受付一筋11年の経験から生まれた無人受付システム「RECEPTIONIST(レセプショニスト)」。ディライテッドCEO橋本 真里子インタビュー(前編)

創業手帳woman
※このインタビュー内容は2018年04月に行われた取材時点のものです。

受付の業務をITの力を使って効率化したい

receptionist

(2018/04/16更新)

会社の顔になる「受付」という仕事。実は、企業によっては、1日に何百人も対応しなければならない大変な仕事でもあります。そんな受付の仕事に着目して起業したのが、ディライテッド株式会社の橋本 真里子さん。名だたる有名IT企業で11年も受付をしていたプロフェッショナルである彼女は、自身の経験をもとに、受付業務を無人で行うサービス「RECEPTIONIST(レセプショニスト)」を開発しました。

前編では、「RECEPTIONIST(レセプショニスト)」の概要と、橋本さんが受付のどんな部分に着目して起業するに至ったのか、を中心にお話を伺いました。

橋本 真里子(はしもと まりこ)
2004年大学卒業後、上場企業5社以上で受付を経験。1日平均500名、月間 10000人の来客を11年間継続して担当し、のべ120万人を接客した受付のスペシャリスト。2016年01年21日にディライテッド株式会社を設立。2017年1月11日にiPad無人受付システムRECEPTIONIST(レセプショニスト)をリリース。

今までの受付は「誰も幸せじゃない受付」

ディライテッド株式会社ホームページより引用

ーまず、御社のサービス「RECEPTIONIST(レセプショニスト)」について、教えていただけますか?

橋本:「RECEPTIONIST(レセプショニスト)」は、内線電話を使わずチャットツールを介して担当者に直接通知をするiPad無人受付システムです。
電話係を介さず、チャットツールで担当者全員のスマホに直接通知することができるので、どこにいてもすぐに気づくことができるのが特長です。

ーなるほど。どこにいても来客に気づくことができるシステムですか。
確かに、受付って内線でつなごうと思っても、忙しい人ほど取り次ぐことができないし、来客を知らせるのに結構手間がかかりますよね。その点は意外と重労働な気がします。

橋本:その通りです。そういう不便さを解消したくて、このサービスを作りました。

ーでは、起業までの経緯について教えていただけますか?

橋本:私は23歳から受付の仕事を始めまして、受付の仕事を11年やってきました。その時に感じたのは「受付は賞味期限が短い職種だ」ということでした。割と早期に職種転換をしなきゃいけないというのが、受付という仕事の特徴かもしれません。

そこで、次のキャリアをどうしようかと考えていた時に、「受付の仕事って、23歳のこの仕事を始めた頃と比べて何も進歩していない」ということに気付いたんです。

例えば、手書きの受付票だったり、名刺を2枚預かったり、内線で電話をする、という業務ですね。先ほどもおっしゃっていただいた通り、特に内線は忙しい人ほど繋がらないので、非効率的です。これらの業務が、今でも変わらずにあるんです。
そこから「受付の業務をITの力を使って効率化できないかな?」と考えたのが、原点です。

また、現場を熟知している人が関わらないと、便利なものは生まれません。
受付を11年やってきたキャリアも珍しいですし、今までの知識を生かして、役に立つものが作れるのでは?と考え、起業に至りました。

ーこのサービスには、橋本さんが受付で培ったノウハウが詰め込まれているということですね。

橋本:そうですね。

今までの受付の方法って、誰も幸せじゃないと思うんです。お客様からすると、毎回手書きで受付票を書くことが面倒くさいし、場合によっては並んで待たないといけません。受付の現場としても、お顔や名前もわかっている場合があるのに、受付のルールに従って記入してもらうことも心苦しい。管理する会社側も、手書きの受付票をどこかに保管しないといけません。パソコンに保存するときも、入力するという手間がかかってしまいます。

そんな状況は全部解決できるサービスは作ることができたなぁ、と思います。

ーちなみに、良い受付というのは、どういうものでしょうか?

橋本「ムダが無い」ことが良い受付だと思っています。度が過ぎてしまうとムダが出てきてしまいます。おもてなしも重要ですが、シンプルで必要な機能を使用して、「ムダの無い受付」を作っていきたい、という理念があります。

ー受付で経験を積んでいったと伺いましたが、いざサービスを開発するときはどのように行動したのでしょうか?

橋本:私には開発の知識・ノウハウは無いことが明確だったので、もちろんエンジニアを採用する必要がありました。

ですが、私がやっていた受付の業務と開発の業務はかけ離れていました。ですので、まずは私とエンジニアの通訳になってくれる「プロダクトマネージャー」を探すことにしました。

その結果、現在弊社のCOOである真弓が参加してくれることになり、そこから本格的にエンジニア採用やプロダクト開発に着手していくことができました。

ー確かに、形にしてくれるパートナーの存在は不可欠ですよね。ちなみに、COOである真弓さんはどのように見つけられたんですか?

橋本:私が受付をやっていた企業で、同時期にプロダクトマネージャーとして働いていたんです。

サービスを形にするうえで「まずは昔の仲間に頼ってみよう」と思って、声をかけたのが始まりです。

ーそこから、参加するまでにはどのような経緯だったのですか?

橋本最初は、自分が実現したいことを熱く語りました。
もちろん、すぐ「じゃあやろう」とはならないので、部分的にでもいいから関わって欲しい、ということも伝えました。そこでOKしてくれたことが、最初のきっかけですね。

ファミレスなどでミーティングを重ねていくうちに、彼にあって私に無いもの、私にあって彼に無いものがハッキリしてきました。「お互いが一緒にやれば、補い合うことができるよね」と彼が感じてくれて、参加することを決めてくれました。

ー足りない部分を補い合えるのは、良い関係ですね。

橋本:本当にそうだと思います。
私は持っていないスキルの方が圧倒的に多いことを自覚していました。ですので、その他のメンバーに関しましても、「足りない部分を一緒に埋めてください」というスタンスで、探していきましたね。

受付は会社の最前線だから、会社のことがよくわかる

ーちなみに、今は何人くらい働いているんですか?

橋本:正社員は15名います。インターンを含めると20名ほどですね。社内の半分はエンジニアです。残り半分は営業・バックオフィス・マーケッター・デザイナーといった縁の下の力持ち的なメンバーがいます。みんなの働きのおかげで、サービス開始から現在の成長率は1000%を超えており、日々たくさんの企業様にお使いいただいております。

ーサービスはどのように広めているのですか?

橋本:弊社のサービスはWEBからダウンロードして利用できるものなので、WEBからの申し込みが7割ほどです。残りの3割が営業に伺って導入していただいたり、ご紹介だったり、という感じです。

ー最初にプロダクトを広めるのって大変だと思いますが、広めるために意識してやっていたことはありますか?

橋本:最初の1年は、メディアやイベントに積極的に出ましたね。ブログも始めましたし、お金をかけずにできる有効的なことを意識してやっていました。

ーなるほど。今のところ、次のステップはどのように考えていますか?

橋本:起業した時には「受付を効率化したい」という思いは中心にありましたが、それと同時に、受付で取れるデータを活用しているサービスや企業って全く無いとも感じていました。

会社の最前線に位置している受付にいると、会社のことってすごくよくわかるんです。その知識を形にして社内全体に共有できると、様々な分野で応用がきくと思うんですね。受付で蓄積されたデータを活用した新しい価値を提供していきたいと考えています。

もう一つは、スマホアプリですね。今はビジネスチャットに来客の通知が届くようになっているのですが、逆にいうとビジネスチャットを使ってないと、サービスは使えないの?となってしまいます。弊社のスマホアプリを使ってもらうことによって、ビジネスチャットに依存せずに利用できるようなアプリを開発したいと考えています。

【後編は近日公開】受付の経験だけは、誰にも負けない
良い起業家の共通点は「○○○○」ことができる人。ディライテッド株式会社CEO橋本 真里子インタビュー(後編)

(取材協力:ディライテッド株式会社/橋本 真里子
(編集:創業手帳編集部)

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