【税理士監修】事業再構築補助金における最適な認定支援機関の選び方とは
認定支援機関を選ぶ際には、採択件数よりも採択率をみることが大事!
事業再構築補助金が実施されてから時間が経ち、採択獲得に関するまとまった情報を得られる状況となりました。
採択獲得のために一番重要なのは、事業計画書の精度です。そして専門家&パートナーとして申請を支援してくれる認定支援機関選びが、精度の高い事業計画書づくりのキーとなります。
そこで今回は、事業再構築補助金を申請するにあたって重要な認定支援機関選びについて、わかりやすく解説します。また事業計画書作成のポイントも紹介するので、ぜひ最後までごらん下さい。
この記事の目次
事業再構築補助金とは
事業再構築補助金は、企業がウィズコロナ、ポストコロナの中で思い切った事業再構築に取り組むのを支援するために、予算1兆1,485億円を確保している補助金制度です。
一定の要件に当てはまる中小企業、個人事業主、中堅企業などが、100万円〜1億円の補助金を受給できます。
詳しい申請要件、補助金額などについては、こちらの記事でご確認下さい。
事業再構築補助金の認定支援機関とは
事業再構築補助金を申請するためには、必ず国が認定した「認定支援機関」(※)と協力して事業計画を策定する必要があります。
※正しい名称は「認定経営革新等支援機関」ですが、この記事では通称の「認定支援機関」と表記します。
認定支援機関とは何かを確認しましょう。
補助金申請には認定支援機関の確認書が必要。認定支援機関の種類を紹介
事業再構築補助金の申請時には、認定支援機関が申請内容を確認したと証明するための「確認書」を提出する必要があります。
確認書を発行できる認定支援機関は、大きく分けて4種類です。
-
- 商工会議所、商工会
- 弁護士、公認会計士、税理士、行政書士、中小企業診断士など
- 民間のコンサルティング会社(経営コンサルティング会社 等)
- 金融機関(地銀、信金、信組など)
全国各地に認定支援機関があるので、後ほど認定支援機関の調べ方を紹介します。
認定支援機関の具体的な役割
認定支援機関の主な役割は2つです。
-
- 事業主と一緒に事業計画を策定
- 確認書を発行
【事業計画書の策定について】
「作成」ではなく「策定」という言葉が使われていることに注目しましょう。認定支援機関へ事業計画書の作成を丸投げすることはできません。
事業主自身が事業計画書を作成することが前提であり、認定支援機関の役割は幅広くサポートすることです。
【確認書の発行について】
認定支援機関は、最終的に「事業計画が事業再構築補助金の対象になること」、「事業計画に記載した目標の達成が見込めること」を確認した上で確認書を発行します。
この他、事業主の依頼に応じて書類不備の確認、事業をすすめていく上での相談相手、指導的役割なども担います。
第1回、2回の採択結果からわかる認定支援機関選びの重要性
第1回、2回の採択結果は以下のとおりです。
分析項目 | 第1回 採択結果 |
第2回 採択結果 |
---|---|---|
(a)申請件数 | 22,231件 | 20,800件 |
(b)書類不備数 | 2,992件 | 2,467件 |
(c)要件を満たした申請件数 【(a)-(b)=(c)】 |
19,239件 | 18,333件 |
(d)採択件数 | 8,016件 | 9,336件 |
採択率 【(d)/(c)×100】 |
41.6% | 50.6% |
申請者のうち10%以上が書類不備となっていますが、認定支援機関が確認作業を行っている以上、書類不備は一番避けたい&あってはならない事態です。
また第2回は、第1回と比較して採択率が上昇している点にも注目しましょう。
採択率が上昇した要因の1つとして、第1回の採択後に中小企業庁が”Q&A”、”採択結果について見解を示した動画”などを公開した影響があると予測できます。
動画からは以下のようなことがわかるので、情報収集をした第2回の申請者は、第1回の申請者よりも有利ですよね。
- 事業計画作成のアドバイス
- 審査内容の一部 など
「複雑な資料の解読」、「書類不備の徹底チェック」、「全ての情報を確認して書類に反映」などを、事業主の力だけでこなすには限界があります。
専門的な知識と経験を持ち、事業主と同レベルで事業計画を理解&サポートする認定支援機関を選ぶのが、採択ゲットにつながる重要なポイントです。
事業再構築補助金の採択をゲットするための、認定支援機関の選び方
では、具体的にどのような方法で認定支援機関を選べばいいのでしょうか。
現役認定支援機関に質問。認定支援機関の選び方
現役認定支援機関である税理士法人HaGaXの代表・芳賀 保則先生に、認定支援機関の選び方をおしえてもらいました。
経営革新等支援機関 税理士法人ハガックス 代表社員
1970年生まれ、渋谷区で生まれ育つ。東京大学大学院卒業後、東京ガス勤務を経て、税理士法人ハガックス(渋谷区、税理士4名・スタッフ合計14名)の代表社員に。
中小企業大学校にて経営改善計画策定支援研修の講師及び試験評価委員を務める。主な著書は『現場で使える創業相談の手引き』。趣味はゴルフ、ジム、輪ゴムでハエを落とすこと。
質問
「現役認定支援機関の視点から、採択獲得につながる認定支援機関の選び方をおしえて下さい。」
芳賀先生
「まずは採択率を確認するのが最重要です。「採択率が高い=事業主に寄り添って質の高い支援をしている」と言えるでしょう。
採択率20%台など全体の採択率(50 .6%)を大きく下回る機関もあるので、注意して下さい。
また採択率を確認するときに、支援数も目に入ることと思います。「支援数が多い=経験豊富」と考えたくなりますが、認定支援機関ごとに支援の方法や方針が違うため、支援数だけでは判断できない点も覚えておいて下さい。
参考までに、弊社では補助金申請は事業再構築のきっかけにすぎないと考えています。事業計画書を完成に導くのはもちろん、事業主に伴走して5年、10年スパンで事業をコンサルティングしていきます。
そのため、1回の申請で支援できる件数は1〜2件が限界です。」
採択率は、認定支援機関の実力そのものです。広告などがきっかけで気になる認定支援機関がある場合にも、必ず採択率を確認しましょう。目先の情報に惑わされることなく、質の高い支援を提供している認定支援機関を選ぶのが大切です。
次に、採択率を確認する方法も紹介します。
認定支援機関の実力がわかる。採択率を確認する方法
認定支援機関の採択率は、中小企業庁が提供しているシステムで確認できます。
都道府県ごとに認定支援機関を検索するシステムなのですが、遠方の認定支援機関にサポートを依頼するのもOKです。(北海道の事業主が、東京都の認定支援機関に依頼 等)
②検索システムがひらくので、検索したい都道府県をクリックして下さい。
③検索条件を指定する画面がひらくので、下へスクロールしましょう。
『支援実績』欄の『事業再構築補助金』にチェックをつけて、『この条件で検索する』をクリックして下さい。
④認定支援機関が一覧で表示されます。各機関をクリックすると認定支援機関の詳しい情報が表示され、採択率も確認できます。
システム上、認定支援機関一件ごとに採択率を確認する必要があります。時間がかかる場合もあると思いますが、前述したとおり重要な作業です。ぜひ取り組んでみて下さい。
【採択率ランキングTop10】東京都の民間認定支援機関から一覧表で紹介
東京都において、全認定支援機関の採択率を調査しました。支援実績件数が10件以上を対象とし、採択率が高い順に一覧表で紹介します。
※金融機関なら普段のおつきあい、商工会議所なら近隣などで選ぶのが一般的なので、今回は民間の認定支援機関に絞って調査しています。
順位 | 名称 | 種類 | 採択件数 | 第1回採択率(%) | 第2回採択率(%) |
---|---|---|---|---|---|
1 | 長田 和弘 (長田和弘税理士事務所) |
税理士 | 10 | 100 | 100 |
2 | ゼノンクリエイツ(株) | 民間コンサル | 10 | 85.7 | 100 |
3 | 東京中小企業投資育成(株) | 民間コンサル | 10 | 71.4 | 100 |
4 | (株)東京経営サポーター | 民間コンサル | 19 | 76.9 | 90 |
5 | 税理士法人福井・林財産コンサルタンツ | 税理士 | 11 | 100 | 85.7 |
6 | (株)コンサラート | 民間コンサル | 14 | 54.5 | 80 |
7 | リードブレーン(株) | 民間コンサル | 11 | 40 | 77.8 |
8 | シェアビジョン(株) | 民間コンサル | 39 | 60 | 75 |
9 | 税理士法人フューチャーコンサルティング | 税理士 | 13 | 62.5 | 72.7 |
10 | (株)AGSコンサルティング | 民間コンサル | 37 | 50 | 71.8 |
※第2回採択率で降順
1位の認定支援機関は採択率が100%、10位でも71.8%で、全体の採択率を大きく上回っています。さらにほとんどの認定支援機関が、第1回より第2回の方が高い採択率を獲得しています。
各認定支援機関の実力と本気度がわかる結果ですね。
ここで注意が必要なのが、採択率の高い複数の支援機関があって迷う場合です。中小企業庁から「認定支援機関のうち約2/3が報酬なしで支援している」という文章が公表されていることもあり、報酬を比較して選びたくなるのではないでしょうか。
でも「報酬なし」や「安さ」にこだわって認定支援機関選びをするのは、おすすめできません。前述の芳賀先生によると、「支援内容やこれまでの認定支援機関との関わりによって、適正な報酬は違う」とのことでした。
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- 事業主自身の事業計画が明確で書類作成能力が高ければ、顧問税理士等が無料or安く支援を請け負う可能性がある
- 事業計画の作り方や考え方がわからない、書類作成が苦手などの場合は有償であっても質の高い支援をしてくれる認定機関を選ぶ方がいい
- 金融機関は、事業資金貸付けにより利息収入が発生している等の内情があるため、無料で支援を請け負うケースも考えられる
どの程度の支援が必要かを考え、適正な報酬を提示する質の高い認定支援機関を選んで頂けると幸いです。
採択につながる事業計画書を作成する3つのポイント(初回申請、不採択後の再申請どちらにも有効)
中小企業庁(※)は、事業再構築補助金の主旨、申請に役立つ情報などを積極的に発信しています。ぜひ認定支援機関と情報共有をして、事業計画書作成に役立てて下さい。
※事業再構築補助金を統括しているのは経済産業省ですが、この補助金の制度立案から事務までを、中小企業庁が担当しています。
事業計画書の作成ポイントを、大きく3つに分けてわかりやすく紹介します。
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- 補助金の意図、審査内容を把握して事業計画書を作成
- 過去の不採択理由を確認。書類不備を徹底チェック
- 加点を把握
1.補助金の意図、審査内容を把握して事業計画書を作成
事業再構築補助金が創設される根本となった意図は、以下のとおりです。
「国内企業の内部留保は増えている。でも賃金が上がらない、事業投資をしないので新しい製品やサービスが生まれないなどの問題があった。
現在はコロナをきっかけに、経営が順調な企業、事業継続が難しい企業がはっきりと2分化している。
そこで、自分の力で事業を再構築して現状の打破にチャレンジする中小企業等を応援したい」
事業再構築補助金の公募要領に記載された審査項目以外に、動画から以下のような審査内容がわかりました。補助金の意図を把握した上で、必ず取り入れましょう。
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- 事業主自身の言葉で事業計画が作成されていることが必須
- 新しい事業に対する事業主の思い
- 新しい事業で「利益を獲得できる」と言える根拠(市場規模、トレンドなど)
- 新しい事業のために既に持っているもの、足りないもの(ノウハウや技術)
- 新しい事業の市場が抱える課題、課題解決のための対策
- 新しい事業を世に出す具体的な方法(マーケティング方法)
- 新しい事業を世に出すときの市場規模や価格
- 新しい事業が参入する市場で既に利益を獲得している企業の状況
- 既存企業と自社の違い、優位性
2.過去の不採択理由を確認。書類不備を徹底チェック
動画から、採択につながらない事業計画書の内容もわかりました。
-
- 事業主が作成していないことがわかる
- 悩みや過去の苦労を長々と語っている
- なぜその事業をしようとしているのか、理由がわからない
- 利益獲得できる根拠がわからない(データ不足 等)
- 新事業が消費者に届くまでの流れがわからない
- 新しい市場に参入できる根拠となる強みがわからない
- 自社の弱みを把握していない、把握していても解決方法が明示されていない
- 補助金の申請額の根拠がわからない
この他、単純な書類不備で不採択となっている例もあります。書類不備の具体例を
3.加点を把握
事業再構築補助金の審査では、以下に該当すると加点を得られます。
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- 緊急事態宣言の影響を受けて売上が減少等
- 最低賃金枠での申請
- 経済産業省が実施するEBPM(※)への協力
※EBPMとは、政府が客観的に証明できるデータ等をもとにして政策をすすめる取り組みです。経済産業省がEBPMを実施するために、情報提供をし続ける事業者が加点対象です。
この他、動画から「複数事業者が同じ目標を持って集まり、大規模のチャレンジをする」取り組みも、加点対象になることがわかりました。
事業者各々が補助金の採択をゲットすれば、資金を集めて大きなチャレンジができます。ぜひ検討してみて下さい。
認定支援機関に、タッグを組める事業者がいないか聞いてみるのもいいですね。
第5回まで公募があります。今後の採択率予想
中小企業庁は、事業再構築補助金の実施当初から「第5回まで公募する」と公表していています。
第1回、2回と公募を重ねるごとに採択率がアップしていますし、今後はさらに採択、不採択に関する情報が蓄積します。また認定支援機関の経験値も上がるため、採択率が上昇すると予想できます。
ただし制度内容が複雑で審査も厳しいため、大幅な上昇ではなく横ばい〜少しずつ上昇と予想して、認定支援機関と一緒に事業計画を作り込んで下さい。
事業計画作成によって、事業が成長するために必要な行動を明確化できます。
他補助金との併用について
事業再構築補助金は、他補助金との併用が可能です。ただし、以下の点にご注意下さい。
「同事業に、複数の国の補助金を受けることはできない」
1つの会社の中で、事業再構築補助金を申請した事業とは別の事業を行っている場合は、別事業に対して他補助金を受けられます。
また事業再構築補助金を申請した事業であっても、自治体が独自に実施している補助金であれば併用が可能です。自治体の補助金制度もチェックしてみて下さい。
事業再構築補助金を活用し、企業の成長、発展につなげよう!
事業再構築補助金は過去最大の予算を確保して中小企業等を応援する制度で、申請の中心となる書類は事業計画書です。
事業計画を事業主が頭の中で構築することはあっても、自分の言葉で明文化する機会は少ないのではないでしょうか。
採択をゲットするためには、審査員が理解しやすく、投資したいと思わせる内容の申請をする必要があります。
ぜひ採択率を重視して、採択に導く実力がある認定支援機関を選んで下さい。
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(監修:
税理士法人ハガックス 代表社員 芳賀保則)
(編集: 創業手帳編集部)