小規模事業者持続化補助金(一般型) 第11回の概要が発表!新設された特別枠とは?対象者やスケジュールも解説。

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制度変更に対応すべく設置された「賃金引上げ枠」や「インボイス枠」など5つの特別枠は要チェック!


2022年12月16日に小規模事業者持続化補助金(一般型)第11回受付締切分の公募要領が発表されました。

第8回より通常枠とは別に新たな特別枠が5つ設置されているため、きちんと内容を把握しておくことが重要です。

また一度採択された事業者であっても一定の期間が過ぎていれば、再度申請することが可能となります。

小規模事業者等の生産性向上と持続的発展を図ることを目的としている小規模事業者持続化補助金(一般型)を活用し、今後の事業拡大を検討していきましょう。

創業手帳別冊版「補助金ガイド」は、四半期に一度内容を更新し、今本当に起業家・経営者に役立つ補助金・助成金について解説しています。無料でお届けしますのであわせてご活用ください。

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小規模事業者持続化補助金とは

小規模事業者持続化補助金とは、通称「持続化補助金」(以下、持続化補助金とする)とも呼ばれ、小規模事業者が自社の経営を見直し、自らが持続的な経営に向けた経営計画を作成することが大前提にあり、その上で行う販路開拓や生産性向上の取組を支援する制度です。

ここでのポイントとして持続化補助金は、小規模事業者が商工会・商工会議所の支援を直接受けながら取り組む事業のため、社外の代理人のみで、地域の商工会・商工会議所へ相談を行うことや必要書類の交付依頼等を行うことはできないということに注意が必要です。

また第8回より、賃金引上げ枠インボイス枠など、当面小規模事業者が直面するであろう制度変更に対応した枠が新設されたこともポイントとなります。

新設された特別枠とは

第8回の公募より通常枠以外に新設された特別枠は以下の5つになります。

特別枠
  • 賃金引上げ枠
  • 卒業枠
  • 後継者支援枠
  • 創業枠
  • インボイス枠

申請は、通常枠も含めた6つの枠のなかのいずれか1つでのみ申請が可能となります。

賃金引上げ枠

販路開拓の取り組みに加え、補助事業の終了時点において、事業場内最低賃金が地域別最低賃金より+30円以上である小規模事業者が対象となります。

なお、すでに事業場内最低賃金が上記の条件を達成している場合は、現在支給している(※)、事業場内最低賃金より+30円以上とする必要があります。

※申請時点において直近1か月で支給している賃金のこと。

また赤字事業者については、補助率を引き上げられ、加点による優先採択が行われます。

赤字事業者とは

「賃金引上げ枠」に取り組む事業者のうち、直近1期または直近1年間の課税所得金額がゼロである事業者のことを指します。

<法人の場合>
直近1期分の法人税申告書の別表一・別表四の「所得金額又は欠損金額」欄の金額。

<個人事業主の場合>
直近1年間の「所得税および復興特別所得税」の「確定申告書」第一表の「課税される所得金額」欄の金額。

卒業枠

販路開拓の取り組みに加え、雇用を増やし小規模事業者の従業員数を超えて事業規模を拡大する小規模事業者が対象となります。

小規模事業者の定義とされている従業員数についての概要は以下となります。

商業・サービス業(宿泊業・娯楽業除く) 常時使用する従業員の数 5人以下
サービス業のうち宿泊業・娯楽業 常時使用する従業員の数 20人以下
製造業その他 常時使用する従業員の数 20人以下

常時使用する従業員には、会社役員や個人事業主本人、一定条件を満たすパートタイム労働者は含まれないので注意が必要です。

後継者支援枠

販路開拓の取り組みに加え、アトツギ甲子園(※)においてファイナリストに選ばれた小規模事業者が対象となります。

※アトツギ甲子園とは中小企業庁が開催しているピッチイベントで、全国の中小企業の後継者・後継候補者が新規事業アイデアを競うイベントです。

創業枠

産業競争力強化法に基づく「認定市区町村」または「認定市区町村」と連携した「認定連携創業支援等事業者」が実施した「特定創業支援等事業」による支援を公募締切時から起算して過去3か年の間に受け開業した小規模事業者が対象となります。

インボイス枠

2021年9月30日から2023年9月30日の属する課税期間で一度でも免税事業者であった又は免税事業者であることが見込まれる事業者のうち、インボイス(適格請求書)発行事業者の登録が確認できた小規模事業者が対象となります。

補助率と補助上限額

通常枠・特別枠の補助率と補助上限額については、以下の表のとおりです。

通常枠 特別枠(新設)
賃金引上げ枠 卒業枠 後継者支援枠 創業枠 インボイス枠
補助率 2/3 2/3(赤字事業者については3/4) 2/3
補助上限 50万円 200万円 100万円

上述した要件を満たす、いずれか1つの枠のみに申請が可能です。通常枠と特別枠との同時申請はできません。

対象となる経費

補助対象となる経費は販路開拓に必要な経費の一部となります。経費として見なされる11の項目と活用事例は以下のとおりです。

①機械装置等費

補助事業の遂行に必要な機械装置等の購入に要する経費

活用事例
・高齢者・乳幼児連れ家族の集客力向上のための高齢者向け椅子・ベビーチェア
・衛生向上や省スペース化のためのショーケース
・生産販売拡大のための鍋・オーブン・冷凍冷蔵庫

②広報費

パンフレット・ポスター・チラシ等を作成および広報媒体等を活用するために支払われる経費

活用事例
・チラシ・カタログの外注や発送
・新聞・雑誌・商品・サービスの広告
・看板作成・設置
・郵送によるDMの発送

③ウェブサイト関連費

ウェブサイトやECサイト等の構築、更新、改修をするために要する経費

活用事例
・商品販売のためのウェブサイト作成や更新
・インターネットを介したDMの発送
・インターネット広告
・バナー広告の実施
・効果や作業内容が明確なウェブサイトのSEO対策

※ウェブサイト関連費は、補助金交付申請額の1/4が上限となります。またウェブサイト関連費のみによる申請はできません。

④展示会等出展費

新商品等を展示会等に出展または商談会に参加するために要する経費(オンラインによる展示会・商談会等を含む)。

活用事例
・展示会・商談会の出展料等

⑤旅費

補助事業計画に基づく販路開拓(展示会等の会場との往復を含む。)等を行うための旅費

活用事例
・展示会への出展や、新商品生産のために必要な原材料調達の調査等に係る、宿泊施設への宿泊代
・バス運賃・電車賃・新幹線料金(指定席購入含む)・航空券代(燃油サーチャージ含む。エコノミークラス分の料金までが補助対象)、航空保険料、出入国税

⑥開発費

新商品の試作品や包装パッケージの試作開発にともなう原材料、設計、デザイン、製造、改良、加工するために支払われる経費

活用事例
・新製品・商品の試作開発用の原材料の購入
・新たな包装パッケージに係るデザイン費用
・業務システム開発に係る費用

⑦資料購入費

補助事業遂行に必要不可欠な図書等を購入するために支払われる経費

⑧雑役務費

補助事業計画に基づいた販路開拓を行うために必要な業務・事務を補助するために補助事業期間に臨時的に雇い入れた者のアルバイト代、派遣労働者の派遣料、交通費として支払われる経費

⑨借料

補助事業遂行に直接必要な機器・設備等のリース料・レンタル料として支払われる経費

⑩設備処分費

販路開拓の取組を行うための作業スペースを拡大する等の目的で、当該事業者自身が所有する死蔵の設備機器等を廃棄・処分する、または借りていた設備機器等を返却する際に修理・原状回復するのに必要な経費

活用事例
・新製品・商品の試作開発用の原材料の購入
・既存事業において使用していた設備機器等の解体・処分費用

※設備処分費は、補助金交付申請額の1/2が上限となります。

⑪委託・外注費

上記①から⑩に該当しない経費であって、補助事業遂行に必要な業務の一部を第三者に委託(委任)・外注するために支払われる経費(自ら実行することが困難な業務に限ります。)

活用事例
・利用客向けトイレの改装工事
・インボイス対応のための取引先の維持・拡大に向けた専門家(税理士、公認会計士、中小企業診断士等)への相談費用
経費申請での主な注意事項
    ・汎用性が高く目的外使用になりえるもの(車・オートバイ・自転車・文房具等・パソコン等)は補助対象外となります。

    ・経費の支払いは「銀行振込」となります。特に10万円を超える支払い(一括、分割問わず)については、現金支払いの場合、補助対象外となります。

    相殺や小切手、商品券等による支払いは、補助対象外となります。

    ・クレジットカード払い等で、口座から引き落とされた日が、補助事業実施期限を過ぎている支払いについては、補助対象外となりますので、ご注意ください。

    ・100万円(税込)を超える支払いは、2社以上の見積もりが必要です。

    中古品の購入(50万円(税抜き)未満のものであること)については、金額に関わらず、すべて2社以上からの見積が必須となります。

    オークションによる購入は補助対象外となります。

補助金の対象者とは

持続化補助金の対象者は、以下の4つの要件を全て満たす日本国内に所在するる法人、個人事業、特定非営利活動法人が対象です。

    ①小規模事業者である
    ②資本金又は出資金が5億円以上の法人に直接又は間接に100%の株式を保有されていないこと(法人のみ)
    ③確定している(申告済みの)直近過去3年分の「各年」又は「各事業年度」の課税所得の年平均額が15億円を超えていないこと
    ④本補助金の受付締切日の前10か月以内に、持続化補助金(一般型、低感染リスク型ビジネス枠)で採択されていないこと

小規模事業者とは、「商工会及び商工会議所による小規模事業者の支援に関する法律」において、業種ごとに従業員数で小規模事業者を判断しています。

商業・サービス業(宿泊業・娯楽業除く) 常時使用する従業員の数 5人以下
サービス業のうち宿泊業・娯楽業 常時使用する従業員の数 20人以下
製造業その他 常時使用する従業員の数 20人以下

常時使用する従業員には、会社役員や個人事業主本人、一定条件を満たすパートタイム労働者は含まれません。

また④の項目においては、以下の表をご確認ください。

補助対象外の人とは

補助の対象外となる人の一例としては下記のような方になります。

補助対象にならない人
    ○医師、歯科医師、助産師
    ○系統出荷による収入のみである個人農業者(個人の林業・水産業者についても同様)
    ○協同組合等の組合(企業組合・協業組合を除く)
    ○一般社団法人、公益社団法人
    ○一般財団法人、公益財団法人
    ○医療法人
    ○宗教法人
    ○学校法人
    ○農事組合法人
    ○社会福祉法人
    ○申請時点で開業していない創業予定者(例えば、既に税務署に開業届を提出していても、開業届上の開業日が申請日よりも後の場合は対象外)
    ○任意団体 等

特定非営利活動法人は、以下(ア)(イ)の要件を満たす場合に限り、補助対象者となり得ます。

なお、同要件を満たす特定非営利活動法人の「常時使用する従業員の数」の適用業種は「その他」として、「製造業その他」の従業員基準(20人以下)を用います。

(ア)法人税法上の収益事業(法人税法施行令第5条に規定される34事業)を行っていること。なお、
収益事業を行っていても、免税されていて確定申告書の提出ができない場合は補助対象外です。
(イ) 認定特定非営利活動法人でないこと。

審査のポイントと加点項目について

審査については、外部の有識者等により行われます。必要な書類が提出されていない場合は、失格となりますので申請前にきちんと書類が揃っているか確認しましょう。

審査のポイント
    ○自社の経営状況を適切に把握し、自社の製品・サービスや自社の強みも適切に把握しているか。
    ○経営方針・目標と今後のプランは、自社の強みを踏まえているか。
    ○経営方針・目標と今後のプランは、対象とする市場(商圏)の特性を踏まえているか。
    ○補助事業計画は具体的で、当該小規模事業者にとって実現可能性が高いものとなっているか。
    ○補助事業計画は、経営計画の今後の方針・目標を達成するために必要かつ有効なものか。
    ○補助事業計画に小規模事業者ならではの創意工夫の特徴があるか。
    ○補助事業計画には、ITを有効に活用する取り組みが見られるか。
    ○補助事業計画に合致した事業実施に必要なものとなっているか。
    ○事業費の計上・積算が正確・明確で、真に必要な金額が計上されているか。

また、加点に値するものについては、以下の項目となります。

加点項目 概要
パワーアップ型加点 ●地域資源型
地域資源等を活用し、良いモノ・サービスを高く提供し、付加価値向上を図
るため、地域外への販売や新規事業のたち上げを行う計画に加点
●地域コミュニティ型
地域の課題解決や暮らしの実需に応えるサービスを提供する小規模事業
者による、地域内の需要喚起を目的とした取組等を行う計画に加点
赤字賃上げ加点 賃金引上げ枠に申請する事業者のうち、赤字である事業者に対して加点
東日本大震災加点 福島第一原子力発電所による被害を受けた水産加工業者等に対して加点
経営力向上計画加点 中小企業等経営強化法に基づく「経営力向上計画」の認定を受けている事業者に対して加点
電子申請加点 補助金申請システム(名称:J グランツ)を用いて電子申請を行った事業者に対して加点
事業承継加点 代表者の年齢が満60歳以上の事業者で、かつ、後継者候補が補助事業を中心になって行う場合に加点
過疎地域加点 過疎地域の持続的発展の支援に関する特別措置法に定める過疎地域に所在し、地域経済の持続的発展につながる取り組みを行う事業者に対して、加点

申請については、郵送か電子申請かを選択できますが、電子申請による加点措置が設定されているため、電子申請での申請をおすすめします。

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今後のスケジュール

持続化補助金・第11回(最終受付回の予定)のスケジュールは以下のとおりです。

第11回受付締切分
申請受付締切日 2023年2月20日(月)
事業支援計画書交付の受付締切 原則2023年2月13日(月)
実施期間 交付決定日から2023年9月30日(土)まで
実績報告書提出期限 2023年10月10日(火)

「事業支援計画書(様式4)」の交付の受付締切は、原則公募締切の1週間前となりますので注意が必要です

過去の採択結果

2022年11月25日に公表された持続化補助金(一般型・全6枠)の第9回公募の採択結果については、申請11,476件中、採択事業者は7,344件となり、64%の採択率となっています。
以下、第1回からの申請件数と採択件数、採択率になります。

申請件数 採択件数 採択率
第9回 11,476 7,344 64%
第8回 11,279 7,098 63%
第7回 9,339 6,517 70%
第6回 9,914 6,846 69%
第5回 12,738 6,869 54%
第4回 16,126 7,128 44%
第3回 13,642 7,040 52%
第2回 19,154 12,478 65%
第1回 8,044 7,308 91%

この数字からわかるように、きちんとした資料を作成し、期日までに提出を行えば採択される可能性は決して低いわけではありません。

問い合わせ窓口

今回より、「日本商工会議所 補助金事務局」での受付から「商工会議所地区 補助金事務局」へと変更になり、電話番号も変更となっています。

商工会地区
電話番号:事業所のある都道府県事務局にお問い合わせください。
受付時間:9:00~12:00、13:00~17:00(土日祝日、年末年始除く)

商工会議所地区
電話番号:03-6632-1502(商工会議所地区 補助金事務局)
受付時間:9:00~12:00、13:00~17:00(土日祝日、年末年始除く)

まとめ

小規模事業者持続化補助金(一般型)は、第8回以降の変更点も多く、理解が難しい部分もあるかと思いますが、制度変更での変革を余儀なくされる小規模事業者の方に対して、国が支援に力をいれていることもわかります。

内容をきちんと理解し、補助金を上手に活用し、今後の事業拡大につなげていっていただきたいと思います。

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(編集:創業手帳編集部)

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