飲食店開業におけるキャッシュフローと利益計算方法を解説

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開業前に必要な初期投資と開業後の利益計算をしてキャッシュフローの見通しを立てよう!

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開業前に必要な初期投資と開業後の利益計算をしてキャッシュフローの見通しを立てよう!

様々なコンセプトの飲食店ができては潰れていく。都心の繁華街では、個人オーナーの飲食店は数年続けることができれば、安定期に入り成功と言われる。それだけ回転は早く、逆に言えば数年も持たせることができずに潰れる店が多いのだ。

経営を安定させていくために、なによりも考えないといけないのがキャッシュフローだ。特に一番厳しくなるのが、オープン前からオープン数ヶ月後の期間である。

今回は、飲食店オーナーを夢見る起業家が、事前にしっかり計算しておくべき開業前後のキャッシュフロー計算について、4つのポイントに絞って紹介しよう。

開業前の初期投資額を計算してみよう!

まず、飲食店を開業する前に必要な費用をしっかり把握し、初期投資とまとまった固定費を支払うために、どれだけ自己資金を用意しておけばよいかを考えよう。

1. 保証金と前家賃を第一に考える

まず必要になるのが、店舗の物件取得費だ。基本は賃貸だろう。賃貸の場合、保証金(敷金)、礼金、造作譲渡料(権利金)、前家賃などかかる。保証金は東京都心だと月額賃料の6~10ヶ月分が相場だ。個人向け賃貸なら、敷金はせいぜい2ヶ月程度。しかし、飲食店だと個人向け賃貸の数倍の保証金が必要となる。つまり賃料が30万円だと保証金は300万円程度かかるのだ。

保証金とは、物件の貸主が被害を被らないようにかけておく保険のようなもの。貸主にとって、借主が飲食店というのは非常に不安なのだ。飲食店は普通に数ヶ月で撤退することがよくある。突然いなくなり、備品だけが取り残される。それを貸主は簡単には片付けるわけにはいかない。備品の所有者は借主だからだ。手続きを取り、貸主が片付けることができたとしても、その費用は貸主が負担する。そのため、万が一のことを考えて、保証金は高めに設定されるのだ。

また、気をつけておくことは、前家賃が発生するということだ。開業前に行う内装・外装工事、設備のセッティングなどの時点から、家賃が発生する。すなわち、収入が得られる前に支出が発生するのだ。

空家賃にならないように、物件が決まったら、すぐにレイアウトを考え、工事業者の手配をし、1日でも早くオープンまで持っていかなければいけない。すでに家賃は発生しているのだ。

2. 居抜き物件で開業前の工事費用と設備投資を抑えられる

居抜き物件を探してコストを削減する
開業前にかかる費用のうち、一番高額になるのは工事費(内装・外装工事)や設備費(厨房機器、空調設備、大型冷蔵庫など)だ。

これを大幅に抑える方法がある。「居抜き物件」というものを探すことだ。居抜き物件とは、その物件の前の借主が空調や厨房設備、電気製品をそのままにして撤退した物件をいう。言葉を変えれば、前の借主が撤去できずにいなくなったとも考えられる物件だ。

どんな飲食店を経営するかにもよるが、通常、内装工事や厨房設備にかかるおおまかな費用は、賃貸面積に比例する。都内では相場は坪100万円とも言われる。例えば30坪なら3000万円、10坪でも1000万円程度が必要とされる。

しかし居抜き物件を探すことで、この費用が大幅に軽減される。ただし、注意も必要だ。居抜き物件では、あなたに取って不必要な設備も置いていっている場合もある。設備の処分費用は思った以上に金額が大きいので、あとから後悔しないようにしよう。

また、居抜き物件でも内装や設備は、まだ前の借主のもの。そのまま勝手に使うわけにはいかない。前の借主に対して造作譲渡料(権利金)を払って、内装や設備を買うことになる。

ただし、前の借主の備品が残っているということは、前の借主と連絡が取れない、もしくは撤去費用が払えずに貸主側に備品を譲渡する契約をしている可能性もある。貸主としても残った備品を撤去するのにお金がかかるので、交渉次第では、権利金を減額することも可能だ。

そして、居抜き物件での最大の注意点は原状回復義務だ。通常、借主は退去するときに「借りたときの状態=『原状』」に戻さなければならない。しかし、居抜き物件の場合、「『原状』=前の借主が備品を残した状態」になる。そうなると、不要だと思って捨ててしまった備品を退去するときに借主が同じ物を買いそろえなければならなくなる。これは貸主にとっても不要な備品が残るデメリットがある。双方にとってデメリットにしかならない。

通常は、契約時に原状を取り決める。どこまでの備品を撤去するのか、残しておくのかを決めておかなければならない。もちろん撤去費用は借主負担となる。

開業できる状態の店舗を準備するには、このように多額の初期投資が必要だ。できる限り居抜き物件を探し、少しでも開業前の費用を抑えることで、開業後の運転資金に当てられるようにしよう。

開業後の利益計算をしてみよう!

実際にお店をオープンしても、当初は顧客の認知は得られず、常連客はいない。安定した収益源となる常連客を囲い込むためには長期な営業活動が必要となる。つまり、開業してすぐにお金が入ってくるわけではない。すぐに売上が上がらなくてもお店を維持していくだけの体力(資金力)が求められる。いくらコンセプトが良くても安定期に入る前に潰れてしまうのが飲食店の怖さなのだ。

3. 収入はいくらになるかを綿密に計算してみる

ラーメン屋の運転資金・キャッシュフロー計算例
ラーメン店でカウンター席8席、テーブル席12席(4人席×3)で、1日10回転、1杯800円のラーメンを食べるとすると、20席 × 10回転 × 800円 = 1日160,000円 になる。

ただし、これは最も単純な計算方法で、昼夜、曜日、天候で回転率は変わる。東京都内の駅前と地方では集客力が異なるので料金設定や回転率が変わってくる。客単価も昼ならランチメニューで安く、夜ならサイドメニューやビールなどの飲み物の追加で高くなるだろう。

また、客席数も20席全部埋まるには相席してもらう必要が出てくる。4人のテーブル席を2人で使えば、その分顧客回転率は下がる。

このように、様々な時間帯、曜日、オペレーション(お昼に4人席に相席してもらうなど)を想定して売上計画はできるだけ綿密に立てるようにしよう。

4. 支出は固定費と変動費に分ける

費用の計算をする時には費用を固定費変動費にわけて考える。固定費とは、月々の売上に関係なく固定して発生する費用のこと。飲食店で一番のウェイトをしめるのが賃料だ。

東京都心の人気の立地や、駅に近く、人通りの多い路面店に出店したい。そう思うのは当たり前だが、人気の場所は当然賃料も高くなる。もしライバル店が同じ売り上げをあげていても、賃料がライバル店は10万円、自分は30万円と開きがあれば利益はライバル店のほうが上になる。利益が多い分、新たな投資や広告宣伝費などに使い、さらにライバル店に差をつけられる結果となる。

賃料はどんなに売上がなくても毎月必ず発生する費用だ。場所に対する相場を充分に調べ、売上に見当たった賃料を、物件を探す前に設定しておこう。

変動費とは、食材費や人件費、水道光熱費、広告宣伝費(ぐるなびなどのクーポンサイトでの告知、割引券の作成など)のことだ。ここでいう人件費とはアルバイトのお給料や交通費などだ。

飲食店経営の損益分岐点と損益分岐点売上高とは?

毎月の売上が支出(固定費と変動費を足したもの)とイコールであればプラスマイナスゼロとなる。利益も損も出していない。これを損益分岐点と言う。つまりこの損益分岐点となる売上高(損益分岐点売上高)を立てることが飲食店を経営していくにあたっての最低ラインになる。損益分岐点を超える売り上げを立てて初めて利益がでる。

まとめ

飲食店は軌道に乗るまでは赤字覚悟の厳しい世界。さらに、自己資金が足りないという理由で金融機関からなかなか融資がおりないという非常に難しい業種でもある。一方で、飲食店は現金商売なので、毎月利益がきちんと出ていれば翌月の支払いに困ることはない。常連客のツケなどがなければ、売掛債権もない。

開業前に必要な初期投資と開業後の運転資金をしっかり計算してキャッシュフローの見通しを立てて開業すれば、お店の経営もうまくいく可能性が高まるだろう。

(監修: ライズサポート税理士事務所
武渕将弘 税理士)
(編集:創業手帳編集部)

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