個人事業主は日本政策金融公庫からお金を借りることはできる?それともできない?
個人事業主が日本政策金融公庫で融資を受ける方法を紹介
日本政策金融公庫は、毎年20,000社に創業費用の融資を行っている金融機関です。
一部業種を除きますが、基本的にはほとんどの業種が利用でき、個人事業主でも創業融資を受けられます。
今回は、個人事業主が日本政策金融公庫からお金を借りるにはどうすれば良いのか、必要な書類や手続きの流れを解説します。
審査で失敗しないためのポイントもご紹介するので、事業融資を検討されている方は参考にしてください。
創業手帳では、別冊版「融資ガイド」をリリースしました。創業手帳では、創業期こそ融資の狙い目であり、是非活用して事業の成功を目指してほしいと考えています。何故創業期がおすすめなのか、また融資での審査ポイントなどをこのガイドブックで詳しく解説。無料でお配りしていますので、是非ご活用ください。
※この記事を書いている「創業手帳」ではさらに充実した情報を分厚い「創業手帳・印刷版」でも解説しています。無料でもらえるので取り寄せしてみてください
この記事の目次
個人事業主が日本政策金融公庫からお金を借りるための必要書類
日本政策金融公庫から融資を受けるには、借入申込書や創業計画書、本人確認書類をはじめ、様々な書類を用意する必要があります。
まずは、お金を借りる際に必要な書類をご紹介します。
借入申込書
借入申込書は事業資金の借入れを申し込むための書類です。日本政策金融公庫の支店で入手できるほか、ホームページからもダウンロードできます。
2ページになるため、表面と裏面の両面印刷をするか2枚出力してください。
借入申込書には申込人の名前や住所、生年月日などの個人情報や業種、同居する家族について記載して提出します。押印は不要です。
なお、申込みはインターネットからもできます。インターネットを利用する場合、必要事項は入力するため、借入申込書を提出する必要はありません。
創業計画書
創業計画書はこれから始めるビジネスについて、事業計画や資金調達方法、今後の見通しなどをまとめた書類です。
起業・開業前に作成し、創業するのに至った動機や借入状況、売上げの見通しなどを説明するために提出するものです。
面談では、創業計画書の内容について質問される傾向にあります。
日本政策金融公庫のホームページでは、書式のテンプレートが用意されています。
業種ごとに記入例も用意されているので、どのように書けばいいのかがわからない時はテンプレートを活用してみてください。作成に役立つ資料もあり、参考になるはずです。
本人確認書類
日本政策金融公庫に融資を申し込むには、運転免許証などの本人確認書類が必要です。
運転免許証を保有していない場合は、パスポートやマイナンバーカード、保険証などを準備してください。
直近2年分の源泉徴収票もしくは確定申告書
融資を受けるには直近2年分の源泉徴収票もしくは確定申告書が必要です。会社に勤めていた場合、源泉徴収票は勤務先から発行されています。
紛失した場合は、勤務先に依頼すれば再発行してもらうことが可能です。ただし、時間がかかる場合もあるので注意してください。
もし再発行を依頼するのが難しい時は、市区町村の役所で取得できる課税証明書(全項目証明書)で代用可能です。
課税証明書を取得するには、各役所に用意されている課税証明等請求書を記入し手続きを行います。
確定申告を行っていた方は、確定申告書を提出します。確定申告書があれば源泉徴収票は提出する必要はありません。
通帳
自己資金が確認できる通帳と生活用の通帳を記帳した状態で準備します。
通帳のないインターネットバンキングを利用している場合は、入出金が確認できる部分をプリントアウトしてください。
なお、生活用通帳とは、給料の振込みや光熱費、クレジットカードなどの引落としが確認できる通帳です。
基本的には、申込者名義の通帳で自己資金を確認しますが、配偶者や子ども名義で貯めているものでも認められる場合があるため、準備しておくことをおすすめします。
返済予定表(借入れがある場合)
住宅ローンや自動車のローンなど、何かしらの借入れがある場合は返済予定表を準備します。紛失したなどで手元にない場合は、取り寄せることも可能です。
借入れをしている金融機関などに問い合わせして、用意しておくことをおすすめします。
日本政策金融公庫では、審査時に個人の信用情報を確認しています。信用情報とはクレジットカードやローンの申込みに関する取引事実を記録した個人情報です。
信用情報を確認すれば金融機関からの借入れも把握できます。
隠すことはできず、ごまかせば融資を受けるのは難しくなるので、返済予定表は正しいものを提出することが大切です。
印鑑証明書
印鑑証明書は、登録された印鑑が本物であると証明する書類です。正式名称は「印鑑登録証明書」といい、融資が決まった後の契約時に必要になります。
役所で印鑑を登録すると印鑑登録証(印鑑登録カード)が発行されますが、印鑑証明書とは別物です。
印鑑証明書は、印鑑登録証かマイナンバーカードかを使って発行できるものです。
役所や証明センターなどで発行してもらえるほか、マイナンバーカードがあればコンビニエンスストアのコピー機でも発行できます。
その他
上記でご紹介した書類のほかに、用意しておきたい書類は以下のようなものがあります。
・賃貸契約書
自宅が賃貸の場合、所在地の確認などをするために必要です。
・固定資産税の領収書
自宅が持ち家の場合、固定資産税をきちんと支払っているかを確認するために必要な書類です。
・賃貸契約を確認できる書類
日本政策金融公庫の場合、契約前でも物件の申込みができます。
事業を始めるにあたって店舗や事務所に使う物件を借りるなら、家賃・保証金・手数料などが確認できる書類を用意してください。
ただし、融資が決まった後に何かしらの理由により物件の契約ができなくなった場合、審査がやり直しとなる場合もあります。
ほかにも、設備資金・内装費用・機材の購入費用などの借入れを申し込む場合は、見積書あるいは工事請負契約書が必要です。
また、許認可の必要な事業は、許認可が確認できる書類を準備しておくようおすすめします。
個人事業主が日本政策金融公庫からお金を借りる流れ
個人事業主が日本政策金融公庫からお金を借りる場合、個人企業や小規模企業向けの融資「一般貸付」を利用します。
一般貸付の流れは申請→面談→融資の手続き→返済です。ここでは、それぞれの手順を詳しく解説します。
融資を申請する
融資の申請は、インターネットもしくは郵送から申込みが可能です。2年分の確定申告書や創業計画書など、必要書類も併せて提出してください。
なお、少し前述したとおり、インターネットで申請する場合は借入申込書が不要ですが、郵送の場合は借入申込書の提出が必要です。
融資を受けたいなら、単なる事務手続きとして書類を用意するだけではいけません。審査では、資金調達の正当性や返済能力の有無を確認されます。
なぜ資金調達が必要なのか、融資をどのように活用するのか、今後どのように収益を上げていくのか、いかに融資の正当性を主張できるかが重要です。
また、正当性や返済能力があることをアピールするために、事業計画書や財務諸表をしっかりと作り込むことも大切です。
担当者との面談を受ける
融資の申請後、面談を行います。面談では資金調達の必要性や使い道、今後の事業の運営方針などを詳細に説明します。
面談で十分に回答できなければ、事業に関する戦略が不十分とみなされ、融資を受けられないことがあるかもしれません。
面談を受ける際は、企業の方向性や向き合い方を明確にしておくようおすすめします。
場合によっては面談を店舗や工場で行うことがありますが、これは、申告された内容に嘘がないかを確認するためでもあります。
万が一、申告した内容に偽りがあった場合、融資を受けるのは難しくなるでしょう。
また、面談では、事業の成長性に関して質問をされることもあります。
事業内容は創業計画書などを見ればわかるため、事業が成長するか、融資額は適正か、ということを確認しています。
さらに、事業の強みや競合他社との差別化をどのように行っていくのかを質問されることもあるようです。
融資を受けたいなら、こうした質問にもすぐに答えられるよう備えておくことが大切です。
手続きを行う
審査を通ると、次は融資の手続きに移ります。借用証書などの書類手続きを行いますが、万が一手続きを怠ると審査を通ったとしても融資を受けられなくなります。
忘れずに申し込んでください。
審査を通過し融資の申込みを行うと、指定した口座に融資額が振り込まれます。ケースにもよりますが、審査結果は概ね2週間~1カ月ほどでわかり、郵送で送られてきます。
もし融資に落ちてしまったとしても、再度申し込むことが可能です。ただし、再申請で通るには落ちた理由を解決しなくては難しいといえます。
再度申し込む場合は、審査に落ちた理由を分析し、問題を解消することが重要です。
返済をスタートする
借りた融資は、当然ですが返さなければなりません。
返済方法は元利均等返済や元金均等返済、ステップ返済などの中から選べるため、自分に合った方法を選択します。
返済は指定された期日までに行うことが大切ですが、万が一難しい場合は窓口で相談してみてください。場合によっては応じられる可能性があります。
ただし、確実ではないため資金繰りには余裕を持ち、計画的に返済することが大切です。
日本政策金融公庫の審査で個人事業主が失敗しないためのポイント
最後に、個人事業主でも日本政策金融公庫の審査に通るにはどうすれば良いのか、失敗しないためのポイントをご紹介します。
これから紹介するポイントに気をつければ、個人事業主でも融資を受けることは十分可能です。
事業計画書の内容を明確にする
融資を受けたいなら、事業計画書に具体的な事業内容や実際に取引可能な取引先など、現実的な内容を記載することが重要です。
融資の審査では、事業計画書の内容が重視される傾向にあります。
審査する担当者は、事業計画書から「実現可能な事業か」・「成長は期待できるか」・「収益の見込みがあるか」などを判断します。
事業計画書の内容が曖昧だったり、試算が適当だったりすると、担当者の評価を得るのは容易ではありません。
事業計画書の内容が不安な時は、税理士や中小企業診断士など第三者の専門家から意見をもらうこともおすすめできます。
自己資金をしっかりと準備しておく
融資を受ける場合、融資希望額が多いと審査に通らないことがあります。審査に通りたいならなるべく自己資金を用意しておき、融資額を適正で申請することが大切です。
面談では半年分の通帳をチェックし、計画的に自己資金を貯めているか、どのくらい自己資金があるかを確認されます。
自己資金率が高いほど、融資後の資金繰りも安定しやすいと判断されるため、自己資金は多ければ多いほど安心です。
ただし、審査直前にいきなり自己資金が増えていると、審査を通るための「見せ金」と疑われる場合があるので注意してください。
支払いの遅延や滞納は絶対にしない
日本政策金融公庫の審査では、信用情報を必ずチェックします。支払いの遅延や滞納など信用情報に問題があると、審査に落ちやすくなります。
なぜなら、融資をしても返済されない見込みが高いと判断されるからです。
過去に公共料金や税金、クレジットカードなどの支払いを滞納したり遅延したりした心あたりがある方は、一度自分の信用情報を確認しておくと安心です。
現在滞納や遅延をしている場合は、必ず問題を解消してから申し込むようにしてください。
資金の用途を明確にしておく
融資された資金をどのように使うか、用途を明確にしておくのも日本政策金融公庫の審査を通るために重要なポイントです。
どのように使うかが明確ではない場合、融資額が減額されたり、審査に通らなかったりする場合があります。
何に使うかを明確に示した上で、見積書や資金繰り表など、用途を証明する書類を用意することをおすすめします。
面談で自分の気持ちをしっかりと伝える
面談では自分の言葉でしっかりと伝えることが大切です。
創業の動機や事業内容、自社の強みや経営者の経歴をはじめ、今後の売上げや見込み、利益計画、借入金の有無や自己資金などについて質問されます。
創業することに対しどのように考えているのか、どうやって社会貢献につなげていきたいのかなど、自分自身の言葉で具体的に説明できるように準備しておくと良いでしょう。
自分の言葉で伝えることで、どのくらい真剣に考えているのかをアピールできます。
まとめ
日本政策金融公庫では、個人事業主をはじめ、中小企業や小規模事業者への融資など、様々な支援を行っています。
創業前や創業間もないタイミングでの融資も積極的に行っているため、個人事業主でも申し込めるものがあります。
審査にあたり、事業計画書の内容を明確にする、ある程度の自己資金を用意するなど、ポイントを押さえて準備してみてください。
融資について詳しくまとめた「融資ガイド」を無料でお配りしています!詳しくは上記バナーをクリック!
(編集:創業手帳編集部)