事業年度の決め方とは?会社設立時に知っておきたい事業年度のポイントや注意点を解説
事業年度の決め方を知って失敗を防ごう

会社設立や個人事業の開業時に必ず決めなければならない事業年度は、一見すると単なる会計上の区切りのように思われがちです。
しかし、実は法人税の納付タイミングや決算業務の負担、資金繰り、さらには節税対策にも大きく関わる重要な要素となります。
適当に設定してしまうと、「決算時期が繁忙期と重なって大変」「想定外の税負担が発生した」などの後悔につながるかもしれません。
本記事では、事業年度の基本的な考え方から決め方のポイント、注意すべき点までわかりやすく解説します。
これから開業・法人設立を予定している人はもちろん、すでに事業を始めている人も、自社にとって最適な事業年度を見直すヒントとしてぜひ参考にしてください。
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この記事の目次
事業年度とは?いつ始めるのが一般的?

事業年度は、企業が決算書を作成する際に対象となる一定期間を指し、会計期間とも呼ばれています。法人は定款で事業年度を定め、その期間に基づき決算書を作成します。
そのため、「4月始まり・3月終わり」でなくても問題なく、会社ごとに自由に設定することが可能です。では、いつ始めるのが一般的なのでしょうか。
多くの会社が選ぶ決算月の傾向
日本では、3月決算を採用している企業が多い傾向にあります。
これは官公庁や大企業の会計年度が4月始まりであることから、取引先との決算タイミングを合わせやすい点が理由として挙げられます。
一方で、中小企業やスタートアップでは、あえて3月を避け、9月や12月決算を選ぶケースも増えています。
3月は税理士や金融機関が非常に混み合うため、決算・申告業務が立て込みやすく、対応が遅れがちになることもあるからです。
自社の業種や取引先の状況、専門家との連携のしやすさも踏まえて決算月を決めるのが現実的です。
設立初年度によくある事業年度のパターン
設立初年度の事業年度は、設立日から最初の決算日までとなるため、1年未満になるケースがほとんどです。
例えば、5月に会社を設立し、翌年3月を決算月に設定した場合、初年度は約10カ月間の変則的な事業年度になります。
事業年度の決め方│押さえておきたい8つのポイント

実際に事業年度を決める際に、どのようなポイントを押さえておけば良いのでしょうか。ここで、事業年度の決め方について解説します。
会社設立日から1年以内にする
事業年度を決める上で、まず重要となるのが会社設立日から1年以内に設定することです。
事業年度は基本的に設立日から1年以内であれば自由に設定できますが、1年を超えて設定することはできません。
ただし、1年以内なら自由だからと言って、会社設立日に近いタイミングで事業年度を設定してしまうと、事業が軌道に乗る前に決算業務で多くのリソースやコストを必要とするため、注意が必要です。
会社設立日からできるだけ期間を空けておくと良いでしょう。
繁忙期を避ける
業界によって繁忙期は異なりますが、決算期と繁忙期が被ってしまうと、通常の業務でも繁忙期によって負担が増えているのに、さらに決算業務の負担も増えてしまうことになります。
そうなると業務過多になるため、事業年度を設定する際は繁忙期と被らないようにする事も大切です。
繁忙期の前後どちらに設定するかによってメリットが異なります。
例えば、繁忙期の前に決算期を設定すると、繁忙期で売上げが大きく上がり納税負担が増えたとしても、次の決算までに納税資金を準備しておけば良いため、慌てて資金を用意する必要がありません。
一方、繁忙期のあとに設定すると、繁忙期で向上した売上げを当期の成績に反映させられます。
支出が多い月は避ける
決算日から実際に納税するのは約2カ月後になります。そのため、納税のタイミングと支出が多い月が被る場合には避けたほうが無難です。
例えば、掛け商売によって売上入金が少なかったり、ボーナスを支給するタイミングと被っていたりすると、支出が多くなる傾向にあります。
また、労働保険の申告時期や源泉所得税の納付時期も支出が増えやすいため、注意が必要です。
支出が多い月は会計処理が増える時期でもあるため、経理の負担も考慮して支出の多い月は避けたほうが良いでしょう。
売上げが伸びる時期を予想し、期首にする
事業年度を決める際に、売上げが伸びる時期を予想して期首を決めることで様々なメリットが得られます。
例えば、もし決算期と売上げが伸びる時期が重なり、その中で節税対策を実施した場合、想定していたより売上げが伸びなかった場合は節税対策が影響して赤字になる可能性があります。
一方、期首に売上げが伸びた場合、節税対策は決算期までに行えば良いため、状況を見ながら節税対策を効果的に行うことが可能です。
こうした理由から、売上げが伸びる時期を予想して期首に設定し、そこから事業年度を設定するのもおすすめです。
消費税の免税期間を考慮する
新たに会社を設立すると、資本金または出資金が1,000万円を超えていなければ、消費税が一定期間免除されます。
これは、消費税の基準期間が前々事業年度に設定されているためです。
消費税は事業期間の初年度が基準期間となる3期目からとなり、1期目・2期目が免除になります。
ただし、法人は事業年度単位で捉えられ、事業年度2期目=2年目というわけではありません。
もし設立日から事業年度の終了日が近いと、その分消費税の免税期間も短くなってしまいます。
そのため、資本金または出資金が1,000万円以下の場合は、消費税の免税期間も考慮しながら事業年度を設定してみましょう。
決算書の印象が良くなるタイミングにする
貸借対照表や損益計算書などを含む決算書は、企業の資産や負債、将来性があるかなどを判断する際に資料として用いられます。
例えば金融機関で融資を受ける際にも、審査の中で決算書の内容を確認し、融資を行っても問題ないかどうかを決めます。
もし未払金や売掛金の多さが目立ったり、借入金がすでにあったりすると、決算書を見た融資担当者は、悪い印象を持ってしまう可能性が高いです。
創業間もないタイミングだとどうしても事業がまだ軌道に乗っておらず、未払金・借入金などがある場合も多くみられます。
決算書の印象が良くなるように事業が軌道に乗るタイミングで事業年度を設定することも大切です。
役員報酬の支払時期から逆算する
役員報酬は納税額の調整で活用されることもあることから、法人税法では役員報酬を損金計上する場合に一定の要件を満たさなくてはなりません。
例えば、法人税法上で認められているのは以下の3つです。
-
- 定期同額給与:一定期間同額を支給する
- 事前確定届出給与:所定の時期に支払う金額が確定している
- 業務連動給与:業務の実績に合わせて支給額も変動する
一般的には定期同額給与が選ばれ、毎月一定額を役員報酬として支払います。ただし、定期同額給与は事業開始日から3カ月以内に金額を確定させる必要があります。
事業年度が終了するまでは確定分のみ損金算入ができないことから、役員報酬の支払時期から逆算して事業年度を設定してください。
取引先との兼ね合いも考える
取引先がすでに決まっており、1年以内に大きく変更する予定がない場合は、その取引先に合わせて事業年度を決めるのもおすすめです。
例えば、取引先の事業年度が4月1日~3月31日だった場合、相手に提出する書類は同じ期間で一区切りになるものが求められます。
もし自社と取引先が同じ事業年度だった場合、作成した資料をそのまま引き渡すことができますが、異なる事業年度の場合は新たに取引先の4月~3月に合わせて資料を作り直さなくてはなりません。
スムーズに取引をするためにも、主要な取引先の事業年度に合わせるのもひとつの方法と言えます。
事業年度とは?基本ルールをわかりやすく解説

会社を経営する場合、1年間でどれだけの利益が発生し、資産はいくら残っているのか、負債はどれくらいあるのか、などを明確にする必要があります。
利益・資産をはじめとする経営状況は、法人税などの納税額を決めるために必要であり、また株主・取引先などから信頼を得るために公開されます。
事業年度における法律上のルール
事業年度は会社法と法人税法でそれぞれ定義が定められています。
会社法の場合、事業年度は前事業年度末日の翌日(前事業年度がない場合は成立日)から1年以内の期間と定められており、事業年度を変更する際は最長1年6カ月まで延長できます。
一方、法人税法では定款に記載された期間または税務署に届けた期間を事業年度と定義し、原則1年間です。
会社法とは違い、1年間を超える場合は1年と1年未満に分けなくてはなりません。
事業年度・会計年度・決算月の違い

事業年度に似た言葉として、「会計年度」と「決算月」があります。それぞれ意味や使われ方はどのように違うのか、解説していきます。
それぞれの意味と使われ方
会計年度とは、損益計算をする対象となる一定期間を指す言葉で、事業年度とほとんど同じ意味で用いられます。
例えば事業年度が4月1日から3月31日だった場合、会計年度も同様に4月1日~3月31日です。
決算月とは、事業年度における最後の1カ月です。もし事業年度が4月1日~3月31日だった場合、決算月は3月1日~3月31日までを指します。
会社は決算月の最後の日(決算日)時点での損益・資産を計算し、決算書を作成して財務状況を確定させます。
混同しやすいポイントに注意
事業年度と会計年度はどちらも同じ意味として用いられます。
しかし、事業年度は民間法人の決算期間を指す言葉として用いられ、会計年度は国・地方公共団体の決算期間を指す場合に用いられることが多いです。
そのため、民間法人が活用する際は、事業年度を用いるのが一般的と言えます。
会計年度を用いても問題はありませんが、区別するケースがあることを知っておきましょう。
個人事業主と法人で事業年度の決め方は違う?

個人事業主と法人で事業年度の決め方は異なります。どのように違ってくるのか、考え方や注意点などを解説します。
個人事業主の事業年度の考え方
法人の場合、事業年度は1年以内の任意の期間で設定でき、1年間とすることもできれば、1年より短く設定することも可能です。
また、事業年度を1年間に設定したとしても、設立日からちょうど1年後に決算日を設ける必要もありません。
一方で、個人事業主は所得税の課税期間が1月1日~12月31日と決まっているため、事業年度も1月1日~12月31日に固定されます。
法人ならではの注意点
1月1日~12月31日に事業年度が固定されている個人事業主とは異なり、法人は任意で設定できるため、自社にとって都合の良いタイミングに事業年度を設定することもできます。
ただし、節税を目的に設立から数カ月後に決算月を設定してしまうと、かえって費用がかさんでしまう可能性もあるため、注意が必要です。
事業年度は後から変更することも可能

事業年度は会社の設立時に設定するものですが、後から変更することも可能です。ここで、事業年度を後から変更するメリットや必要となるケース、注意点などを紹介します。
事業年度を変更するメリット
事業年度を変更するメリットとして、決算対策となり節税効果がある点が挙げられます。
会社設立から順調に利益が出ている場合、月数が増えればそれだけ利益も増えていくことになります。
前事業年度の12カ月後に決算を組む場合と10カ月後に組む場合では、その分利益が少なくなり、納める税額も抑えることが可能です。
また、事業年度を変更することで来期以降に役員給与を再設定できることも、メリットとして挙げられます。
事業年度の変更が必要となるケース
事業年度は基本的に任意で決められるものの、変更が必要となるケースもあります。例えば、以下のようなケースに該当する場合は事業年度の変更が必要です。
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- 繁忙期と決算月が被ってしまった
- 取引先との会計調整が必要になった
- 海外の関連会社と連携を強化させるため、事業年度を合わせることになった
事業年度の変更における注意点
事業年度を変更する上で注意したいのが、税金の計算です。
例えば事業年度を変更したことで1年に満たない事業年度が生まれてしまうと、減価償却費などの計算で独自の調整が必要となり、計算が複雑化してしまいます。
また、事業年度の変更によって取引先や金融機関などから不信感を持たれたり、余計な手間をかけさせてしまったりする場合もあるため、頻繁に行わず慎重に考えた上で行うことが大切です。
事業年度を変更するやり方
事業年度を変更したい場合、まずは取締役会や株主総会の特別決議で承認を受けなくてはなりません。
承認を受けたら議事録を作成し、定款に事業年度が記載されている場合は該当箇所を修正しておきます。
さらに、税務署や各種関係機関に向けて「異動届出書」の提出が必要です。
異動届出書の「異動事項等」に「事業年度」と記載し、変更前と変更後の事業年度と異動年月日(株主総会での決議日)を記入します。
その下に「事業年度を変更した場合」という項目もあるため、ここに変更後最初の事業年度を記入してください。
異動届出書は、事業年度の変更日から1カ月以内に税務署へ提出しましょう。
事業年度と税金・申告スケジュールの関係

事業年度を決める際や変更時には、税金の申告期限やスケジュールなどに注意が必要です。ここで、事業年度と税金・申告スケジュールとの関係について解説します。
法人税・消費税の申告期限との関係
事業年度は、法人税や消費税の申告・納付スケジュールに直結します。
原則として、法人税と消費税はいずれも「事業年度終了日の翌日から2カ月以内」に申告・納税を行わなくてはなりません。
例えば3月を決算月とした場合、申告期限は5月末となり、この2カ月間で決算整理から書類作成、税額の確定まで進めていく必要があります。
法人税に関しては特例で申告期限を延長することも可能ですが、納税自体は原則期限内に行う必要があるため、注意してください。
事業年度変更時の申告スケジュールに注意
事業年度を変更する場合、異動届出書による申告が必要です。この申告が遅れると、消費税の課税期間や中間納付の扱いに影響が出る可能性があります。
例えば、事業年度の変更後に元の事業年度を対象とした中間納付書が届いてしまう場合もあります。
この場合、中間納付額を支払う必要はなく、変更後の事業年度に合わせて消費税を納付すれば問題ありません。
しかし、税務署側が元の事業年度で認識しているため、早めに異動届出書を提出することが大切です。
まとめ・事業年度は様々なポイントを考慮して決めよう
事業年度は単なる会計上の区切りではなく、税金の申告期限や資金繰り、決算業務の負担、将来的な経営戦略にも影響する要素です。
一般的な決算月の傾向を参考にしつつも、自社の繁忙期や売上げの波、納税資金の準備状況なども踏まえて設定することが、後悔しないためのポイントになります。
必要に応じて税理士など専門家の意見も取り入れながら、自社にとって最適な事業年度を設定してください。
(編集:創業手帳編集部)






