【第二回】ITベンチャーの活路を開く、日本ヒューレット・パッカード「EcoSystem」の挑戦

※このインタビュー内容は2015年06月に行われた取材時点のものです。

実績とリソース不足のベンチャー企業にとって、創業直後の販路開拓は大きな課題です。

日本ヒューレット・パッカード社では、販売力、あるいは開発力に課題を抱えるIT企業を全国で集め、マッチングできる「場」を提供し、新たなビジネスを創出することを目的としたスキーム「EcoSystem」を展開しています。

「助け合い」や「共存共栄」を掲げる同社の「EcoSystem」は、ITベンチャーや中小企業にどんなイノベーションをもたらすのでしょうか?

日本ヒューレット・パッカード社のエンタープライズアカウント営業統括本部長である角谷修氏に、2回に渡って話を伺いました。

第一回はこちら>>【第一回】ITベンチャーの活路を開く、日本ヒューレット・パッカード「EcoSystem」の挑戦

ITベンチャーの活路を開く、日本ヒューレット・パッカード「EcoSystem」の挑戦

角谷 修
日本ヒューレット・パッカード エンタープライズアカウント営業統括本部長。外資系IT企業を経て日本ヒューレット・パッカード社に中途で入社し、直販営業として流通業界立ち上げを行う。
その後、中部西日本エリアのパートナー営業で活躍し、2013年から現職。

IT EcoSystemの必要性

ー「EcoSystem」はどのような仕組みなのでしょうか?

角谷:日本ヒューレット・パッカードの「EcoSystem」は「つながる、助け合う、共存共栄」を目指しています。

「技術やアイディアを売り込みたい」「商材を増やしたい」という意気込みを持った企業が集まり、ひとつの相乗効果となって新たなビジネスを展開する。

そんな場を提供するのが「EcoSystem」です。

ベンチャー企業や中小企業のITビジネスは、多くの面で制限があります。何かをやろうとしても、資金や人的リソースが足りない。

良いものを持っていて日本全国、もしくは全世界でビジネスをしたいと思っても、展開できないのです。

しかし自社だけでは難しくても、他の賛同企業、もしくは日本ヒューレット・パッカードと協力することで不可能を可能にすることができます。

足りないものを補いながら、三位一体となって顧客へ大きなバリューを提供できるのです。

我々がこうやって賛同企業を集めていますが、日本ヒューレット・パッカードの製品を購入したりリセール(再購入)する必要はありません。

日本ヒューレット・パッカードもあくまで「EcoSystem」の参加企業の一社であって、中心でないからです。

「EcoSystem」は、あくまで横のつながりを広げる場を提供することにあります。

IT EcoSystemの必要性

ーエンドユーザーから見て、システム自体はどのようなメリットがあるのでしょうか。

角谷:資金力のない中小企業は大企業からの提案を受けることが難しいため、せっかく開発力があってもそれを実現するまでの道のりが遠い。

ところが「EcoSystem」を使えば、中小企業でも簡単に新しいものを生み出すことができます。

さらにその先にいるエンドユーザーは、それらのシステムをリーズナブルに手に入れることができるようになるというわけです。

ー具体的な事例を聞かせていただけますか?

角谷:県内に70%のシェアを持つ新潟最大のIT企業が、岩手の会社と手を組んで新潟県庁に売り込みに行きました。

それまである大企業が新潟県庁の仕組みを全部持っていましたが、結局そのIT企業が県庁の仕事を請け負うことになった。

県庁側も革新的なものが入ってきていいということで、どんどん日本ヒューレット・パッカードに切り替わりました。

IT EcoSystem Forumとは

「IT EcoSystem Forum」とは

ーEcoSystemの中核となるのが、全国で開催されている「IT EcoSystem Forum」なのですね。

角谷:はい。「IT EcoSystem Forum」は、もともと東日本大震災後の助け合いから始まったことです。

震災直後、弊社は東北にいる社員や家族に向けていろいろな物資を送りました。

ところがそれらは他の会社の社員まではなかなか届かなかった。

そこでみんなで分け合い、助け合おうという思考回路になったんです。

そこから飲み会が派生し、その席で東北の会社と何か仕事ができないかという話になりました。

それが「IT EcoSystem Forum」の原点です。

「IT EcoSystem Forum」には、主に2つの役割があります。

ひとつはプレゼンテーションの場です。
賛同企業の中から1開催につき3社に自社のソリューションを発表して頂きます。

もうひとつはコミュニティとしての役割です。
セミナー後に懇親会の場を用意しているので、賛同企業同士で直接情報交換してもらうことができます。

「IT EcoSystem Forum」は政令指定都市に限定せず全国約20カ所を廻って開催しています。

なぜ全国を廻っているかというと、前回お話した「80%の顧客」に目を向けたビジネスの可能性を拡げるためです。

地方でビジネスをしていると、大都市は映画『マトリックス』の仮想現実のようなものだということに気づきます。

人工的に作られたバーチャルな世界です。現実世界はまったく別にある。

それに気づくと、キアヌ・リーブスのように銃弾を避けることができるようになります(笑)。

大都市とは違うルールに気づくことで、今までとまったく違うビジネススタイルを展開できるようになる。

例えば、東京では埋もれていたソリューションを地方で展開したら受け入れられた。そんな例もあります。

そういったリアルなビジネスの可能性を、「IT EcoSystem Forum」で拡げることができると考えています。

ー読者には創業して間もない方が多くいますが、どのような企業に参加して欲しいですか?

角谷:我々ができるのはIT関係なので、IT関係で創業された方であればぜひ一緒に仲良くやりましょう。

創業される方は皆さん前向きだと思いますが、前向きな方でしたらこちらは協力を惜しみません。

実際、ベンチャー企業の方々から主に参加したいというご要望いただいています。

ーでは、創業したばかりのスタートアップ企業が「IT EcoSystem Forum」に参加するために必要なことはありますか?

角谷:参加費用はもちろんかかりませんし、特別な参加条件もありません。前向きなやる気を持ってる方でしたら、どなたでも歓迎です。

「IT EcoSystem Forum」は、これまで札幌、仙台、新潟、金沢、松本、静岡、浜松、米子、大阪、岡山、広島、高松、愛媛、小倉、福岡、熊本、鹿児島、沖縄と全国各地で開催してきました。

年間25〜30エリアで行い、多いところでは100名、平均すると50名ほどの方にご参加いただいています。

我々は場を提供して雰囲気を作りますが、参加された方自身が動かないと良い結果には結びつきません。

今まで知り得なかった他の賛同企業の方とコミュニケーションを取り、つながる。

そして自社のリソースだけでは顧客の要望に応えられないときに、「EcoSystem」のつながりをたどり、賛同企業同士で協力してビジネスを展開する。

それが「EcoSystem」の目指す形です。

そのときに、運がよければ日本ヒューレット・パッカードも使って頂ければ嬉しいです。

創業される方は皆さん行動的だと思います。

何に対しても前向きで気概を持ったスタートアップ企業の参加をお待ちしています。

「IT EcoSystem Forum」今後のスケジュール
■開催日程と場所

  • 2015/11/12 (木) 浜松 オークラアクトシティホテル浜松
  • 2015/11/13 (金) 大阪 大阪会館
  • 2015/12/2 (水) 金沢 ANAクラウンプラザホテル金沢
  • 2015/12/4 (金) 東京 TKPガーデンシティ品川
  • 2015/12/9 (水) 福岡 ホテルモントレラ・スール福岡
  • 2016/1/15 (金) 徳島 ホテルクレメント徳島
  • ■各日程共通スケジュール
    15:00-17:35 EcoSystemの趣旨説明と参加企業のプレゼン発表 (4社)
    17:35-19:00 懇親会 全参加企業

    ■費用
    無料

    ⇒お申込みフォームはこちら(終了しました)
    ※フォーム内《お問い合わせ内容》欄に『創業手帳を見ました』とご記載いただくと今後のやりとりがスムーズになります。

    「EcoSystem」の活用事例
    ■販路と商圏を拡大するためには!日本ヒューレット・パッカードの『EcoSystem』活用方法とは
    ■ベンチャー企業の新しい販路拡大の方法とは?日本ヒューレット・パッカードの『EcoSystem』活用法

    (取材先:日本ヒューレット・パッカード株式会社)
    (創業手帳編集部)



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