一般社団法人の設立にかかる費用とは?流れや自分で設立する際の注意点を解説
一般社団法人なら比較的簡単に費用を抑えて法人化が可能

「会社を設立したいけれど、株式会社のように資本金や登記費用が高くて不安」という人におすすめなのが、一般社団法人です。
一般社団法人は、営利を目的としない団体でも法人格を取得できる仕組みで、設立時のハードルが低いことが特徴です。
実は、設立費用も株式会社や合同会社よりも抑えられるケースが多く、個人や小規模グループでも比較的簡単に法人化を実現できます。
この記事では、一般社団法人を設立する際にかかる費用の内訳や、費用を抑えるポイントについて詳しく解説します。
一般社団法人の設立に興味がある人は、ぜひ参考にしてください。
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この記事の目次
一般社団法人とは

一般社団法人とは、「一般社団法人及び一般財団法人に関する法律」に基づいて設立される非営利の法人です。
法人は、「営利法人」と「非営利法人」の2つに分けることができます。
営利法人は、ビジネスによって得た利益を社員や株主などに分配することを目的に活動する法人で、主に株式会社や合同会社などが該当します。
非営利法人は定款などで利益分配を目的としていないことが徹底されている法人で、収益が出たとしても社員に利益を分配できません。
具体的には以下の活動に対して一般社団法人が活用されています。
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- 地域の活性化や子育て・高齢者支援などの社会貢献につながる活動
- 各業界の団体やスポーツクラブ、研究会などの組織的活動
- NPO法人(特定非営利活動法人)よりも柔軟な運営が必要となる活動 など
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一般社団法人の設立にかかる費用

一般社団法人の設立を考えた際に、どれくらいの費用がかかるのか気になる人も多いかもしれません。
一般社団法人の設立にかかる費用の相場は、約11万円~20万円です。ここで、費用相場の内訳について詳しく紹介します。
定款の認証手数料
一般社団法人を設立する際に作成する定款は、作成後に公証役場で認証を受ける必要があります。
この公証役場で認証を受けるには、定款認証手数料がかかります。定款手数料は約5万円です。
ただし、公証役場では謄本を作成する金額を追加で支払うことになります。
謄本の作成代が約2,000~3,000円になるため、公証役場で定款の認証を受ける際には約53,000円を持参するようにしてください。
登録免許税
一般社団法人を設立する準備が整ったら、法務局で登記申請を受けることになります。この時に納める登録免許税は、一般社団法人だと一律6万円です。
株式会社の場合は資本金額に1000分の7を乗じた金額で、15万円以下の場合は15万円に統一されます。
つまり、最低でも15万円は支払うことになるため、一般社団法人のほうが登録免許税はかからないといえます。
司法書士への報酬
一般社団法人の設立を丁寧かつスピーディに行いたい場合は、司法書士に相談・依頼するのがおすすめです。
司法書士に依頼することで、設立にかかる手間を削減でき、事業の準備に時間を使えるようになります。その代わり、司法書士への報酬も設立費用に含まれます。
司法書士の料金体系や報酬額などは事務所によって異なりますが、一般社団法人の設立代行の場合、約10万円に設定しているところが多いです。
その他費用
定款の認証手数料や登録免許税、司法書士への報酬だけでなく、そのほかにも細かい費用が積み重なってきます。
例えば、印鑑証明書を取得する際にかかる費用が約900円、登記簿謄本を取得する際にかかる費用が約1,200円です。
法務局に登録する際に、一般社団法人の印鑑(実印)を準備しておく必要があるため、法人印鑑を作成するための代金として5,000円前後がかかってきます。
このように、そのほかの費用もよく確認しておかないと見逃す可能性が高いので注意してください。
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一般社団法人の設立費用を抑える5つの方法

一般社団法人の設立費用は約11万円~20万円前後はかかることになりますが、さらに設立費用を抑えられる方法もあります。
ここでは、一般社団法人の設立費用を抑える5つの方法の紹介です。
1.電子定款で印紙代4万円を節約する
一般社団法人は設立時に定款を作成しますが、紙媒体で作成した場合は定款に4万円分の収入印紙を貼り付けておく必要があります。
しかし、紙ではなく電子定款で作成すれば、収入印紙が不要となり4万円分を節約することが可能です。
ただし、電子定款を自分で作成する際にはICカードリーダライタやAdobe Acrobatなどのソフトウェアが求められます。
これらを準備するのに数万円程度かかる可能性もあり、紙定款と費用が変わらなくなってしまうこともあるかもしれません。
行政書士に電子認証を依頼することで、自分でICカードリーダライタやAdobe Acrobatなどを準備しなくても電子定款を作成してもらうことができます。
行政書士への依頼費用は数万円前後となりますが、準備にかかる費用などと比較してどちらのほうがコストを抑えられるか比較してみてください。
2.司法書士や行政書士に依頼する範囲を絞る
前述したように、一般社団法人の設立を司法書士や行政書士などに依頼した場合は約10万円の報酬を支払うことになります。
士業への報酬額を少しでも抑えたい場合は、依頼する範囲を絞るのがおすすめです。
例えば司法書士は一般社団法人の設立において、定款認証から登記申請に至るまで、手続きの代行を一貫して対応できるという強みがあります。
すべての手続きを任せてしまうとその分報酬額も高くなってしまうため、部分的に依頼するのがおすすめです。
例えば定款認証の部分だけ、登記申請の部分だけというように依頼することで、報酬を半額まで抑えられるケースもあります。
3.ひな形・無料テンプレートを活用する
なるべく費用をかけずに一般社団法人の設立に必要な書類を作成したい場合は、ひな形や無料テンプレートを活用するのがおすすめです。
例えば法務局や各士業サイトなどに、定款や登記書類のテンプレートが公開されています。
また、「弥生のかんたん会社設立」を活用すれば、ステップに沿って必要情報を入力するだけで書類が自動生成され、作成にかかる手間とコストを大幅に削減できます。
サービス利用料は0円で、さらに電子定款を作成する際にかかる約5,000円の費用も弥生が負担してくれるので安心です。
4.自分で手続きを行う
一般社団法人の設立に必要な書類作成から定款認証、登記申請まで、すべて自分ひとりで手続きを進めることも可能です。
すべて自分ひとりで行うことができれば、司法書士や行政書士に依頼しなくても済むため、10万円前後の報酬も節約できます。
ただし、自分だけで設立しようとすると複雑な手続きや書類の不備などが影響し、手続きにかかる時間が延びてしまう可能性もあります。
ミスをなくして手続きにかかる時間が延びないように、法務局の相談窓口やオンライン解説を活用してみてください。
法務局の相談窓口は平日(月~金)の9時~17時まで対応しています。
土日・祝日と年末年始の期間(12月29日~1月3日)は対応していないので注意してください。
5.法人印や書類作成にかかるコストを見直す
一般社団法人の設立に必要な印鑑の作成費用を抑えるなら、インターネットでの注文がおすすめです。
インターネットだと2,000円~3,000円前後で法人印鑑を作成してもらうこともできます。
また、インターネットでの注文だと店舗で注文するより短期間で受け取れる可能性が高いです。
コストを抑えつつ、なるべく早く法人印鑑を作成したい場合はインターネットでの注文を検討してみてください。
また、改めて一般社団法人の設立に必要な書類は、それぞれどのくらい費用がかかるのかコストを見直しておくことも大切です。
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一般社団法人を設立する流れ

一般社団法人を設立するには、大まかに以下の流れで進めていくことになります。各ステップについて詳しく説明していきます。
1.社員を2名以上集める
一般社団法人を設立するためには、役員として理事が1名、社員が2名以上所属していることが必要です。
一般社団法人だと社員と理事を兼任できるので、最低でも設立するためには2名以上が必要になります。
個人だけでなく法人も社員になることが可能です。ただし、法人の従たる事務所の性質を有した支店・支部・営業所は、一般社団法人の社員になれないので注意してください。
なお、ここで紹介している「社員」は、従業員やスタッフとは異なり、意思決定機関の社員総会で議決権を持ち、運営に影響してくる重要な役割を指します。
2.定款を作成する
社員が集まったら、次に定款を作成してください。
定款には、必ず記載しなくてはならない「絶対的記載事項」や記載しないと効力が生じない「相対的記載事項」、定款に盛り込まなくても問題ない「任意的記載事項」があります。
特に絶対的記載事項は明記されていないと定款が無効になり、一般社団法人も設立できなくなるので注意が必要です。
一般社団法人が定款を作成する際に盛り込みたい、絶対的記載事項は以下のとおりです。
-
- 目的
- 法人の名称
- 主たる事務所の所在地
- 設立時社員の氏名または名称および住所
- 社員の資格の得喪に関する規定(社員となる資格や入退社の手続き、退社事由など)
- 公告の方法(官報への掲載、電子公告など)
- 事業年度(決算月)
3.定款の認証を受ける
定款を作成したら、事務所の所在地と同じ都道府県にある公証役場で定款認証を受けます。
公証役場で定款認証を受けていないと、法務局に持ち込んでも一般社団法人を設立できないので、まずは定款認証を受けるようにしてください。
公証役場を訪れる際には、基本的に設立時社員全員で向かうことになります。
人数が多く、スケジュールを合わせるのが難しい場合は代表者をひとり選定し、その代表者に手続きを委任してもらうことも可能です。
この委任は司法書士や行政書士などに任せることもできます。
4.設立時の役員を選任する
一般社団法人を運営する上で必要な、設立時理事を選任します。設立時社員は設立時理事を指定することが可能です。
一般社団法人における設立時理事は、業務の執行と代表者としての権限を持てるようになります。
理事の数は最低1名以上になりますが、設立後に理事会を設置する際には最低でも3名以上は必要です。
設立時理事は選任されたら、定款や法律に違反している手続きなどはないか確認する必要があります。
この確認を怠ってしまうと将来的に問題が浮上し、法人の責任が問われてしまう可能性もあるため、慎重に確認するようにしてください。
5.代表理事を選任する
設立時理事を選任できたら、その中から代表理事を決めます。定款で事前に定めていなかった場合は、理事の互選で代表者を決めることになります。
代表に選任された理事は、登記申請や印鑑登録などを行ってください。
6.登記申請を行う
代表理事は法定期限までに登記申請を行わなくてはなりません。
一般社団法人の法定期限は、設立時理事の調査が終了した日、もしくは設立時社員が定めた日付のいずれか遅い日から2週間以内になります。
法定期限を過ぎてしまうと、代表者に対して100万円以下の過料に処される可能性があるため、必ず法定期限内に登記申請を行うようにしてください。
7.銀行口座の開設や必要な届け出を行う
銀行で法人口座の開設手続きや、税金・社会保険など必要な届け出を行います。
法人口座の開設は各銀行で必要書類なども異なるので、事前にホームページや窓口などで確認してください。
また、税務署や都道府県税事務所などで税金に関する届け出があれば提出します。
ほかにも、社会保険の加入手続きや、従業員を雇用する場合は年金事務所や労働基準監督署、ハローワークに届け出が必要となる場合もあります。
これらの手続きには登記事項証明書(登記簿謄本)や印鑑証明書が必要となってくるため、あらかじめ何部必要か確認しておき、複数枚まとめて取得しておくと良いでしょう。
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一般社団法人を設立する際に必要な書類

一般社団法人を設立するためには、手続きによって様々な書類を準備しておく必要があります。
ここでは、定款認証と登記申請に必要な書類について、それぞれ紹介していきます。
定款認証で必要な書類
定款認証に必要な書類は、紙定款と電子定款で若干異なります。
- 【紙定款の認証に必要な書類】
-
- 定款3通
- 発起人全員の印鑑証明書1通ずつ
- 発起人全員の実印
- 実質的支配者となるべき者の申告書
- 委任状(代理人が認証を行う場合)
- 身分証明書
- 法人の履歴時効全部証明書(法人社員がいる場合)
- 【電子定款の認証に必要な書類】
-
- 定款3通
- 発起人全員の印鑑証明書1通ずつ
- 実質的支配者となるべき者の申告書
- 委任状
- 身分証明書
- 法人の履歴時効全部証明書(法人社員がいる場合)
紙定款では発起人全員の印鑑証明書だけでなく、実印も必要でしたが、電子定款だと実印が不要です。
登記申請で必要な書類
法務局で登記申請を行う場合、以下の書類が必要になります。
-
- 定款
- 委任状(代理人が申請を行う場合)
- 設立登記申請書
- 登記事項を記録したCD-R
- 役員の就任承諾書
- 印鑑証明書
- 本人確認書類
- 設立時代表理事選定書(定款で設立時代表理事を選定していない場合)
- 設立時社員の決議書(定款で主たる事務所の所在地や設立時に理事・監事を決めていなかった場合)
- 印鑑届書
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まとめ・スムーズな設立のためには準備が不可欠
一般社団法人は、比較的低コストで設立できる法人形態ですが、定款作成や登記申請などの手続きには一定の知識と準備が必要です。
事前に費用の内訳を把握し、必要書類や印鑑などを整えておくことで、スムーズに法人化を進められます。
専門家への依頼も視野に入れながら、自分たちの目的に合った形で設立準備を進めてください。
創業手帳(冊子版)では、一般社団法人も含む非営利法人の運営のサポートにつながる情報も掲載しています。今後、一般社団法人の設立を検討されている人も、ぜひ創業手帳をお役立てください。
(編集:創業手帳編集部)






