数字が苦手な経営者も最低限意識したい決算書の見方2つの視点
決算書の見方は数字の時系列と比較が基本
(2015/2/13更新)
税理士や会計士に決算書を作ってもらった。しかし、いざ作ってもらった決算書の見方がわからない。そんなベンチャー起業家や中小企業経営者も多いのではないだろうか?
「数字が苦手だ」「会計力が低い」と考えている起業家や経営者は、決算書のどこをどう見たらよいのか? 今回は、決算書の見方に関して最低限意識しておきたい基本的な2つの視点を紹介しよう。
この記事の目次
垂直視点で会社の数字を時系列にみる
決算書の見方でまず意識したいのは、時系列に会社の数字を見る視点である。
売上や利益が、右肩上がりに増加しているのか?あるいは減少傾向なのか?あるいは横ばいなのか?時系列にあなたの業績を可視化すると、あなたの会社が伸びているのか否か一目瞭然だ。
決算書の見方として、時系列に会社の数字をみる視点を、垂直視点と呼ぶ。垂直視点に立ってあなたの会社の数字を整理することによって、これまで自社がどのように経営していたのか?のトレンド推移が非常にわかりやすくなる。
会社の数字は、そのまま単独で見ても何も物語ってくれない。まずは、垂直視点を持って、あなたの会社の数字を時系列に見ることを意識しよう。
水平視点で会社の数字を同業他社と比較する
決算書の見方として、まずは時系列で数字を見ることの重要性を述べてきた。その上で、もう一つ重要なのが、同業他社の数字と比較するという視点である。同業他社の業績と比較してみることで、自社の経営状況を客観的に整理できる。
例えば、同じ事業で売上100万円のA社とB社があったとしよう。「同じ事業で売上100万円」という情報だけでは、どちらが良い会社なのかわからない。
売上が減少して100万円なのか?増加して100万円なのか?あるいは横ばいが続いて100万円なのか?時系列の両社の業績を並べて比較すれば、どちら会社の売上や利益が伸びているか一目瞭然だ。
決算書の見方としては、まず時系列での自社の経営状況のトレンドを見極め、続いて同業他社と比較することによって客観的にあなたの会社の業績を評価する。これが基本の流れである。
水平視点で比較するときは単位当たりの数値で比較しよう
水平視点で自社と同業他社の数字を比較するポイントは、単位当たりの数値(単価)を出して比較することだ。
例えば、同じアパレル事業をしているA社とB社の売上を比較してみよう。
売上が100万円で同額でも、店舗数はA社が1店舗、B社が4店舗であれば、
A社:100万円÷1店舗 = 100万円/店舗
B社:100万円÷4店舗 = 25万円/店舗
以上より、店舗当たりの売上がA社の方が圧倒的に高いことがわかり、A社がB社より効率的で優れた経営をしていることがわかる。
店舗当たりの数値のほか、「店舗の面積当たりの売上」や「従業員一人当たりの売上」を比較するのも良いだろう。これらは、小売業における経営分析でよく利用される。
また、ライバル企業のことが調べられるなら売上の構成や製品別原価率の研究をしたり、広告宣伝費の使い方などを研究することで自社の経営に活かすことができるだろう。
統計で業界平均の相場感を知る
水平視点で決算書を比較するといっても、実際に同業他社の数字は簡単に手に入るものではない。また、比較する同業他社をどういう基準で選べばよいかわからない場合もあるだろう。
そういう場合は、公的機関の統計情報を活用するという手がある。
小売業の1事業所当たりの年間商品販売額は1億4114万円で、平成19年商業統計と比べると+19.2%となっている。
金額増減をみると、1事業所当たりの年間商品販売額は+2275万円、
(後略)
平成24年経済センサス-活動調査より引用
小売業の従業者1人当たりの年間商品販売額は2427万円で、平成19年商業統計と比べると+11.5%となっている。
金額増減をみると、従業者1人当たりの年間商品販売額は+251万円、
(後略)
平成24年経済センサス-活動調査より引用
小売業の売場面積1㎡当たりの年間商品販売額は60万円で、平成19年商業統計と比べると▲9.1%となった。
金額増減をみると、売場面積1㎡当たりの年間商品販売額は▲6万円、
(後略)
平成24年経済センサス-活動調査より引用
例えば、小売業を例にとると、政府の統計では、事業所(店舗)当たりの年間商品販売額は1億4,114万円、従業者1人当たりの年間商品販売額は2,427万円、売場面積1㎡当たりの年間商品販売額は60万円である。
これらの統計情報から、まず、業界の経営数値の相場感を知ることができるだろう。その上で、あなたの会社の実績を比較することによって、あなたの会社が、業界平均よりもどれくらい効率的に経営されているか?を判断することができる。
厳密な経営分析をおこなうためには、企業規模別の統計が必要になるが、目安として公的機関の統計情報は大いに活用したいところだ。
「決算書の見方 2つの視点」まとめ
決算書の見方として重要な2つの視点を紹介してきた。時系列に会社の数字をみる垂直視点と、同業他社と比較する水平視点だ。
出来ればもっといろいろな視点から決算書を紐解いてもらうのがベターではあるが、「時間がない」あるいは「数字が苦手だ」という中小企業経営者や起業家は、最低限この2つの視点だけは常に意識しつつ決算書の見方を工夫するとよいだろう。あなたの会社の経営状況の把握や、それに基づいた経営戦略の策定が格段にやりやすくなることだろう。
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(監修:江黒公認会計士事務所 江黒崇史 公認会計士 )
(編集:創業手帳編集部)