賞与資金を融資で調達!メリットや注意点、ポイントを解説
賞与資金のための融資を検討しよう

毎月の給与とは別に、会社の利益を従業員に還元して日々の努力に報い、モチベーションの維持やエンゲージメント向上につなげるのが賞与です。
年に1回~2回程度支給されることが一般的となっています。
しかし、資金繰りが難しいのであれば賞与を支給できません。その場合、前述したモチベーションやエンゲージメントの向上が期待できなくなってしまいます。
そんな時は、賞与資金のための融資を検討してみてください。融資を受けることに不安点を感じる人もいますが様々なメリットも存在します。
この記事では、賞与資金の融資について解説すると共に、融資を受けるメリットや依頼する際のポイント、注意点などを解説していきます。
スムーズな融資を目指すためにも参考にしてみてください。
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この記事の目次
賞与資金の融資とは?目的と基本の仕組みを解説

まずは、目的や返済期間、融資の依頼先など、賞与資金の融資に関する基本的な情報を解説していきます。賞与資金について知るために役立ててください。
そもそも賞与資金とは
賞与資金とは、企業が従業員に対して賞与を支払うための資金を指します。賞与は、「給与の○カ月分」というまとまった額を支払うのが一般的です。
そのため、企業はあらかじめ賞与に使う資金として利益を用意しなければいけません。
しかし、業績アップを図るためにも、儲けた分を他の投資に使用したり、運転資金に使ったりした場合、賞与を支払うための資金が不足してしまいます。
賞与を支払うのは企業の義務ではありません。そのため、業績によっては従業員に対して賞与を支給しなくても問題はないのです。
賞与がないとなれば、モチベーションの維持がしにくくなり、エンゲージメントの向上も狙えません。
その結果、生産性に影響を与える可能性もあるため、金融機関に対して融資の依頼を検討する企業は多く存在します。
賞与資金の融資の返済は6カ月が基本
賞与資金を融資することに対してリスクを感じる人もいます。しかし、従業員の給与や賞与を借入れによって賄うのは決して珍しいことではありません。
また、中には手元にお金があったとしても、あえて金融機関からの融資を受けて賞与を支払っている企業も存在します。
一般的に、賞与資金の融資は6カ月以内の返済が基本です。これは、賞与の時期が関係しています。
多くの場合、賞与は夏と冬の年に2回支給されます。そのことから、次の賞与を支払うまでには完済するよう取り決める金融機関が多いです。
なお、役員賞与に関しては賞与資金には該当せず、決算資金としての融資となるため覚えておきましょう。
どこで借りられる?主な融資元と特徴
賞与資金の融資は、様々な融資元があります。それぞれ特徴があり、メリット・デメリットがあるので、理解してから自社に合う融資先を選んでみてください。
銀行
賞与資金を含めた運転資金の調達方法としては一般的と言えます。プロパー融資や信用保証協会による保証付融資があることが特徴です。
利息は比較的低く、長期返済も可能となっています。しかし、審査が厳しく、経営状況によって限度額が異なる点に注意してください。
信用金庫
地域繁栄のために企業をサポートするのが信用機関です。そのため、中小企業を中心とした融資を実施しています。
会員や地域社会の利益を重要視する傾向にあるため、地方銀行と比較すると審査のハードルが低い傾向にあります。
ただし、銀行よりも金利が高いケースがある点がデメリットです。
日本政策金融公庫
国が100%出資をしている金融機関が日本政策金融公庫です。使用目的に応じて、幅広い融資制度を用意しています。
商品によって無担保・無利息での融資も可能で、金利も低い点がメリットです。
ただし、申請書類の準備に手間がかかるため、迅速に資金調達をしたい場合には向いていない融資と言えます。
ノンバンク
預金を扱わず、貸付のみを行う機関がノンバンクです。ビジネスローンや消費者金融が該当します。
最短で即日に融資を受けられるので、できるだけ早く融資を受けたい場合に便利ですが、金利が高いデメリットがあります。
そのため、融資額が大きくなればなるほど負担も多くなる点に注意してください。
賞与資金の融資を受けるメリット

賞与資金を借りると、以下のようなメリットがあります。それぞれを詳しく解説していきます。
資金繰りを安定させ、運転資金に余裕を持てる
手元にあるお金で従業員に対して賞与を支払えば一度に多額の資金が出ていくため、資金繰りが不安定になってしまいます。
加えて、賞与を支給するタイミングで資金が確保できているとは限りません。
そのため、融資で賄うことができれば返済は毎月均等返済になるため、預金残高の大きな増減を均等にすることが可能です。
その結果、資金繰りの安定化を目指せるでしょう。
場合によっては、想定外の支出が重なるケースや、賞与を支給した後に資金繰りが苦しくなってきたといったケースも考えられます。
不安要素があれば融資を利用したほうが、素早く資金を確保できて経営難に陥ることを防止できます。
金融機関や従業員からの信頼を維持できる
基本的に賞与を支給するのは業績が良いからです。業績が悪ければ賞与の支給を見合わせる他、支給額が大幅に減額されます。
そのため、金融機関に対して賞与融資の取引をすれば、業績好調をアピールできます。プラスに評価されるため、金融機関からの信頼を得やすいでしょう。
また、従業員からの信頼維持効果も期待できます。
賞与の支払いがない、遅延するといった行動は、従業員のやる気を著しく損なう原因となり、最悪の場合は離職や労働トラブルに発展する危険性があります。
生産性が悪くなれば利益にも影響を与えてしまうため、様々な問題を防ぐためにも賞与の支給は重要です。
金融機関からの借入れを行い、賞与を支給できれば、従業員の信頼を損なわずに済むため大きな利点となります。
次の融資(プロパー融資)につながりやすい
金融機関としては、はじめて融資をする相手には融資を行う相手に対しては慎重になりがちです。相手に対して知らない部分が多いため、審査もより厳しくなります。
しかし、一度でも融資をしたことがある相手には、次の融資がしやすくなります。これは、「貸した実績がある」「返済された実績がある」という信用があるためです。
回収不能リスクを回避できる保証協会付融資も存在しますが、企業としては業績悪化といった場合に備えて温存しておいたほうが良く、保証料も多くかかってしまいます。
そのため、企業としてはプロパー融資が相談しやすい融資と言えます。
賞与融資は借りやすい融資なので、実績づくりには最適です。今後付き合いを始めたい金融機関があれば、賞与資金の依頼からのスタートを検討してみてください。
賞与資金の融資を依頼する際のポイント

金融機関に対して賞与資金の融資を依頼する際には、以下のポイントを意識することが大切です。それぞれ詳しく解説していきます。
賞与額を明確化させる
金融機関に賞与資金の融資を申し込む際、必要な賞与額を明確化させてから相談することが大切です。
-
- 賞与支給対象の人数
- 一人あたりの平均支給額
上記2つが必須項目となり、賞与額の総額は以下のような式で表すことが可能です。
一人あたりの平均支給額×支給対象の従業員=賞与資金の所要資金
必要な額を曖昧に伝えたり、説明がうまくできなかったりすれば融資に影響を与えてしまいます。
例えば、例年であれば1回あたりの賞与総支給額が1,000万円程度だった企業が、今回のみ2,500万円ほどの融資の依頼があれば、過去の実績と大きく違うため貸す側の金融機関は不審に感じてしまいます。
業績が良好といった納得できる理由があれば問題ありません。
しかし、過去と業績が変わらない状態で賞与の支給額のみ変われば「他の用途に使われる」と思われても仕方がないでしょう。
融資を受けやすくするためにも、賞与額を明確にしてから金融機関に対して相談してください。
過去の賞与の実績を説明する
融資を依頼する際には、過去の賞与の実績を説明することも大切です。具体的には、直近2年程度の支給額の実績を説明します。
金融機関が融資を受ける際、審査において着目する点の1つに過去との実績比較が挙げられます。基本的に、賞与の支給額は過去の実績と大きくかけ離れることはありません。
従業員一人ひとりに対する支給額は、その人の能力や実績によって変動するケースもありますが、総支給額については大きく乖離するケースは少ないです。
そのため、金融機関としては過去との比較で妥当な水準であるかを確認するため、今年の融資も例年通りだと伝えるためにも過去の実績をわかりやすく説明しましょう。
過去3年の売上や利益を説明する
融資を依頼する際には、過去3年程度の売上や利益についても説明してください。
例えば、売上や利益が年々下がっているにも関わらず賞与額が上昇していれば、返済能力に不安があるため銀行としては融資を提供しにくいです。
金融機関は賞与金額が妥当であるかを気にしているため、額に納得してもらうためにも、これまでの売上や利益について詳しく説明しましょう。
賞与資金の融資を受ける際の注意点

最後に、賞与資金の融資を受ける際に注意すべき点を解説していきます。
これらのポイントを意識しないまま依頼をすれば、融資を受けられない可能性もあります。賞与資金をうまく引き出すためにも、ぜひ参考にしてください。
依頼する銀行は変えない
賞与信金の融資を依頼する金融機関は、毎回変えないことが大切です。賞与は、企業が支給を打ち切らない限り毎年発生します。
毎年ある支出なので、資金の調達先を同じ金融機関に決めておけば、貸す側も会社の資金需要を把握しやすくなります。
賞与の時期になれば担当する銀行員も「今年も○○社から賞与資金の融資の申し込みがある」と予測もしやすいでしょう。
予想通りに依頼があれば、銀行側も例年通りの方針として融資がしやすいため、審査も通りやすくなります。
前述したように、はじめての融資となれば銀行側は融資に慎重になるため、借入れをスムーズに行うためにも、毎回同じ銀行に依頼するようにしてください。
給与の振込先と違う金融機関に依頼しない
賞与資金を依頼する際には、給与の振込先と異なる金融機関に依頼しないようにしてください。そのため、多くの場合ではメインバンクに依頼することになります。
他の金融機関に依頼したことがわかれば、メインバンクからの印象が悪くなってしまいます。
今後の関係性にも影響を与える恐れがあるため、給与の振込先と同じ金融機関に融資を依頼するようにしましょう。
賞与資金の増額に注意する
前述したように、借入れを依頼する賞与資金額は「毎年同程度」であることがポイントです。
例年通りの方針という答えを引き出すことにつながるため、交渉を安易に進められます。
例年であれば総額1,500万円ほどの融資が今年のみ3,000万円、3,500万円と大きく差があれば、金融機関は「賞与の支給ではなく他の要件で使う可能性がある」と判断してしまうため、融資の審査に落ちる可能性が高くなります。
業績が好調、売上が良いといった理由があれば必ず説明するようにしてください。
「例年通りの判断で問題ない」と考える範囲であれば多少の金額差があっても問題はありません。
特定の人物のみに偏った支給をしない
営業会社に多い注意点として、特定の人物のみに偏った支給をしない点が挙げられます。
実績を多く残している営業マンに対して賞与を高く設定したいと考える企業も多いかもしれません。
しかし、賞与資金の融資を金融機関に打診する際には、「誰にどの程度の額を支払うのか」という資料を求められるケースも多いです。
その際に、特定の人物のみに偏った額を支給していれば、金融機関側は不審に感じてしまうため、融資を断られる可能性があります。
偏った支給になってしまう場合には、明確な理由を加えて説明する必要があります。
まとめ・注意点やポイントを理解してスムーズな賞与資金の融資を目指そう
賞与を支給するための資金は、手元にある資金ではなく融資を活用して支給することができます。
返済は6カ月が基本となっており、銀行や公庫、信用金庫などに依頼することが可能です。
融資を依頼した結果、運転資金に余裕ができ、金融機関や従業員からの信頼を維持できるメリットがあります。
しかし、注意点も存在します。今回紹介したポイントを意識しながら、メインバンクに対して融資の依頼を検討してみてください。
賞与は従業員の信頼と生産性に直結する“経営の投資”。だからこそ、資金繰りとあわせて「適切な融資活用」を知っておくことが重要です。
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(編集:創業手帳編集部)





