アプリ開発で培った技術をホステル事業にも!and factory代表 小原 崇幹 氏インタビュー

創業手帳
※このインタビュー内容は2018年03月に行われた取材時点のものです。

ハイスピードな事業拡大を実現できる理由とは

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(2018/03/23更新)

スクウェア・エニックスと共同で運用している漫画アプリ「マンガUP」や白泉社との協業アプリ「マンガPark」をはじめ、数多くの自社アプリを開発しているand factory株式会社。アプリ開発を得意としている企業が現在手がけているのは、なんと別業種であるホステル事業。いったいどのような経緯でホステル事業に進出していったのでしょうか?

今回は、and factory株式会社 代表取締役社長の小原 崇幹 氏に、ホステル事業に進出したきっかけや、ハイスピードな事業拡大を実現できている理由について、お話を伺いました。

小原 崇幹 (おはら たかまさ)
and factory株式会社 代表取締役社長
1984年生まれ、東京都出身。東洋大学在学中に起業。その後、社会人経験を積むため2009年に株式会社zeronana入社。2011年株式会社docksを創業し、取締役に就任。2014年and factory株式会社設立、代表取締役社長に就任。

「○○×テクノロジー」で新たなビジネスを生み出す

ー小原さんが起業しようと思ったきっかけと、and factory株式会社について教えてください。

小原:父の影響が大きいかもしれません。父は高卒で起業し、いくつか事業を起こしながら今も現役で働いています。幼い頃から父の背中を見て育ったので、自分が面白いと思ったアイディアをビジネスとして実行・推進する姿勢は自然と身についていたように思います。また「大学に行って、卒業したら企業に就職」という固定概念に囚われずに、いろいろな活動にチャレンジできたのも、父の影響が大きかったです。

学生時代から現在にかけて、いくつか起業してきました。その一つとしてWEB広告代理業を営んでいる時期に、スマートフォン向け案件がどんどん増えていきました。手のひらに収まるほどの小さなデバイスから生まれる産業の可能性を感じ、スマートフォンサービス事業を立ち上げました。そこから生まれたのがand factory株式会社です。

設立当初はまず自社アプリを数多く開発しました。これまでに自社で50以上のアプリを開発する中で、顧客視点にたった設計・開発力、開発後の運用力や独自のマネタイズ(収益化する)方法を培ってきました。現在では大手出版社と協業で開発した漫画アプリも複数展開しています。

ーアプリ開発を行っているなか、別業種である宿泊施設「&AND HOSTEL」の開業に至ったきっかけはなんだったのでしょうか?

小原弊社は「〇〇×テクノロジー」で新たなビジネスを次々と産み出していこうと考えており、創業当初から多方面のスペシャリストに加わってもらっていました。
その中に、不動産領域で知識と経験が豊富なメンバーから、市場動向として簡易宿所にビジネスチャンスがあると提案がありました。

政府が発表している「観光立国推進基本計画」では、2020年に4,000万人、2030年に6,000万人の宿泊ニーズを見込んでいます。この訪日外国人の需要を受け、宿泊施設が4.4万室不足すると言われています。そのため、ホテルより初期投資が抑えられ、短期間で施工可能な簡易宿所(カプセルホテルやホステル)が注目されているんです。

そこで、アプリ開発の実績を積んで得たノウハウを活かしつつ、「ホステル×テクノロジー」で我々らしい新規事業を起こすことを模索した結果、近未来のIoT空間を体験できる日本初のスマートホステル「&AND HOSTEL」を開業するに至りました。「&AND HOSTEL」は現在5店舗を展開していますが、2018年度末までには10店舗を開業予定です。

ー2018年末までに10店舗ですか!なぜハイスピードでの開業を実現できているのでしょうか?

小原:先ほども少しお話ししましたが、社内にスペシャリストが揃っていることがハイスピードに展開できている大きな理由だと思います。

例えば、不動産資格保持者や建築資格を持つデザイナー、エンジニアなどなど、専門的なスキルを持ったスタッフが社内に揃っているので、物件の仕入れ、IoTルームで利用できる専用アプリの開発、プロモーションツールの制作といったものが全て社内で完結します。あらゆる面で外部に発注する必要がないので、コンセプトや意図がブレませんし、プロジェクトをスピーディーかつハイクオリティに進めることができます。

この事業に関わらず、どの事業においてもかなりのスピード感をもって事業展開させていることは弊社の特徴だと思います。社員同士のコミュニケーション・議論がしやすい環境づくりに配慮していますし、自分自身も社長として決断と方向性の提示迅速かつ明確であるようにしています。

今目の前のことを地道にこなしていくことで、理想につながる

ー起業する際に、一番大変だったことはなんでしたか?また、それはどうやって乗り越えていきましたか?

小原:経営を深く学んだわけではないので、実際に事業を成長させていく中で財務やマネジメント面で、課題に多く直面しました。様々な方法で知見を集める努力は今も怠っていませんが、「結局は自分で全部やるよりも専任でスキルが有る人間が行ったほうが良い」と考え、必要なスキルを持った最適な人材に仲間になってもらうことで解消しました。

ー起業した際に、人材はどのように集めましたか?

小原:and factoryを創業した時には、それまでに自分が関わってきた友人・知人の中から「ぜひ一緒に事業をやっていきたい」と思う優秀な人材に加わってもらいました。一人ひとりに自分のビジョンを真剣に話して、口説いてまわりました。

その後の採用に関して大切にしているのは、and factoryの文化や風土に合うかどうかということです。
弊社は非常に自由な雰囲気の会社です。その自由な環境の中で自分を律することができ、自分なりの価値を出して結果を創り、会社やひいては個人が活躍できるイメージがある人を採用するようにしています。

自分は、「人間は、一人ひとりの能力にはそんなに大差がない」と思っています。ただ、「どこに着目しているか?」の違いだけです。その違いが個性として現われるのだと考えています。弊社はその個性の多様さが強みだと思っているので、メンバーたちが快適に楽しく働ける環境や風土を創ることが大切だと考えています。

ークライアントとの信頼関係を築く上で、実践していることはありますか?

小原:我々は協業社としてパートナーシップを築いてプロジェクトを成長させていくことが多いです。相手・自社・その先にあるユーザー、どれをとってもプラスになるような関係が理想ですね。中世から近代にかけて活躍した近江商人の考え方で「三方よし」という言葉がありますが、それに近いと思います。

ー事業を行っていく上で、大切にしている信念はありますか?

小原:日々行う地道なアクションを積み重ねることに意識を向けています。理想や野望を追い求めるのは経営者としても大事ですし、我々も成し遂げたいことを追っていますが、それに囚われてしまうと大事なものを見落としてしまいます。常に今の足元を大事にすることで、大きな目標に向けた一歩を踏み出すことができるんだと思います。

人間は一人ひとりの能力に大差は無い。着眼点が違うだけ

ー今後の目標はありますか?

小原:漫画アプリに関しては、アプリからヒット作を生み、それを著作化、テレビ化やアニメ化をしていきたいということを考えています。ヒット作を生み出すために、アプリ内でのマンガの読まれ方を徹底的に分析しつつ、新たな作品を産む体制づくりにも動きだしています。今後も出版社の方々の良きパートナーとして二人三脚で成長させ、新たな漫画文化を牽引していきたいと思います。

ホステルに関しては、現在5店舗を展開していますが、2018年度末までには10店舗を開業予定しています。「&AND HOSTEL」を広げることで、まずIoTに触れ合える人をどんどん増やしていきたいです。

ホステルの他にも、横浜市様とNTTドコモ様と3者で立ち上げた「未来の家プロジェクト」や、学生寮のIoT化など色々なプロジェクトがスタートしており、IoTのビジネスがどんどん育っていくことを期待しています。

ー最後に、これから起業する方へ、メッセージをお願いします。

小原:先ほどもお話ししましたが、人間は一人ひとりの能力にはそんなに大差は無いと思っています。

僕は学生時代から複数の事業を起こしてきましたが、何万回も打席に立って、運よく幾つか成功体験が積めたというだけです。その裏には数えきれない失敗があります。20歳の頃から商売をしているので、人よりも早く打席に立ち、他の人が500回目でへこたれるところを1000回打席に立った。ただそれだけです。

起業をすると、これまで取り組んだことがないことにチャレンジすることが多々あると思います。それをまず「やってみる」気持ちがあること。そして、やってみた時に起こった不測の事態や失敗にも、へこたれずに前を向けることが大切だと思います。

(取材協力:and factory株式会社/小原 崇幹
(編集:創業手帳編集部)

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