行政書士の開業ステップは?事務所の独立を成功させるポイントなども解説
行政書士として独立開業するなら必要な準備や手順を理解しよう
行政書士の資格を持っていれば、独立して事務所を開設することが可能です。
しかし、収入面の不安や開業のためのステップが解らず、独立開業に踏み切れない方もいるでしょう。
そこで今回は、行政書士として独立開業したい方のために、独立をするメリットやデメリットをはじめ、開業までの流れや準備についてご紹介していきます。
成功するためのポイントも解説していくので、行政書士として活躍したい方は、ぜひチェックしてみてください。
この記事の目次
独立は難しい?行政書士の開業事情
行政書士は、行政の手続きを専門とする法律家で官公署に提出する書類の作成や申請手続きの代行など、企業の手助けを行う人物です。
事務所に所属するほか、一般企業に勤務をして仕事をする方がいます。
しかし、中には事務所や企業に属さずに独立開業をして自営業として働く方も存在します。
独立・開業ともなれば、「難しそう」などとマイナスなイメージを持ってしまう方もいますが、行政書士として開業するためには実務経験や登録後研修は必要ありません。
そのため、未経験でも行政書士として開業することは可能です。
ただし、独立したからといって、すべての方が成功するとは限りません。依頼がなければ経営維持は不可能なので、顧客開拓の難しさによって失敗するリスクもあります。
未経験で独立すればリスクも多くなってしまうので、事務所や企業のスタッフとして経験を積んでから開業したほうがリスクを抑えた開業が可能です。
行政書士が独立開業するメリット
行政書士として独立開業を行うと、どのようなメリットが得られるのか。詳しく解説していきます。
開業資金が比較的かからない
行政書士として開業する場合、コストが比較的かからない点がメリットといえます。
行政書士会への登録費用、事務所を構える費用、備品を購入する費用などが初期費用として発生しますが、事務所ではなく自宅で仕事をするようにすれば、コストを大幅に減らすことが可能です。
自宅兼事務所であれば、電話回線やインターネット環境を新しく用意する必要もありません。
飲食店ともなれば小規模なお店でも開業資金として1,000万円ほどかかるケースもあるため、比較をすると安いコストで開業できることがわかります。
また、行政書士であればひとりでも開業できるため、最初から事務員を雇うことの多い弁護士事務所と比較をしてもコストを抑えられる利点があります。
定年なく働き続けることが可能
自分で事務所を開設すれば、定年がないので何歳になっても働き続けることが可能です。
加えて、実績を積めば積むほど顧客からの信頼を得られるので有利になるメリットがあります。
これは、行政書士が顧客のプライベートな情報を取り扱うことが関係しています。
まったく知らない行政書士と新たに関係を築くよりも、特定の行政書士と仕事をしたほうが都合も良く、信頼関係も増していくからです。
その結果、人とのつながりで新規顧客を見つけられる可能性もあります。行政書士として長く働けば働いた分だけ収入も安定していくでしょう。
自分のペースで働ける
事務所への所属や企業に勤務している場合は、決められた就業規則に則って出退勤する必要があります。仕事が多くなれば残業を強いられるかもしれません。
しかし、独立開業していれば自分で働くペースを決められます。
出勤する時間だけではなく、休憩時間や休みの日も自由に決められるので、プライベートな時間を確保することも可能です。
例えば、夜型であればお昼頃から仕事をはじめて、遅い時間帯まで働くといった就業スタイルを確保できます。顧客によっては遅い時間帯でしか相談できない場合もあるので、そうした企業に好まれる可能性もあるでしょう。
自宅兼事務所であれば気分転換を兼ねてカフェで仕事をしても問題ありません。また、引き受けたくない案件は断ることも可能です。
自分で自由に働き方を決めたい場合は、独立開業が向いています。
行政書士が独立開業するデメリット
独立開業をすると様々なメリットがありますが、反対にデメリットも存在します。リスクも把握してから開業を目指してください。
収入が不安定になる
事務所への所属や企業に勤めている場合は、毎月決まった額の収入が得られます。しかし、開業をしても仕事がなければ収入を得られません。
運良く仕事が舞い込んだとしても、継続した仕事がなければ安定的な収入は得られないので、開業したばかりのころは不安定な収入で不安になるケースも考えられます。
仕事が途切れないよう、営業活動は常に行い、見込み客の増加や人脈作りを大切にしてください。
集客が難しい
開業をすれば、自分で顧客を確保する必要があるため、継続的な仕事が確保できなければ収益アップは目指せません。
ツテがあれば別ですが、ほとんどの場合で積極的な営業活動が必要になるでしょう。
継続的な仕事を維持するためにも案件をこなして実績を重ねていき、「依頼したい」と思ってもらえるような実力を身に付けることが大切になります。
また、税理士や司法書士などと協力をして仕事を進めていくケースも多いため、前述したように人脈を広げることも不可欠です。
通常業務以外の仕事もする必要がある
独立するとなれば、行政書士としての仕事以外にも事務所の経営業務も自分で担う必要があります。
経理や事務、広告活動のほか、税金に関する手続きも自分で行わなければいけません。
行政書士としての業務と並行して行う必要があるので、慣れていない場合は時間がかかり残業や休日を返上して業務を行うケースも考えられます。
行政書士としての業務に専念したい場合は、スタッフを雇う選択肢がありますが、人件費がかかるので案件を獲得して収入を得る必要もあるでしょう。
行政書士が独立開業するための8ステップ
ここからは、行政書士として独立開業するための手順を解説していきます。流れを把握しておけばスムーズな開業を目指せるので、チェックしてください。
①試験に合格する
行政書士として開業するためにも、まずは資格の取得を目指してください。行政書士試験は、毎年11月の第2日曜日に実施されます。
合格率約12%(2022年度)の国家資格なので決して簡単には合格できません。
しかし、年齢、性別、学歴などの受験資格に制限がないので、誰でも受験することが可能になっています。
試験科目は、法令等科目と基礎知識科目に分かれており、法令等科目で50%以上、基礎知識科目で40%以上、試験全体の得点が60%以上にあたる180点以上にならなければ合格できません。
上位何名といった相対評価ではないので、過去問対策を取るなどして知識を身に付ければ合格が狙える試験です。
②行政書士の名簿登録をする
行政書士の試験に合格したら、名簿登録を行わなければいけません。事務所を開くと都道府県にある日本行政書士会連合会に入会します。
- 【入会の際に必要な書類】
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- 行政書士登録申請書
- 履歴書
- 本籍地が記載された住民票の写し
- 身分証明書
- 顔写真
場合によっては、戸籍謄本や公務員職歴証明書などが必要になるケースもあるので、あらかじめ問い合わせを行って必要書類を聞いておいてください。
書類を提出すると審査が実施されます。期間は1~2カ月程度となるので、余裕をもって登録申請をしてください。
③経験を積む
行政書士試験に合格をしても、独立して開業するための能力があるとは限りません。
行政書士が取り扱っている仕事は、基本的に依頼をしなくても自分で作成できるものが多いです。
そのため、「行政書士に必ず頼まなければいけない」といった決まりはありません。
それにも関わらず行政書士に依頼をする方は、書類の作成や手続きに時間をかけられない人たち、もしくは「知識がなくてわからない」「足りない点があるかもしれない」と不安が多い人たちです。
正確性がなく、スピードの遅い行政書士に依頼しても問題は解決しないため、「まったくの素人」である初心者の行政書士には依頼したくないと考える方も中にはいます。
そのため、まずは行政書士としての経験を事務所や企業で身に付けることが大切です。
行政書士の業務だけではなく、営業や経理といった経営に関するノウハウも学べれば、独立開業にも良い影響があります。
④開業資金を用意する
実務経験を積んでいる際には同時に開業のための資金を貯めることも重要です。
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- 事務所の賃貸料
- 備品代
- 当面の運転資金
- 生活費
70万円~300万円ほどの費用が必要になりますが、事務所のエリアによっては、賃料が高くなる可能性があるため、開業資金も高額化します。
⑤事務所を選ぶ
事務所は、自宅・レンタルオフィス・賃貸物件といった方法で選べます。自宅であれば開業資金を大きく用意する手間がありません。
レンタルオフィスは、デスクやチェア、インターネット回線などが初めから揃っているので、自分で備品を用紙する手間がありません。コストも賃貸物件を借りるよりも抑えることが可能です。
賃貸物件は費用がかかるデメリットがありますが、自分の好きな場所に事務所を設けられる点がメリットです。
行政書士事務所が少ない地域で開業すれば、競合が近くにいないので安定的な収入を目指すことにもつながります。
また、事務所の住所は日本行政書士会連合会のホームページ上に公開されます。自宅を事務所にする場合は住所が掲載されてしまうので注意が必要です。
家族とも良く相談して事務所の場所や開業方法を選んでください。
⑥行政書士会への開業登録を行う
行政書士会への開業登録は、開業する1カ月前までに行ってください。その際には、事務所名も一緒に申請するため、事前に考えておく必要があります。
また、事務所名の付け方にはルールが定められているケースもあるため、事前に問い合わせを行い聞いておくと安心です。
事務所を構える自治体によっては、行政書士会による調査が実施されるケースもあります。
構造や設備、備品などが申請書に記載したレイアウト通りになっているかを確認するための調査です。
調査は、実際に担当者が事務所に訪問して実施する場合と写真で行う場合があるので、あらかじめ調査方法を聞いておいてください。
調査をクリアすれば名簿への登録は完了です。
⑦開業に向けて必要備品やサイト準備などを進める
開業に必要な以下の備品の準備も欠かせません。
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- パソコン
- プリンター
- デスク
- 椅子
- 応接セット
- 鍵付きのキャビネット
- 名刺
顧客の大切な情報を預かることが多いので、情報を流出させないためにも鍵付きのキャビネットやセキュリティ対策は入念に行う必要があります。
顧客とのやり取りでメールを使用するケースは多いです。インターネット環境も早めに整えておいてください。
また、顧客を呼び込むためにもホームページの作成は欠かせません。業務内容やアクセス、料金など、様々な情報を掲載すると新規顧客の獲得にも役立ちます。
自分で制作できない場合は専門家に依頼をして作成してもらいます。
⑧税務署に開業届を提出する
個人事業主として働くためにも開業届の提出が必要です。開業届は管轄の税務署に提出します。
提出は、開業してから1カ月以内までに行う必要があるので忘れないようにしてください。
また、直接税務署に提出するほか、郵送での提出やオンラインでの提出が可能です。
オンラインはe-TAXの利用者識別番号が必要になるので、あらかじめ取得しておくとスムーズに申請できます。
行政書士が独立開業して成功するためのポイント
最後に行政書士が独立をして成功を収めるためのポイントの解説です。
専門分野を決めておく
行政書士は取り扱える業務範囲が膨大にあります。そのため、すべての分野を網羅しようとしても中途半端な知識の習得で終わる可能性があります。
特定の分野を決めて事業を展開すれば、顧客獲得で優位となるので、建築・産業廃棄物や飲食店、運輸・交通など、専門の分野をあらかじめ決めておいてください。
人脈を広げる
顧客を獲得するためにも人脈を広げることが大切です。行政書士として開業すると、ほかの行政書士から紹介を受けるケースもあります。
「得意分野とは異なる案件を依頼された」「仕事が忙しくて手が回らない」といった場合に紹介してもらえるかもしれません。
そのため、ほかの行政書士との人脈を広げておくと新規顧客を得られる可能性が高まります。行政書士の研修会に参加すると交流の機会が増えるので積極的に参加してください。
また、行政書士以外の士業と連携して仕事を進めるケースもあります。人脈があれば仕事も舞い込むので、別の士業との関わり合いを持つことも大切です。
集客方法を考える
自分の事務所を多くの人たちに知ってもらうためにも集客方法を検討してください。ホームページの作成はもちろん、SNSを活用してアプローチをかけるのもおすすめです。
事務所からのお知らせや最新情報を発信していき、興味のある内容があれば拡散される可能性もあります。
また、役立つ情報の発信を行えるセミナーの開催やタウン誌への広告掲載なども集客のためには有効です。
事務処理の効率化を図る
開業するとなれば事務処理も自身で行わなければいけません。しかし、事務処理に時間がかかってしまえば日々の業務に支障を与えてしまいます。
少しでも手間を省くためにも事務処理ツールを活用することも検討してみてください。
業務に役立つツールは複数あり、中には無料で提供されているものもあるので、コストを抑えながら効率化を図ることも可能です。
まとめ・行政書士が独立開業を成功させるためには準備が不可欠
行政書士は未経験での独立開業も可能です。しかし、安定的な収入の確保や顧客を確保するためにも、経験を積むことは大切です。
開業するためには事前準備も大切なので、今回ご紹介したステップを参考に独立開業に向けて準備を進めてください。
創業手帳(冊子版)では、行政書士の開業に向けて役立つ様々な情報を掲載しています。独立開業に関する不安や疑問があれば、ぜひチェックしてみてください。
(編集:創業手帳編集部)