福利厚生費で節税できる仕組みとは?非課税・課税対象をご紹介!
福利厚生費には節税効果があるものとないものがある
企業にかかる経費のひとつに福利厚生費があります。福利厚生費は従業員の満足度を高めると同時に、法人税の節税効果に期待できます。
しかし、福利厚生費でも節税効果があるものとないものがある点に注意が必要です。
節税効果はあくまでもおまけ的な要素ではありますが、どのような福利厚生費が節税につながるのか知っておくことで、賢く福利厚生サービスを提供できるようになります。
そこで今回は、福利厚生費が節税になる仕組みや非課税・課税対象の福利厚生についての解説です。
創業手帳が無料公開している『経費で損しないためのチェックリスト』では、「人件費」「広告宣伝費」「交際費」など23の経費項目ごとに、削減のポイント&節税のコツをわかりやすく解説。無料でお読みいただけますので、ぜひお役立てください。
※この記事を書いている「創業手帳」ではさらに充実した情報を分厚い「創業手帳・印刷版」でも解説しています。無料でもらえるので取り寄せしてみてください
この記事の目次
福利厚生費の概要・種類
そもそも福利厚生費とは何か、まずはその概要を解説します。
福利厚生費といっても、法定福利厚生費と法定外福利厚生費の2種類が存在するので、それぞれの違いも紹介します。
給与・賞与以外に従業員のために支払う費用
福利厚生費は、法人が従業員やその家族に与えられる給与・賞与以外の福利厚生サービスに対して支払う費用のことです。
そもそも福利厚生は、従業員にとって働きやすい職場に整備し、また豊かな日常生活を送ってもらうために用意されています。
そのため、充実した福利厚生を提供することは従業員の仕事に対する意欲を高める効果があり、労働生産性の向上にもつながります。
福利厚生費は法人税法では経費となり、従業員の給与として扱われません。
したがって、社会保険料の算定に影響はなく、福利厚生を利用することに従業員にデメリットはないとされています。
しかし、法人側は福利厚生を提供にするにあたって、様々なコストがかかることを理解しておく必要があります。
「法定福利厚生費」「法定外福利厚生費」の2種類
法定福利厚生費とは、法律によって従業員に提供する義務が定められている福利厚生にかかる費用を意味します。
健康保険・厚生年金といった社会保険や子ども・子育て拠出金がその対象です。
保険に関しては対象の従業員が未加入の場合、6カ月以下の懲役、もしくは50万円の罰金というペナルティを受ける可能性があるので注意してください。
一方、法定外福利厚生費とは、企業が自主的に提供する福利厚生にかかる費用のことです。
家賃補助や食事代補助、通勤費など、各種お祝い金・見舞金などが該当します。
福利厚生費で節税できる仕組み
福利厚生費で節税できる理由は、経費に計上できるからです。法人税は、企業活動による課税所得に対してかかります。
その課税所得は、収益(益金)から売上原価や災害等の損失など企業活動で発生した費用(損金)を差し引くことで算出することが可能です。
法人税は課税所得に法人税率を乗じることで算出されるため、所得が少ないほど税金も少なくなります。
つまり福利厚生費を経費に計上することは法人の所得の圧縮につながるので、法人税の節税につながるというわけです。
さらに福利厚生費は給与や賞与にはならないので、従業員の所得税にも影響はありません。
ただし、経費に計上できないものも、福利厚生費の中にはあります。その場合は、従業員の個人所得や企業の交際費として扱われるため、課税対象となるので注意してください。
福利厚生を経費にするための要件
福利厚生費を経費に計上して節税していくためには、以下の要件を押さえる必要があります。
-
- 全従業員に福利厚生を等しく支給すること
- 福利厚生の基準が社内規則に明記されていること
- 福利厚生費が社会通念上で妥当な金額であること
- 給与以外にものであり、現金または換金性の高いものではない
福利厚生はすべての従業員に平等に支給されることが原則です。そして、社内規則において福利厚生の基準を明確にしておく必要があります。
社内規則に明記されていないと、経費として処理できるのか、税務署の厳しいチェックを通り抜けることが難しくなります。
そして、世間一般の常識の範囲で福利厚生費が妥当なものであることも重要な要件です。
社内規定にあったとしても、福利厚生費が過度に高かったり、必要以上に福利厚生サービスを提供していたりすれば、常識の範囲から外れているため課税対象と見なされる可能性があります。
また、給与以外の福利厚生もあります。提供するものが現金や換金できそうな高いものだと給与と扱われる可能性があるので注意してください。
節税効果が期待できる福利厚生の種類
節税効果が期待できる福利厚生サービスには、様々な種類があります。主に経費と認められる福利厚生は以下のとおりです。
通勤手当
福利厚生の定番である通勤手当は、従業員の所得税に影響を与えず、非課税で支給できます。
現金は原則福利厚生費として認められませんが、通勤手当は例外で現金での支給が可能です。
しかし、非課税にできる金額の上限が定められている点に注意してください。
バス・電車といった公共交通機関を利用する場合、非課税で支給できる上限は1カ月あたり15万円までです。
従業員がマイカー通勤の場合、通勤距離によって上限が異なります。その上限は以下のとおりです。
片道距離 | 1カ月の上限額 |
---|---|
2km未満 | 全額課税 |
2~10km未満 | 4,200円 |
10~15km未満 | 7,100円 |
15~25km未満 | 12,900円 |
25~35km未満 | 18,700円 |
35~45km未満 | 24,400円 |
45~55km未満 | 28,000円 |
55km以上 | 31,600円 |
通勤距離が2km未満だと全額課税ですが、それ以上は距離ごとに非課税対象の上限が設定されています。
なお、上限を超えて支給することは可能ですが、超えた分に対しては給与所得と扱われるので、従業員の負担がかかってしまう恐れがあります。
出張手当
出張手当は交通費などの実費を除き、業務の一環で出張した社員に支給される日当です。こちらも例外的に現金での支給が認められています。
出張費は、業務を遂行する上で必要な費用であるため、非課税で支給することが可能です。
通勤手当と同じく、必要な部分を超えて支給すると従業員の所得税の課税対象となります。
節税効果につなげ、税務調査での指摘を避けるためにも、出張旅費規程を定めて適切な金額で支給してください。
社宅
福利厚生費に住宅手当を含むことはできませんが、社宅であれば可能です。
企業が所有・契約している物件に従業員や役員が住む場合、負担する家賃を福利厚生費に含められます。
注意点は、無償で貸し出していると福利厚生費と認められない点です。
福利厚生費にするために、従業員・役員から1カ月の家賃に相当する金額の50%以上を使用料として徴収しなければなりません。
使用料を徴収しないと、家賃全額が給与と見なされてしまいます。
健康診断
一般的な健康診断であれば、福利厚生費に含むことができます。全従業員が受診でき、法人名義で医療機関に費用を支払うことが条件です。
特に金額の上限はありませんが、相場はひとりあたり7,000~12,000円です。
人間ドックの費用は経費に計上できます。PET検査や高額なオプションは経費と認められないため注意してください。
食事補助
社食やお弁当の提供など業務内において食事代を補助する場合、その費用は福利厚生費にできます。
経費として処理できる上限は、ひとりあたり月3,500円以下です。
従業員が食事代の半分を負担している、現物で普及していることが福利厚生費にするための条件となっています。
深夜勤務など現物支給が難しいケースでは現金での支給が可能ですが、支給上限は300円(税抜)までです。
食事の中で飲酒が含まれると業務内の食事と見なされないので、福利厚生費として認められません。
社員旅行
社員旅行にかかった旅行費用も条件を満たせば福利厚生費として扱えます。
特に金額の上限はありませんが、高額な旅行費用は経費と認められにくいため、ひとりあたり10万円程度の負担が目安です。
社員旅行費用を福利厚生費にするためには、以下の条件をクリアする必要があります。
-
- 旅行期間が4泊5日以内(海外旅行では現地の滞在日数)
- 従業員全員に参加資格があり、50%以上の人が参加している
- 不参加の従業員に代わりとして金銭を支給していない
レクリエーション
従業員同士の親睦を深めるために、忘年会や新年会、社内パーティー、運動会などレクリエーションを実施する会社もあります。
社内イベントの開催にかかる費用やイベントの中で発生する飲食費・宿泊費なども、一般的な常識範囲であれば経費にすることが可能です。
ただし、ほかの福利厚生と同じく、レクリエーションは全従業員が参加・利用できるものが条件です。
一部社員や役員だけが参加・利用できるレクリエーションにかかる費用は、福利厚生費にはできません。
また、イベントで渡される景品が過度に高価なものであった場合も福利厚生費と認められにくいので注意してください。
慶弔見舞金
従業員本人やその親族に対して、結婚見舞金や出産祝い金、死亡慶弔金、災害見舞金などを支給することがあります。
慶弔見舞金は、非課税かつ例外的に現金での支給が認められています。
支給上限はありませんが、慶弔見舞金の種類によって相場があります。結婚や出産といった慶事であれば、1~3万円が相場です。
死亡慶弔金、災害見舞金などは、相手の立場や状況によって異なり、1~10万円が相場になります。
勤続表彰
勤続表彰は、10年以上の長期や永続で勤務する社員を表彰する制度です。一般的には賞状と記念品の贈呈や旅行に招待されています。
勤続表彰は従業員の所得税に影響を与えず、表彰する上でかかった費用は経費に計上可能です。
ただし、常識の範囲での金額でなければ認められません。現金や商品券、高価な品物を贈呈するといった行為は給与所得となるので課税対象となり、従業員の税負担が増えます。
また、勤続表彰は5年ごとなど一定の間隔をあけて実施することも条件となっています。
法人保険
法人が契約する保険で、被保険者となる従業員・役員に代わって保険料を支払うケースがあります。支払った保険料の一部は福利厚生費に含めることが可能です。
ただし、保険の種類・内容によっては、掛け金を資産として計上することになるため、加入する前によく確認してください。
経費として福利厚生費に入れられないケース
福利厚生費を経費に入れるためには条件があるため、計上できないケースも存在します。そのケースは以下のとおりです。
現金や換金性の高い物品の支給
従業員に現金や換金性の高い物品を支給した場合、その費用は福利厚生費と認められません。
通勤手当や出張手当など一部は現金での支給は可能ですが、上限が決まっていたり、常識範囲の支給額でないと経費として認められなかったりします。
換金性の高い物品には、旅行券や金券などが挙げられ、これらの支給は給与扱いです。
また、制服支給は福利厚生として認められています。ただし、社外でも使えるようなスーツやバッグなどは、その会社に勤める上で受けられる福利厚生にはなりません。
したがって、バッグやスーツなどの支給にかかった費用は福利厚生費に計上しないことになります。
過剰な通勤手当の支給
通勤手当を支給する際、あまりに高額な手当の支給は福利厚生費に含まれません。
福利厚生費として計上できる金額には上限が定められているので、非課税で支給する際は上限を超えて支給するのを避ける必要があります。
また、マイカーでの通勤距離が2kmの従業員に支給される通勤手当は、全額課税となってしまいます。
そのため、就業規則で通勤距離が2km以下の場合は交通手当を支給しないと定めるケースは少なくありません。
高額な飲食費
全従業員が参加できる飲み会や食事会などで発生する飲食費は福利厚生費にできますが、度を越えると計上できないので注意してください。
特に上限はないとはいえ、ひとりあたり数万円以上となる高額な飲食代は、課税対象の交際費や接待費と扱われる可能性があります。
飲食費を福利厚生費にできるかどうかは、社会通念上妥当かどうかで判断します。
どう計上するのが正しいか悩んだ時は、税理士などの専門家に相談するのがおすすめです。
社宅の家賃を企業側が半分以上負担
社宅の家賃を福利厚生費にするためには、従業員から家賃の一部を徴収する必要があります。
その際、企業側が家賃の50%以上を負担すると、その分は従業員の給与と扱われるため課税対象となります。
そのため、負担する家賃を福利厚生費にするためには、負担割合は家賃の50%以内に留めてください。
食事代・手当を企業側が半額以上負担
食事補助を提供する場合、企業側の負担が半額以上となっていると福利厚生費にできません。
食事補助で発生する食事代は、従業員が半額以上負担することが福利厚生費にする条件のひとつとなっています。
また、企業側の負担額はひとりあたり月3,500円以下に押さえること、現物支給であることも条件です。
食事手当として現金を支給すると給与と扱われ、課税対象となるので気を付けてください。
現物支給が難しい場合、食事のみ使えるチケットの配布する方法があります。この場合、上記の条件を満たしていれば、非課税で支給可能です。
健康診断の費用を従業員に直接支給
従業員に直接費用を支払って健康診断を受けてもらう場合、支払った現金は福利厚生費にできません。
現金の直接支給は給与と扱われてしまいます。
健康診断の費用を福利厚生費にしたい場合は、企業側が医療機関に直接支払うようにして、現金の支給は避けてください。
まとめ・福利厚生費を適切に処理して節税しよう
福利厚生は従業員のやる気やモチベーションに直結し、企業は良い影響を受けることができます。
提供する上で発生した費用の多くは経費にできるので、法人税の負担軽減も可能です。
ただし、福利厚生費にするためには細かい条件があるため、それを理解して適切に処理していくことが求められます。
福利厚生費にできるケース・できないケースを把握し、節税効果が期待できる福利厚生サービスの提供を検討してください。
「経費で損しないためのチェックリスト」では、23の経費科目ごとに削減・節税のコツをわかりやすく解説。
✅ 事業に活かせる節税対策
✅ 見落としがちな経費のポイント
✅ コスト削減に役立つ具体策
など、経営者・個人事業主のための実践的な内容をまとめています。
(編集:創業手帳編集部)