2017年4月1日、キャリアアップ助成金の概要が変更!気になる変更点を調べてみました。
「キャリアアップ助成金」変更後の概要を解説します
(2017/04/25更新)
非正規雇用労働者の企業内でのキャリアアップを促進するため、正社員化・人材育成・処遇改善の取り組みを実施した事業主に対して助成する制度【キャリアアップ助成金】。
その制度が、平成29年4月1日にコースの区分統合などが変更になりました。
いったいどこが変わったのか?今回は、変更後の概要を解説していきます。
この記事の目次
「キャリアアップ助成金」とは?
有期契約労働者・短時間労働者・派遣労働者といった、非正規雇用労働者の企業内でのキャリアアップを促進するため、正社員化・人材育成・処遇改善の取り組みを実施した事業主に対して助成する制度です。
コースによって追加される条件はありますが、
○ 雇用保険適用事業所の事業主であること
○ 雇用保険適用事業所ごとに、キャリアアップ管理者を置いている事業主であること
○ 雇用保険適用事業所ごとに、対象労働者に対し、キャリアアップ計画を作成し、管轄労働局長の受給資格の認定を受けた事業主であること
○ 該当するコースの措置に係る対象労働者に対する賃金の支払い状況等を明らかにする書類を整備している事業主であること
○ キャリアアップ計画期間内にキャリアアップに取り組んだ事業主であること
という上記の条件を満たす事業主が支給対象となります。
「キャリアアップ助成金」今回の変更点は?
以前、創業手帳編集部でも「正規雇用等転換コース」を実際に申請してみた「キャリアアップ助成金」ですが、平成29年4月1日に下記の部分が変更されました。
1.助成内容が3コースから8コースに変更
- 有期契約労働者等を「正規雇用労働者」「多様な正社員等に転換」または「直接雇用した場合」の
「正社員化コース」 - 有期契約労働者等に「一般職業訓練(Off-JT)」「有期実習型訓練(「ジョブ・カード」を活用したOff-JT+OJT)」「中⻑期的キャリア形成訓練(専門的・実践的な教育訓練)(Off-JT)」を⾏った場合の
「人材育成コース」 - 全て又は一部の有期契約労働者等の「基本給の賃金規定等」を、「増額改定」した場合の
「賃金規定等改定コース」 - 有期契約労働者等を対象に「法定外の健康診断制度」を新たに規定し、「4人以上に実施」した場合の
「健康診断制度コース」 - 有期契約労働者等と正社員との「共通の賃金規定等を新たに規定・適用した」場合の
「賃金規定等共通化コース」 - 有期契約労働者等と正社員との「共通の諸手当制度を新たに規定・適用した」場合の
「諸手当制度共通化コース」【NEW】 - 選択的適用拡大の導入に伴い、「社会保険適用となる有期契約労働者等の賃金の引き上げ」を実施した場合の
「選択的適用拡大導入時処遇改善コース」【NEW】 - 有期契約労働者等の「週所定労働時間を5時間以上延長」し、「社会保険を適用」した場合の
「短時間労働者労働時間延長コース」
これまでの3コース(処遇改善コースは細分化されました)に加え、諸手当制度共通化コース、選択的適用拡大導入時処遇改善コースが追加されました。
2.正社員化コースの対象者・助成額が変更
正規雇用労働者に「多様な正社員(勤務地・職務限定・短時間正社員)」が含まれることになり、多様な正社員へ転換した場合の助成額が増額されました。
【平成28年度】
有期→多様:1人あたり40万円(30万円)
無期→多様:1人あたり10万円(7,5000円)
↓
【平成29年度】
有期→正規:1人あたり57万円(42万7,500円)
無期→正規:1人あたり28万5,000円(21万3,750円)
※()内は大企業の額
3.人材育成コースの形成訓練様式・支給限度額が変更
中長期的キャリア形成訓練の様式が一般職業訓練と統合。1年度1事業所あたりの支給限度額が500万円から1,000万円に増額されました。
4.【諸手当制度共通化コース】追加
有期契約労働者等に関して正規雇用労働者と共通の諸手当制度を適用した場合に助成
1事業所あたり38万円(28万5,000円)
※()内は大企業の額
5.【選択的適用拡大導入時処遇改善コース】追加
労使合意に基づく社会保険の適用拡大の措置により、有期契約労働者等を新たに被保険者とし、基本給を増額した場合に助成されます。
基本給の増額割合に応じて、
3%以上5%未満
1人あたり19,000円(14,250円)
5%以上7%未満
1人あたり38,000円(28,500円)
7%以上10%未満
1人あたり47,500円(33,250円)
10%以上14%未満
1人あたり76,000円(57,000円)
14%以上
1人あたり95,000円(71,250円)
が、1事業所あたり1回のみ、支給申請上限人数は30人まで支給されます。
※()内は大企業の額
※本コースは、平成32年3月31日までの暫定措置となります。
※対象労働者が複数以上であり、基本給の割増し割合が異なる場合には、最も低い増額割合の区分の支給額が適用されます。
6.全てのコースに生産性要件が設定
生産性要件とは、下記の計算式で計算した際に助成金の支給申請等を行う直近の会計年度における「生産性」が、その3年前に比べて6%以上伸びている場合、助成金の割増が行われる制度です。
どのコースに申し込むにも、まずは生産性要件をチェックしてみると良いですね。
詳しい内容は、厚生労働省のホームページを、補助金・助成金に関しては、以前の記事でまとめてみましたので、併せて御覧ください。
社会保険労務士 小林信宏氏に伺ってみました
今回の改正点について、助成金申請サービスや総合コンサルティングを数多く手掛けている、小林社会保険労務士事務所 小林信宏氏にお話を伺いました。
小林:助成額は全体的に増えておりますが、正しく作成・管理しなければならない資料が増えているほか、賃金規定などの整備も必須となってくるので、その点が疎かになると審査は厳しいものになると思います。助成金の利用したい場合は、自社の管理を見直しておいたほうが良いでしょう。
さらに、助成金でプラス収支を狙う、というよりは、正しく助成金制度を使った際に生じた支出を補てんする、という要素が強くなった印象があります。
なので、闇雲に行うのではなく、しっかりと会社がどのように成長していきたいかを決めていく必要もあります。
最後に、従業員を有期雇用から無期雇用へ転換した場合にも支給されるので、パートタイマーなどで働いている従業員を戦力として迎えたい方にも注目していただきたいですね。
小林:今回の改正で全コースで適用される生産性要件ですが、「助成金の支給申請を行う直近の会計年度における「生産性」が、その3年前に比べて6%以上伸びていること」が条件となるので、当然ながら創業して3年以内の企業は対象外となります。
さらに、当然と言えば当然ではあるのですが、先ほども申し上げた社会保険への加入や深夜割増など、正規の手続きをちゃんと行うという点は重要です。
労働条件通知書や出勤簿、賃金台帳などにも正しく詳しく記載することも必須になってくるので、しっかりと整備・管理しなければなりませんね。
(取材協力:小林社会保険労務士事務所/小林 信宏)
(編集:創業手帳編集部)