分のお店をうまく寄せていくこと、ですかね。
黒川:OEMコンサルにもっと力を入れていきたいです。具体的には、作れるフードの種類を増やしていきたいと考えています。
黒川:そうですね。飲食店成功のカギは、常連のお客さんです。このお客さんたちをつかめるかどうかが大事なのですが、実は常連のお客さんは1年、3年、5年、7年という周期で入れ替わります。
最初はそれがわかっていなかったので、1年、3年したときに「あれ、あのお客さん来なくなっちゃったな」と思って焦ったことは何度もありました。でもやっぱり続けてきたので、徐々に常連さんは増えてきました。お客さん目線で「どういうお店だったら来てくれるのか」考え続けることが大事かなと思います。
黒川:お金については、基本的に自分たちのお金で回せるようにはしています。借入するときも、必要な分だけ借りて、なるべく早く返済する、という形にしています。
黒川:私がアドバイスなんておこがましいです。まだまだ毎日綱渡りをしているような気持ちなので。常に生き残るために、次の手を考えることしかない、って感じです。
黒川:クラムチャウダーを飲みすぎてあまり飲みたくないのですが(笑)。私は人参のポタージュが無添加で飲みやすく気に入っています。夏場でも冷たいまま飲めますので。
(取材協力:
株式会社963 代表取締役 黒川 裕士)
(編集: 創業手帳編集部)