法人とは?個人事業との違いや、向いているケースを解説します!
向いているケースを学んで、適切な開業を
(2016/05/17更新)
開業する時にまず決めなければならないのが、個人事業と法人設立のどちらにするか?ということです。そこで、個人事業と法人設立のメリット・デメリットと、個人事業に向いているケースについて専門家が詳しく解説していきます。
この記事では個人事業をメインに解説していますが、冊子版の創業手帳(無料)では、法人に必要な情報をまとめています。法人のメリットも詳しく知りたいならぜひ手にとってみてください。(創業手帳編集部)
この記事の目次
個人と法人の開業の違いは?
そもそも法人って?
法人とは、自然人以外で権利・義務の主体として認められるものを言う。法は、法人とするのが適当であるような実体に対して法人格(権利能力)を付与する。どのような実体に対して法人格が付与されるのかは法政策によるが、現在の法人制度でそのような実体の基礎とされるのが人の集団(社団)または財産(財団)である。(民法まとめより引用)
法人とはこのような位置づけがなされています。
開業の手続、会計・税務、事業運営の面からみた法人・個人
続いて個人事業と法人設立の違いについてみていきます。
まず、開業の手続、会計・税務、事業運営の面からみていきましょう。ここでの法人は株式会社を想定しています。
項目 |
個人事業 |
法人設立 |
|
開業 |
登記 |
不要 |
必要 |
開業日(設立日) |
自由 |
登記申請日 |
|
定款 |
なし |
あり |
|
税務署・都道府県税事務所への届出 |
必要 |
必要 |
|
許認可事業の届出 |
必要 |
必要 |
|
コスト |
ゼロ |
約25万円~ |
|
会計・税務 |
決算期 |
12月 |
自由に設定できる |
主な税目 |
所得税・住民税・個人事業税・消費税 |
法人税・法人住民税・法人事業税・消費税 |
|
住民税均等割 |
なし |
あり |
|
最高税率 |
高い(所得税) |
低い(法人税) |
|
同居親族への給与 |
青色事業専従者に限定 |
制限なし |
|
交際費の損金算入 |
制限なし |
制限あり |
|
受取配当の益金不算入 |
なし |
あり |
|
事業主への給与・給与所得控除 |
なし |
あり |
|
事業主への退職金の損金算入 |
不可 |
可能 |
|
事業承継・相続 |
煩雑 |
容易 |
|
青色申告制度 |
あり |
あり |
|
繰越欠損金の繰越期間(青色申告) |
3年 |
9年 |
|
青色申告特別控除 |
あり |
なし |
|
社会保険 |
任意加入(従業員5人以上は要加入) |
強制加入 |
|
受取配当金の益金不算入制度 |
なし |
あり |
|
消費税の基準期間が1年未満の場合 |
そのまま |
1年ベースに換算 |
|
税務調査 |
少ない |
多い |
|
事業・運営 |
名称 |
屋号 |
商号 |
機関設計 |
不要(自由) |
必要 |
|
社会的信用 |
低い |
高い |
|
採用 |
不利 |
有利 |
|
責任 |
無限責任 |
出資額を限度とした有限責任 |
|
事業主(代表者)の変更 |
不可(事業承継を除く) |
可能 |
|
資金調達 |
不利(個人の信用力が上限) |
有利 |
開業コスト、開業後の維持コストは個人事業が有利
開業にかかるコストや事務手続の簡便さについては、個人事業による開業の方が有利です。
法人の場合は登記登録や定款の作成などが必要です。定款に貼る収入印紙代(電子申請の場合は不要)、定款の認証手数料、定款の謄本手数料、登記の際の登録免許税等合わせて最低でも約25万円かかり、別途専門家へ相談することで10万円前後の報酬が発生します。
また、法人の場合、設立後に赤字の場合でも税金(均等割)がかかります。
また、法人は社会保険への加入が強制されるなど、開業後の維持コストについても個人事業の方が有利です。
法人では、社会保険のほかにも加入しなければならない公的保険制度があります。たしかに維持コストはかかるのですが、公的保険制度のおかげで生活に安心感が生まれるという面もあります。冊子版の創業手帳では、加入が必要な公的保険制度についてわかりやすくまとめています。(創業手帳編集部)
社会的信用の面では法人が有利
世間一般では、個人事業よりも法人の方が社会的信用があると見られる傾向にあります。
法人設立の場合、開業時はもちろん、設立後に赤字であっても税金がかかってくるなど維持コストがかかり、そういったコストを負担する分、事業への本気度が高いと見られるからです。
また個人事業の場合、事業に無関係の経費が混在しやすく、さらには事業主がその気になればいつでも事業を止められます。
こうした点も法人の方が信頼性が高いと見られる要因となっています。
そのため、社会的信用に伴う資金調達や採用、取引先の獲得など、事業展開・拡大に際しては法人の方が有利です。
とは言え、とくに設立当初の小さな会社の場合、実質的に個人事業と大きな違いはありません。
実際、借入れなどの取引では、社長(多くの場合創業者と同一)個人の連帯保証を求められることが非常に多いです。
創業期に使える資金調達方法については、資金調達手帳(無料)が詳しく解説しています。融資にあたって信用を肩代わりしてくれる信用保証協会についても詳しく説明しています。まだ資金力・信用に乏しい個人事業が融資を受けるにあたって、力になってくれます。(創業手帳編集部)
個人事業が向いているケースとは?
では個人事業による開業が向いているのはどのようなケースでしょうか。
まず、とにかくコストをかけずにスタートしたいといったケースです。
また、とりあえずちょっと始めてみたい、という場合にも向いているでしょう。
そんな中途半端な姿勢じゃ成功しないと言われそうですが、とりあえずスタートしてみる、そんなスタンスがスピード勝負のこの時代には有効な場合もあります。
また、代表者そのものを商品とする場合、個人事業の方が分かりやすいでしょう。
もちろん法人でも一人社長、一人株主である場合、実質的に同じことですが、法的に法人と個人は別物ですので、個人事業の方がより「個人ブランド」を反映しやすい面があると言えます。
事業開始後に個人事業から法人へ移行できる?
コストのかからない個人事業でスタートし、事業開始後に法人に移行することを「法人成り」といいます。
かつて最低資本金が1,000万円(有限会社は300万円)だった時代は、法人成りを行う意義も大きかったのですが、現在は法人の設立コストが著しく下がっており、法人成りを選択する必然性は少なくなっています。
また法人成りに際しては、契約の引き継ぎや許認可の取り直しなど、さまざまな事務手続が発生しますので、後々法人化を予定しているのであれば、はじめから法人設立を選択した方よいでしょう。
個人・法人での会社設立にはさまざまなメリット・デメリットがあります。今後の事業展開を考慮して、最適な方法を選択しましょう。
- この記事のポイントをチェック!
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- 開業にかかるコストや事務手続きの簡便さについては、個人で開業した方が有利
- 開業後の維持コストにおいても個人で開業したほうが有利
- 社会的信用度は法人として開業した方が高いので、事業展開に関しては法人が有利
法人の設立も考えているのならば、ぜひ冊子版の創業手帳を読んでください。法人の設立に必要なノウハウをわかりやすく解説しています。個人事業のほうが設立のハードルは低いですが、法人には個人事業にはないメリットがたくさんあります。冊子版の創業手帳は設立コストと比較検討するのに役立つはずです。(創業手帳編集部)
(監修:公認会計士、税理士 廣野 清志(ひろの きよし) )
(編集:創業手帳編集部)