12月に経営者が必ずチェックすべき10項目|年末業務と翌年準備のポイント

創業手帳
弥生キャンペーンバナー

12月の重要タスクが翌年の経営を左右する


12月は経営者にとって「一年の締め」と「翌年への準備」が重なる重要な時期です。
年末調整や賞与対応だけでなく、資金繰りや節税対策のようにお金に関わる業務が増えるので、見落とすと新年のスタートに響く可能性も大いにあります。
「何とかこの時期だけ乗り越えれば」と労働時間を増やして奮闘する事業主も多くいるかもしれません。
しかし、12月の重要タスクは翌年の経営にも影響する要素なので、長期的目線での進め方が求められます。

本記事では、12月に経営者が必ずチェックすべき10のポイントを、具体的な事例や背景とともに整理しました。抜け漏れのないよう確認し、新しい年を安心して迎えましょう。

▶▶▶主要税金の期限がひと目で分かる「税金カレンダー」を無料配布中!

※この記事を書いている「創業手帳」ではさらに充実した情報を分厚い「創業手帳・印刷版」でも解説しています。無料でもらえるので取り寄せしてみてください

12月は経営者にとって重要な月


多くの経営者にとって12月はほかの月とは違う意味があります。
12月はイベントを控えていて売上変動が大きい業種も多いかもしれません。クリスマスや年末年始に備えてプレゼントを購入したり、大きな買い物をしたりする人が増えます。

そして、12月は売上が増える一方で発生する経費が増える時期でもあります。
この時期の売上やキャッシュフローの変化は、資金繰りや納税準備に直結するため金銭管理に注意してください。

さらに、年末になると税務・人事・財務などの業務が集中してしまうことがあります。
作業に追われることがないように、優先順位を整理して計画的に取り組むようにしてください。

繁忙期で業務が重なる時期だからこそ、ヒューマンエラーや処理漏れを防ぐためのスケジュール管理が経営者に求められます。
どのようなイベントがあるのか整理して戦略的に取り組むようにしてください。

▶▶▶主要税金の期限がひと目で分かる「税金カレンダー」を無料配布中!

12月の主なイベント


12月は営業日数が少なく、多くのイベントが待ち受けています。
どのようなイベントがあるのかを把握してスケジュールを組み立ててください。12月の主なイベントをまとめました。

年末調整の実施

企業会計や人事の仕事の中には、毎年必ず取り組まなければいけない定例業務があります。
その中でも12月に実施されるボリュームが大きな仕事が年末調整です。年末調整では、1月から12月までに支払った所得税の過不足を調整しています。
そのため、年末調整の担当者は12月中に年末調整書類を用意し、従業員が提出する扶養控除申告書などを基にして所得税の過不足を精算する作業を実施する必要があります。
提出書類にもれがないか確認し、入力してから所得税の確定をしなければいけません。

年末調整は期日が決まっているものなので、遅延すると納税や法定調書提出に影響が出る可能性があります。
マイナンバーや控除証明書類の確認などの実務担当者の連携体制を整えておくことが重要です。

冬季賞与(ボーナス)の支給

12月は多くの企業で冬季賞与の支給月です。支給が法的に定められているわけではありません。
しかし、賞与支給は従業員のモチベーション向上に直結します。従業員が納得できるように適切に賞与額を算定して、遅れることがないように支給してください。

賞与支給時には、ただ金銭を支給するだけでなく源泉所得税や社会保険料の計算も必要です。
また、金額が大きくなるので前もって資金計画に組み込まないと資金不足に陥るリスクがあります。
賞与の社会保険料は毎月の保険料とは別に徴収されます。負担が月ずれする可能性も考慮して企業の資金繰りに支障を与えないよう配慮してください。

棚卸しや在庫整理

商品の在庫や仕掛品は企業の財産に当たります。そのため、定期的に棚卸しや在庫整理をして内容を把握しなければいけません。
棚卸しデータは税務調査の対象なので、帳簿と実地確認の整合性を必ず確保してください。

棚卸しはこまめに行う業種もありますが、売上や経費の処理が必要な決算時期に合わせて行うのが一般的です。
期末の棚卸しは売上原価や貸借対照表に直結するため、正確な数量と評価が求められます。
不良在庫や滞留在庫は整理して、翌期に向けた効率的な在庫管理体制を構築するのが理想的といえます。

年末商戦(クリスマス・正月需要)

12月はクリスマスや正月といったイベントがあるため消費需要が高まります。プレゼントを贈るだけでなく冬季賞与を使った買い物をする人も多いでしょう。

年末商戦は、売上増加の好機である一方で在庫や人員の不足リスクもある時期です
購買意欲を高めるためには、需要期に合わせて広告や販促活動を強化し、マーケティング戦略を展開することが求められます。
さらに需要変動に備えて仕入れや物流を早めに確保し、販売機会を逃さない体制を整えなければいけません。年末商戦に向けた人材確保も余裕をもって進めておいてください。

資金繰り・決算対応の準備

年末年始は年末商戦で取引量が増加する時期です。売上が増える一方で売掛金が回収できないうちに仕入れや人件費の支払いが発生するため、一時的に資金繰りが悪化します。
特に、資金面での体力が少ない中小企業にとっては命取りになるので、資金ショートを防ぐために綿密に資金繰りを計画してください。

また、12月は売上が大きいので、決算期が3月の企業は12月時点で業績見込みを精査する場合があります。
12月は節税や投資判断に活かす経営判断の基準となる時期です。決算対応にすぐに取りかかれるように会計処理は滞りがないようにしてください。
金融機関との借入枠確認や決算対策を進めることで、翌年の資金需要に対応できる体制を整えるようにしましょう。

▶▶▶主要税金の期限がひと目で分かる「税金カレンダー」を無料配布中!

なぜ12月にチェックが必要か


年末は税務申告や資金繰りなどの期限が集中する時期です。
対応に漏れがあれば翌年以降の経営リスクにつながります。新年を安心して迎えるために、12月の段階で総点検と準備を完了させておくことが重要です。

さらに、1年の節目である12月は従業員への感謝を伝える機会でもあります。1年間の働きに感謝を伝えて、翌年以降のビジョンを共有できるタイミングです。
業務が忙しいとついつい感謝やねぎらいを忘れてしまうかもしれません。職場のモチベーションと企業文化の強化に直結する部分なのでおろそかにしないようにしてください。

▶▶▶主要税金の期限がひと目で分かる「税金カレンダー」を無料配布中!

12月に経営者がチェックすべき10項目


ここからは具体的に12月に経営者がチェックすべき10項目を紹介します。すでに把握している人も、漏れがないかどうか確認してみてください。

1. 年末調整の対応

年末調整時は、源泉徴収票の作成や控除申告の確認を行い、法定期限内に提出できるよう準備をします。
従業員が提出する保険料控除証明書や扶養控除申告書を取りまとめ、不備がないかを確認する仕事も手間と時間がかかります。
前もって従業員に声をかけて余裕をもって取り組んでください。

年末調整は複雑な業務であり担当者の負担は軽くありません。
正確性と効率性が求められる業務だからこそ、システム利用や専門家への委託のようにアウトソーシングも検討してください。

2. 賞与(ボーナス)の支給と資金計画

従業員への賞与は士気向上の効果が大きく、企業ごとに定められたルールで支給されます。
従業員のモチベーションを下げないためにも、適切な支給額と支給時期を計画しなければいけません。

賞与にも給与と同様に源泉徴収や社会保険料の負担が発生します。そのため、資金計画に十分反映させなければいけません。
賞与支給は企業の金銭負担も大きいので、金融機関や会計担当者と連携し、年末の資金繰りに影響を及ぼさないように注意が必要です。

3. 年内にできる節税対策

個人事業主の場合、1月から12月の所得について3月に確定申告を行います。
つまり、確定申告に取り組むより前の12月までに節税対策が必要です。企業であれば決算直前に経費を計上して税負担を軽減することが可能です。

経費を計上すれば利益が圧縮されるので結果として納税額を抑えられます。例えば、資産を売却して売却損が発生すれば、その分は経費として利益を圧縮できます。
さらに消耗品の買い替えや決算賞与の支払いも節税のために用いられている手段です。
利益が大きくなるとわかっている時には、早い段階で節税対策をどうするか計画しておくようにしてください。

4. 資金繰りの最終チェック

年末年始は取引先の支払遅延や銀行休業により資金不足が起こりやすい時期です。入出金については、事前に確認して間違いがないようにしてください。

急に売上が伸びて仕入れが必要になる、人手が必要で人件費が増えるなど支出が変動する可能性もあります。
借入枠の利用可能額や返済スケジュールを把握し、緊急時に備えた資金調達手段を確保しておいてください。

資金繰りでのミスを減らすためには、手形や約束手形の決済予定を確認し、資金繰り表を最新化して対応してください

5. 未収金・売掛金の回収

金融機関や取引先の営業日数が少ないことで、未収金や売掛金の回収が遅れてしまう可能性があります。
売掛金や未収金は年内に回収したほうが、資金繰りを安定させ翌年の運転資金に余裕を持たせられます。

特に支払遅延がある取引先に対しては、督促や確認を強化して回収リスクを低減するように心がけてください。
また年末に限らず、長期滞留債権は貸倒引当金の設定を検討し、会計上の適正処理を行うことが重要です。

6. 棚卸し・在庫管理

期末の棚卸しは正確な決算処理に直結します。忙しい時でも数量と評価を正確に把握しなければいけません。
棚卸しの目的は、適正在庫の把握と不良在庫や滞留在庫の整理です。
保管コストを削減し、翌年度の効率的な仕入れにつなげるためにも棚卸しは正確に実施しなければいけません。

現場での棚卸しが完了した後は、結果を会計帳簿と突き合わせて帳簿との整合性を保つようにします。税務調査時に指摘される前に適正な管理を徹底してください。

7. 経費・契約関係の整理

未払い経費や請求漏れは、年内に精査しておくことが大切です。正確な決算数値を算出するためにも、どのような経費、支払いがあるのか前もって整理しておいてください。

リース契約やサブスクリプション契約がある時には、更新時期を確認して不要な契約は解約を検討する機会を設定します。
これらの固定費の削減を図ることで、翌年度の収益改善や資金繰りの安定につながる効果が期待できます。

8. 翌年度の事業計画と予算編成

新年から迅速に事業を展開できる基盤を整えるためには、売上や投資の計画を年内に策定しておいたほうがスムーズです。
経営を安定させるために採用計画や人員配置を予算に反映し、資金繰りや人材不足のリスクをコントロールしておいてください。

予算編成は期間を区切って数字ベースで行うようにします。これは資金調達や投資判断に客観性と説得力を持たせるためです。
数字ベースになることで、金融機関や外部にも伝わりやすくなり、内部でも従業員が計画について責任感を意識しやすくなります。

9. 従業員とのコミュニケーション

12月に懇親の機会を設定している企業は多いはずです。忘年会や納会を実施することで、従業員の士気やモチベーションの向上に効果が期待できます。
こうした催しは、翌年の組織の結束力を高める機会にもなります。
経営者からの感謝メッセージを発信する機会にもなるので、翌年の働く意欲を高めるための施策として効果的です。

従業員のコミュニケーションは全体としての場と個人として話す場の両方が必要です。
個別面談を通じて従業員の声を聞くことで離職を防止したり、職場の環境改善に活用したりできます。従業員と組織の関係は時間をかけて構築するものです。
感謝を伝える機会、意見を聞く場は形だけのものにならように意識し、定期的に設定してください。

10. 経営者自身の振り返りとリセット

12月は1年間の成果や課題を振り返ることで、翌年度の戦略立案に役立つ自己評価を行うタイミングです。
ミッションやビジョンを明確にして来年以降の新しいチャレンジを決断していきましょう。

経営者の振り返りと聞くとビジネスに関するものをイメージしますが、経営者個人の振り返りも忘れてはいけません。
自身の健康管理や休養を意識することが持続的な経営判断の質を高めます。
ビジネスチャンスが来た時に万全の態勢で対応するためにも心身の状態は大切です。健康診断や歯の検診といったメンテナンスも定期的に実施してください。

普段はビジネスに集中している経営者ほど、年末の休養や家族との時間を確保して心身のリフレッシュと経営力向上を目指しましょう。

まとめ|12月の準備が翌年の経営を左右する

12月は業務と資金管理が集中する月であり、準備不足は翌年の経営リスクに直結します。
この記事では、普段忘れがちな項目を含めて12月にチェックすべき項目を10項目まとめてました。
チェックすべき項目を年内に確認して、新年のビジネスを安心して迎えてください。
経営者に必要なのは、ビジネスへの確実な準備と従業員への配慮の両立です。持続的な成長を支える経営者の責務を果たすためにも早い段階で取り組みましょう。

年末は、年末調整や消費税・法人税など“お金の締め”が重なる時期です。創業手帳では、主要な税金の納付期限をひと目で把握できる『税金カレンダー』を無料で配布しています。自社に合ったタイプを選んで、来年の納税スケジュールと資金繰りの不安を今のうちに解消しておきましょう。

税金カレンダー

関連記事
やらなきゃ損!個人事業主が年末に必ず確認したい節税対策
翌年度の事業計画と予算編成は年内に!経営者が押さえるべきポイント

(編集:創業手帳編集部)

創業手帳
この記事に関連するタグ
創業時に役立つサービス特集
このカテゴリーでみんなが読んでいる記事
カテゴリーから記事を探す