4〜6月に資金繰りが苦しくなる理由|税金・社会保険の落とし穴を解説
決算後に訪れる資金不足の山場

売上があるのに資金が残らないといった悲鳴は多くの中小企業主から聞かれます。
4〜6月は公的な納付や精算が集中し、多くの中小企業が一時的に資金繰りに苦しむこともあります。
この記事では、なぜ売上があるのに資金不足に陥るのか、その理由を税金と社会保険の制度面から整理して構造から解説しました。
資金繰り悪化の原因と失敗例と具体的対策を順に示し、経営者が今すぐ実行できる行動を紹介します。
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この記事の目次
なぜ4〜6月は資金繰りが苦しくなりやすいのか

4〜6月になると資金繰りが悪化しやすいと感じている人は少なくありません。
これは偶然ではなく納税と保険料支払いが制度上集中しやすい構造になっていることが原因です。
国や自治体の会計年度が4月始まりであることから、3月に決算して4~6月に納税する企業が多くこの時期の現金流出が増えてしまいます。
以下では、特に影響が大きい納税集中と入金タイムラグの2点について具体的に整理して説明します。
3月決算法人の納税時期が集中する構造
国・自治体の会計年度は4月はじまりです。それに合わせて3月決算を採用する企業が多く、特に上場企業や官公庁取引企業に3月決算が多い傾向があります。
その結果、納税時期が一斉に5月末に集中してしまいます。
前年度分の税金確定(法人税・消費税等)による納税と、新年度分の労働保険料概算払いが同時期に発生する上、6月からは住民税の新税額がスタートして支払いのピークが続く構造です。
固定資産税や自動車税といった地方税も4月〜6月に納付書が届きます。
そのため、「税金といえば所得税・法人税」と考えていた経営者ほど、予想外の出費に慌ててしまうのです。
売上の入金と納税のタイムラグ
3月の売上は締め日・支払いサイトの関係で4月末〜6月入金が一般的ですが、納税期限は5月末です。
つまり、売上げがあっても入金待ちの「売上はあるが現金がない」状態で納税を迎えることになります。
業種によって違いはありますが、3月に売上を伸ばした企業で4月以降には売上が落ち込むケースでは、繁忙期の売上が入金される前に多額の現金による支払い(納税等)が先行してしまいます。
決算書上は黒字だったとしても、入金がされず売掛金や在庫が多ければ手元現金は厳しいでしょう。
売上が伸びているから儲かっていると考えがちですが、実際には売掛金や在庫が増えていれば手元の資金は減ってしまいます。
このように経営者の感覚と実際のキャッシュフローにギャップが生じやすくなるのです。
4〜6月に支払いが集中しやすいお金

4~6月に支払いが集中しやすい費用をまとめました。
| 区分 | 項目 | 主な納付・発生時期 | 対象 | なぜ資金繰りを圧迫するのか |
|---|---|---|---|---|
| 税金 | 法人税・法人住民税・法人事業税 | 5月末(3月決算法人の場合) | 法人 | 決算後に一括納付。金額が大きく、現金流出が集中する |
| 税金 | 消費税 | 5月末(法人)/4月振替(個人) | 課税事業者 | 赤字でも納付義務があり、法人税と同時期に重なりやすい |
| 税金 | 所得税(振替納税) | 4月下旬 | 個人事業主 | 口座引落のため残高不足になると延滞リスクに直結する |
| 税金 | 住民税(普通徴収第1期) | 6月 | 個人 | 前年所得ベースで増額することが多く、最初の納付が重い |
| 地方税 | 自動車税(種別割) | 5月末 | 車両保有者 | 利益と無関係に発生する固定支出 |
| 地方税 | 固定資産税(第1期) | 4〜6月 | 不動産保有者 | 年4回のうち第1期が春に設定されることが多いが、地方自治体によっても違うので要確認 |
| 保険料 | 労働保険料(年度更新) | 6月1日〜7月10日 | 従業員雇用企業 | 前年度精算+当年度概算を同時納付し、金額が大きい |
| 保険料 | 社会保険料(算定基礎の影響) | 4〜6月給与を基準として算定基礎届を7月に提出/9月以降に標準報酬改定反映 | 社会保険加入企業 | 春の昇給・残業増が年間固定費増につながる |
| 人件費 | 夏季賞与 | 6〜7月 | 賞与支給企業 | 賞与+会社負担の社会保険料が同時発生 |
多くの支払いの中でも、国の会計年度が4月はじまりであり、多くの企業が3月決算を採用しているため、公的な精算・支払いがこの時期に固まっています。
これから発生する支払いの内容ををそれぞれ確認してください。
税金関係で動きが出るもの
税金は決算や年度替わりに合わせて確定申告と納付が行われるため、春先に一括支払いが集中します。
法人と個人では、納付時期が異なり、法人の場合には原則決算日から2カ月以内に納税します。
個人の所得税は原則3月15日が期限であり、個人事業税は8月と11月、住民税は原則、6月・8月・10月・翌年1月の4回です。
法人と個人事業主のいずれも4月から6月に主要な納付日が設定されており、資金不足が起きないように注意しなければいけません。
法人税・所得税(決算期・申告後)
3月に決算を行う法人は事業年度終了後2カ月以内の5月末までに、法人税と法人住民税、法人事業税をまとめて納付しなければいけません。
個人事業主は、振替納税を利用すると所得税が4月下旬に口座引落されます。残高不足になってしまえば延滞につながる仕組みです。
前年度税額が一定額を超える場合は予定納税や中間納付が7月~8月に課されます。想定以上に現金流出が発生する可能性があるので把握しておかなければいけません。
消費税(課税事業者の場合)
消費税は預り金であっても納税義務は事業者にあります。そのため、赤字であっても多額の納付が必要となるケースが想定されます。
3月決算法人の確定申告期限は法人税と同様に5月末です。同時に消費税も納付するため負担が集中してしまいます。
課税売上高に応じて中間申告制度があり年複数回納付となる場合があるため、通知内容を事前確認しておいてください。
住民税(6月から負担増)
個人住民税は前年所得を基準に6月から新税額が適用されます。特別徴収の場合は6月から、給与天引き額が自動的に増加する仕組みです。
普通徴収の場合では、年4回の分割納付です。分割納付の第一期が6月になるため、資金繰りを圧迫しやすい特徴があります。
自動車税・固定資産税
自動車税種別割は毎年5月頃に納付書が発送されて、原則として5月末までの納付が求められる地方税です。
固定資産税は自治体によって違いはありますが、4月から5月に納付書が送付され、年4回分割で支払います。第一期が春先に設定されるのが一般的です。
これらの税金は、利益と無関係に課税されるので、赤字でも支払わなければいけません。そのため、納税準備がない企業ほど突発的な資金不足に陥りやすい税目です。
公的保険料の負担
社会保険や労働保険は利益ではなく、賃金総額を基準に計算されます。そのため、赤字企業でも必ず負担が発生する避けられない固定費です。
公的保険料の納付期限は法律で厳格に定められており滞納すると延滞金や行政指導の対象となります。
重大な滞納は差し押さえになることもあるので、事業に影響を与えないために優先して支払わなければいけません。
以下では年度更新と算定基礎届という2つの制度が春から夏にかけて与える影響を具体的に説明します。
労働保険料の年度更新(6月1日〜7月10日)
労働保険料は前年度の確定賃金による精算と当年度概算保険料の前納を同時に行う制度です。
事業主は全従業員分の労災保険料と雇用保険料を合算して一括納付しなければいけません。
賃金総額に応じてまとまった資金を準備する必要があり、納付期限は7月10日までと定められているため、資金繰りを圧迫します。
遅延すると延滞金が発生するため早期の資金確保をおすすめします。
社会保険料の「算定基礎届」の影響
健康保険と厚生年金は4月から6月に支払った報酬平均で標準報酬月額を決定し、9月から翌年8月まで適用される仕組みです。
この期間に残業や一時的手当が増えると等級が上がり会社負担分と従業員負担分の双方が一年間増加してしまいます。
4~6月に実際に支払われた報酬が基準になるので、この期間に昇給すると算定基礎に影響します。将来の保険料固定費を見据えて実施時期を慎重に検討してください。
賞与・昇給が重なるとさらに厳しい
新年度に昇給を実施する企業は多くありますが、給与総額が増えれば当月から社会保険料の会社負担分も増加します。
一般的に社会保険料は「翌月徴収・翌月支払い」のため、4月に昇給した場合、増加した保険料の支払いは5月末の納税期限と重なります。
人件費増の影響はシミュレーションしておくようにしてください。
特に、6月〜7月に夏季賞与を支給する企業は、納税資金とボーナス資金の両方を確保しなければいけません。
賞与にも社会保険料がかかるため、賞与支給額に加えて会社負担分の保険料も準備が必要です。
税金・保険料・賞与が重なる6月〜7月は、年間で最も資金需要が高まる時期です。「黒字なのに資金ショート」が最も起きやすいタイミングなので留意してください。
この時期に経営者がやりがちな失敗パターン

資金ショートは制度理解不足と準備不足が原因のことが多く、構造を知っていれば回避可能なケースが大半です。
ここでは、利益と現金の違いを誤解することや後手の対応に陥ることなど典型的な失敗行動を整理して紹介します。
自社に当てはまる項目を確認し、早期に是正することが資金繰り悪化を防ぐ第一歩です。
利益が出ているから大丈夫だと思っていた
会計上の利益は売掛金や在庫を含むため現金残高とは一致せず、黒字でも納税資金が不足することがあります。
売掛金回収が数カ月先だと、目の前の税金支払いには充てられず資金繰りを圧迫してしまいます。
減価償却費は現金支出をともなわない費用であるため、利益を減らしても手元の現金は減りません。
実際には現金は減っていないため、「利益が少ないのに、なぜかお金は残っている」といった経営感覚とのズレを生じさせます。
こうした利益減少と現金減少を同一視して経営を続けていると判断ミスにつながるのです。
例えば以下のようなケースを考えてみます。売上1,000万円で利益200万円だが、売掛金が600万円であり法人税・消費税で100万円の納税が必要な場合です。
これでは利益は残っているものの、売掛金の入金まで手元現金が不足しているため納税できないという事態に陥ります。これは「黒字倒産」の典型パターンです。
通知が来てから考えればいいと思っていた
税金や各種支払いについて、通知が届いてから資金準備をする会社も多いかもしれません。
しかし、納付書到着後に資金調達をはじめても融資審査には時間がかかるため期限までに間に合わないリスクがあります。
決算確定時点で概算税額は試算できます。それにかかわらず予測を立てないことが資金不足の要因のひとつです。
期限後は延滞税や加算税が発生し本来より高い負担となります。経営リスクを抑えるために放置するのではなく資金計画と準備を進めてください。
一時的な資金不足を軽く見てしまう
高金利のカードローンなどで場当たり的に借入れすると利息負担が増え翌月以降の資金繰りをさらに悪化させてしまいます。
取引先への支払遅延は信用低下を招き取引停止や条件悪化につながるため長期的な損失が大きい行為なので絶対に避けてください。
ただし、納税資金確保のため必要投資を止めると売上拡大機会を逃してしまいます。結果として売上が伸びず資金不足が慢性化する悪循環に陥ってしまうリスクがあります。
4〜6月を乗り切るために今からできる対策

資金繰りは事前準備と見える化によって改善できるため早期に具体的な行動を開始することが最も重要です。
支払い日と金額を把握し計画的に資金を確保すれば春先の納税ラッシュも十分に乗り切ることが可能です。
以下の実務的な対策を組み合わせて実行することで安定したキャッシュフロー体質を構築してください。
【STEP1】まず今すぐやるべきこと(不足月の特定)
資金不足を避けるためには、「いつ資金が足りなくなるか」を明確にすることが最優先です。
納税日や保険料納付日や賞与支給日を一覧化し概算金額を記入した年間カレンダーを作成して視覚化してください。
前年の通帳や決算書を確認すると同時期の支出額を把握できるため翌年の資金需要を高精度で予測できます。
この時に重要なのは「黒字かどうか」ではなく、「支払い日に現金があるかどうか」です。
税金相当額を別口座に移して管理しておけば日常運転資金と分離できるので、使い込み防止になります。不足月がわかった時には、早めに具体的な対策を講じます。
【STEP2】直近のピークを乗り切る調整策
支払いのピークを乗り切るには、支払いのピークを“ずらす・分ける”対策を導入してください。
具体的には、以下の対策があります。
-
- クレジットカード納付で引落日を後ろ倒しにする
- 固定資産税などは分割納付を活用する
- 賞与支給時期を7月以降へ調整できないか検討する
- 大口支出(設備投資・広告費)は納税後へ延期する
また、納付が難しい場合は、税務署や年金事務所へ早めに相談することで、猶予や分割納付が認められる可能性があります。
通知が来てからでは遅いので、早めに支出を把握して決算確定段階で動くことが重要です。
【STEP3】今期からはじめる体質改善
資金繰り悪化を防ぐには財務体質自体も見直してください。一時的な対応だけでは、翌年も同じ問題が発生します。資金繰りは「仕組み化」が不可欠です。
具体的には、売上の一部を納税専用口座に自動積立にします。もしくは、利益が出た月に税額相当分を積み立てる方法もあります。
どちらの方法でも納税用の口座は目的外では使わないようにしてください。
さらに財務体質を改善するには、在庫や入出金の管理にも着手します。在庫水準は適正な割合を維持してください。
在庫として寝ている現金を減らしてキャッシュフローを改善します。
4〜6月の給与は社会保険料算定の基準です。固定費上昇の原因となる昇給や残業代について、年間計画で検討しておいてください。
不要な保険契約やサブスクリプションも整理して納税原資を確保します。
3カ月以上先までの入出金予定を一覧化した資金繰り表を作成すると不足時期を事前に把握可能です。
楽観視は避け悲観的な売上想定でシミュレーションを行うことで安全余裕を確保した現実的な資金計画を立てられます。
資金繰り表を見て資金計画に無理がある場合には、必要に応じて入金前倒しや支払条件交渉を行ってください。
【STEP4】専門家・金融機関への早期相談
資金繰りやキャッシュフローを一覧にして資金の不足時期を把握してから資金計画は立案します。客観的に判断するためには、第三者の意見も活用してください。
決算確定前に税理士へ概算税額を確認すれば必要資金を早期に把握でき計画的な準備ができます。
金融機関であれば、納税資金向け融資商品を用意しているため早期相談により低利で安定的な資金調達が可能です。
早期相談は「資金不足だから行く場所」ではなく、「不足しないために行く場所」です。
計画性のある企業ほど、早めに対策するため、金融機関からの信用も高まります。
まとめ|4〜6月の資金繰りは「知っていれば防げる」
4月から6月の資金難は制度上の支払い集中が原因であり、構造的に多くの企業が直面する課題です。
しかし、納税と社会保険の時期と金額を事前把握し準備すれば、十分に回避可能性を高められます。
早めの計画と管理体制の整備が安定経営につながります。資金繰り対策を経営の重要業務として位置付けて早めに着手してください。
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(編集:創業手帳編集部)
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