Omise 長谷川 潤|タイ発のFintechベンチャーに学ぶ、多国籍経営のポイント

創業手帳
※このインタビュー内容は2016年09月に行われた取材時点のものです。

東南アジアで事業拡大するポイントとは

タイ発の開発者向けクレジットカード決済サービス、「Omise」。
今後拡大するであろう東南アジア圏での、ワンストップ決済プラットフォームを提供しています。

今回はOmiseの創業者である長谷川 潤氏に、サービス概要と今後の展開を取材しました。

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(2016/09/03更新)

長谷川 潤 Omise創業者 シリアルアントレプレナー
Jun_Hasegawa1999年高校卒業後、単身アメリカへ渡りエンジニア、デザイナーとして大手企業の開発案件やフリーランスとしてスタートアップも含めた開発を経験。帰国後、広告代理店にて大手通信会社のシステム開発案件や広告物のデザインなど複数の案件を担当。 2009年に「LIFEmee」というライフログサービスを立ち上げ、アメリカで開催された TechCrunch50に出場。その後いくつかのスタートアップを立ち上げサービスをローンチしていく。
2012年にイギリス、POWA(現在は廃業)のmPOSテクノロジーをタイに持ち込む機会を得たが、タイにおける決済インフラの課題に気付きこれを解決するためのワンストップ決済を提供するOmiseを起業。
2013年共同創業者のDon Harinsutと共にOmiseをタイで創業。オンライン事業者にセキュアで不正に強く、簡単に導入できる決済システム「Omise Payment」を日本とアジアで提供中。スタートアップから大企業まで業種を問わず、現在4,000近いアカウントへサービスを提供している。16年にも渡るテクノロジーとデザインの経験とスタートアップに対する深い造詣を持っており、現在グローバルで約70人、国籍は10にもなる国際的なチームを率いてアジア各国へ急ピッチでプロダクトの拡大を進めている。
2015年には経産省よりFintech研究会への参加を打診され「海外におけるFinTechの動向、日本への示唆・連携の可能性」というテーマでメインプレゼンターとして発表を行った。

Jun is a deep thinker, and is no stranger to the startup world. Since 1999, Jun found himself deeply appreciating technological advancements which has the power to facilitate and improve the way of life. He discovered his entrepreneurial spirit for such fields as e-commerce, life log, mobile payment and the payment infrastructure.

In 2008, he involved in founding LIFEmee and later on in 2012 got his hands on a project which was to bring over UK’s mPOS technology, POWA (http://www.powa.com) to Thailand. Jun involved in a couple more projects before finally founding Omise in 2013. Besides dynamic background in managerial roles, Jun holds over 16 years of experience in web & product design and proficiency in marketing. He currently leads a growing team of 74 in 4 countries across Asia, and is gearing up for Omise’s expansion to Indonesia, Malaysia and Singapore.

Omise Paymentのサービス概要を教えて下さい。

長谷川:Omise Paymentは誰でも簡単に決済を導入できるグローバルオンライン決済プラットフォームです。事業者はOmise PaymentのAPIを自社のシステムに組み込むだけで、最新の技術を用いたセキュアな決済を導入できます。

国際カードブランドが定めるセキュリティ基準、PCI-DSS 3.1にも完全準拠しており事業者にクレジットカード情報漏洩リスクを持たすことなくサービスを提供しています。

簡単に実装できることから事業会社の新規事業やこれからビジネスをスタートするベンチャー企業に好評です。

なるほど。特徴はどんなところにありますか?

長谷川:特徴としてはAIを用いた不正検知システムで独自アルゴリズムで不正を事前に検知し、事業者に とってのリスクである、クレジットカード不正利用によるチャージバックを防止することができます。

また、グローバルサービスとして日本から海外、海外から日本に進出する事業者にワンストップで同様の機能を提供しています。

同じシステム、同じオペレーションで海外の決済も対応できるために海外展開時のスピードを早めることができます。サポートにおいても、日本語はもちろん、英語、タイ語、インドネシア語、フランス語、ポルトガル語、中国語、韓国語と多くの言語に対応しています。 現在は日本とタイでサービスを提供しております。

2016年内にシンガポール、インドネシア、マレーシアでもサービスを開始する予定です。

What is Omise Payment ?

Mr.Hasegawa:Omise is an online payment platform that allows both private individuals and businesses to securely accept payments over the internet. By integrating, merchants have access to full suite payment APIs complete with robust security & fraud protection models, multilingual support — the backend banking infrastructure required to run online payments that ultimately helps businesses grow.

With Omise, partnering merchants can easily integrate and start accepting payments on both mobile and web without the hassle of registering and maintaining a merchant account. Omise’s features, interfaces and abstractions handles everything payments from securely collecting and processing cards, issuing refunds, enabling one-click checkouts to automating payouts.

Service is currently available in Thailand and Japan, and coming very soon to Singapore, Indonesia and Malaysia.
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今月に大規模資金調達をされましたが、今後どの様な戦略をとっていくのでしょうか?

大きく2つあります。それは、「国際展開」と「プロダクト開発」です。

Omiseの強みである事業者にとっての海外展開の容易さをさらに強めるために、これからも各国やグローバルで、戦略的パートナーシップを各企業と結び国際展開における機会を取り入れていきます。

プロダクト開発においては既存の決済のみならず、売上向上のためのプロダクト開発やクライアント企業の要望にこたえていきます。

この点においては国ごとに異なるクレジットカード以外の主要決済手段の提供に関しての要望も非常に大きいために開発を進めていきます。これらの事業拡大を促進していくために今回の資金調達で経営陣の強化を行いました。

CyberSource社の初期立ち上げメンバーとして不正検知を担当し、その後VISA Asia Pacificでシニアバイスプレジデントとして活躍したMichael Bradley氏が取締役CCO(最高コマーシャル責任者)に、VISA CyberSource Asia Pacificで加盟店向けソリューションと戦略をプロダクトヘッドとして率いてきたSanjeev Kumar氏が取締役CPO(最高プロダクト責任者)に、バークレイズ証券を経てGroupon 社でAsia Pacific地域における財務責任者を担当し、10年以上の法律と金融業界での経験を持つLuke Cheng氏がCFO(最高財務責任者)に就任しました。

さらに、ボードアドバイザリーメンバーとしてVISAの加盟店サービス部門の責任者を努め、同社において20年以上のキャリア を持つJune Seah氏を迎えいれました。

What is Omise’s strategy after series B?

Mr.Hasegawa:Going forward, we will continue to build synergy with our strategic partners across the region. To assist in our expansion and to navigate the company through the challenges and myriad opportunities, we had recently welcomed new members to our advisory board and team. Joining the board are Ms. June Seah, holding a 20 year career with Visa, most recently as executive in its merchant services organization and Mr. Michael Bradley, who led CyberSource Asia Pacific for Visa.

In addition to his advisory role, he is also appointed as Omise’s Chief Commercial Officer. We also welcomed a couple more senior members, Mr. Sanjeev Kumar, most recently led merchant solutions & strategy for Visa CyberSource in Asia Pacific serves as Chief Product Officer and Mr. Luke Cheng, with over a decade of legal and finance experience, most recently leading Groupon’s APAC region serves as Chief Financial Officer.
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東南アジアで事業拡大を行う上でのメリット・デメリットはどのようにお考えですか?

長谷川:東南アジア市場はまだ成熟しておらず、多くのビジネスチャンスに恵まれています。特にEC領域の市場サイズは巨大で、これから大きく伸びる可能性を秘めています。

この市場においてインターネットや携帯電話の普及率は日本に比べるとまだ初期段階ですが、年々高まっておりオンラインで買い物する機会も増えてきています。しかし、企業側のEC化率はまだ低く消費者がオンライン決済の利便性を完全に享受できるようにはまだ時間がかかります。企業側のEC化のスピードが弊社の事業拡大にも影響してきます。

What are the advantages and disadvantages of expanding to Southeast Asia?

Mr.Hasegawa:Southeast Asia’s market is still not saturated. However, it’s a very attractive region for businesses especially ones that involve with the e-commerce sector since the market size is huge and there is high potential for growth.

In terms of internet and mobile penetration in the region, we see that consumers have quickly adapted its behaviour to take advantage of new opportunities available in purchasing online, however it’s still quite at an early stage. The challenge is also that much of the retail market is still not online and consumers in the region are still quite far back when it comes to online payments.

将来展望を教えて下さい。

長谷川:Omiseは当初Eコマースプラットフォームとしてタイで事業を開始しました。優秀なチームメンバーを採用し、プロダクトも作り上げたところでECに必要な決済の導入で壁にぶつかりました。

従来型の決済システムは導入までの開発が複雑で実際に事業をスタートするまでに長い時間を要するようなものばかりでした。これは私たちだけの課題ではなく、オンライン事業者全ての課題であると考え、Eコマースプラットフォーム事業を取りやめて”Online Payment for Everyone”を企業アイデンティティとして誰でも簡単に導入できるオンライン決済サービスを作りあげました。 これら決済における課題を解決するために現在はサービス提供国の拡大に重点をおいており、今年度中にインドネシア、シンガポール、マレーシアでサービスを提供する予定です。

2018年度にはアジア太平洋地域全域に私たちのサービスをワンストップで提供することを計画しております。長期的目標としては現在のような決済のサービスプロバイダーではなく、決済プラットフォームになることを考えています。私たちの顧客が海外展開や追加機能、別の決済手段が必要になった時に彼らが他のサービスを頼ることなくOmise Paymentによって対応できるような総合的なサービスです。

事業者のビジネスは様々で必要となってくる機能や要件も事業者によって異なります。わたしたちはあらゆる決済に対する要望に応え、課題を解決する決済プラットフォームを目指しています。

What is our vision?

Mr.Hasegawa:When we first started Omise we were building an e-commerce platform. We had a great team, with great ideas working on building a great product. But when it came to monetisation/revenue execution, we hit a wall and our project came to a pause. We simply could not find a payment provider which could offer us with the decent tools that we needed to power our platform. We don’t want this same thing to happen to anyone else. Businesses with great ideas deserve to grow and prosper.

So as we shifted to building a payment gateway, we kept our main objective which is “online payment for everyone” close at heart.

Our near term priority is for regional expansion. By the end of this year we project to be in full operational in Indonesia, Singapore and Malaysia, and by the end of 2018, we plan to be available throughout the Asia Pacific region.

Ultimately, we will shift from being a payments service provider to being a payment platform. What we are currently providing our clients is payments as a service. When they integrate, they get the full features we have to offer. However, each business is unique and not everybody will require identical features. So why not let them choose what they need? Shifting to a payment platform would mean that we will be offering payment features to businesses.
Jun_and_Donnie (CEO+COO)

(取材協力:Omise Payment/創業者 長谷川 潤
(編集:創業手帳編集部)

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