EC事業とは?概要やメリット、立ち上げ方を徹底解説!
EC事業で起業するなら概要や手順を理解しておこう
インターネットの発展やスマートフォンの普及によって、場所や時間を選ばずに買い物ができるECサイトの活用が増えてきました。
自宅から出なくてもインターネット上のみで売買が完結するため、高齢化が進む日本で利便性の高い手段として欠かせない存在にもなっていくでしょう。
そこで今回は、EC事業の立ち上げを検討する人に向けて、EC事業の概要や実情、スタートさせるメリットなどを解説していきます。
立ち上げ時の注意点や対策方法、EC事業の主な種類や準備すべきことなど、EC事業の起業に役立つ情報をまとめているので、ぜひチェックしてみてください。
※この記事を書いている「創業手帳」ではさらに充実した情報を分厚い「創業手帳・印刷版」でも解説しています。無料でもらえるので取り寄せしてみてください
この記事の目次
EC事業とは
まずはEC事業がどういったものなのか、将来的にも安定して運営できる事業なのか知るためにも、概要やEC市場の実情、将来性について解説していきます。
EC事業の概要
インターネットを通じて商品やサービスを販売するビジネスをEC事業といいます。
「Electric Commerce」「E-Commerce」の略語として使用されており、多くの人に認知されている言葉です。
EC事業はインターネットの発展やスマートフォンの普及によって活用が増加しており、日常生活でも欠かせない存在となっています。
消費者が顧客となるBtoCをはじめ、企業対企業のBtoB、消費者間取引となるCtoCなど、多様な形態で広がりを見せています。
実店舗を持たず、諸費費用を抑えた起業が可能な点が大きな魅力です。ただし、EC事業を成功させるためには顧客の利便性を追求しなければなりません。
商品やサービスの検索をはじめ、安全な決済システムの導入、迅速な配送体制の提供などが求められます。
立ち上げが容易にできるからと安易に考えず、対策を練ってから事業をスタートさせることが大切です。
EC市場の実情と将来性
EC市場の実情を把握する際には、経済産業省による「令和5年度電子商取引に関する市場調査」を参考にしてみてください。
2023年のBtoC、BtoBの市場規模は以下の通りです。
市場規模 | 前年比 | |
---|---|---|
BtoC(企業対消費者) | 約24.8兆円 | 9.23%増 |
BtoB(企業対企業) | 約465.2兆円 | 10.7%増 |
また、BtoC市場では分野別の市場規模も調査によって明らかとなっています。
市場規模 | 前年比 | |
---|---|---|
物販系分野 | 13兆9,997億円 | 4.83%増 |
サービス系分野 | 6兆1,477億円 | 22.27%増 |
デジタル系分野 | 2兆5,974億円 | 2.05% |
BtoC市場では、食品や生活家電、衣類や家具などを販売する物販系分野が多くを占める調査結果となりました。
また、近年急速な拡大を見せている消費者間取引となるCtoC市場では、以下のような結果となっています。
市場規模 | 前年比 | |
---|---|---|
CtoC(消費者間取引) | 2兆4,817億円 | 5.0%増 |
上記の結果、どのEC市場においても前年比を上回る取引きがあったことがわかります。
商取引全体のEC化率に関しても、BtoCで9.38%、BtoBで40.0%と増加傾向にあるため、EC市場は今後も発展が大きく期待されている分野です。
EC事業をスタートさせるメリット
ここからは、EC事業の立ち上げを検討している人に向けて、EC事業をスタートさせるメリットを解説していきます。
実店舗を用意する必要がない
EC事業はインターネット上で売買が完結するため、実店舗を構える必要がありません。
実店舗を持つ場合、店舗となる施設や物件を探したり、建物を建築したりする必要があります。
しかし、EC事業であれば実店舗を用意せずとも事業をスタートできるため、様々な手間をかける必要なく起業することが可能です。
ビジネスをスタートするハードルが低いのはEC事業の大きなメリットといえます。
また、実店舗では商品の販売スタッフの配置や接客が必要となりますが、EC事業であれば営業時間を設定することなく、24時間365日体制での販売が可能です。
販売機会が増え、売上向上に役立ちます。
世界を対象に販売できる
実店舗を構えて商品を販売したりサービスを提供したりする場合には、顧客に店舗まで足を運んでもらう必要があります。
そのため、事業を拡大したくても難しいと考える人もいるかもしれません。
一方、EC事業であればインターネット上だけでサービスの提供が可能です。
地理的な制約を受けないため、国内だけではなく海外エリアにも対象を拡大して事業を展開できる点がメリットです。
費用が抑えられる
EC事業は実店舗を構える必要がないため、コストを削減した起業が可能となります。
店舗設備や光熱費、販売スタッフの人件費といった費用もかからずに運営できるため、利益率を高くすることにつながり、収益の改善も期待できます。
また、商品やサービスの認知拡大を目指す場合には、SEOやSNSを活用すれば、マーケティング費用を抑えることも可能です。
ECサイトの制作、物流体制の構築といった部分に費用はかかりますが、実店舗を構えるよりはコストを抑えられ、事業をスタートさせるハードルが低くなります。
データ分析がしやすい
基本的に、顧客がECサイトを活用して商品やサービスを購入する場合、会員登録が必要となります。
-
- 年齢
- 性別
- 住んでいる地域
上記のデータ収集や顧客の行動を記録することができ、注目されている商品や訪問数の多いページなどの分析も可能です。
収集した情報は、ECサイトや商品の改善、新商品の開発など、売上向上に役立つ施策を練る際に役立つため、活用は欠かせません。
EC事業の注意点・対策方法
起業するハードルが低いEC事業の起業時には注意点もあります。例えば以下のような問題点です。
-
- 顧客とコミュニケーションが取りにくい
- 競合が多い
- 集客の難しさ
実店舗のように対面で接客をするわけではないので、商品の説明をしたり顧客の要望を聞いたりできません。
そのため、EC事業を始める際にはコミュニケーションを補完できる仕組みづくりが必須です。
また、ECサイトを立ち上げれば世界を対象に事業展開ができる点がメリットとなりますが、その分競合も増えます。
さらに、他社との差別化を図らなければ多くのECサイトに埋もれてしまい、収益を伸ばせない結果となってしまいます。
EC事業のリスクを抑えられる対策方法を解説していくので、ぜひ参考にしてみてください。
顧客とコミュニケーションツールの活用
顧客とのコミュニケーションを補完する仕組みづくりとして、ツールの活用がおすすめです。
多くの事業者に活用されているツールとして、メールマガジンが挙げられます。
-
- アクセスや購入履歴をもとにしたメールマガジンの配信
- 会員限定の案内メール
- サイトを頻繁に利用する顧客向けの案内メール
- 顧客の行動をフォローできるステップメール
上記のような、きめ細やかなコミュニケーションが可能となります。
また、ECサイトに投稿される口コミも顧客とのコミュニケーションを図る際に活用できます。
対面であれば顧客の反応は自然に得られますが、インターネット上だと反応をうかがうことは難しいかもしれません。
しかし、購入者による口コミや感想によって、商品やサービスに対する反応を把握できます。
事業の問題点の改善にも役立つため、口コミに対しては丁寧な返信を心掛けてください。顧客の購買意欲にも影響を与えるでしょう。
競合対策のためのSEOや広告活用
基本的にECサイトを活用するユーザーは、検索エンジンを活用して検索結果に表示されたサイトを訪問します。そのため、検索エンジンで上位表示されなければいけません。
検索エンジンでキーワードを入力して検索をかけ、自社サイトが上位表示されるように対策することをSEOといい、EC事業においてはSEOが必須です。
販売する商品やサービスがどういったキーワードで検索されているかを調査し、紹介ページにキーワードを入れ込む必要があります。
また、ユーザーが検索したキーワードと連動して掲載されるリスティング広告にも注目してみてください。
指定したキーワードの検索結果ページの上位に自社製品を表示でき、商品やサービスを探しているユーザーの目に留まりやすくなります。SEOと併せて検討してみてください。
集客分析ツールの活用
EC事業においてはECサイトに関連した様々なデータを詳細に分析するためのツールの活用も欠かせません。
ツールを活用すれば、購入数や売上金額、流入経路や滞在時間、クリック数などのデータを把握できます。
サイトでの滞在時間が短く、売上げに伸び悩んでいる場合には、サイトページがユーザーのニーズとは合致していない可能性があるためコンテンツの改善が必要です。
滞在時間が長くても購入に至らないケースが多い場合には、ユーザーが悩んだ末に購入を断念したケースが考えられます。
ユーザビリティや顧客ロイヤルティのための施策を考えられるため、分析ツールの活用はECサイトの集客に欠かせないツールです。
EC事業の主な種類
ECサイトには様々な種類があります。しかし、ECサイトの販売形式というのは実は非常に曖昧であり、明確に分けることはできません。
ここでは、代表的なものを紹介します。
単店舗型EC事業
自社商品やサービスを販売するために、独自に構築したECサイトを活用するのが単店舗型EC事業です。
代表的な事例として、ニトリやユニクロといったECサイトが挙げられます。自社でサイトを管理して運営していくため、デザインや機能を自由に作り込めます。
また、キャンペーンを自由に設定でき、ショッピングモールの都合に合わせずにイベントを開催できる点が特徴です。
さらに、出展手数料が発生しないため、利益率の最大化も可能です。
ただし、ショッピングモールが持つ集客力に頼れないので、集客方法を確立する必要があります。
モール型ECサイト
インターネット上のサイトに多数のショップが出店する形で事業を展開することをモール型ECサイトといいます。
代表的なものとして、Amazonや楽天、Yahoo!ショッピングなどが挙げられます。
認知度の高いモール型ECサイトに出店できるため、集客力が高い点が大きなメリットです。
また、巨大モール型ECサイトであれば、多くの顧客を抱えているため購買意欲の高い顧客からのアクセスを集めることが可能です。
さらに、知名度の高いモール型ECサイトであれば、信頼度も高いので不信感による不買を防ぐことにも役立ちます。
ただし、モール型ECサイトを運営している企業に対して出店料を支払う必要があります。
また、顧客データを自社で保有できないケースもあるため、顧客データを活用した施策の実行が難しくなる点にも注意が必要です。
越境型EC事業
日本国内から海外に向けて商品を販売する取引きを越境型EC事業といいます。ビジネス方法は、以下の4種類です。
-
- 自社でサイトを運営
- 海外のECモールに出店
- 保税区を活用
- 代行販売
自社サイトの場合は、自分で越境ECサイトを構築して運用を行っていきます。
対象となる地域や国を決め、言語や決済システムなど現地の需要に合わせて作り込む必要があります。
自社で構築が難しい場合には、海外向けのECモールの活用を検討してみてください。
欧米であればAmazonやeBey、中国であれば京東全球購や天猫国際といったモールで越境ECが認められています。
また、中国を対象にした越境ECを検討している場合には、保税区の活用を検討してみてください。
中国の保税区の倉庫に販売する商品を保管し、サイト上で購入されたら倉庫から配送する仕組みです。
現地の倉庫に商品があるので配送時間が短く、配送料が抑えられる点がメリットです。
なお、代行販売は、海外への代行販売を行っている業者に商品を買い取ってもらう仕組みとなります。
代行業者を経由して顧客に商品が送られ、モールへの出店の手間やコストを抑えることが可能です。
ただし、代行者が手数料や配送料を上乗せして販売するため、商品価格が上がりやすい点に注意してください。
マルチチャネル型のECサイト
マルチチャネルとは、複数のチャネル(販売経路や接点)を持っている状態を表す言葉です。
自社のECサイトと並行してショッピングモール型ECサイトでの出店を行う方法を指します。
例えば、自社サイト以外に、Amazonや楽天でも店舗を出店して商品を販売する形式です。
在庫管理や発注情報などの管理が難しいと考える人もいますが、モール連携の管理システムを活用したり自社のECシステムと連携したりして、自社サイトの管理システムでモールを管理することも可能です。
EC事業の立ち上げ前に準備すべきこと
最後に、EC事業を立ち上げる前に準備すべき内容を解説していきます。
1.事業計画の作成
「どのような商品を誰にどう販売するのか」を固めるためのステップです。5年先の事業計画を立てる必要があります。
これは、ECシステムの減価償却が会計上5年となるためです。
売上げの増加やユーザー数の増加に合わせてECサイトの規模を大きくしたいのであれば、将来必要となる連携やサーバーの増強についても考えてみてください。
2.市場調査・競合分析
取り扱う商品を決めるためには、市場のニーズを調査しなければいけません。差別化した商品を考えていくためにも流行を分析する必要もあります。
調査に関しては、自社で調査を行うほか、リサーチ会社に依頼することも可能です。
同時に競合調査も実施していきます。競合となるECサイトやマーケティング手法を分析し、自社の弱みや強みを明確化していきます。
その後、自社サイトを運営するのであれば独自の訴求ポイントを設定してください。
3.商品開発
市場調査や競合調査を行った後、取り扱う商品の選定もしくは商品開発の企画を行っていきます。
商品を選んだ後には、仕入先を検討してください。仕入先として、インターネットや海外、メーカーからの仕入れのほか、展示会の活用や仕入れサイトなどが挙げられます。
4. ターゲット層の選定
ターゲット層は、年齢や性別、趣味や関心など、様々な要素から絞り込む必要があります。
ターゲット層を明確にすることで、サイトのデザインや顧客へのメッセージなどが決定するため、ブランディングにつなげることが可能です。
5.運営計画の作成
EC事業を始める際には、以下の役割を担う人が必要となります。担当者を新たに担う、もしくは外部に依頼するかを計画しましょう。
・フロント業務
サイト運営がメインで、マーケティング活動や商品の仕入れまで担う人物
・バックオフィス業務
物流や経営、コールセンターといった業務を指し、商品管理や商品の梱包や発送などを担う人物
6.予算見積もり
ECサイトを立ち上げるための費用相場は以下の通りです。
-
- サイト制作費:約100万円~200万円
- カートシステム費:約10万円~200万円
- 商品原価:基本的なECサイトの原価率約30%
- 撮影費:約10万円~50万円
- 梱包資材:約20万円~30万円
構築方法や活用するECサイト、取り扱う商品などによって費用は変わります。
予算に余裕があれば、梱包資材にロゴを印刷したものを用意すればブランディングにつながります。
また、実際に商品を手に取れないEC事業では商品写真が重要なポイントとなるため、魅力を伝えるためにもプロのフォトグラファーによる撮影も検討してみてください。
まとめ・自分に合う方法でEC事業を立ち上げよう
実店舗を持たないため、場所や時間にとらわれずに事業を展開できるEC事業が軌道に乗れば、利益拡大や事業拡大を目指すことが可能です。
実店舗と連動してEC事業をスタートするほか、実店舗を持たずにECサイトのみでの展開もできます。
単店舗型やショッピングモール型など、様々な販売形式から自分に合う方法でEC事業を立ち上げられます。
失敗を招かないためにも、事前準備を入念に行ってから事業を進めてください。
創業手帳(冊子版)では、EC事業に関する様々な情報を掲載しています。事業をスタートする際に役立つ内容となっているので、ぜひご活用ください。
(編集:創業手帳編集部)