個人事業主が控除できるものとは?

資金調達手帳

所得控除や税額控除を理解し、賢く節税しよう


個人事業主にとっても会社員にとっても納税は重い負担になります。節税して負担を減らすためには、様々な控除制度を理解し、適切に活用することが有効な手段です。

確定申告で控除をうまく活用すれば、納める所得税が少なくなったり、所得税が還付されることもあります。経費と控除を活用すれば、納税負担を少なくすることもできます。

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個人事業主が使える「所得控除」と「税額控除」


節税の話題になると、よく「控除」という言葉を耳にするという方も多いかもしれません。
控除とは、課税対象となる所得や税額から一定の金額を差し引くことで、最終的な税負担を軽減する制度をいいます。
所得税は、担税力に応じて納税します。
つまり、所得が多くて税金を多く支払う能力がある人には多く負担してもらって、そうでない人は比較的少なく負担してもらうということです。

同じ所得であっても本人や家族の状況、生活にかかる負担などは違います。そこで様々な控除で差し引くことによって、納税額を調整するのが所得控除の役割です。
控除には、所得総額から金額を控除して課税所得に所得税率をかける所得控除と、所得税額から金額を控除する税額控除があります。

詳しくは以下の記事で確認してください。

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税額控除とは? 知っておくと得をする税額控除についてわかりやすく解説

個人事業主が控除できるもの|所得控除編


所得控除は、所得総額から金額を控除できる制度で、控除後の課税所得から所得税率を掛けて納税額を計算します。

ここでは、所得控除15種類をそれぞれ紹介します。所得控除にどのようなものがあるかは、以下の表で確認してください。

基礎控除 合計所得金額が2,500万円以下の人であれば受けられる控除。
合計所得金額が2,500万円以下であれば16万円~48万円が控除される。
配偶者控除 納税者本人の合計所得金額が1,000万円以下で所得金額が年間48万円以下であり、同一生計を営む配偶者がいる時に受けられる。
配偶者特別控除 納税者本人のの合計所得金額が1,000万円以下で、配偶者の合計所得が48万円超133万円以下である時に受けられる控除。
扶養控除 所得税法上の控除対象扶養親族となる人がいる場合に受けられる。
勤労学生控除 一定水準以下の給与所得がある学生に適用される。
ひとり親控除 納税者がひとり親の場合、男親、女親問わずに受けられる。
寡婦控除 配偶者と離婚、死別していて、ひとり親に該当しない場合に受けられる。
障害者控除 納税者と同一生計の配偶者、扶養家族が所得税法上の障害者である時に受けられる。
雑損控除 災害や盗難、横領によって被った損害がある時に受けられる。
医療費控除 一定額以上の医療費を支払った場合に適用になる。
社会保険料控除 納税者自身やその家族が支払った社会保険料を控除できる。
小規模企業共済等掛金控除 小規模企業共済等に支払った掛金の合計を控除できる。
生命保険料控除 生命保険や介護医療保険、 個人年金保険に支払った保険料がある時に控除を受けられる。
地震保険料控除 地震保険料を支払った場合に控除を受けられる。
寄附金控除 国や地方自治体、日本赤十字など特定の団体に寄附を行った際に適用される。ふるさと納税も寄付金控除を活用した制度。

基礎控除

基礎控除は、すべての納税者が利用できる控除です。
2020年の税制改正により控除額が引き上げられました。基礎控除の適用されることで、所得が一定額までの場合は、所得税がかかりません。
基礎控除によって所得2400万円以下のすべての納税者が48万円の控除を受けられます
所得が2400万円を超えると控除額が段階的に減少し、2500万円以上になると控除が適用されません。

配偶者控除

配偶者控除は、家族構成に応じて所得税を軽減するための控除です。
配偶者控除は、配偶者の所得が48万円以下である場合に適用され、一般控除対象配偶者は最大38万円、老人控除対象配偶者は最大48万円の控除を受けられます。
配偶者の収入に応じて控除を適切に申告すれば、所得税を大幅に軽減することが可能です。

配偶者特別控除

配偶者特別控除は、配偶者に48万円(2019年分以前は38万円)を超える所得がある時でも、所得金額に応じて控除をを受けられる制度です。
納税者の合計所得が1,000万円以下で、配偶者の合計所得が48万円超133万円以下である場合に適用されます。
配偶者の所得金額によって最大48万円(2019年分以前は38万円)が控除を受けられます。

扶養控除

扶養控除は16歳以上の子どもや両親などを扶養している場合に適用される控除です。一般的な扶養親族では38万円、老人扶養親族は最大58万円が控除されます。
さらに控除対象扶養親族のうち、その年12月31日現在の年齢が19歳以上23歳未満の人を特定扶養親族と呼び、63万円が控除されます。

勤労学生控除

納税者が勤労学生である場合、つまり学業を続けながら働いているような場合には勤労学生控除を受けられます。控除額は、27万円です。
合計所得金額が75万円以下(2019年分以前は65万円以下)で、かつ、給与所得以外の所得が10万円以下の時に利用できる控除です。

ひとり親控除

ひとり親控除は、納税者がひとり親である時に適用される控除です。申告者本人がひとり親である場合に35万円が控除されます。
ひとり親控除を受けられるのは、事実上婚姻関係と同様の事情にあると認められる一定の人がいなくて生計を一にする子がいる合計所得金額500万円以下の人です。

寡婦控除

寡婦(寡夫)控除は、その年の12月31日時点で「ひとり親」に該当しない一定の寡婦に適用されます。
寡婦(寡夫)控除の金額は2020年分以後は27万円です。2019年以前は、一般の寡婦で27万円、特別の寡婦で35万円です。

障害者控除

障碍者控除は、納税者本か、その家族が障害者である場合に適用される控除です。控除額は障害者ならひとりにつき27万円が控除されます。
特別障害者の場合には40万円、同居特別障害者であれば75万円です。

雑損控除

雑損控除は、災害や盗難、横領によって被った損失を所得から控除できる制度です。
合計所得金額が1,000万円以下の人が災害にあった場合、災害減免法による所得税の軽減免除があり、納税者の選択によりどちらか有利な方法を選べる仕組みです。
雑損控除は、①損失額から所得の10%か②5万円を差し引いた金額のいずれか多いほうが控除対象となります。

医療費控除

医療費控除は、納税者本人やその家族が支払った医療費が一定額を超える場合に適用される控除です。

控除対象となる医療費には、治療費のほか、通院のための交通費や処方薬の費用も含まれます
医療費控除を計算するには、支払った医療費から保険金などで補填された金額を差し引いてください。10万円以上の医療費が控除の対象です。

また、所得が200万円以下の人は、所得金額の5%を超える部分が控除対象となります。医療費控除は年末調整で処理されないので必ず確定申告で申請するようにしてください。

社会保険料控除

社会保険料控除は、納税者自身や同一生計の配偶者、その他親族が支払った社会保険料を控除できる制度です。

対象となるのは、国民年金保険料や厚生年金保険料、健康保険料などで、支払った社会保険料の全額が所得から控除されます。
社会保険料控除を受けるためには、支払った保険料の証明書を確定申告の際に提出します。
最近の税制改正により、社会保険料の額が変動することがあります。最新の情報を確認してください。

社会保険料控除を利用する場合は、確定申告書または年末調整の際に提出する「給与所得者の保険料控除申告書」に保険料を証明する書類を添付してください。

小規模企業共済等掛金控除

小規模企業共済等掛金控除は、個人事業主が加入できる退職金積立制度です。小規模企業共済に掛け金を支払った場合には、小規模企業共済等掛け金控除が適用されます。

小規模企業共済は、国の機関である中小機構が運営する退職金制度です。
将来への備えとして有効なだけでなく、支払った掛金の全額が所得から控除されるため節税効果が非常に高い制度です。

小規模企業共済の共済金は退職時に一括または分割で受け取ることができ、受け取り時には退職金として扱われるため税制上の優遇措置が受けられます。
ただし、掛金を解約する際には、解約手当金が課税対象なので計画的に運用してください。

生命保険料控除

生命保険料控除は、納税者が生命保険料、介護医療保険料および個人年金保険料を支払った時に一定の控除が受けられます。受けられる控除は最大で12万円です。

生命保険料控除を受けるには、確定申告書の生命保険料控除の欄を記載して支払い金額や控除を受けられることを証明する書類または、電磁的記録印刷書面を添付してください。

会社員の場合には、年かつ調整で生命保険料控除の申請が可能です。

地震保険料控除

地震保険料控除では、地震保険に加入している場合に最大5万円の控除を受けられます。地震保険料控除も、生命保険料控除と同じように会社員は年末調整で申告可能です。

確定申告の場合は、地震保険料控除の欄に記入するほか、支払い金額や控除を受けられることを証明する書類または、電磁的記録印刷書面を確定申告書に添付してください。

寄附金控除

寄附金控除は、特定の団体や自治体に寄附を行った際に適用される控除制度となります。ふるさと納税は、地方公共団体への寄附金を寄附金控除の対象にしたものです。
寄附金控除では、寄附金額から自己負担額の2000円を引いた額が控除対象です。
寄附先の自治体や団体から発行される寄附金受領証明書をもとに、確定申告で寄附金控除を申請します。

また、税額控除として寄附金特別控除があり、特定の寄付については、政党等寄附金特別控除と認定NPO法人等寄附金特別控除、公益社団法人等寄附金特別控除の3つの税額控除が設けられています。
それぞれの税額控除と寄附金控除の有利なほうを選択できる仕組みです。

個人事業主が控除できるもの|税額控除編


上記では15種類ある所得控除について説明しました。税額控除は、所得控除と違って税額そのものから控除される制度です。
高い節税効果が期待できるものの、原則として確定申告しなければ控除を受けられません。利用できる税額控除がないかチェックしてください。

ここでは、税額控除の中から一部を紹介します。

配当控除

配当控除は、総合課税の配当所得がある時に適用可能です。控除額は、配当所得の金額や課税総所得金額等から計算されます。
ただし、外国法人から支払を受ける場合や、確定申告不要制度を選択した場合、申告分離課税を選択したものなどは配当控除の適用はありません。

(特定増改築等)住宅借入金等特別控除

住宅借入金等特別控除は、自宅を購入するために住宅ローンを利用した場合に、一定の条件を満たすとローン残高の一定割合が所得税から控除される制度です。
この控除は数年間にわたって適用されるため、長期的な節税効果が期待できます。

政党等寄附金等特別控除

政党登記不均等特別控除は、政党や政治資金団体に寄付を行った場合に適用されます。
これは、寄付を通じて政治活動に貢献した個人が、所得税の一部を控除できる仕組みで、日本の政治資金規正法に基づいたものです。
前述したように政治活動に関する寄附金、認定NPO法人等に対する寄附金及び公益社団法人等に対する寄附金については、所得控除と税額控除から選択可能です。
どちらが有利になるかは、実際に計算して確かめてください。

外国税額控除

外国税額控除とは、納税者が海外で得た所得に対して、その所得が発生した国で課税された税金を、日本での所得税から控除できる制度です。
同じ所得に対して国際的に二重課税されることがないようにこの制度が設けられています。

個人事業主が控除できるものは申告方法で異なる


上記で、様々な所得控除、税額控除を紹介してきましたが、すでに控除を受けていたり、利用できる控除がなかったりするケースもあるかもしれません。
まだ青色申告にしていない人は、節税のために青色申告を選ぶことも検討してください。

白色申告の場合

白色申告では、申告の種別によって関係なく受けられる基礎控除などの控除を受けられます。白色申告は、青色申告と比較して記帳が少ない点がメリットです。
ただし、白色申告であっても記帳は義務付けられます。確定申告ソフトであれば複式簿記であっても比較的簡単に記帳可能なので、青色申告にすることも検討してください。

青色申告の場合

個人事業主が青色申告をすると、最大65万円の青色申告特別控除が適用されます
ただし、控除を利用するためには複式簿記で記帳したり、必要な会計書類を備え付けたりといった要件を満たさなければいけません。
青色申告の会計に不安がある場合には、青色申告に対応した会計ソフトを使ってみてください。

青色申告には、ほかにも赤字を3年繰越できたり家族の給与を経費にできたりと多くのメリットがあります。
青色申告を受けるには、青色申告承認申請書を申告を希望する年の3月15日、または開業届を出して2カ月以内に提出しなければなりません。

控除を受ける場合の注意点


控除を受けるためには、確定申告書類への記載や必要書類の添付が求められます。控除を利用する時には、どのようにして控除を受ければいいのか確認しておいてください。
特に、個人事業主は会計処理から納税手続きまで自分ひとりでおこなっているケースも多くあります。
手続きや会計処理に不安がある場合には、専門家に依頼するか、会計ソフトの利用を検討してください。

まとめ・個人事業主は控除できるものを把握して賢く節税しよう

個人事業主になると、確定申告や税の手続きも自分で行います。面倒に感じる人もいるかもしれませんが、控除できるものを把握して適切に書るすることで節税可能です。
支払うお金を減らすことによって事業に使える資金も増やすことができます。事業で忙しいかもしれませんが、専門家や会計ソフトの力を借りて節税に取り組んでみてください。




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(編集:創業手帳編集部)

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