法人成りで起きやすい二重計上・計上漏れとは?見落としやすい項目を整理

創業手帳

個人と法人の事業期間が重なると起きる“計上のズレ”


いずれは法人化したいと考えている個人事業主は多いはずです。個人事業主から法人へ切り替えた直後は、売上や経費の「どちらに計上すべきか」が非常に複雑になります。
個人と法人の事務処理が混在して、同じ支払いが“二重計上”されるか、逆に“抜け落ちてしまう”ミスが多発します。
特に契約の引き継ぎ時期や未払金・売掛金、資産の移管などは注意が必要です。

本記事では、法人成り直後に最も誤りが出やすい項目と、その回避方法を具体例つきで解説します。

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この記事の目次

法人成りで「二重計上」「計上漏れ」が起こりやすい理由


個人事業主から法人になる法人成りは、ビジネスにとって大きな転機です。大きく事業が成長するチャンスであると同時に会計処理や手続きも大きく変わります。
どうして法人成りのタイミングでミスが起きてしまうのか、理由をまとめました。

個人と法人の事業期間が途中で入れ替わるため

個人の事業年度は税法上1月1日から12月31日までと定められています。一方で、法人は事業年度を自由に定められます。
それぞれで事業年度に違いがあるため、法人設立してからも個人事業主としての期間が並立して計上区分が混乱してしまうことがあるのです。

収益や費用は、原則として引渡し日や役務提供日を基準に計上するように税務上定められています。
個人事業と法人の事業が同一年に重なる場合は、取引きの実態や契約状況に応じてどちらに帰属するのか判断してください。
決算の時に混乱しないように、どちらの取引きであるか帳簿に記録しておくことが重要です。

支払い口座・カードを個人で継続使用してしまうため

個人事業主の間は、プライベートで使用しているカードを事業に使用するケースも多くあります。
しかし、法人を設立してから個人名義カードを使用すると、法人が代表者へ立替金を負う形となり処理が煩雑になってしまいます。

法人税基本通達に従い、代表者立替分は「役員借入金」または「未払金」で処理しなければいけません。
しかし、勘定科目を間違ったり、精算を失念したりすれば処理漏れが発生します。
立替処理の時点で誤って個人と法人の双方で経費計上してしまうのが、二重計上の原因のひとつです。
ミスをそのままにしないためには、立替期間を精算する期限を決めて早めに処理してください。

また、法人用のクレジットカードを作成して立替金自体が発生しないようにすることも大切です。
法人のクレジットカードであれば利用明細も確認が容易で、不適切な取引きがあっても早めに気づきやすくなります。

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法人成りで二重計上になりやすいケース


法人成りしたばかりの時期は、様々な手続きに追われて会計処理でもミスが頻発しがちです。法人成りした時に二重計上になりやすいケースをまとめました。
事前に確認してミスを予防してください。

①外注費・広告費など「発注が個人・請求が法人」に跨ったケース

法人成りのタイミングで支出や取引きが跨るとミスが発生しやすくなります。
個人で発注した取引きを法人名義で請求書を受領した場合、両方に計上すると二重計上となってしまいます。

これを正しく処理するためには取引きの計上タイミングを決めておくようにしてください。役務提供日を基準にしてどちらの帳簿に計上するかを明確に判断します。

また、請求書や領収書といった証憑も分けて保存します。契約書や請求書の日付や金額を確認して、個人と法人の帳簿で重複計上しないよう管理してください。

②モノの購入が個人名義のまま(パソコン・備品など)のケース

個人事業で使っていた資産を法人でも使用する場合には、そのための会計処理が必要です。
しかし、個人事業で経費処理済みの資産を法人で再計上すると、減価償却費の二重計上につながるリスクがあります。

法人成りで個人の事業用資産を法人に引き継ぐには、資産を法人に譲渡するか貸与、資本金として法人に出資する方法が選択可能です。
個人側の仕訳とは別に、法人側の会計処理が発生するので切り離して処理が必要です。
現物出資の場合は資産の時価を正確に評価し、その分を資本金に組み入れ帳簿で明確に管理します。
譲渡や貸付で法人に引き継ぐ場合も、時価評価や賃借料の処理を正しく行い、帳簿に記録を残すようにしてください。

③家賃・通信費など按分があるケース

家賃や通信費といった一定期間の利用に対して経費が発生する支出では、個人部分と法人部分を按分して経費計上しなければいけません。
個人事業の廃業日を基準に、利用期間に応じて按分計算を行い、二重計上や計上漏れを防ぐことが重要です。

個人事業期間にかかる費用を法人が支払った場合は、役員貸付金を計上してください。法人で使用した分の支出は、全額法人経費として計上します。
個人と法人の費用を帳簿上で明確に区分するとともに、どのように区分したか根拠を残すようにしてください。

④サブスク・サービス利用料(Google Workspace、Canva等)があるケース

月間や年間で契約するサブスクリプションサービスは、様々な分野で活用されています。
会計やショップ運営を提供するツールやシェアオフィスを自由に使えるサブスクもあり、事業で活用している人も多いかもしれません。

しかし、個人クレジットカードで支払ったサブスク利用料を法人に移す場合、間違えて二重計上してしまう可能性があります
サブスクリプションサービスの提供日を基準にして、個人・法人どちらに計上するかを判断して帳簿に反映してください。

契約名義、支払者、利用者の情報を帳簿に正確に記録して、契約管理リストを作成して漏れを防ぐ必要があります。
サブスクリプションサービスの利用料は、その内容に応じた勘定科目で計上します。
一括で前払いにしている場合には、前払費用として計上して今年度分と来年度分に分ける処理も必要です。

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法人成りで計上漏れになりやすい項目


法人成りする時には、二重計上だけではなく計上漏れにも注意してください。どういった項目が計上漏れになりやすいのか紹介します。

①個人事業時代の売掛金・未収入金

売上の計上時点と入金時点に跨って法人成りした場合に、会計処理でミスが起きやすくなります。
法人成り後に入金された個人事業時代の売掛金を、法人の売上に対するものと誤認すると最終的に帳尻が合わなくなってしまいます。

売上は商品やサービスを提供した時に計上して、個人・法人の帳簿を明確に区分することで計上漏れを防止可能です。
帳簿とは別に、取引別に入金日や提供日を紐付けた一覧を作成して、帳簿に正確に反映させてください。

②個人側の未払金の支払いを法人が行ったケース

個人の売上を法人と誤認するケースがある一方で、個人の未払金を法人が支払うケースもあります。
個人事業主時代の未払金を法人が肩代わりしてしまえば、計上漏れや不適切処理のリスクが高まってしまいます。
法人成りの時点で立替金、貸付金、役員借入金の使い分けを明確にし、帳簿上で正しく処理するようにしてください。

支払名義や実態を確認し、個人負担か法人負担かを判断して帳簿に記録します。それぞれの勘定科目については後述します。

③法人の銀行口座・カード発行前に発生した経費

法人化をきっかけに法人の口座とクレジットカードを用意した場合は、取引きが混同しないように注意してください。
個人カードで支払った法人経費は、法人の口座やクレジットカードに記録が残らないので計上漏れが発生しやすくなってしまいます。

計上漏れを防ぐには、経費発生時点で役員借入金として一旦処理し、法人設立後に精算するようにしましょう。
設立費や開業費がある時には、会計上繰延資産として計上して任意の期間で償却可能です。

④リース契約・サブスク契約の名義変更漏れ

法人成りしてから個人事業主として契約してサービスを使い続ける場合には名義を必ず確認してください。
契約の名義が個人のままにしていると、法人経費にも個人経費にも計上されずに漏れてしまう可能性があります。

契約期間が、法人と個人にまたがるような場合には、契約日やサービス提供日を基準に按分して法人計上を判断します。
法人として結んだ契約は、名義、支払者、利用者の情報を帳簿に記録して、契約管理リストを作成するようにしてください。

⑤経費精算のタイミング差による未計上

個人から法人への移行月は経費の扱いも慎重に行わなければいけません。精算処理が遅れると、経費が計上漏れになってしまうことがあります。
法人成りのタイミングに合わせて精算タイミングを線引きして、領収書や支払日を帳簿に正確に反映させるようにしてください。
個人と法人で分けて精算手続きや証憑管理を整理することで、計上漏れを防ぐようにしましょう。

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法人成りした年に起きやすい“勘定科目の混乱”


法人なりした年は、会計処理の負担が大きくなってしまいます。どういった勘定科目が混乱の原因になるのか把握しておいてください。

立替金・貸付金・役員貸付金の違い

法人成りのタイミングで発生しやすい科目が立替金と貸付金、役員貸付金です。それぞれ使うタイミングや対象が違うのでそれぞれを区別して把握してください。

立替金は、法人が個人や取引先の支払いを一時的に肩代わりした金額です。一時的であり後日回収することが前提です。
一方で、貸付金は法人が他者に貸し付けた資金で、返済条件や利息を含めて明確に区分しなければいけません。
役員貸付金は、法人が役員に対して貸し付けた金額を指します。利息や返済期限を帳簿に反映して、ほかの勘定科目と混同しないようにしてください。

立替金・貸付金・役員貸付金はそれぞれの発生経緯や証憑を整理して記録することで、混乱を防げます。
返済日や利息の取り扱いをあらかじめ帳簿に反映しておくと、ミスを防ぎやすく税務調査時の説明も容易です。

前受金・未収入金・未払金の使い分け

よく似た勘定科目としては前受金と未収入金、未払金があります。前受金は、将来の役務提供や商品引渡しの対価として受け取った金額であり資産として扱います。
未収入金は、役務提供済みで未入金の金額です。未収入金は、本業で生まれた売上とは別に帳簿上管理します。
未払金は、役務や商品の受領にともなう支払い義務を記録する時に使います。商品やサービスの提供は受けたものの代金を支払っていないため、負債に該当します。

前受金と未収入金、未払金は発生タイミングと契約内容を帳簿に明確に記録して、逐次処理してください。
過年度にまたがる未収入金や未払金についても、整理しておくことで計上漏れや誤計上を防げます。

事業用車両・備品の引き継ぎで起きる混乱

個人事業から法人へ資産を移管する場合は、現物出資・譲渡・貸し付けなど方法を選択することになります。
移管する資産の取得価額や減価償却の扱いを事前に確認して、二重計上を防ぐようにしてください。

資産の使用目的や所有権の移動を明確に記録しておくほか、移管した資産の管理台帳や使用履歴を残しておくと、実務上の混乱を避けられます。
車両や備品の保険契約・登録名義の切り替えも含め、全体の引き継ぎを記録しておいてください。

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税務調査で指摘されやすいポイント


法人成りしてすぐは、個人から法人への移行時の不備も多く税務署も注視することが多いタイミングです。どのようなポイントが指摘されやすいのかまとめました。

個人の売上を法人に計上してしまう誤り

企業会計では、商品やサービスを提供して売上を得る権利が確定した時点で計上する実現主義が原則採用されています。
実現主義に基づいて個人に帰属する売上を、法人で計上した場合は個人側の所得計上漏れとして指摘されるケースがあります。

入金口座が法人であっても、実現したタイミングが優先です。いつ発生した収益なのか請求日と役務提供日の記録が根拠となります。
契約名義や実際の提供者を確認して、個人の取引きを法人に含めないよう整理しなければいけません。

逆に法人の経費を個人に落としてしまう誤り

法人の業務で発生した費用を個人経費として扱うと、法人側の必要経費の計上漏れになります。
法人口座に資金がないからと個人の口座から支払ってしまうケースは珍しくありません。

しかし、支払名義が個人でも利用実態が法人であれば、役員借入金として処理して法人経費を計上する必要があります。
口座名義と取引きの実態が異なるケースは少なくありません。発生経緯も含めて記録しておくようにすると税務調査で説明する時にも役立ちます。

「実態」と「帳簿」の不一致

支払名義と利用者、契約名義が一致しない場合、実態に基づく経費性が疑われ、税務調査で重点的に確認されます。
利用実態が法人でも個人名義で契約していると、法人の必要経費に計上できず税制で不利になってしまうことがあるのです。
法人成りのタイミングで、今までに発生した契約書や支払記録を整理し、名義と実態の整合性を取るようにおすすめします。

また、個人での利用が疑われるような契約や支払いの場合には、法人利用であると証明できるよう用意しておいてください。

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まとめ:法人成り直後は“移行時の記録”を残すことが最重要

法人成りで移行するタイミングは、個人事業と法人の事務処理が混在するため、売上や経費の二重計上や計上漏れが発生しやすくなります。
いつ、何を、誰の名義で契約していたかを記録することで、個人と法人の境目での計上ミスを予防してください。
立替金や前受金の処理方法は、後で齟齬が生じないように明確に区分します。法人成り直後から適正な会計管理できるように事前にルール化しておくようにしてください。
実態を帳簿に正確に反映させるための準備は早めに進めておくと混乱を防げます。

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(編集:創業手帳編集部)

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