「事業承継・M&A補助金」の内容とは?2024年度からの変更点を解説
事業承継とM&Aに関する支援が拡充!
事業承継やM&Aを検討している中小企業・小規模事業者を支援するために、2025年度から「事業承継・M&A補助金」という新しい補助金制度が開始される予定です。
事業承継に際しての設備投資や、M&A・PMIの専門家活用費用などを支援する制度としての活用が期待されています。
なお、2024年度は「事業承継・引継ぎ補助⾦」という名称で補助金事業が行われていました。「事業承継・M&A補助金」では「事業承継・引継ぎ補助⾦」を踏襲しつつ、新しい支援枠の創設や補助上限額の引き上げが予定されています。
今回は、2025年度開始予定の「事業承継・M&A補助金」に関する最新情報を解説します。
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この記事の目次
「事業承継・M&A補助金」と「事業承継・引継ぎ補助⾦」の違い
まずは、2025年度の「事業承継・M&A補助金」と2024年度の「事業承継・引継ぎ補助⾦」について、制度の違いを見てみましょう。
支援枠の違い
まずは、それぞれの支援枠の違いから解説します。
「事業承継・M&A補助金」 | 「事業承継・引継ぎ補助⾦」 |
・事業承継促進枠:5年以内に事業承継を予定している場合の設備投資等に係る費用を補助 ・専門家活用枠:M&A時の専門家活用に係る費用(FA、仲介、表明保証保険料等)を補助 ・PMI推進枠:M&A後の経営統合(PMI)に係る費用(専門家費用、設備投資等)を補助 ・廃業・再チャレンジ枠:事業承継・M&Aに伴う廃業等に係る費用(原状回復費、在庫処分費等)を補助 |
・経営革新枠:事業承継・M&A後の経営革新(設備投資、販路開拓等)に係る費用を補助 ・専門家活用枠:M&A時の専門家活用に係る費用(FA、仲介、セカンドオピニオン等)を補助 ・廃業・再チャレンジ枠:事業承継・M&Aに伴う廃業等に係る費用(原状回復費、在庫処分費等)を補助 |
「経営革新枠」が「事業承継促進枠」という名称に変わり、さらに新しく「PMI推進枠」が創設される予定です。M&Aに伴い、経営資源を譲り受ける予定の中小企業が行うPMIの取り組みを支援する枠が新設され、M&Aの支援が手厚くなります。
補助上限額の違い
続いて、補助上限額の違いを比較してみます。
「事業承継・M&A補助金」 | 「事業承継・引継ぎ補助⾦」 |
・事業承継促進枠:800~1,000万円(一定の賃上げを実施する場合、上限1,000万円) ・専門家活用枠(買い手支援類型):600~800万円(DD費用申請の場合、800万円を上限に200万円を加算) (100億円企業の場合2,000万円) ・専門家活用枠(売り手支援類型):600~800万円(DD費用申請の場合、800万円を上限に200万円を加算) ・PMI推進枠(PMI専門家活用類型):150万円 ・PMI推進枠(事業統合投資類型):800~1,000万円(一定の賃上げを実施する場合、上限1,000万円) ・廃業・再チャレンジ枠:150万円(事業承継促進枠、専門家活用枠、事業統合投資類型と併用申請する場合は、それぞれの補助上限に加算) |
・経営革新枠:600~800万円(一定の賃上げを実施する場合、上限800万円) ・専門家活用枠:600万円 ・廃業・再チャレンジ枠:150万円(経営革新枠、専門家活用枠と併用申請する場合、それぞれの補助上限に加算) |
全体的に補助上限額が引き上げられており、政府としても事業承継やM&Aを促進したい意向が見て取れます。
中小企業経営者の高齢化と後継者不足の課題に対応し、雇用状況を維持するためにも、多様な形態での事業承継が補助金の対象となりました。
補助率の違い
「事業承継・M&A補助金」 | 「事業承継・引継ぎ補助⾦」 |
・事業承継促進枠1/2(中小企業者のうち、小規模事業者に該当する場合は2/3) ・専門家活用枠(買い手支援類型):2/3※1 ・専門家活用枠(売り手支援類型):1/2(赤字、営業利益率の低下のいずれかに該当する場合は2/3※2) ・廃業・再チャレンジ枠:1/2(事業承継促進枠、専門家活用枠、事業統合投資類型と併用申請する場合は、各事業における事業費の補助率に従う) |
・経営革新枠:1/2(中小企業者のうち、小規模、営業利益率の低下、赤字、再生事業者のいずれかに該当する場合は2/3) ・専門家活用枠(買い手支援類型):⅔ ・専門家活用枠(売り手支援類型):1/2(赤字、営業利益率の低下のいずれかに該当する場合は2/3) ・廃業・再チャレンジ枠:1/2(経営革新枠、専門家活用枠と併用申請する場合は各事業における事業費の補助率に従う) |
※1
100億企業要件を満たす場合:1,000万円以下の部分は1/2、1,000万円超の部分は1/3
※2
①赤字、②営業利益率の低下(物価高影響等)のいずれかに該当する場合
このように、2025年度から始める新年度では、100億企業要件が新たに追加されています。
「事業承継・M&A補助金」の枠を紹介
具体的に、「事業承継・M&A補助金」ではどのような枠が用意されており、どのような経費が補助対象となるのかを確認しましょう。
事業承継促進枠
事業承継促進枠は、5年以内に親族内承継や従業員承継を予定している方を対象とした支援枠です。
要件 | 5年以内に親族内承継又は従業員承継を予定している者 |
補助上限 | 800万~1,000万円 (一定の賃上げを実施する場合、補助上限を1,000万円に引き上げ) |
補助率 | 1/2・2/3 (中小企業者等のうち、小規模事業者に該当する場合は2/3) |
対象経費 | ・設備費 ・産業財産権等関連経費 ・謝金 ・旅費 ・外注費 ・委託費 等 |
事業承継や経営資源を引き継ぐための事業投資が、補助の対象です。
新しい商品・サービスの開発費用や設備への投資など、事業承継に伴う事業拡大を予定している方は活用を検討しましょう。
専門家活用枠
経営資源を譲渡する方と譲受される方は、M&A時の専門家活用に関する費用の補助を受けられます。
要件 | 補助事業期間に経営資源を譲り渡す、又は譲り受ける者 |
補助上限 | ・買い手支援類型:600~800万円※1、2,000万円※2 ・売り手支援類型:600~800万円※1 |
補助率 | 買手支援類型:1/3・1/2、2/3※3 売手支援類型:1/2・2/3※4 |
対象経費 | ・謝金 ・旅費 ・外注費 ・委託費 ・システム利用料 ・保険料 |
※1:800万円を上限に、DD(デューデリジェンス)費用を申請する場合200万円を加算
※2:100億企業要件を満たす場合
※3:100億企業要件を満たす場合、1,000万円以下の部分は1/2、1,000万円超の部分は1/3
※4: ①赤字、②営業利益率の低下(物価高影響等)のいずれかに該当する場合
活用する専門家(フィナンシャル・アドバイザーや仲介会社)は、「M&A支援機関登録制度」に登録されたアドバイザーや仲介業者である必要があります。
PMI推進枠
M&Aに伴い経営資源を譲り受ける予定の中小企業は、M&A後のPMI(経営統合)にかかる費用の補助を受けられます。
要件 | M&Aに伴い経営資源を譲り受ける予定の中小企業等に係るPMIの取り組みを行う者 |
補助上限 | ・PMI専門家活用類型:150万円 ・事業統合投資類型:800~1,000万円(一定の賃上げを実施する場合、補助上限1,000万円に引き上げ) |
補助上限 | ・PMI専門家活用類型: 1/2 ・事業統合投資類型:1/2(中小企業者等のうち、小規模事業者に該当する場合は2/3) |
対象経費 | ・設備費 ・外注費 ・委託費 等 |
PMIを実施する際の専門家費用や設備投資に関する費用が、補助の対象です。
M&Aによる効果を最大化しつつ、リスクを最小化するためにPMIは欠かせません。経営体制・組織の統合や業務システムの統合をはじめ、定量的な面だけでなく、人材や企業文化など定性的な面も考慮する必要があります。
M&A後の事業展開をスムーズに進めるうえで、PMI推進枠は有効活用できるでしょう。
廃業・再チャレンジ枠
事業承継やM&Aの検討・実施などに伴って廃業する方は、原状回復費用や在庫処分費などに関する費用の補助を受けられます。
要件 | 事業承継やM&Aの検討・実施等に伴って廃業等を行う者 |
補助上限 | 150万円(事業承継促進枠、専門家活用枠、事業統合投資類型と併用申請する場合は、それぞれの補助上限に加算) |
補助率 | 1/2・2/3(事業承継促進枠、専門家活用枠、事業統合投資類型と併用申請する場合は、各事業における事業費の補助率に従う) |
対象経費 | ・廃業支援費 ・在庫廃棄費 ・解体費 ・原状回復費 ・リースの解約費 ・移転・移設費用(併用申請の場合のみ) |
なお、廃業・再チャレンジ枠は事業承継促進枠・専門家活用枠・PMI推進枠の事業統合投資類型と併用できます。
「事業承継・M&A補助金」の申請方法
2024年12月現在、「事業承継・M&A補助金」に関する具体的な申請方法は公表されていません。
参考までに、2024年度の「事業承継・引継ぎ補助⾦」の流れを紹介します。似たような流れになると推測されるため、参考にしてみてください。
- 補助対象事業の確認
- gBizIDプライムアカウントの発行
- gBizIDから交付申請・交付決定通知
- 補助対象事業実施・実績報告
- 補助金交付
実際に公募要領が公表されたら、具体的な補助対象事業を確認しましょう。「事業承継・M&A補助金」では4つの枠が用意される予定なので、自身が検討している事業投資や支出が補助対象になるのかを確認してみてください。
なお、2024年度の「事業承継・引継ぎ補助⾦」では「gBizIDプライム」アカウントの取得が必要でした。「事業承継・M&A補助金」でも「gBizIDプライム」アカウントの取得が求められると考えられるため、速やかに取得手続きを済ませておくとよいでしょう。
「事業承継・引継ぎ補助⾦」を踏襲すると見込まれる場合、jGrantsを利用した電子申請による申請が想定されます。補助金申請の審査結果は、中小企業庁や事務局のホームページにおいて公表されるほか、 jGrants上でも通知されていました。
その後、実際に補助対象事業を実施し、完了したら実績報告を行います。事務局による確定検査を受け、補助金の請求を経てから補助金が交付される、という流れが踏襲されると考えられるでしょう。
補助期間終了後3~5年間は「事業計画実施期間」として、事業化状況報告を行う必要があります。
なお、新制度である「事業承継・M&A補助金」では、補助金事務局が決定したあとに問い合わせの対応窓口が設置される予定です。
まとめ
経営者の高齢化や後継者の不在により企業が廃業してしまうのは、国や地域として大きな損失です。企業が生み出す付加価値だけでなく雇用も失われてしまい、経済全体に悪影響をもたらしてしまうでしょう。
政府は経営者の高齢化や後継者の不在による廃業を防ぐために、2025年度から「事業承継・M&A補助金」という補助金事業を開始する予定です。事業承継やM&Aを検討している当事者の方は、最新情報を確認してみてください。
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(編集:創業手帳編集部)