あなたは成功できる?【飲食店の開業手帳 ~1.開業の心構えと起業形態~】
開業前だから悩もう! 「夢」と「起業のカタチ」
(執筆:「飲食店開業経験のある」村上広憲 行政書士)
(2015/09/03更新)
「いつか、自分のお店をもちたい!」「脱サラして、飲食店を経営したい!」飲食業は、最も身近に感じられる起業ではないでしょうか。
そのため、母数も多く、やっとの思いで開業しても、経営を持続していくのが困難なのが、現実です。開業から1年以内で30%、2年以内で50%が廃業しています。
失敗するか、成功するかは、経営に関する知識にあると言っても過言ではありません。
飲食店の開業前から開業後までを、ゼロから解説する、飲食店の開業の手引きシリーズ。今回は、「1.開業の心構えと起業形態」です。
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この記事の目次
【心構え編】
人々に求められることをやる。
「あなたのやりたいことは人々から求められていることですか?」
開業を決意すると人はどうしても自分がやりたいことを優先させてしまいます。それは大抵失敗します。やりたいことと求められていることは違うのです。
あなたのお店は、あなたにとっては1つしかない自慢のお店です。ですが、お客様にとってあなたの店は数ある多くの店の1つにしか過ぎないのです。あなたの店が気にくわなければ、明日は別な店に行ってしまいます。
「お客様は神様です!」これは言い過ぎだと思いますが、一つの真実をついています。「お客様(人々)が求めているものが正解」なのです。
「あなたのやりたいことは、人々から求められていますか?」
自信を持ち、胸を張り、「Yes」と答えられるなら、あなたのお店は繁盛店への第一歩を踏み出したといえるでしょう。もし、「Yes」と答えられないなら、あなたのやりたいことを見直す必要があると思います。
夢を持つ!
自分のやりたいことが整理できたなら、次は「夢」を持ってみましょう。
ここでいう「夢」とは、開業して軌道に乗った、もっと先、10年後、20年後の先の未来のことです。
お店は開業したら、そこで終わりではありません。
むしろ、そこからが本番なのです。
おそらく楽しいことは少ないと思います。つらいこと、苦しいことが大半でしょう。そんな日々の中、あなたは目標を見失ってしまうかもしれません。そのとき、あなたを支えるものは「夢」です。
「10年後、売上高1,000万を超える」
「10年後、2号店を持つ」
「20年後、全国チェーンを展開する」
「20年後、豪邸を建てる」
それを苦境になったとき、思い出しましょう。きっとそれは、あなたの道標になることでしょう。あなたは「夢」を持っていますか?
【起業のカタチ編】
起業の「カタチ」
起業と一口に言ってもその「カタチ」は様々です。
大きく「個人事業」と「法人設立」に分けられます。
「法人設立」の中にも「カタチ」が色々とあり代表的なもので、
・株式会社
・合同会社
・合名会社
・合資会社
・合名会社
・一般社団法人
・特定非営利活動(NPO)法人
現在は多種多様な法人設立の「起業のカタチ」があります。
飲食業であれば一般的なのは、個人事業もしくは株式会社、合同会社のいずれかだと思います。
個人事業
個人事業のメリットは、なんといってもその手軽さにあります。
開業するまでの手続(飲食業を行うための手続を除く)は、税務署に「個人事業の開業届」を出すだけです。
基本的に添付書類もいりませんし、費用も0円です。個人事業をやめるときも「個人事業の廃業届」を出すだけで済みます。
ただデメリットもあります。
まず信用力が低いことです。仕入先との取引や従業員の雇用などで不利になることがあります。また銀行融資を受ける際にも不利に働くことが多いです。事業に関係のない住宅ローンやカードローンなどでも審査にマイナスとなることがあります。
次に無限責任であることです。例えばビジネス上の失敗など、何かの責任を負わなければならないとき、個人事業であると、その責任は個人の全財産を投げうって対応することになります。
法人設立
法人設立のメリットは、法人としての信用力の高さになります。
仕入先などの中には法人としか取引をしない、というところも少なからずあります。会社の設立には、どうしても手間とお金がかかりますから、起業者の本気度が試されているといえるかもしれません。
次に有限責任であることです。連帯保証をしない限り、会社の負債は原則として代表者個人には及びませんので、安心して事業を経営することができます。
もちろんデメリットもあります。
まずは登記費用がかかるという点です。会社設立は自分ですることもできますが、かなり面倒かもしれません。実費で約30万円程度がかかります。専門家(司法書士など)に頼んだ場合、その報酬も加算されます。
次に法人住民税がかかる点です。法人住民税は各自治体によっても違いますが、毎年、法人都道府県民税と法人市町村民税がかかります。合わせて約7万円程度が平均のようですが、赤字黒字に関係なくかかってきますので、赤字のときには重くのしかかる可能性もあります。
青色申告と白色申告の違い
個人であれ、法人であれ、年に1度税務署に1年間の所得を報告し、納付すべき税金額を申告する必要があります。この手続を「確定申告」と言います。
この確定申告には、「白色申告」と「青色申告」、2つのタイプがあります。個人事業主は、いずれかの申告方法を選ぶことができますが、法人は内部的に決算書を作成する必要があるため、大部分は「青色申告」を選択することになります。
白色申告
白色申告は「簡易な方法」による記帳で行うことが許されており、確定申告書に添付するものも収支内訳書で構わないため、事務負担が少なくて済むという利点があります。一方で、青色申告にある特典を利用できないため、納付税額が増えてしまう欠点があります。
なので、次の人に向いている申告方法といえます。
・開業直後であるなど事業収入がまだ少ない人
・副業で個人事業を行っている人
・事務に時間を割くことができない人
青色申告
青色申告は原則として「正規の簿記の原則」による記帳を行う必要があるため、最低限の簿記の知識が必要となり、事務負担も多くなるという欠点があります。一方で、青色申告の特典が利用できるようになるため、納付税額を減らすことができるようになります。
青色申告の特典
・所得税の青色申告特別控除
「正規の簿記の原則」による記帳の場合 65万円控除
「簡易な簿記」による記帳の場合 10万円控除
・少額減価償却資産の特定
年間累計額が300万円を超えない部分に関して、30万円未満までの償却資産の一括償却を認める
・青色事業専従者給与
青色事業専従者給与に支払う適正な給与は経費として認める
・純損失の繰越控除
個人の青色申告者の純損失は翌年以降3年間の繰越が認められる
・欠損金の繰越控除
法人の青色申告者の欠損金は翌年以降7年間の繰越控除が認められる
青色申告のすゝめ
飲食業を始めるなら、青色申告を選ぶべきです。なぜなら、白色申告では純損失・欠損金の繰越控除を利用することができないからです。
純損失・欠損金の繰越控除というのは、簡単に言ってしまえば前期より前の赤字を今年度の黒字と相殺させることができる制度のことです。
飲食業は初年度の設備投資に多額の費用がかかることが多いので、この純損失・欠損金の繰越控除を利用できるかできないかは非常に大きな違いになります。
まとめ
個人か法人か、その選択は大いに悩むところです。
・小さくコツコツとステップアップを目指すなら、「個人事業」で。
・大きくドカンと最初から積極的な事業展開を目指すなら、「法人設立」で。
という考え方もあります。いずれにせよ、開業にあたって最初にする決断ですから、大いに悩んでみてください!
(監修:「飲食店開業経験のある」村上広憲 行政書士)
(編集:創業手帳編集部)