スモールビジネス支援を受けよう!各自治体が提供する支援制度を解説
スモールビジネス支援とは?地方自治体が注目する理由
小規模で経費を抑えたスモールビジネスが広がりを見せています。多くの地方自治体がスモールビジネスに注目し、特色がある支援策を打ち出しました。
地方自治体でスモールビジネスに注目する理由としては、地方創生や人口減対策としてスモールビジネスが活用できる点が挙げられます。
スモールビジネスは起業しやすく、空き家や空き店舗、移住支援と連動しやすい活動です。
スモールビジネスを手厚く支援することによって積極的に人を呼び込む地方自治体も増えています。どういった支援があるのか知って上手に活用してください。
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この記事の目次
地方自治体のスモールビジネス支援策を比較
地方自治体のスモールビジネス支援策は、それぞれ地域によって違いがあります。ここではどういった支援策があるのか地方ごとの支援策を紹介するので比較してみてください。
【島根県】スモール・ビジネス育成支援補助金
島根県では、地域の自治機能に必要な財源を確保する目的で産業の振興に努めています。
具体的には、地元の米や野菜生産の支援は加工品の製造販売、野生鳥獣肉利活用と地域資源の付加価値化があります。
これらの商品、サービスの開発に取り組む人は、スモール・ビジネス育成支援プログラムを活用可能です。
加えて、自然環境や資源を活用して商品化等に取組み、雇用の創出につながるスモールビジネスについては、スモール・ビジネス育成支援補助金が利用できます。
これは、スモールビジネスに関わる経費について補助が受けられるものです。
新商品(サービス)の開発や販路開拓等に必要な経費、商品化に必要な設備導入、施設改修などに係る経費が対象となります。
補助額は、 1事業あたり50万円から500万円までの2分の1以内です。詳しい内容は、島根県の公式ホームページから公募要領を確認してください。
活用事例
島根県のスモールビジネス支援策は、農業の効率化や田畑を荒らす害獣の有効活用、産学官民一体のブランド米の開発・販売などがあります。
地域ブランド米を開発して高付加価値化も実施しました。
地区内で捕獲したイノシシをフランクフルトやジャーキーに製造し販売するビジネスや米を6次産業化するなど地域資源に付加価値をつけるスモールビジネスに積極的に活用されています。
島根県では、高齢化が進む地域農業の課題にも取り組んでいます。
リタイアする農家の農地の借り受けや作業受託によって、耕作放棄地の増加を抑制する取組みや地域の高齢者を雇用した作物の栽培、販売事業も実施しました。
【高知県】チャレンジショップ事業・空き店舗出店支援事業
高知県では、商業の活性化及び商業機能の維持と発展を目的として空き店舗を活用するための取組みを実施しています。
支援制度のひとつが空き店舗出店支援事業です。これは商店街等に出店すると、補助対象経費の2分の1まで補助される制度で、補助上限は100万円下限は10万円です。
さらに中山間地域に出店する場合や、空き店舗兼住宅の店舗部分と住居部分の機能分離などを行う店舗所有者への支援も実施されています。
これから開業したいと考えている人に役立つ支援策がチャレンジショップ事業です。
これは、ひとつの店舗を2~3つのお店がシェアしながら将来の開業を目指してお試しできる施設です。チャレンジショップは令和5年度には県内で12箇所開設されています。
活用事例
四万十市中心市街地にある天神橋商店街は、1990年代後半には1万人以上あった通行量が2009年には2千人を切り、空き店舗が目立つようになっていました。
そこでチャレンジショップ事業を活用して、チャレンジショップの応募者を募りチャレンジャーの育成に取組みました。
四万十市では商店街が主体的に活動し、清流四万十川、サーフィンのメッカとしとしての魅力を発信しています。さらに、移住のライフスタイルを提示して人を呼び込みました。
その結果、ミシンの修理販売店や中古楽器の修理販売店といった専門技術がある業種がそろい、商店街が多様化、構成が充実することで商店街全体の魅力が増しています。
【富山県】ワクワクチャレンジ創業支援事業
富山県では県内で起業する方を支援するためにワクワクチャレンジ創業支援事業を用意しています。
ワクワクチャレンジ創業支援事業は、これから創業する予定で一定の条件を満たす人に対象経費の2分の1以内で最大で50万円まで助成する制度です。
対象となるのは、富山市内で創業する人または創業の日から5年を経過しない人です。
支援を受けるには、事業計画書について、商工会議所又は商工会から認定を受けなければいけません。
また、補助事業終了後、3年間事業状況報告書を提出しなければいけないので、計画的に申し込んでください。
活用事例
ワクワクチャレンジ創業支援事業では、県民の創業や起業に関する機運を醸成する目的で、年齢やキャリアに関わらずワクワクするような新たな事業に取り組む人を支援しています。
そのため、応募される事業は幅広く、富山出身者による富山企業のIT支援事業や、UI ターンを加速して地域を活性化させるWEBメディア・人材紹介・人事コンサルティングなどが採択されました。
さらに、富山の食材を使ったスイーツや富山県産材を利用したカヌーなどの製造業者も採択されています。
【宮城県】みやぎ中小企業チャレンジ応援基金事業
みやぎ中小企業チャレンジ応援基金事業は、宮城県と株式会社七十七銀行が連携して農産品や人材、文化など地域資源等の活用で新商品を開発する人を支援しています。
一般型と技術志向型の2種類が用意されていて、一般形では助成対象経費の3分の2以内の助成率で限度額は200万円です。
技術型では、対象となるのは、高付加価値製品に関する研究開発と産学連携で取り組む研究開発、高度な技術を活用した研究開発に限定されます。
助成は対象経費の2分の1以内で助成限度額は300万円です。
活用事例
みやぎ中小企業チャレンジ応援基金事業で採択された助成事業は、宮城県の魅力的な産品を使用したものがたくさんあります。
マルキ遠藤株式会社による、牡鹿半島の新鮮な海藻をおしゃれにミニパック化した「YURIISO」は、東日本大震災が契機となって生まれた商品です。
工場や生産設備を失い避難生活した時にお礼に配った塩蔵わかめが評判となったことが、新しいニーズに気づくきっかけとなりました。
卸会社をBtoBの事業展開をしてきたものの小売りの経験がなかったところから、ECサイトを構築し事業の幅を広げることに成功しています。
海藻類以外にも魅力的な海産物があることを知ってもらうためにホヤやホタテを粕漬にしたシリーズやオイル付けも開発しました。
一般消費者向けの製品を開発することで、三陸産海産物のブランド化を推進し、地域経済の復興に貢献しています。
【前橋市】まちなかスモールビジネス支援補助金
まちなかスモールビジネス支援補助金は、町中にある空きスペースや公共空間を利用して、実店舗の開業に向けた市場調査目的のチャレンジ出店をする人に経費の一部を交付する施策です。
対象となる経費は、出展料や広告宣伝費、備品等のレンタルリース料などになります。
チャレンジ出店型とオーナー型に区分され、チャレンジ出店型の補助率は対象経費の3分の2以内で、上限額は5万円です。
オーナー型は、店舗の一角にチャレンジ出店スペースを新設する人、既存の出店スペースを改修する人が対象で改修工事の費用を支援します。
内装や厨房設備工事などが対象で、補助率は対象経費の3分の2以内、上限額は15万円です。
活用事例
前橋市のまちなかには、多数のチャレンジ出店スペースが用意されています。例えば、広瀬川河畔緑地や中央通り商店街のMAEBASHI BOOSTなどです。
出店料や利用条件はそれぞれ違うため、出店する人が条件に合わせて選択できます。
MAEBASHI BOOSTは、商店街道路にある休眠スペースの活用策として区画貸しをして購買施設や休憩施設が設置されたエリアです。
商店街の賑わいを生み出し、交流拠点となるようことを目指しています。土日のみ、平日のみのレンタルや車の持ち込みも可能です。
移動式販売ブースの貸し出しもしているので費用をできるだけ抑えて開業したい人に適しています。
【あわら市】創業者向けスモール・ビジネス支援事業補助金
あわら市のスモール・ビジネス支援事業補助金は、創業者に対して創業にかかる経費の一部を支援することで経済活性化を目指す制度です。
対象となる経費は、人件費や外内装工事費、備品購入費のほかリース費、広告宣伝費、法人設立に係る経費と幅広く対応しています。
補助金額は、対象経費の2分の1です。空き家や空き店舗を活用する場合は、上限150万円、それ以外は上限100万円です。
応募するには、あわら市商工会を通じてあわら市商工労働課へ申請書類を提出してください。
あわら市商工会は、金融機関とも連携していていて市の創業支援ワンストップ窓口として、経営指導員が相談に応じています。
活用事例
令和6年度の創業者向けスモール・ビジネス支援事業補助金には、飲食業の蛍やパン工房BEKERI、株式会社たねまきがあります。
株式会社たねまきは、農業従事者の支援目的として種に関連する幅広い商品、サービスを展開している会社です。
野菜や花の種子、苗や培土、肥料、農業・園芸関連資材の販売のほか、農業用ハウス・造園施工の建設の仲介まで手がけています。
株式会社たねまきでは、福井県産の種苗を全国に向けて発信したり、県産品を全国に販売する事業も行っています。
福井県の農産物の良さを全国に伝え、ブランドイメージを高める存在です。
創業手帳では、登録いただいた都道府県の補助金・助成金情報を月2回メールで配信する「補助金AI」サービスを無料で提供しています。見逃しがちな地方自治体の補助金・助成金のキャッチアップにぜひご活用ください。
自治体支援以外のスモールビジネス資金調達方法
全国の自治体で、スモールビジネスへの支援が実施されていますが、スモールビジネスで活用できる制度はほかにもあります。
ここではスモールビジネスの資金調達方法についての解説です。
日本政策金融公庫の融資を受ける
日本政策金融公庫は、政府系の金融機関です。中小企業や個人事業主向けの融資が充実していて、創業支援の融資制度も用意されています。
日本政策公庫の融資は、審査を通過すれば低金利でまとまった額の融資を受けられる点が魅力です。
ただし、審査を通過するには事業や融資後の返済計画を明確に示さなければいけません。
クラウドファンディングを行う
クラウドファンディングは、企業や個人、団体がインターネットで出資を募る仕組みです。
インターネットであれば、費用をかけずに広く呼び掛けられるため、事業や理念に共感してもらえば、まとまった資金調達も可能です。
得た資金は返済もないため、後から返済負担が経営を圧迫することもありません。
クラウドファンディングには、寄付型や購入型、融資型などがあります。
商品アイデアはあっても資金が足りない時には、購入型にして事前に資金を募ってからリターンを渡す方法があります。
ビジネスローンを活用する
ビジネスローンは、金融機関が実施している法人向けの融資のことです。審査が比較的緩やかで、担保や保証人なしで借りられるビジネスローンもあります。
早ければ即日で借りられるケースもあり、急いで資金調達したい場合にも適した手段です。
しかし、金利はやや高めに設定されているので、何度も利用するとコストが大きくなってしまう点に注意しなければいけません。
自治体の起業支援セミナーや窓口相談も積極的に活用しよう
スモールビジネスの支援と聞くと、金銭に関するものをまずイメージするかもしれません。
しかし、自治体では、起業セミナーや窓口相談といった形での支援も実施しています。
横浜市では特定創業支援等事業として、認定を受けたセミナー等の支援を受けた起業者は登録免許税の減免や融資利率の優遇などを受けられます。
自治体の企業支援セミナーは、経営や財務、販路開拓や人材育成といった知識が学べる上、その地域の人と情報交換できる場所です。
各地方自治体の起業セミナーについてチェックしてみてください。
まとめ・スモールビジネスをはじめるなら各自治体の支援をチェックしよう!
地元の資源を活用したスモールビジネスは、人口流出や高齢化といった地域の課題解決につながることが期待されています。
そのため多くの地方自治体で、起業者が専門知識を学べるセミナーを実施したり、起業資金の補助をしたりとスモールビジネス支援に力を入れるようになりました。
支援の内容は、地方自治体によって違います。
これから起業しようと考えるのであれば、その自治体にどのような支援策が用意されているのか事前にチェックしておいてください。
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(編集:創業手帳編集部)