1,700店舗を手がけたプロに聞く、 開業の成功確率を上げる3つのポイント

創業手帳
※このインタビュー内容は2016年12月に行われた取材時点のものです。

こだわりを捨て「儲ける」ことに全力投球

(2016/10/28更新)

飲食店開業のプロ・三浦正臣さんに学ぶ本記事。前回「1,700店舗を手がけた開業のプロに聞く、繁盛店と潰れる店舗の差とは」では、繁盛する立地の選び方や、飲食店を成功させるポイントについてお伺いしました。

今回は、飲食店開業にあたってやっておくべきことや、開業当初の心得について教えて頂きます。

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三浦 正臣(みうら まさおみ)
2002年、店舗流通ネット株式会社に入社し、2年後に取締役営業本部長に就任。上場期の同社を牽引。居抜き物件を活用して多くの飲食店をプロデュースし、さまざまな専門業態の店舗を集めた「横丁」と題したビジネスモデルがオープンで注目を集める。2012年にストアクリエイティブ株式会社を設立、海外展開を開始。2015年に店舗ナンバーワン株式会社を設立。これまでに手がけた店舗の数は、1,700にのぼる。

1店舗目は”こだわり”を捨てる

ー前回、「飲食店の成功のためには立地とコンセプトのマッチングが重要」「これからの飲食店には専門性が求められる」というお話を伺いました。それ以外に、飲食店開業にあたって「これだけはしっかりやれ」というものはありますか?

三浦:まず基礎となるのは、お金のシミュレーションをしっかりすることですね。形式にこだわらず、羅列でもいいので、売上予測、家賃、原材料費、人件費、水道光熱費、広告、返済額などを全部入れたシミュレーションを作ること。たまに、無茶なお金のかけ過ぎをする人がいます。たいてい趣味に走って「俺はどうしても、内装には2千万かけるんだ!」なんて言っている人。こういうタイプは、ほぼほぼ失敗します。

ー最初に趣味に走り過ぎるとよくないということですか?

三浦:そう。だから、開業を目指す人には絶対。「まず趣味や、やりたいことから1回離れてください」とアドバイスしています。最初の1~3軒目くらいまでは儲かる店に徹底することが大切です。儲かってしまえば、自分のお金を使って好きなことをやる分には、誰にも迷惑をかけませんし、文句も言われませんから。まずは、趣味も、嗜好も1回捨てて、儲かる店作りという観点から考えることが大切ですね。

開業当初の「死ぬ気」が成功へ導く

ー最初のうちは専念しろというのは、飲食以外の業界にも言えそうなことですね。

三浦:飲食以外にも共通しますね。サラリーマンにも、何かを始めるときには一年間入院したつもりで、やりたいことを我慢して、死ぬ気でやれって言うと思います。サーフィンが好きならサーフボードを1年間封印して、お金持ちになってから遊ぶという心意気で望むんです。お金があれば、もっと遊べます。でも、遊びながら仕事をしている人は、絶対にお金を稼げません。私も、入社して最初の一年は全く休みませんでした。そういった生活をした人は、みんな経営者として成功しましたね。

潰れる店舗の法則

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ー飲食店成功のためには、「死ぬ気で頑張る」など、ある程度の根性論が必要なのでしょうか。

三浦:結論はそうなると思います。最初は、いかに全力でやるかということですから。でも、いくら頑張っても、潰れてしまうお店は出てきます。その理由として、一つあるのが汚いお店は全然ダメだということ。「お店が潰れそう」という相談があって店舗を見に行ったら、十中八九汚いんです。逆に、とってもキレイなお店なのに、潰れてしまうお店はほとんどありません。

ーどうして、汚いお店は潰れてしまうのだと思いますか?

三浦:お金だけ出しているオーナーがいっぱいいるというのが、一つの理由だと思います。オーナーが全然顔を出さないから、バイトだけのお店になってしまって、無法地帯と化してしまう。従業員のバイクが店舗前に停まっていたり、従業員同士がぺちゃくちゃおしゃべりに興じていたり。飲食店と言っても、基本は営業ですから、お客さんを待ち構える心構えができていないお店は、失敗すると思います。できている店は、「いらっしゃいませ」から「ありがとうございました」まで素晴らしいですから。

世界との比較で気づく、日本の飲食店が目指すべき道

ー最近は海外の事業も手がけていらっしゃいますが、日本の飲食店と、海外の飲食店にはなにか違いがありますか?

三浦:最近は海外に呼ばれることも多くなってきたのですが、特に衝撃を受けたのがサンフランシスコやパリですね。そこでは、レストランのシェフってスター商売なんです。店内も、厨房やシェフの姿がかっこよく見える作りになっているんですよ。日本だと、「居酒屋の厨房」と聞くと、残念ながら、少し格下に見られてしまうじゃないですか。それと真逆なんですよね。飲食店の従業員は「カッコイイ!」と思われる対象なんです。特に、海外はチップ文化もありますから、ウェイターでも100万円稼ぐ人だっています。それに比べて、日本は人件費に対してシビアな経営者が多い傾向にあります。どうしても、人件費を削ろうとか、長時間働かせようとか、すぐ考えてしまうんです。

ー確かに、給料の安さや激務で体を壊して、退職したシェフやパティシエの話はよく聞きます。

三浦:だから、私はそこから変えたくて。儲かるお店というだけでなく、従業員が稼げる環境を作りたいんです。だから、私が手がけた立ち飲み屋の店長は、8坪の店舗で90万くらい給料を稼ぎますからね。もちろん、その分頑張っていますし。彼は、「アルバイトを入れたら」と聞いても「人件費が増えるくらいなら、自分で出る」というタイプですから。だから、稼げるきっかけというか、環境があることが重要だと思うんですよね。日本の飲食経営者って、あまり従業員が儲かることを考えないでしょう?夢を語って、現場は安月給で働かせているだけ。だいたい、お店を作って、経費を削って儲けようというのは、もう会社じゃない気がします。儲かった分、自分も、従業員もみんな儲かっているのが一番いい形だと思いませんか。

創業者へのメッセージ

ー最後に、これから飲食店を経営する方に向けてのメッセージをお願いします。

三浦:初期投資を低くおさえるとか、コンセプトとマッチしたよい立地を選ぶとか、コンテンツに独自性があって魅力的だとか。飲食は、こういった稼げるきっかけが、たくさんあふれている商売だと思います。アパレルやITなどでの起業に比べると儲からないと言われていますが、工夫と発想次第でいくらでも稼げる環境は作れるんです。あとは、これから開業を考えている方が、どれだけ本気で打ち込むか、そして稼げるきっかけに気づくかどうかだと思います。

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失敗する店舗の共通点を学んで、飲食経営に活かそう
1,700店舗を手がけた開業のプロに聞く、繁盛店と潰れる店舗の差とは

(取材協力:店舗ナンバーワン株式会社/三浦 正臣)
(編集:創業手帳編集部)

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